No.391874

演算娘と転生オリ主多数オンライン腐女子ゲーな世界

朽葉 周さん

某SFチート系多重トリッパーな少女(?)オリ主が、休暇と称して腐女子向けギャルゲ世界(オリ主大量)に落とされる話。
――恋、愛?

2012-03-15 16:32:06 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3135   閲覧ユーザー数:2900

 
 

――勘弁して欲しい。

 

代行に依頼されて、久しぶりに平凡な世界へのトリップという事に成った。

多重転生トリッパーである私は、幾多の世界を繰り返す事で、徐々に力を蓄え続けるというタイプのトリッパーだ。

利点として、ご都合主義系の神から与えられた能力ではないため、割と自由が聞く。

不利点としては、スタート時には完全に一般人でしかない、と言う点か。

私の場合はとあるSF系世界でその世界の中枢とも言える力を手にして、物語を開放した後、その力を持って気ままなトリップを行っていたのだ。

が、そんな私に目を付けた存在がいた。それが、代行殿だ。

代行殿は文字通り、神(筆者)の代行。使徒とか天使とか、つまり作者代理と言うことだ。

――何かメタな電波が混じった。検閲されている。

なんでも、代行はその昔、ご都合主義系のトリッパーを大量生産しての枝世界介入を実行し、一部……というか一人の例外を除き、その大半を見事に破綻させてしまったらしい。

その結果代行はご都合主義系トリッパーの生産を取りやめ、スリッパー――偶発的転生、ないし偶発的迷い込み系の人格をスカウトし、それを枝世界に送り込む事で物語を開放するという手法に切り替えたのだとか。

私の場合はそのスカウトの一号なのだとか。

そもそも幾当ても無く各世界を放浪していた私にとって、一つ上の視点からの任務型式での介入というのは少し興味を引いた。

まぁ良かろうと容易く受け入れてしまったのだが――。

スカウト1号というのが災いした。

私はSF系出身だというのに、何故か連中は私をSF系ではなくジャンル問わず介入させた。

紅○の徒と殺し合いする羽目に陥ったときは本気で泣き掛けた。オル○ン・エクストラクターとゴーストをスイーパーする世界で目覚めた霊能力でなんとか撃退できたが……。

とりあえず、最近は一人後輩をスカウトしたので、私に割り当てられるタスクが減った。

おかげで今回、半ば休暇という扱いで、平和な世界にトリップすることとなったのだ。

 

……が。

 

「アツシくん、屋上で一緒にご飯食べない?」「あ、明日ちょっとアタシに付き合え!」「そんな、無理な笑顔なんてしなくていいんだよ?」「うん、タクヤくんは笑顔が似合うね!!」「会長、一人で無理しないでください。私も、皆もいます!」「私の前では本当の顔をしても大丈夫ですよ?」

とまぁ、こんな感じの会話と言うか、なんというか。フラグ建設に必死な自称ヒロイン達の泥沼合戦が繰り広げられているのだ。

 

 

事の起こりは、この世界が腐女子ゲーの世界に私が放り込まれた事から始まる。

私の送り込まれる世界と言うのは、大抵何等かのエラーが存在するか、暴虐を振るう転生者を粛清するだとか、むしろ私が原作を破壊せねばならないだとか、世界にもよるが色々な課題が存在する。

今回のような休暇トリップの場合はそういう課題は免除されるのだが、だからといって何の問題も無い世界にトリップ出来るわけではない。あくまで代行殿の裁量の範囲内でのトリップなのだ。

で、私が投げ込まれたこの腐女子ゲー世界。何がおかしいかというと、どうも多重オリ主トリッパーな世界らしい。

最初、用意された戸籍やらを確認して、指定された高校に入学して。

舞台の上で話す生徒会長が如何視ても耽美系とか言うやつだったのを確認し、「あ、腐女子ゲーか」と納得し。

そうして配属されたクラスで、思わず頭を抱えた。

何せ、クラスの7割が狙いすぎな美少女。残り三割は各種イケメンという有様だ。

それも七割の女子は、その6割が汎用茶髪美少女、2割がピンク髪、1割が青髪、残り一割がその他と言ったような有様だ。

さっと調べた所、コイツラ全員転生者だった。

つまり、リアル逆ハーな世界を望んだ多数の転生者が、一つの世界に押し込められたと、そんな世界なのだ此処は。

最初に気付いたのは誰だったのか。ヒロインたる自分が優遇される筈の世界で、自分に対する補正があまり効果を見せないという事に気付いたのは。

徐々にその事に気付いた彼女達の取った行動は、当に血で血を洗う醜い争奪戦。美形男子達に声を掛けては必死にフラグを立てようとし、次から次へと別人へ声を掛けていく。一人をしっかりと狙えば落とせそうな気もするのだが、彼女達はそうしない。猛禽類の如く瞠目する彼女達の瞳を視るに、こう、絶対にハーレムルートで色男を侍らせる!! という邪なオーラがムンムンと。気付いたときは思わず苦笑して、そのまま頬が引きつった。

何せ、このクラス、私と数人を除いた女子は全員同じ目をしているのだ。

そんな血なまぐさい戦場に足を突っ込みたくないと、前髪で顔を隠して一番後ろの窓際の席を陣取る。それが功を奏したのか、幸い私は彼女等の争奪戦には加わらずに済んだ。というか加わりたくない。

 

然し、可哀想なのは元々のこの世界の登場人物たちだ。

哀れ原作主人公と思しき少女。何せ周りが男を狙う腐女子ばかりだ。きっと原作で見せたのであろう快活な笑顔は、周りの腐女子にしてみれば男を狙う敵以外のなんでもない。早々に全体から攻撃を喰らいハブられ孤立した。余りにも哀れだったので思わず私が声を掛けてしまったほど、連中の手際の見事な事。さすが元OLだとかそんなのばっかりだけある。年下イジメンナヨカッコワルイ。

で、原作主人公の友人キャラと思しき少女。彼女は逆に周囲からの引く手数多。四方八方から声を掛けられているが、引きつるを通り越して顔面が痙攣している。

何せ痛々しい発言を繰り返す彼女等だが、その全てが美少女なのだ。多分特典だろうけど。連中にしてみれば、彼女は「友人キャラ」でしかなく、自らの引き立て役、利用価値の高いアクセサリーを手に入れようとしているだけなのだ。

洒落にならないレベルのストレスを受け続けた彼女は、結果心を病み、保健室の住人と化した。哀れ。

それでも彼女に声を掛けようとする腐女子トリッパーがいたので、流石に介入してしまったが。哀れ。

本来ならクラスの半数を占める大量のモブたちがいたはずなのだが、彼彼女らは一つ下のクラスへとずれ込み、平和な日常を送っている。何気に彼等が一番ラッキーだろう。

対する攻略キャラの男子諸君。

本来なら男子モブに囲まれて、ある程度は普通の学生生活をエンジョイできていた筈の彼等だが、このクラスに残された男子は全員が攻略キャラ。つまりは物凄く癖のあるキャラクターばかりなのだ。

そういった連中と言うのは、大抵の場合がソリが合わない。連中の場合も見事にソリが合わなかったらしい。

攻略男子諸君は其々に上手く交友を結べず、結果其々が各個人として逆ハー狙いの腐女子相手に奮戦する羽目となってしまっているのだ。哀れ。

でも、堪忍して欲しいのは私も同じだ。

私も女性暦は長いとは言え、オリジナルのパーソナリティーは男だったし、女としても曾孫の顔を拝んだこともあるようなある意味枯れた人間だ。

今さらこう、(性的な)欲望溢れる戦場に投げ込まれると言うのは、精神的に辛い。

 

 

まぁ、とりあえず。

そうした連中に囲まれて、「コレも青春か」なんて呟きながら、久々の高校生活を楽し――たのし――たの――っ!! た・の・し・ん・で!!

……なにか、休暇の筈なのに、ストレスばっかり溜まってる気がする。

げふん。この生活を続けていたのだが。どうも、周囲の(腐女子)連中、私の事を友人位置のモブだと認識したらしい。

私を原作ヒロインから引き離し、自分の陣営に引き込もうと行動しだしたのだ。

そうそう、最近になっての話だが、腐女子たちは幾つかの派閥に分かれた。ねらい目以外をわけあう、という名目で協力しているらしいが、アレは多分土壇場で普通に裏切る。

で、友人ポジションその2らしき存在である私を自陣に引き込む事で、自陣の優位性を少しでも確保しよう、と。

……く、話に関わらないように遠巻きに逃げていたのが裏目に出たか。

自分で言うのも何だが、私は結構美人だと思う。身長は170と少し高めだが、肩の辺りで束ねた長髪と黒髪、ある程度引き締まった筋肉と、巨とはいえないが、確りと自己主張する胸も持っている。どこぞのエロゲの攻略ヒロインその3くらいのレベルはある、と思う。

だからだろうか。周囲の腐女子は当初、私の事を同じく転生者の一人(クーデレ系)と認識していたらしい。攻略男子達に気がないと言う様子はポーズで、それを気にした彼等が声を掛けてくるのを待っているのだ……と。

正直、その話を聞いたとき、それを口にした腐女子を殴り殺したくなった私は間違ってないと思う。

とりあえず、当初は敵だと判断されていたのに、争奪戦に入ってもいまだに介入して来ず、転生者だとすれば如何考えても機を逸している……つまり転生者ではなくモブだ、という考えらしい。

気分は当に「ブチ殺すぞ人間」という有様であったが、此処で私が暴れるのも拙い。

物語など当の昔に破綻しているが、だからと言って世界を破綻させるのは拙い。

――ふぅ。

アクセサリーの如く私を周囲に侍らそうと考える腐女子ども。物凄く腹が立ったので、そいつらのヒロイン補正を無効化してやった。

私のような、ある程度の回数以上トリップを繰り返している人間であれば、こういうご都合主義系の補正は大抵無効化できる。特に、こういう超ご都合主義を狙うトリッパー共の補正と言うのは、かなり無理矢理になっている。強欲トリッパーと言うのは、原作ヒロインが出会い→イベント→イベント→イベント→フラグイベントと五工程かけて進むイベントを、出会い→フラグイベントと、二工程に無理矢理縮めるのだ。こんなもの、私が少し手を入れれば簡単に破綻させられるのは理解してもらえるだろう。

逆に、原作キャラの主人候補正とかは、この工程が確りしている所為で中々妨害しにくいのだが……。

とりあえず、そうして私を自陣営に引き込もうとした馬鹿どもは見事に自滅していった。

何せ相手は只でさえ補正の効き辛い原作の攻略男子なのだ。補正があれば可愛らしく見える魅せミスでも、補正が無ければ只の間抜け。もう無表情キャラをやっている私が思わず爆笑しかけたのだからたまらない。

ザマァ、というやつである。

 

 

 

さて、そんなで馬鹿どもを眺めながら、日常を送っている中でのことだ。

「一緒に生徒会はいらない?」

原作ヒロインこと二条綾乃が、突如としてそんなことを言い出した。

「――は?」

「生徒会。この前ちょっと生徒会のお手伝いしたんだけど、そうしたら生徒会の雑務にスカウトされちゃったんだ」

「――ほぅ」

所謂生徒会フラグと言うやつか。この腐女子たちの妨害の中、良くぞそんな王道フラグを建てられた物だと、思わず感心してしまった。

――いや、もしかして、腐女子共が足の引っ張り合いをしていたからこそ、するっと綾乃がフラグを立てられたのかもしれないが。

「でね、今生徒会の雑務の枠がもう少し空いてるんだって」

なんでも、書類整理なんかの雑用に綾乃がスカウトされ、同時に情報処理系の雑務も探しているのだとか。

で、スカウトされた綾乃だが、丁度私がPCに矢鱈と強いことを思い出したらしく、私の事を生徒会に提起、そのまま綾乃が私にスカウトをかけてきた、という話の流れらしい。

「ふむ――なるほど」

「うん、それで、どうせなら友達のほうがよかったし、それで、ね?」

そういって此方を見上げるようにして、親に媚びる子犬のような目でこちらを見上げる綾乃。流石はヒロイン格。母性本能を物凄く擽られる。

だが、駄菓子菓子。ここで綾乃の誘いに頷いてしまうと言うのは、つまり私が晴れて腐女子達の攻撃対象に登録されるという事だ。

折角の休暇だぞ? あんな馬鹿共の相手をして消費したくないよ私は。

「(ウルウルウルウルウル)」

「ぬ、ぅ」

思わず目元を顰めてしまう。そんな私を潤んだ眼で見つめてくる綾乃。

――結局、私が折れたのはそれから20分ほど後のことだ。

「然し――綾乃も成長したか」

「え、なんで?」

「教室ではなく、屋上でそれを話す――学んだな」

「――あ、あはははは」

教室で言えば、またあの腐れ女子どもの興味を引いて、また阿鼻叫喚の地獄が顕現するのは眼に見えている。その辺りを理解して、こうして私との屋上での食事にそれを話したのだろう。どうも原作では屋上で何等かのイベントが起こると言うのは殆ど無かったらしく、滅多にあの腐れどもが訪れることは無い。

学校生活開始直後の綾乃であれば、何処であろうと元気にさっきの様な相談をしてきていたのだろうが、流石に腐れどもに絡まれるのは厭だったのだろう。こうして屋上で私と二人のタイミングで話を持ち出した、という事は。

――あれ? もしかしてこれ、成長じゃなくて、汚れたって言わない?

「如何したの?」

「――否。なんでもない」

まぁ、腐れどもよりは、綾乃のほうがうん千倍マシだ。綾乃のヨゴレなんぞ、大人なら誰しも被る程度のヨゴレなのだから。

「それじゃ、今日の放課後は生徒会へゴーだよ!!」

「ん」

とりあえず、若干の憂鬱を胸のうちに抱えつつ、昼食として用意したお握りを平らげるのだった。

 

 

 
 

 
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