No.367346

ロウきゅーぶ! 真帆アフター ~Shiny-Frappe・真夏に咲く大輪の花~11

羅月さん

気合いと元気があれば合宿先から帰った後でも更新出来るんだと言う事を証明したかったのさw
ちょっぴりいじらしいまほまほを意識してみました。

2012-01-23 10:57:41 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:964   閲覧ユーザー数:954

 「お、すばるんじゃないか」

 「真帆……意外だな」

 

 町の中心にそびえ立ちその加護により町中を守護する神の社。慣れない浴衣にパカパカ音のする下駄を履きならし、暗闇を裂くほどに急いでこの待ち合わせの場所に来てみれば、そこに待ち受けていたのは我らが名コーチ、長谷川昴。男用の浴衣を粋に着こなし、爽やかな汗が髪を濡らしていた。

 

 今日はこの神社一帯を中心に行われる慧心の祭りの日。硯谷のメンバーも誘ったが、彼女らはそちらの祭りに参加しており来られないとのことだった。

 

 少し遅れての到着だったのだが、目を丸くして驚いているすばるん。何というか、これは怒るべきところなのだろうか。

 

 「意外ってなんだよ、私がもっと遅れると思ったってことか?」

 「いやいや……真帆が待ち合わせの10分も前に来るなんて、柄じゃないなと思って」

 

 10分前っ!? と驚くと同時に携帯を見る。メールに記されていた時間はやはり18:45(ちなみにこれを回したのは几帳面なサキである。6;45はもう昼の時点では遙か過去だっての)だった。

 

 「もしかしてすばるん、七時集合って言われてた?」

 「ん、違うのか? だから15分前に着くように来たんだけど」

 

 これはどういうことなのか。考えられるのは自分にだけ早い時間を伝えてたのか……うん、それだろうな。何か私が遅れること前提で話が進んでたのがむかつくけど。

 

 日が落ちて間もない丘に涼しい風が吹く。ほのかトウモロコシの香ばしい香りと綿菓子の甘ったるい匂いが共に駆け抜け、祭りの中であることを強く印象づけられる。

 

 「そっか、じゃあ七時まで暇だな~」

 「ははっ、そうだな……真帆」

 「んっ?」

 「その……浴衣、似合ってる」

 

 少し恥ずかしそうに言うすばるんが何だか不自然で、気恥ずかしさよりも先に笑みがこぼれる。

 

 「んだよ、今更恥ずかしがるなっての。あの頃は自覚なしにあおいっちやナツヒが唖然とする言葉吐きまくってたくせに」

 「い、いやあれは無自覚だからであって……何というか、その……」

 「ま、それくらい私が可愛く魅力的になったということで」

 「それは無いな」

 「即答かよっ!!?」

 

 キリッ、と言う擬音がもっともしっくり来る程のドヤ顔に、オトナゲなく詰め寄ってしまう。結構詰め寄って……途中で止めた。

 

 「そういやすばるんってさぁ……」

 「ん、どした?」

 「絶対的ロリコンなのか? それとも相対的なロリコンなのか?」

 「ちょっと待て、ロリコン前提で話が進んでないか?」

 「だってそうだろうよ。ナツヒが常日頃から言ってたぞその辺。ただまあ、さっきのリアクションからして……さてはすばるん、絶対的ロリコンだな!!?」

 「だから違うって!!!」

 

 必死に弁明するすばるんが妙に可愛らしい。だからみーたんはあんなにも執拗にすばるんを虐げるんだな~……

 

 「……なあ、すばるん」

 「ん、どうした?」

 「あの時さ……小学生と高校生ってすっごい遠く感じたんだ。だけど……4歳差って、こんなにも近い」

 「……考えたこともなかったけど、そうだな」

 

 別に特別すばるんが幼いのでもないし、私が急速に大人になったのでも無い。ただ同じ時を刻んだだけ。

 

 結局社会の枠に縛られて勝手に距離を作っていただけだったけれど、そんな物は今となっては些細なこと。別にすばるんをロリコンだの何だのと批判するつもりはさらさら無いし、世間もそのような目で見ることはないだろう。

 

 今は先生と教え子が結婚する時代だしな~……と、話が逸れた。

 

 「すばるん、アメリカ行ってどうだった?」

 「いや、もう全然。ステータス的にはまるで歯が立たないし、試合の組み立て方とかも俺が知らない引き出しをたくさんみんな持っててさ。改めて自分の未熟さを思い知らされたよ」

 「彼女とか出来た?」

 「そう言うの、スゴくガキっぽい質問な気がするんだが……」

 「バカだな~すばるん、ちゃんと統計も出てんだぜ。『知人の恋愛事情に敏感な女性100人に聞きました、かつての男友達に彼女が出来てるか気になる?』の質問にはほぼ100%の回答率で気になるってのg」

 「ただの出来レースじゃねぇか!!!」

 

 にゃはは、とみーたんぽく笑う(すばるんが青ざめて拒否反応を示したのを見逃さなかった、いつもお疲れ様です)と、山の頂より荘厳な鐘の音が鳴り響いた。七時か……みんな遅いな、サキなんかはとっくに来てそうなもんだけど。

 

 「にしても遅いな……っと、ごめんめっちゃ電話来てた」

 「あ、私もだ」

 

 これは非常にまずい。二人の代表としてすばるんがサキに電話をかけてくれた。

 

 「あ、もしもしサキ? ごめんっ着信気付かなくて……」

 『いえ、少し予定に変更がありまして……マホもそちらですか?』

 「ああ、うん……俺達はどうすればいい?」

 『長谷川さんのお母さんが営業してる屋台にみんな居ますので、そこに来ていただけますか?』

 「わかった、場所もだいたいわかってるし……すぐいく」

 

 会話の内容を傍から聞いていた私は、すばるんが色々回りくどく説明する前に『さっさと行こうぜ』で切り捨て、草を刈り込んだだけのあぜ道を歩いていく。

 

 下駄の音がかっぽかっぽと響き小気味良く、独特のリズムに歩くのも楽しくなる。

 

 「……あんまり聞きたくないけどさ、いつ頃アメリカに帰るんだ?」

 「……ごめん、明日の朝に飛行機で帰らなきゃいけないんだ」

 「そっか……忙しいんだな、日本代表は」

 「まあ俺はまだまだ下っ端だからな、色々やらないといけないことも多くて」

 「まあいいさ……また、ちゃんと戻ってきてくれるなら。私はいつまでも待ってるよ」

 

 今回は自然と言えた。淋しさは以前よりも大きいけれど、それよりも次また会える喜びを考えて妥協することにしたのだ。


 
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