No.400771

機動戦士ガンダムSEED白式 08

トモヒロさん

8話 今回は一夏達は出てきません

2012-03-31 23:00:20 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3474   閲覧ユーザー数:3374

アストレイ

 

 時を遡り、2日前。崩壊したヘリオポリス。中はほとんど機能を停止させたガラクタばかりだが、ある種の人間から見れば、ここは、いわゆるお宝の山とも言えるだろう。

 そして、ここにそのある種の人間達が一組。

 

 「ねぇロウ、ほんとにあげちゃって良かったの?ブルーフレーム」

 「良いんだよ。それにブルーフレームが劾を選んだんだ、ジャンク屋の俺がそうとやかく言う資格はねぇ」

 『問題なし!』

 

 ジャンク屋、ロウ・ギュールは超AIこと8を持ってレッドフレームを降り、集めたジャンクの整理をしている。そして、ロウがさっきからジーっと眺めているのは、二の腕から胴体を真っ二つにされ、バッテリーが粉々になったジンの上半身だった。

 

 「ロウにしては珍しく、使えなさそうなものを持ってきましたね」

 「いつもあたしに『そんなん使えねぇから捨てちまえ!』って言ってるくせに、ロウこそこんなガラクタ拾ってきてるじゃない」

 『目が曇ったんじゃないか?』

 

このジンはヘリオポリスをあとにする際、その周辺に漂っていた物で、ロウはこれを見つけるなりすぐさまレッドフレームでお持ち帰りしたのだ。

 だが、ロン毛の男、リーアムと、茶髪の少女、キサト、そして8からは低評価をもらう。

 これは流石に素人の目から見ても、到底使えそうにない正真正銘のジャンクだが、果たして本当に彼がそんな事をするだろうか?ロウはジンのある一点を凝視している。

 

 「…いや、俺の目に狂いはねぇぜ!」

 

 ロウはいきなりニィっと頬を釣り上げながら、ジンの残骸へと飛び移る。

 

 「ココを見てみろ!キサト!」

 

 そして、ジンの胸部に着地したロウはスッパリと切られた胴体の断面を指差す。そこにはミゲルの血が付いていた。

 

 「うぇ…気持ち悪い…」

 「そこじゃねぇよ!切断面の形だ!」

 

 苦汁を飲んだような顔をするキサトにロウが訂正した。

 キサトとリーアムはその切断面を見るため、二人ともジンの残骸へ飛び移る。

 

 「見ろ、このヤスリで磨かれたような、キレイな切断面をよぉ」

 

 再びロウの指先をみると、その切断面は武器で切られたにしては凹凸の全くない、ロウの言うとうりヤスリで磨かれたような切断面だった。

 しかし、キサトはそれがどうしたっといった顔だ。それに対しリーアムは何か悟ったようだ。

 

 「でも…それが何なの?」

 「…本来、実体剣で物資を斬る場合、物体の切り込み口から剣を押し込み、そこから削りとって行き、切断面にズレなどがでますが…」

 「そう、こいつの場合は文字通り斬ったんだ。ナイフでチーズを別けるようにな」

 

 ロウは確信しきったドヤ顔で、キサトの顔の前に人差し指を立てる。

 

 「つまり、こいつを斬った何かは、すんげえ業物って事だ」

 「だ、だったら、ビームか何かで斬ったんじゃない?連合ってビーム兵器の開発も成功してるんでしょ?レッドフレームにだってビームサーベルついてるし…」

 「いえ、それだとこの切断面が溶解し、むしろ、荒々しくなってしまいます」

 「うぅ……」

 

 とうとうキサトは黙り込んでしまった。リーアムがキサトをなだめているうちに、ロウはジンのヘルメット(?)を取り外し、そこの端末へ8をつなげる。8のモニターに『PROTECT』と表情される。

 

 「ん?視界データにプロテクトがかかってんな。俺に掛かれば、ちょろいちょろい♪」

 

 ロウは数秒足らずでプロテクトを解除した。

 

 「何やってんの?」

 「いやぁ、こいつをぶった斬った奴の顔が拝めるかと思って」

 「それで、このジンの戦闘記録を見ようとしていたわけですか」

 

 8のモニターにレッドフレームに似た真っ白なMSが映し出される。

 

 「キレイ…」

 「ッ!?ちょっと待て、8、もうちょい前から再生してくれ!」

 

 モニターの画像が巻き戻り、再び再生すると、彼らの前に目を疑うようなものが映っていた。

 モニターの中のMSはあろう事か背中から、翼が生えたのだ。

 

 「うっひょおぉ~~~~~ッ!!いったいどうなってんだ?このMS!」

 「今、翼が生えたよね…やばいデータじゃん?コレ」

 「そうですね、廃棄すべきです」

 「じゃ、その前にコピーだな」

 『了解ー』

 ガクッ…「廃棄だって言ってんでしょうが!!」

 『ああ、その事だけど、もう遅い見たいよ』

 

 白いMSが斬りかかろうとした直前、8のモニターにタバコを片手に裸に白衣だけを羽織った女性が映し出された。ロウは頭をおさえながら呆れ、キサトは慌てふためき、リーアムに関してはさも当然のようにスルーしている。

 

 「プロフェッサー…」

 「わわわ!!?何とかなんないんですか?!その格好!」

 「それより、その『もう遅い』と言うのは?」

 『警告!接近する機体あり!』

 『そゆこと』

 

 

 接近しているのはジンが1機。マシンガンを撃ちながら、ホームへと近づいて来る。しかしその弾のほとんどはレッドフレームのシールドによって弾かれる。

 ロウはレッドフレームにビームサーベルを装備し、ジンをX字に両断する。コックピットは避けているので、コックピットからジンのパイロットが脱出した。

 

 『ひ、ひぃ!』

 「心配するな、俺はジャンク屋だ…人殺しはしない」キラーン

 『カッコつけてる場合じゃないぞロウ!敵の増援をキャッチ!距離8000!』

 「なぁ!?団体で来やがった!とにかくプロフェッサー、二手に別れて逃げよう!」

 『了解、無茶しちゃダメよ』

 「お宝も無いのに無茶なんかするかよ!」

 

 レッドフレームはバーニアを吹かし、団体の中へ突っ込んで行く。

 

 「ロウ!気を付けてね!」

 

 

 「さぁて、少しばかり鬼ごっこに付き合ってもらうぜ!」

 

 ジン4機のマシンガンをかいくぐり、ある程度近付くと。手の平を返すように距離をとる。

 

 「へへッ!レッドフレームに追いつけるもんなら追いついてみろっての!」

 

 Beーッ!!Beーッ!!Beーッ!!

 だいたい4機のジンを振り切った後、前方からアラートが鳴り響く。

 

 『ビームだ!』

 

 ロウはレッドフレームを左にスライドさせ、その直後レッドフレームのいた少し右側にビームが通り過ぎる。

 その後をビームランチャーを装備したジンがすれ違い、Uターンして再びレッドフレームを追撃する。

 

 「ザフトもビーム兵器を実用化してきたのか!?

 ……」

 『おいロウ…まさか』

 「…欲しぃいーーーーーーッ!!なあ8!あのMSお持ち帰りできないか?」

 『できるわけないだろ!!ビーム兵器ならレッドフレームにもついてるんだから我慢しろ!』

 「ザフト製の処がいいんじゃないか!違う技術を使ってるかもしれないだろうが!…うわ!」

 

 後ろのジンは容赦なくビームを撃ってくるが、レッドフレームがジグザグ軌道で回避する。

 

 『あれでもまだ欲しいか?』

 「すみません…我慢します…」

 

 そのままレッドフレームは少デブリの中へ逃げ込み、ジンもデブリの中へと追撃してくる。ジンは腰のサーベルを引き抜き、レッドフレームへ向け、斬りかかるが、レッドフレームはそれを避け、代わりに、MS基準でサッカーボール位の隕石が身代わりとなった。

 そしてレッドフレームはそれに気を取られているジンに先程の隕石と同じくらいの隕石をオーバーヘッドシュートでぶつける。その隕石はジンの持っていたビームランチャーに命中し、エネルギータンクがひしゃげ爆発する。

 

 「やったか!?」

 『熱源移動!速度上昇!』

 「しつこい!」

 

 爆煙から出てきたジンはサーベルを構え、斬りかかる。しかしレッドフレームはソレを避け、さっきと同様コックピットを避けながらジンをX字に叩き斬る。

 パイロットが脱出するのを見届けると、レッドフレームはその少デブリをあとにした。

 

 

 「コレでもう追ってこれないだろ」

 『ホームへ帰還するぞ』

 

 ロウはレッドフレームをオートモードへ切り替え、先に行ったホームの後を追う。

 

 『これからどうする?』

 「ホームに戻ったあと地球へ行く!確かヘリオポリスにあった戦艦は地球へ向かった筈だ!そんであの白いMSをこの目で見にいくぞ!」

 『…はぁ、了解』

 

 8はため息(?)をしながらも、渋々了承する。

 

 「待ってろよぉーーーーーーー!!!ホワイトフレーム!!」

 

 この日、あの白いMS、白式に新たな名前が付けられた…。

 

 

 織斑 一夏が消息を絶って、2日。部屋中パソコンのモニターやらハードやらでごった返した部屋に、この部屋の雰囲気に不釣り合いな格好をした女性が一人。その女性の格好はなにやら不思議の国のアリスのようだった。

 女性は目にも留まらぬ早さでキーボードを叩いていると、不意にそのしなやかな指先がピタッと止まる。

 

 「フンフン、やっぱりいっくんが消えた所、この時を境に急激な質量変化が起こってるね~。そこに気付くなんて流石だね!わたし!」

 

 女性は新しいオモチャを買ってもらった子供のように、顔がイキイキとしてくる。そして再び、あまりにも早すぎて指が何本もあるように見える、通称ゴットフィンガーを再開し、そして幾多のモニターになにやら複数のウィンドウが開いては閉じ、画面が著しく回って行く。

 

 「ッ!?そうかぁ!そうと分かれば、まずはちーちゃんと箒ちゃんに連絡だね!」

 

 そして何かに気が付いた女性は、キーボードの横に置いてあった携帯電話を撮ろうとする…が

 

 ゴトッ…びしゃ!

 「あ」

 

 その前にあったDr.○ッパーをその携帯電話の上に盛大にぶちまけた。

 彼女が再び携帯電話を手にしたのは、実にこの一週間後の事だったとか。


 
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