No.367030

公孫賛の姉貴~二~

ノワールさん

・『一刀が白蓮と桃香と共に盧植先生の下で学び、姉弟分になった外史』です。元ネタはSDガンダム三国伝で劉備が、兄弟子の公孫賛を『公孫賛の兄貴』と呼んでいる所から。

・白蓮のキャラは、無印とPS2版夢想の公孫賛おまけシナリオが元ネタです。

・注意:この外史では、恋姫本編では主人公を理不尽な目に遭わせるのに何故か制作スタッフに優遇されているツンキャラ達がその報いを受けてます。

2012-01-22 20:52:01 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:4450   閲覧ユーザー数:3822

『一刀、女の体の事なら私達が教えてやるよ…こ、これも姉貴分の務めだからな…』

『わたし達の事、ご主人様の好きにしても良いんだよ~v 唇も、おっぱいも、お尻も…ぜ~んぶ、ね♪』

『あ、姉貴…桃香…』

『こ、こういう時に姉貴は止めてくれよな…』

『わたしは、お姉ちゃんでも良いよ~v こういう時位は甘えて欲しいな~』

 

 

 

「あの時は艶本(えんぽん)で勉強した甲斐があったな…」

「うんうん、あの時は皆初めてだったよね~」

「俺、あの日の夜の事は絶対忘れないよ…」

「わたしもだよ、ご主人様…」

「ああ、私もだ。あの頃は良かったな……桃香と二人で交代で済んだし」

「ご主人様、もて過ぎだもんねぇ……回数だけなら、わたし達がずっと多いけど」

「今じゃそれだけが自慢かな……今思えば、あの時に桃香が第一夫人で、私が第二夫人にする約束しておいて正解だったな…」

「うう、すみません…」

 

「でも良いじゃない、あの頃から変わらず愛してくれるんだもん♪」

「そうだな…少なくとも、女に飽きて捨てるような最低な奴じゃないって十分過ぎる程分かったしな」

「あ、ありがとう…二人共…」

 

「あれから、前よりおっぱい大きくなってるしね♪ 愛されている証拠だよv」

「それは嬉しいけど、桃香程じゃないけど肩凝るんだよなぁ…」

「でも、ご主人様に肩揉んで貰えるから気持ち良いでしょ?」

「まぁな。それで気持ち良くなって、そのまま胸も揉ませてしまうけどな…」

「あ、わたしも~。ご主人様、肩揉んでくれてる間もおっぱい見てるからつい…わたしだけ気持ち良いのも、何だか悪い気がするし」

「胸だけで済めば良いがな……そのまま最後までしてしまう事もあるし」

「うんうん、分かっているけど止められなくなるんだよねぇ~」

「は、ははは…」

 

 天の御遣(みつか)い・北郷一刀(ほんごうかずと)と、(しょく)王・劉備(りゅうび)こと桃香(とうか)と、白馬長史(はくばちょうし)公孫賛(こうそんさん)こと白蓮(ぱいれん)…。

 三人は盧植(ろしょく)先生から学問を学んだ仲であり、姉と弟妹(ていまい)のような関係である。

 可愛い弟弟子の為に、文字通り一肌脱いだ姉弟子二人…初めて(ねや)を共にする仲になった時、夫婦になる約束をした事を思い出す。

 

 

 

 

・『公孫賛の姉貴』は三国一の苦労人。

 

「俺の事は、白蓮で良いからな…お義姉様(ねえさま)とか呼ぶな」

「一刀の奴、まるで呼吸するかのように自然に女口説きやがって…いくら言っても、自覚無いんだもんなぁ…」

「桃香の奴も天然過ぎるしな…だから、一刀に姉扱いされないんだろうが」

 

 蜀の太守になっても相変わらずだが…仲間達の為、民達の為に頑張る義弟(おとうと)義妹(いもうと)を支える白蓮。

 太守二人の姉君と言う立場と、何でもそつなくこなす能力で、皆が自然と頼る存在になっていった。

 

 

 

「あれだけ命狙われてるのに無防備な一刀は本当に危なっかしい…常日頃から、服の下に防具でも着けろよな」

「桃香も基本的に無防備だしなぁ…常に護衛を付けておけば、まだ何とかなるだけマシか」

「俺がいくら叱っても脅しても、護衛増やしても、あの馬鹿共はちっとも懲りない…一体どうすれば良いんだ…」

「おかげで一刀の奴、理不尽に苛められるのが好きな変態扱いじゃないか…ただでさえ、幼女趣味扱いされてるってのに」

「奴等の悪辣(あくらつ)極まりない言動は素直になれないだけだの、愛情の裏返しだの、照れ隠しだの言う連中がいるが…俺にはそう思えないんだよ!!」

「一刀に嫌われて、泣きたいなら勝手にしやがれってんだ!! 俺は桃香みたいに、(かば)わないからな!!」

「ああ、騎馬隊(きばたい)を率いる事に専念したい…競馬大会にも出たい…」

 

 しかし、それは仲間の癖に日頃から『一刀を殺そうとする馬鹿共』と『桃香とお近付きになろうとする百合百合しい馬鹿共』の悪辣極まりない言動に頭を悩ませる日々の始まりでもあった…。

 

 

 

「やっと戦乱の時代が終わって、平和になったと思ったのに…うう、静かに穏やかに暮らしたい…」

「しかも、義妹を名乗る奴等が増える一方だし…一刀の奴、今じゃ三国一の種馬呼ばわりじゃないか!」

「その上…一刀を殺そうとする馬鹿や、桃香に手を出そうとする百合百合しい馬鹿も増えやがった…もう、勘弁してくれよ…」

「いっそ、本当に国外追放か死刑に出来たら楽なのに…一刀も桃香も、そんな事望んでいないからなぁ…」

「もし一刀が殺されたら、どんな手を使ってでも全員死刑にしてから、俺も死ぬ覚悟は出来ている…そんな事は、絶対させないがな!!」

「はぁ…盧植先生の下で学んでいた頃が懐かしい…」

 

 しかも……三国同盟成立により、『三国統一皇帝と蜀王の姉君』となった白蓮の苦労は、更に増える事になってしまった…。

 

 

 

「よし! 仮面白馬になって、悪党共を懲らしめるか!」

 

 時々…白い仮面を付けた正義の味方『仮面白馬』を名乗り、街の治安維持に力添えしている。

 これは自分自身のストレス発散の一つになっているので、どんなに仕事が忙しくても止める気は無い。

 何故か、一刀を初めとする『ごく一部』以外には正体がばれないのか不思議と本人も思っているが……細かい事は気にしないようにしている。

 

 

 

 

・もっと頼って、甘えて欲しいの。

 

「ご主人様も、愛紗(あいしゃ)ちゃんも、鈴々(りんりん)ちゃんも白蓮お姉ちゃんにばっかり頼るんだから…ぶぅ」

「わたし、そんなに頼りないかなぁ…?」

「皆して、愛紗ちゃんの方がお姉ちゃんっぽいって言うし…確かに、愛紗ちゃんはしっかり者だけどさぁ」

「ご主人様も、二人っきりの時しかお姉ちゃんって呼んでくれないし…」

 

 白蓮と同じ『姉弟子』なのに…普段は一刀に姉扱いされない事に不満な桃香は、可愛らしく頬を膨らませる。

 ちなみに…桃香の義妹である関羽(かんう)こと愛紗と、張飛(ちょうひ)こと鈴々も同じような状況だ。

 

 

 

「そりゃ、わたしは白蓮お姉ちゃんみたいに何でも出来る訳じゃないけどさぁ…」

「ご主人様を守ってあげられる位に強くも、軍師の皆みたいに賢くもないし…」

「せめて、家事はちゃんと出来るようにならなきゃ…わたし、ご主人様のお嫁さんでもあるんだし」

 

 白蓮はこれといった苦手を持たず、戦闘も政治も家事も…何でもそつなくこなせる。

 当の本人は『騎馬以外は器用貧乏なだけ。武力でも軍略でも政務でも一番にはなれない』と言っているが、

 武力も知力もからっきしな桃香にとっては謙遜(けんそん)しているだけにしか思えない…。

 

 

 

「今の所、わたしが『お姉ちゃん』っぽいのって、このおっぱい位なんだよねぇ…でも、わたしよりおっきい人達いるんだよね…」

「せめて、福乳って呼ばれても納得出来るような不思議な力があればなぁ…」

「愛紗ちゃんは、抱き付いても『子供扱いしないで下さい』だし…」

「鈴々ちゃんは甘えてくれてると言うより、羨ましがられてるだけだし…」

「ご主人様は、閨でしか甘えてくれないし…」

 

 『福乳』と呼ばれる豊満な胸の持ち主だが、桃香にそんな力は無い。

 

 

 

「う~ん…悩んでいてもしょうがないか! 今は少しずつでも『頼れるお姉ちゃん』になる為に頑張らなきゃ!」

 

 桃香は『立派な姉』に、そして『立派な王様』になる為に今日も頑張ろうと気合を入れる。

 

 

 

 

・『劉備お姉ちゃん』は怒ると怖い。

 

「はぁ…」

「どうしたの、ご主人様? 何だか元気が無いよ…」

「い、いや…そんな事は…むぐっ」

 

 桃香は一刀の顔を胸で優しく包み込んで抱き締め、頭を撫でて慰める。

 

「お~、よしよし…また、誰かに(いじ)められたの?」

「いつもの事だよ…仲良くしようとしても嫌われまくって、悪口言われまくったり、殺されそうになっただけ」

「あ…ごめんね、わたしが皆平等に愛してなんて言ったから…」

「桃香のせいじゃないよ」

「ご主人様…辛い時は無理しないで、わたしの胸で泣いて良いんだよ…」

「桃香…」

 

 柔らかく温かい感触と、谷間から(ただよ)う甘い香りが一刀の心を癒して行く。

 

「どう? 元気出た?」

「う、うん…」

 

 見上げると、桃香は慈愛(じあい)と母性溢れる優しい笑顔で見つめて来る。

 

「じゃあ、お姉ちゃんにもっと甘えて欲しいな~…か・ず・と・さ・まv」

「うん、お姉ちゃん…じゃあ、遠慮無く」

「えへへ~♪ あ、辛い時じゃなくても甘えて良いからね~v」

「あ、うん…」

 

 一刀は桃香に、せめて二人きりの時は名前で呼んで欲しいと頼んでいる。

 だから、二人きりの時に一刀の名前を呼ぶ時は…自然と閨への『お誘い』となる事が多い。

 

 

 

「すぅ、すぅ…えへへ…ごしゅじんさまぁ…v」

「気持ち良さそうに寝てる…可愛い寝顔だなぁ」

 

 一刀と愛し合って満足したのか、幸せそうな顔で眠る桃香。

 

「ごしゅじんさま、抱っこしてあげるねぇ~♪ わたし、強くなったでしょ~?」

(いつも言っているもんなぁ…俺を、おんぶや抱っこしたいって)

「あん、ごしゅじんさまったらぁ…v おんぶしてあげると、すぐおっぱい揉むんだからぁ♪ おしりに、かたぁいのが当たってるよぉ…v」

(桃香におんぶされたら……その夢と同じ事しそう)

「ごしゅじんさまぁ~v ほぉら、おっぱいの時間でちゅよ~♪ いっぱい飲んでね~」

(俺、赤ちゃん扱い!? そう言えば『一刀様も赤ちゃんになりたい?』って聞かれたっけ…)

 

 聞いている方が恥ずかしくなる寝言だが…それでも、本人は嬉しそうだ。

 一刀はそんな桃香を愛おしく思い、優しく抱き締める。

 二人きりの時はこんな感じで、とても甘々な雰囲気で過ごす。

 

 

 

 

 

 そう、二人きりの時『だけ』なら何も問題は無いのだが…。

 

 

 

 

 

「ねぇ…どうして、ご主人様を苛めたの? 納得出来る理由を教えて欲しいんだけど?」

 

 一刀を理不尽な目に遭わせた馬鹿共に見せる時の桃香の顔は…普段からは想像も付かない厳しい目付き、目元が前髪で隠れて見えない、全くの無表情、笑顔でも目が全く笑っていない等々がある。

 彼女の首の動かし方と視線と表情から…首が百八十度『くるうり』と回ったように思えたとか。

 ちなみに、悪辣極まりない馬鹿共を姓と名と(あざな)では呼ぶが…真名(まな)では呼ばなかったりもする。

 

 

 

「そんなに力が有り余ってるなら…(れん)ちゃんに、華雄(かゆう)さんに、貂蝉(ちょうせん)さんに、卑弥呼(ひみこ)さん辺りと鍛練したら?」

「自分とは比べ物にならない位強い人と模擬戦してみたら、怪我させられた時のご主人様が一体どんな気持ちだったか分かると思うんだけど?」

「折角の武力を『弱い者苛め』や『暴力』にしか使えない人って最低だと思うの…」

「はぁ…だから、脳筋って呼ばれるんじゃないかな…」

 

 武官達や、武力持ちだった場合…武力を持つ者なら、名前を聞いただけで恐怖する強者四人との『鍛練』をさせたりする。

 

 

 

「ご主人様がする予定だった仕事、全部やって貰うからね」

「どんなに賢くても、悪い事と悪口を考える事にしか使えないんじゃ意味無いよね…」

「天才と馬鹿は紙一重って、本当だったんだね…」

「わたしなんかより、と~っても賢い『軍師』なのに……どうして、こんな簡単な事が分からないのかな?」

 

 文官達や、武力を持たない物達の場合…一刀がする予定だった仕事を全部押し付けたりする。

 

 

 

「この程度の罰で済むんだから、ご主人様に感謝して欲しいな…」

「やきもちも多少なら可愛いと思うけど、度が過ぎると理不尽なだけだよね…」

「照れ隠しで怪我させるなんて…褒められたら素直に喜べば良いのに…はぁ」

 

「へぇ…ご主人様を苛めたら、貴女(あなた)の好きな人って喜んでくれるんだ~? わたしだったら、全然嬉しくないなぁ…」

「主君の為? 忠義? 貴女の主君にとって大切な人を、傷付けたり殺そうとするのって『裏切り』って言うんじゃないのかなぁ?」

「もし貴女の大切な人が理不尽な理由で酷い目に遭ったら、どう思う? 今のわたしの気持ち、分かってくれると思うんだけどなぁ…?」

 

「当分、ご主人様の(ねや)に呼ばれると思わないでね…」

「あれ? ご主人様の事が大嫌いなんでしょ? だったら…別に閨で一緒に過ごせなくても、罰でも何でもないよね?」

 

「男性の身体に興味があるだけなら、別にご主人様じゃなくても良いよね?」

「ご主人様が男性だから…たったそれだけの理由で嫌うなんて酷い…それじゃあ、一生仲良くなんて出来ないじゃないですか」

「そんなに百合百合しいのが好きなら、勝手にすれば良いのに…ご主人様を巻き込まないでくれませんか?」

 

「ご主人様はただ、貴女と仲良くしたいだけなのに…おかしいな、言葉が通じないのかな?」

「どうしてこんな酷い事が出来るの? 信じられない…いい加減にしないと、ご主人様に嫌われるよ?」

「この大陸では恩を施された者は、謝儀(しゃぎ)をする事で自らの器量(きりょう)(あらわ)すんだよ…恩知らずさん?」

「折角、三国同盟で皆仲良く平和に暮らせると思ったのに…どうして、こんな酷い事が出来るんですか?」

 

 普段は一刀を慰めつつも『素直になれないだけだから』『本当は、ご主人様の事を嫌ってなんかいないよ』等々と、ツンツンした連中をフォローする桃香。

 だが、物事には限度と言う物がある…そんな悪辣極まりない態度を懲りずにやらかす連中には、流石に怒る。

 彼女の『言葉の刃』は馬鹿共の心を容赦無く斬り、刺し、突き、(えぐ)る…。

 

 

 

(こ、怖い…桃香さん、物凄く怒ってらっしゃる…)

(でも下手に庇ったりしたら『ご主人様は理不尽に苛められるのが好きな変態さんなの?』とか言われそう…)

(俺を優しく抱き締めて頭を撫でてくれている手と、顔を包み込んでくれている胸が…俺を窒息させる凶器に変わりそうで怖い…)

(顔を見上げたら咄嗟に笑顔を向けてくれるんだろうけど、かえって怖いと思ってしまう…)

「ご主人様、こんなに(おび)えて可哀想…すぐお部屋に連れて行ってあげるからね~」

「う、うん…(こ、これ以上桃香を怒らせないようにしよう…)」

 

 一刀を抱き締めたまま、馬鹿共に罰を与える事もある…その時の彼女の怒りが伝わって来るので、彼は心底怖いと思ってしまう。

 怖い事を考えてしまい、桃香に抱き付く一刀…彼女は、彼が自分に怯えているとは全く思っていない。

 

 

 

「と、桃香…(良かった、今の所は怒りが消えてる…)」

「もうご主人様を苛める人はいないから、安心してね~♪」

「こ、怖かった…(怒った桃香が一番怖かったけど…)」

「もう大丈夫だよ…今夜は、わたしが慰めてあげるからね…」

「んっ…んむっ…」

「ぷあっ…v」

 

 閨に行き…桃香は一刀を優しく抱き締めて口付けを交わし、そっと押し倒す。

 

「お姉ちゃんにうんと甘えて、元気になってね…一刀様♪」

「う、うん…お姉ちゃん…」

「よしよし、なでなで~♪ 一刀様のしたい事、なぁんでもするよ~v」

「そ、それは嬉しいなぁ…はは…」

 

 一刀は『今夜は桃香の機嫌を直す為に頑張ろう…』と思った…。

 

 

 

 

・龍の逆鱗(げきりん)

 

 翌日…義弟と義妹の代理で、三国の王達による会議に参加した白蓮。

 ()王・曹操(そうそう)こと華琳(かりん)と、

 ()王・孫権(そんけん)こと蓮華(れんふぁ)との会話も…自然と昨日の『龍の逆鱗』の話題になる。

 『龍』は人間に危害を与えることは無いが、喉元の『逆鱗』に触れられる事を非常に嫌う為…触られたら激怒すると言う。

 昨日の桃香は、正に逆鱗に触れられた龍そのものだった…。

 

 

 

「桃香は滅多に怒らないが…本気で怒ると、ある意味一番怖い。特に、一刀絡みだとな…」

(貴女がそれを言うの!?)

(普段は白蓮義姉様がやっている事なのに!?)

 

 白蓮は、普段は優し過ぎる義妹をそう評価している……その発言に、王二人は心の中でツッコむ。

 

「なぁ、お前等もそう思うだろ?」

「え、ええ。桃香にとって一刀は主であり、夫であり、義弟だから…過保護になるのも理解出来るわ」

「は、はい…も、もし私も桃香と同じ立場だったら、同じ事をすると思います…」

「俺も義妹の事言える立場じゃないけど、あいつは特になぁ…」

「あの分かり易過ぎる独占欲と嫉妬が混じった怒り…あの覇気を、普段から出せないものかしらね」

「止めてくれ…想像しただけでぞっとする」

「考えただけで恐ろしいわ…」

 

「私…『魏の皆さんの中で、ご主人様を苛める人達って曹操さんに叱られるのが好きな変態さん達なんですか? だから全然懲りないんですね…』って反論出来ない事を言われた事があるの」

「いや、そこは反論してくれよ!?」

「むしろ、怒る所なんじゃ…?」

「事実だから否定出来なかったのよ…更に『素直になれない乙女心ってだけじゃ、そろそろ庇い切れませんから』って忠告された事も…」

「普段はそう言って、一刀を慰めてるからなぁ…限度ってものがあるって言いたいんだな」

「た、他人事じゃないわね…」

「私自身に対しても、そう言いたいんでしょうね…好きか嫌いかはっきりするように言われる方が、まだ気が楽だわ…」

 

 華琳は桃香の意外な一面に感心すると同時に、厄介な相手だと改めて思った…。

 

 

 

「わ…私は、思春(ししゅん)がしでかした事で療養中の一刀に謝りに行ったら…」

「行ったら?」

「一刀の看病をしていた桃香に『孫権さん、わざわざ呉の王様自ら宣戦布告に来たんですか?』って言われた事が…」

「あ~…あん時は厳重警戒中だったからなぁ」

「貴女の親衛隊長の犯行だものね…」

「ううっ…その上『甘寧(かんねい)さんは来ていないんですね、良かった…あの人の顔見たって、ご主人様が怯えるだけだから』って…」

「私も、似たような事言われた覚えがあるわ…あの()、二重人格か何かなの?」

「いいや、あれが素だ…だから、余計に性質(たち)が悪い」

「あの時は背筋が(こお)り付くかと思ったわ…必死に謝り続けて、ようやく真名で呼んで貰えたんだから」

「あれは我が義妹ながら怖かったな…蓮華は一刀に謝りに来たんだって必死に説得したっけな」

「もし連れて来ていたら、何を言われたか分かった物じゃないわね…」

「あの百倍はきつい事言ってただろうな…」

「止めて!! 想像したくない!!」

 

 蓮華はその時の事を思い出し、底知れぬ恐怖に震え出す…。

 

「まぁとにかく、後は一刀が桃香の機嫌を直してくれるのを待つだけだな…」

「文字通り、龍に絡み付かれているのね…」

「一刀、大丈夫かしら…?」

 

 一刀の身を心配する三人…逆鱗に触れられて怒る龍を(なだ)める事が出来るのは、彼だけなのだ。

 

 

 

「はぁ、はぁ…き、気持ち良かったけど…つ、疲れた…(肉体的にも、精神的にも…)」

「ねぇ、一刀様…昨日の夜は…」

「な、何!? (ま、まだ怒ってらっしゃる!?)」

「すっごく甘えん坊さんで可愛くて、すっごく求めてくれたね~♪ 嬉しいv」

「は、はは…そ、そうだね…と、桃香が可愛過ぎて、色っぽいから、つい…(どうやら、機嫌直ったみたいだ…ホッ)」

「うふふ、ありがと♪ でも、一晩中愛し合っちゃったから疲れちゃったでしょ?」

「う、うん…(桃香の機嫌直す為に必死だったし…)」 

「じゃあ、このまま一緒に寝ちゃおっかv ほぉら、お姉ちゃんのおっぱい枕だよ~♪」

「お、お休み…お姉ちゃん…(ああ…怒った桃香は怖いと思っても、やっぱり気持ち良い…一気に…眠気が…)」

「お休みなさい♪ 良い夢が見られると良いね…v」

 

 一晩中かけて愛し合った事で、昨日の怒りは何処(どこ)へやら…桃香はすっかり上機嫌だ。

 心身共に疲れ切った一刀は…桃香の胸に顔を埋めて枕代わりにして、深い眠りに()いた…。

 

 

 

 

・苦労人同盟。

 

 三国同盟が成立してから、白蓮にはそれぞれの国で似たような立場の友人達が出来た。

 魏の夏侯淵(かこうえん)こと秋蘭(しゅうらん)と、呉の周瑜(しゅうゆ)こと冥琳(めいりん)である。

 

「毎度毎度の事ながら、すまんな白蓮…」

「呉はまだ良い方だ…魏は本当に肩身が狭くてな…」

「お前等、まるで自分がやってしまったかのように落ち込むなよ…」

『はぁ…』

 

 酒場で酒を呑みながら愚痴る三人……まとめ役で、常識人で、苦労人と言う共通点がある。

 

 

 

「俺が説教するだけで終わるんなら、まだ良いさ…桃香まで怒り出したら、もう手が付けられん」

「……よくあれだけ、他人の心をへし折る言葉が出て来るものだな。蓮華様、泣かされっぱなしだぞ…」

「普段が普段だけに、華琳様とは違う恐ろしさがあるな…私も気を付けないとな」

「……俺はもう慣れたけどな」

「一体何故、ああなったんだ…?」

「私も姉者絡みでは人の事を言える立場ではないが、過保護過ぎるんじゃないのか…?」

「…あいつはあいつで、義姉(あね)として一刀と愛紗と鈴々に頼られたいんだよ」

「ああ…それなら納得出来る。普段はどう見ても、北郷の義妹にしか思えんしな」

「だよなぁ…」

 

「妹の立場から言わせて貰えば、お前みたいな義姉がいる北郷と桃香が羨ましいがな」

「か…からかうなよ、秋蘭!」

「からかってなどいないさ、正直な感想だ」

「普段から義姉と呼ぶなと言っている癖に、蓮華様には呼ぶ事を許していたりするしな」

「あ、あれは蓮華が『うちの姉様にも見習って欲しい』なんて泣きながら言うから…」

「ああ、やっぱり雪蓮(しぇれん)が原因か…それは、私もそう思うぞ」

「冥琳まで…」

 

 三人の話題が『姉』や『妹』に変わり、少し雰囲気が明るくなる。

 

 

 

「とにかく、一刀の護衛の件はしっかりしないとな…俺も一日中一緒に行動出来る訳じゃないし」

「その辺りは任せてくれ。魏に戦争の意思は無いと証明しないと、このままでは本当に戦争になりかねないしな…」

「頼むぞ、秋蘭」

「魏からは私、(なぎ)沙和(さわ)真桜(まおう)季衣(きい)流琉(るる)で担当する」

「多いな…良いのか?」

「魏は人材豊富で羨ましい限りだな…」

「最近は北郷と一緒に過ごせる時間が少なくて、華琳様が明らかに不機嫌だからな…これ位はしないとな」

「ああ、それは確かに…」

「お前も大変だな、秋蘭…」

 

「最近は『天の御遣いの血を呉に入れる』というのが、殺すという意味だと誤解されがちだからな…」

「すまん冥琳、俺もそっちの意味だと思いそうになったよ…」

「『血を入れる』と言うのが、余計にそう思わせるな…」

「北郷の護衛の件だが…明命(みんめい)一人に孫呉の存亡(そんぼう)を背負わせる訳にもいかんし、亞莎(あーしぇ)は文官として必要だ。

(さい)殿はすぐ仕事をさぼるし、(のん)小蓮(しゃおれん)様はあまり当てにならん。そこで…」

「そこで?」

「まさか…」

「そのまさかだ、秋蘭。御遣いの血を呉に入れると言いだした張本人で、暇を持て余しているあの大馬鹿にも北郷の護衛をさせようかと思っている」

「良いのか? 隠居したとは言え、孫呉の王だぞ?」

「魏も華琳様に後継者がいれば、それが最適なんだがな……姉者と桂花(けいふぁ)が泣きながら土下座する光景が目に浮かぶようだ」

「こうなったのも、雪蓮の思い付きが原因だ…ちゃんと責任は取らせないとな」

「ありがとうな、冥琳」

「気にするな。最近、蓮華様が北郷と二人きりで会えないと落ち込んでいてな…このままでは政務(せいむ)に支障が出る」

「だろうな…」

「そちらも苦労しているんだな、冥琳…」

 

 このままでは、いつ三国同盟が崩壊してもおかしくない危険な状況…。

 それを防ぐ為にも…魏と呉に戦争の意思は無いと言う証明も兼ねて、一刀の護衛の件を考える三人。

 

 

 

「それにしても、俺達って本当にこんな役回りだな…」

「華琳様が最優先なのは当然だが…もう少し報われても良いのではないか、とは思うな」

「…なら、北郷に我々を(ねぎら)って貰うか?」

「冥琳、あまり無茶な要求はするなよ…」

「分かっているさ」

「やはり過保護だな、白蓮」

「秋蘭には言われたくないぞ…」

「白蓮には敵わんよ…蜀の武力持ちの大半に北郷の護衛をさせているも同然な癖に」

「俺一人じゃ体持たないんだから、仕方ないだろ…」

「お前を真似て、北郷を護衛して『慰める』んだったな……呉だと、雪蓮に独占されそうだな」

「冥琳まで…」

「魏だと、凪が張り切りそうだな…私も、そう簡単に譲る気は無いがな」

「秋蘭…」

 

 『縁の下の力持ち』と言えば聞こえは良いが、損な役回りが多い三人。

 しかし、それがきっかけで芽生えた友情でもある…。

 

 

 

 

・せめて自分の身は自分で守れるように~二~

 

「さて! しっかり鍛えないとな!」

「ああ!」

「お、お手柔らかにお願いします…」

 

 三人は街から離れた近くの山に登って鍛練を行っている。

 一刀と桃香は立場上、山に(こも)ってじっくり修行…とは行かないので、月に五~六日の割合で行う。

 白蓮に『せめて俺より強くなれ』と二人……特に桃香にとっては、非常に厳しい条件を突き付けられた。

 

「ご主人様、今日はおっぱいかお尻を顔に乗せるのと、太腿でぎゅっと首絞めるのと…どれが良い?」

「桃香、暫くしたら交代するからな」

「うんv」

「はは…お、お手柔らかに…」

 

 まずは基礎を徹底した鍛錬を行い、それが終わると素手での組み手…主に寝技の鍛練をする。

 疲れ切った一刀に二人がかりで『寝技』をかける。

 主に桃香が押さえ込む役で、白蓮が攻める役だ。

 

「んっ、一刀…やられっぱなしじゃ…なくなって来たな…」

「あっ、ご主人様…あんっ…」

「そりゃあ…少しは、体力…付いたからなっ…」

 

 鍛錬を初めた頃はされるがままだったが、最近はそれなりに『反撃』も出来るようになった。

 

 

 

「二人も大分体力付いて来たし…立った状態からの組み手も始めるか」

「ああ、宜しく頼むよ」

「わたし、出来るかなぁ…」

 

 鍛錬の成果もあってか、最初の頃よりは体力が付いて来た一刀と桃香。

 よって、鍛錬内容も増えて行く。

 

「さて、二人まとめてかかって来い!」

「あ、姉貴…せめて鎧は着て下さい…」

「ん? ああ、仕方ない奴だな…鎧無い方が楽なんだけどな」

「ごめん…」

 

 鎧を脱いで組み手しようとする白蓮に、一刀が待ったをかける。

 一刀の意思を察した白蓮は、再び鎧を付ける。

 

「? 組み手なんだから、お姉ちゃんも鎧外したままで良いんじゃないの?」

「い、良いんだよ! 戦場では皆鎧を着たままなんだし!」

「着ていない人もいるよ?」

「桃香…お前も、一刀と組み手する時には鎧を着ろ」

「え? 何で?」

「お、女の子相手に素手で組み合うと…そんなつもり無くても胸を触ってしまうんだよ…」

「? 変なご主人様。いつもはおっぱい触りたがってるのに」

「そ…それはそれ、これはこれなの!」

「察してやれよ、桃香…これは真面目な鍛錬なんだぞ、一応…」

「そ、そうだったね…あはは…ごめんね、ご主人様」

「皆も意外と、この辺りは疎いんだよな…男相手に平気で『胸を貸してあげます』とか言うし…」

「あ~…俺も結構似たような事言ってるな、それ…」

 

 武器を使った鍛錬と違い、素手での組み手となると勝手が違って来る。

 一刀は女の子相手に殴る蹴る等の打撃は苦手なので、打撃技は封じられているのと同じだ。

 相手を投げたり、関節技や絞め技をするには…組み合い、接触しなければならない。

 年頃の男女でそんな鍛錬をするとなると、どうしても相手を意識してしまうのだ…。

 

 

 

「てえいっ!」

「うわっ!」

 

 白蓮は一刀の腕を掴み、そのまま投げ飛ばした。

 

「そらっ!」

「きゃあっ!」

 

 桃香の腰の辺りを掴み、転ばせる。

 

「一刀はまぁ仕方ないとして…男相手なら問題無いんだよな?」

「あ、ああ…」

「桃香は殴ったり蹴ったりして来いよ…女同士で遠慮する事無いだろ」

「そ、そんな事言ったって…お姉ちゃん相手だとやりにくいなぁ…」

「じゃあ、俺を『一刀を誘拐するのが目的の敵』だと思え。敵が女なら、十分有り得るぞ。俺をそんな女共だと思ってやれ」

「う、うん…頑張る…」

 

「いや、だから…誘拐目的なら普通は俺より桃香を狙うと思うんだけど…」

「ご主人様…ほんっとうに自分の魅力分かってないよね…」

「魏と呉の連中なら、お前狙いで本当にやりかねないんだぞ…」

「三国同盟成立したんだから、俺が誘拐される理由が無いだろ……命は狙われてるけど」

 

「命狙われてる方が問題だろうが!! ったく、俺がどれだけ悩んでると思ってるんだよ…」

「もう、恋ちゃんか華雄さんに付きっきりで護衛して貰った方が良いのかな…?」

「どんだけ過保護!? その二人は最強過ぎるだろ!!」

「お姉ちゃん達は可愛い弟がいつも心配なの!! まだまだ足りない位だよ!!」

「はぁ…夫を心配する妻でもあるんだぞ、私達は」

「そ、それはそうだけど…」

 

「お前は自分の立場ってものを自覚しろ!! 三国統一の立役者で皇帝で、この平和はお前がいるから成り立っているようなものなんだぞ!!」

「そ、そんな大げさな…俺一人で何とかなった訳じゃないんだから」

「でも、ご主人様がきっかけなんだよ」

「そうだな、それは間違いないな」

「そう言われてもピンと来ないけど…二人共、心配してくれてありがとう」

「なぁに、気にするな」

「えへへ…どういたしまして♪」

 

 現在の三国同盟は一刀の存在があってこそ成り立っているのを理解している二人……過保護になるのも仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。

 

 

 

「さて、組み手再会するかな! 今度は俺と桃香が組むぞ」

「うん♪」

「あの、姉貴…何で鎧外すんですか?」

「ああ、やっぱり胸が窮屈でな…誰かさんが揉むからなぁ」

「うっ…」

 

 白蓮は鎧を外して、細身の割に大きな胸を開放する。

 

「あの、二人共鎧無しじゃ…俺の方から仕掛け難いんですけど…」

「別に良いだろ、只の組み手なんだから」

「ん~? どうして?」

「そんなつもり無くても胸を触ってしまうって言ったのですが…」

「……無自覚に女口説きまくってる癖に、鈍感な奴には有効な手段だと思うぞ」

「ご主人様がわたし達だけで足りてれば、こんな心配しなくて良いのにねぇ…」

「ああっ、やっぱり怒ってらっしゃる!?」

 

 一刀が自分の魅力や立場を理解していない鈍感な発言をすると、二人で『お仕置き』する。

 いつも以上に積極的になった二人にされるがままにされてしまう。

 

「さ~て、たっぷりと相手をしてやりますか…」

「ねぇねぇ、どうして欲しい~? お姉ちゃん、何でもしてあげるよ~♪」

「う、うう…」

 

 じりじりと近付き、距離を詰める。

 

「そら、捕まえた!」

「むぐっ!?」

「ほ~ら、お姉ちゃん達のおっぱいだよ~♪」

「ふぐっ、ふぐうう!?」

 

 一刀の前から白蓮、後ろから桃香が抱き付く。

 二人の胸が一刀の顔を挟み込み、そのまま強く抱き締める。

 

「たっぷりと『お仕置き』してやるからな、一刀~」

「今夜は寝かせないからね、ご主人様♪」

「うう…」

 

 こうして、一刀は翌朝までされるがままであった…。

 

 

 

 

~あとがき~

 

ちなみに、この外史では子供が生まれる順は…一番目が白蓮、二番目が桃香の順になっております。

流石に他の面々に先を越されたら白蓮が不憫過ぎるので…。

 

白蓮が一刀を庇ってツンキャラ達に正論で超厳しく怒るなら、桃香は一刀を慰めつつもツンキャラ達のフォローもする甘々お姉ちゃん……の、筈だったんですけどねぇ。

何故か、白蓮とは違うタイプの過保護姉に……我慢の限界が来たり、一刀への理不尽な言動に度が過ぎているとこうなります。


 
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