No.397302

高みを目指して 第7話

ユキアンさん

どいつもこいつも真直ぐな奴ばかりだな。
オレにもそんな時代があった。
だからこそ、守ってやる必要がある。
汚れるのはオレだけで十分だ。
by零樹

2012-03-24 19:28:28 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3206   閲覧ユーザー数:3013

火災、自己紹介、参入

 

 

side 零樹

 

 

「能力を公表しヒーロー協会の傘下に入れ、か」

 

「どうするつもりなの」

 

「別にそれでも良いと思うよ。楽しそうだから」

 

姉さんと一緒に街中の壁に賞金首の様な張り紙に書かれているメッセージを読みながら拠点に戻る。

 

『天流探偵事務所』

 

それがオレたちのこの世界での拠点だ。二日前から開業した為に客は一人も訪れて居ないが宝石等が大量にあるので生活に困る事はない。

 

「「ただいま」」

 

「お帰りなさい」

 

扉を開け事務所に入ると刹那姉さんが出迎えてくれた。

 

「フェイトは?」

 

「今は格納庫の製作をしています。といっても迷彩とかだけだと言っていましたが」

 

「ふ~ん、なら後で良いか。とりあえずヒーロー協会の傘下に入ることにしたから次回の出番の後にそのまま行ってくるよ」

 

 

 

それから数日後

 

 

「なんだ?あの煙は」

 

「どうやら工場で火災が発生しているみたいだね。ちょうどHEROTVが始まったから」

 

「なるほど。なら、行くか」

 

「スカルギャリーなら準備ができてるよ」

 

「ありがとう」

 

格納庫に転移し、スカルギャリーに乗り込む。

 

「フェイト、操作の方は任せた」

 

「ああ、分かった」

 

「行くか」

 

<<SKALL!>>

 

 

side out

 

 

 

 

side other

 

 

その工場は赤く染め上げられている。

辺り一面を炎が覆い尽くしている。

そんな中に取り残された人たちをヒーローが救助していく。

 

「大丈夫ですか。今助けますから」

 

彼、いや、彼女もその一人だ。

ドラゴンキッド、電気を自在に操るヒーローだ。

そんな彼女は今、取り残されていた人を安全な所に誘導し始める。

その時、火災により脆くなった鉄骨が彼女達に向かって倒れてくる。彼女一人ならそれを避けることは簡単だった。取り残されていた人はその光景を見て蹲ってしまう。人間としての反射がそれをさせてしまった。その一瞬で二人の運命を決めつけてしまった。二人が鉄骨に押しつぶされるという運命を。

だが、その運命に囚われることの無いものが現れる。

それは、骸骨を模したデザインが施された装甲車だった。その装甲車は二人を押しつぶそうとしていた鉄骨を弾き飛ばし二人の傍に停止する。そして、装甲車は二つに割れ、中から骸骨の様な男、スカルがバイクに乗って現れる。

 

「その人を早く乗せろ、すぐにでもここら一帯は崩れさる。その前に離れるぞ」

 

「えっ、あ、うん。早くアレに」

 

「お前もだ。既に火の勢いが強すぎる。生身で脱出するのは不可能だ」

 

「けど、他にも取り残されてる人が居るかもしれないのに」

 

「諦めろ。これ以上はお前では無理だ。割り切ることも時には重要だ」

 

「そんなこ「此所でお前が倒れれば将来助けることが出来た人を助けられなくてもか」……それは、それでも」

 

「なら、言い方を変えよう。お前には無理だが、オレには出来る」

 

「えっ?」

 

「その人を連れて行け。残っているのはオレが探してやる」

 

それだけを言うとスカルは炎の中にバイクごと飛び込んで行く。ドラゴンキッドはそれを追いかけようとするも装甲車が勝手に閉まり走り出してしまった。次に装甲車が止まり、再び開いたのは救急車などが止まっている地点だった。

 

「おいおい、ドラゴンキッド。なんだぁ~、その車は」

 

「タイガー、さっきスカルがこれに乗って現れてまだあの中に」

 

「大丈夫なのか、くそ、今から行ってもオレじゃあ無理か。能力が切れてなけりゃあなんとかできるのに」

 

「やばい、崩れ始めてるぞ」

 

「助けに行かないと」

 

「待ちたまえ、何か聞こえる」

 

スカイハイの言葉にヒーロー達が耳を澄ませる。炎が燃える音の中に微かに異音が混じって聞こえる。それはどんどん大きくなっていく。

 

「これは……バイクか?」

 

「まさか」

 

次の瞬間、炎の壁を突き破りバイクに乗ったスカルと、逃げ遅れていたと思われる男性が飛び出してくる。そのまま一番近くの救急車の傍に止まり男性を降ろす。

 

「左腕と背中に重度の火傷だ。炎は吸ってはいない」

 

「え、あの」

 

「急げ」

 

「は、はい」

 

慌てて救急隊員が男性を病院に搬送するのを見送ってからスカルは他のヒーロー達の元にやってくる。

 

「やあ、君のお陰で市民を救うことが出来た。ありがとう、そしてありがとう」

 

「礼を言われる様なことじゃない。それに、救えなかった命もある」

 

「なっ、今すぐ「無駄だ。既に看取った。それにもうあそこにいて生きていることは、ちょっと待て」

 

機械で出来たのコウモリがスカルの傍にやってくる。スカルが手を出すとその上でカメラに変形する。そのカメラに映し出されている映像を見てスカルはそれをベルトに装着させる。

 

「あの一帯の生態反応が無くなった。これ以上は無意味だ。観測されているだけで死者8名だ」

 

「ちくしょうが~~~~~~~」

 

ワイルドタイガーは叫び、スカイハイとロックバイソンや折紙サイクロン、ファイヤーエンブレムが悔しそうにし、ドラゴンキッドとブルーローズが涙を流す。スカルは帽子を外し、工場に向かって十字を切る。

 

 

side out

 

 

 

 

side 零樹

 

 

彼らは本当に街を、市民を愛しているんだな。自らの危険を厭わずに市民を守り、救う。オレはあの中に入れるのか?愛する者も守れず、復讐に囚われ、この手を血に染め続けて来たオレに。

急に逃げ出したくなった。だが、それは止められてしまった。

 

「すまねえ、みっともない所をみせた。オレはワイルドタイガーだ。今後ともよろしく頼むぜ」

 

そう言いながらワイルドタイガーが握手を求めてくる。

一瞬、その手を取りそうになったがそれを止める。

 

「まだ、ヒーローとしてやっていくかどうかは決まっていない」

 

「別に細かいことは良いんだよ。ようはオレがお前と仲良くやっていきたいだけなんだから」

 

なんというか、こういうタイプの人間には逆らえないな。

 

「スカルだ。よろしく頼むよ、ワイルドタイガー」

 

差し出された手を取り、握手を交わす。その後も他のヒーロー達と自己紹介をしてからヒーロー協会本部に向かう。スカルギャリーは戻してスカルボイルダーでだ。さすがに魔法技術を大量に仕込んであるスカルギャリーをあまり研究者や開発者の目に触れさせたくないからだ。

ヒーロー協会の本部は街の中央にある女神像が載っているビルだった。男のヒーローに案内されロッカールームに向かう。とりあえずは素顔を曝さなければならないのだろう。

 

「一つ聞くが、どれだけの人数に顔を知られることになる」

 

「とりあえずはオレ達だろう。それからHEROTVのアニエスに協会の幹部だから、オレ達以外で10人位か?」

 

10人か、まあいいだろう。

 

「分かった」

 

そう言いベルトからメモリを取り外す。少しするとスカルを形作っている装甲が剥がれ落ち、消えていく。

種は簡単だ。魔力で編んである装甲を保つ役割を持つのがベルトに挿入されているメモリだからだ。

それを見て他の皆がぽかんとしている。

 

「どうしたんだ」

 

「どうしたって、何なんだよ。お前のスーツ」

 

「いや、見ての通りの一丁裏だが」

 

今は行方知れずの母さんが作ってくれていた白いスーツのどこに文句があるんだ?

 

「そうじゃなくてお前の、スカルのことだよ」

 

「ああ、見ての通りだ。液体金属で構成してあるからベルトとこのメモリがあればどこでも装着可能だ。剥がれ落ちたように見えるのは映像だけだ」

 

最初から考えていた嘘をつき、適当に誤摩化す。

 

「へぇ~、凄い技術だな」

 

「まあな。とりあえずオレは外で待たせてもらう」

 

「ああ、すまねえ。すぐに着替えるから」

 

ばたばたと慌てて奥に引っ込むワイルドタイガー達を見送りロッカールームから出る。出たすぐの所にある自販機からコーヒーを買い同じく傍にあった椅子に座り他のヒーローを待つ。

 

「あの~、もしかしてスカルさんですか?」

 

うん、誰だこの子?。

気を抜きすぎていたのか傍に誰かが来ているのに気付けなかった。その子は黄色のジャージに身を包んだ15歳位のおと、うん?よ~く見ると骨格や胸から女の子であることに気付く。あと、さっきの声からするとドラゴンキッドか?

 

「ああ、そうだが、もしかしてドラゴンキッドか?」

 

「うん、僕は黄宝鈴(ホァン・パオリン)って言うんだ」

 

「そうか、オレの名はレイキ・マクダウェル・テンリュウだ。改めてよろしく頼む。それにしても女の子だったのか」

 

「やっぱり、名前じゃないと気付かないよね」

 

「そんなことは無いぞ。一目では分からなかったが少し見れば十分にかわいい女の子だって分かるさ」

 

「かっ、かわいいって。お世辞なんていらないよ」

 

顔を赤くしながら言っても説得力が無いぞ。

 

「そ、それより他の皆はどうしたの?」

 

「まだ着替えている途中だな。暇なら色々とこの街のことについて教えてくれないか。最近、こっちに引っ越して来たばかりなのでな」

 

「うん、じゃあまずはーーー」

 

それから色んなことを教えてもらっているうちに全員が揃い再び自己紹介をする。その後ヒーロー協会の幹部、及びHEROTVのアニエスに面通しをして、とりあえずオレの能力を筋力強化系の能力と偽り、仮ではあるが正式にヒーローとして認められることになった。仮の理由は、今はシーズンの終盤であり来シーズンから正式に参加する方が向こう側がやりやすいからだそうだ。こちらとしても不都合は無いのでOKを出した。さあ、これからが楽しみだ。それにしてもあのマーベリックとか言う男は胡散臭かった。あいつには十分に注意しておこう。

 

 

side out


 
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