No.394438

灰色の立派な魔法使い(マギステル・マギ) 第四夜

銀ユリヤさん

第四夜 吸血鬼と破壊者

2012-03-19 15:35:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2327   閲覧ユーザー数:2281

 

 『一難去って又一難』て言葉はこの国の言葉だっただろうか?

でも今はどうでもいい話だ。目下の問題はさっきまで飛んでいて、今は僕の少し先に立っている2人の女の子だ。しかも金髪の少女からは殺気が思いっきり出ている。

とりあえず彼女の気を逆撫で無いような会話をしようとした。

 

 

 「えっと…こんばんは…いい夜ですね」

 

 

だが彼女はさっきよりも顔が冷ややかのなり

 

 

 「あぁそうだな侵入者、貴様の命日にはもったいない月夜だ。」

 

 

・・・逆効果だったらしい。って僕、殺される前提ですか!?

すると彼女は懐からフラスコらしきものを取り出し、投げつけた。

 

 

 「『魔法の射手・氷の5矢』!」    

 

 

すると空中でフラスコが割れ中の液体が5つに分かれ、矢のようになり迫ってきた。

 

 

 「っく!」

 

 

とっさに後ろへ避け、さっきまで僕がいた所に3本の矢が当たりそこが凍りついた。

だが残りの2本が方向を変え、こっちに向かってきた。

 

 

 (つ、追尾式!?このままじゃ!)

 

 

いくら小刻みに避けても追ってくる氷の矢。避けていたら橋の柱まで下がっていた。

タイミングを見計らって矢を柱にぶつけて、柱の陰に隠れる事に成功した。

 

 

 「どうした!そんなんで隠れているつもりか!?」

 

 

遠くから彼女の声が聞こえる。どうやら彼女は僕が侵入者だと思い込んでいるらしい(確かに不審者に違いは無いけど)。とにかく話ができる、対等な状態にしなくては。

 

 

 「あ…あの……」

 

 

不意に背中から声が聞こえた、さっきから背負っていた少女だった。

・・・すっかり忘れていた・・・

僕は柱を背もたれにするように下ろした。

 

 

 「少しここで待っていてください。」

 

 

そう言うと柱の陰から出た。金髪の少女達は、さっきと変わらぬ場所に立っていた。

とにかく話をしようと声をかけようとした。

 

 

 「あ…あの、話を「なんだ、意味の無い命乞いでもするのか?」聞いてくれないようですね…ハァ」

 

 

しょうがないので最終手段を使う事にした。

僕は左の手袋を外し、左手をさらして臨時体制に移った。

そうすると彼女は不敵に笑って

 

 

 「フフフ、やっとヤル気になったか。いいだろ、遊んでやる。」

 

 「マスターがその気になってしまったので、ご了承ください。」

 

 

隣にいた緑の髪の子が謝る様に頭を下げていた。

・・・なんだか悪い気がしてきた。

しばらくの沈黙の中、金髪の子が動いた

 

 

 「いけっ茶々丸!」

 

 「はい、マスター。行きます」

 

 

って他人任せですか!!?

って思っていたら、一気に接近してきた緑髪の子が、振りかぶった腕を僕に向かって振り払ってきた。

 

 

 (は…速い!)

 

 

横に振り払った腕を何とか避け、すばやく距離をとる。一目で相当な実力者なのが分かる。

出し惜しみしないほうが得策だな。

僕は左手を後ろに伸ばし、そのまま発動させた。

 

 

 「イノセンス、発動!」

 

 「「っな!?」」

 

 

二人が発動した左腕見て、驚愕している。その一瞬をついて回すように振り下ろし、茶々丸と呼ばれた子に振り下ろした。轟音と共にあたりに煙が舞った。

 

 

 「ちゃ、茶々丸!!」

 

 

金髪の子が驚いた様子で叫んでいる。少し力を入れすぎたのか、思ったより威力がすごかった。だが、別に殺してはいない。

地面にあたった時にまった粉塵が晴れていく。粉塵が晴れていくとそこには、左手に埋まり中指の爪を突き立てられた状態の茶々丸がいた。

 

 

 「動かないでください。僕はここの責任者に会いに来たんですから。」

 

 「申し訳ありません、マスター」

 

 「……クッ………」

 

 

 とは言え、向こうから見ればこっちは侵入者で、どう考えても悪者だ。まったくどうしてこんな事になったんだろう。そもそも僕はいつの間にか此処に来ていて、今は柱の所に居る彼女を連れてきて、ついでにここの責任者と話が出来たらなと思っただけなのに。

どう考えても不幸過ぎるでしょ。よくよく考えると今までにも似た感じのことはあった、特に師匠に出会って修行してた頃は………………

……借金とか借金とか借金とか女性とか借金とか借金とか………………

そうだよ、僕がこんな目に会っている『…い……』のも、全部師匠のせいなんだ!!

あの馬鹿師匠のせいで今までいい事なんか無かったし『…お…い……』借金返済とかでゆっくりする暇も無かった気がする。一つの借金が終わったらまた次の借金が出てくるし!!………次会った時は絶対『おい!!』に!?

 

 

 「貴様、人の話を聞いているのか!!」

 

 「っは!……すいません。聞いてませんでした。」

 

 

どうやら何時の間にか思考の渦に飲まれていたらしい。

…主に師匠への怨み辛みで……

 

 

 「まったく。さっき此処の責任者から連絡があってお前に会いたいそうだ。今から連れて行くから早く茶々丸を放せ。」

 

「へ、茶々……あ!」

 

 

僕は、今までずっと茶々丸という子を捕まえていたままだった。僕はあわてて腕を放し、イノセンスを解除した。

 

 

 「す、すいません。気が付かなくって…」

 

 「いえ、敵を捕まえておいて無意識での力加減は難しいものかと思われます。その証拠に私のフレームに傷一つ付いていません。」

 

 

 な、なんて良い子なんだ。敵の僕にそんな気遣いを……恨みの一言が有っても良い筈なのに…無償に罪悪感が!……でもフレームって?

 そうしている内に金髪の子がこちらに背を向けて歩き出していた。僕たちを置いて。

 

 

 「興が削がれたんだ。さっさと貴様をジジイのところに送って帰りたいんだ。さっさと来い!」

 

 「あ、ハイ!ってそうだ!」

 

 

短い間に色々在り過ぎて忘れる所だった。僕は柱の影に置いて来た少女の所に戻って来た。

すると彼女は一目で見てわかる位唖然としていた。

 

 

 「あの……大丈夫ですか?まさか、また痛み出したんですか!?」

 

 「へっ…あっ……へっ平気です………」

 

 

そう言ってくれたので少し安心し、しゃがんで背を向けた。すると目の前に緑髪の子が立っていた。

 

 

 「あの、桜咲さんはどこか怪我を為されているのですか?」

 

 (サクラザキ?あ、この子の名前か)「えぇ…足を痛めたらしくて。」

 

 「でしたら、私が変わりに背負いますので、あなたはマスターに付いて行って下さい。余り待たせると、マスターが不機嫌になるので。」

 

 「え!?でっでも 「オイ!何をしている。さっさと来い!!」 はっハイ!それじゃお願いします。」

 

 

 かしこまりました。 と言う声を背に僕は金髪の子に付いて行った。

 

 

 

 

 

目的地についた時、あんな光景を目にするとは思いもせずに………

 


 
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