No.365903

ささやかな誕生日会

初音軍さん

1月20日は綾乃の誕生日なのでお祝いSS書きました~♪出来は
別として愛は込めたつもりです。少しでも楽しんでいただければ
幸いです。彼女が千歳との間に感じた感情はどっちなんでしょうね♪

2012-01-20 17:50:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:509   閲覧ユーザー数:429

 

 日が徐々に落ちてきて辺りが夕焼け色に染まる頃、私と千歳は生徒会の仕事で

遅れた分を取り返すように仕事をしていた。何事もない、いつもと同じ一日のはずだった。

 

 だが、どこか千歳がそわそわしているように感じる。今日何か見たいテレビとかでも

あるのだろうか。

 

 暫くかかりそうで遅くなりそうだから、と古谷さんと大室さんには先に帰って

もらうように千歳に伝えて仕事を8割方終わらせた辺りから千歳の様子が少々おかしい。

余裕が少し生まれたからって、また妄想して鼻血でも吹くのかと思ったのだけど

それとは少し様子が違っていた。

 

「どうしたのよ、千歳。そんなにそわそわして」

「な、何でもあらへんよ。綾乃ちゃんはそこでジッとしといて」

 

「わ、わかったわ・・・」

 

 なんだか納得いかないけど、予定として入れてる作業がまだ少し残ってるから

ここでダラダラしてる場合ではなかったのだ。私は軽く自分の頬を叩いて残りの書類に

目を通した。

 

 それから1時間ほどしてからようやく終わらせて深く溜息を吐き出した。

それと同時にほかほかの緑茶が机に突っ伏した私の目の前に出される。

 

「ありがとう。千歳~。あなたも疲れたでしょう?」

「綾乃ちゃんが頑張ってるの見てると私もがんばれるわ~」

 

 千歳は私と同じくらいの作業量をやっているにも関わらず笑顔で返してくる。

ほんとにこの子は底が知れないほどタフだと思える。それとは別に気になるのは

さっきはやけにそわそわしていたのが、今はすっかりなくなりいつもの千歳に

戻っていた。

 

「さぁ、時間も遅いし。そろそろ帰りましょうか・・・」

「ふっふっふ、それはまだ早いで、綾乃ちゃん~」

 

「は?」

 

 千歳のその言葉の意味を聞く前に生徒会室のドアが開けられて、そこにはスーパーの

袋いっぱい抱えた古谷さんと大室さんが駆け込んできた。

 

『お待たせしましたー!』

 

 そして机にいっぱいのお菓子とジュースを並べると、さっきまで存在感のなかった

会長が私の傍にいて肩をぽんと軽く叩いて、私が振り向くと無言で・・・いや、何かを

言っているのだろうけど、私にはわからなかった。だけど、向けてくる眼差しはとても

優しくて暖かいものだった。

 

 何があったのかと、千歳に声をかけようともう一度、みんなに視線を向けた途端。

何かが破裂したような音と共に視界に色とりどりのテープが舞っていた。

 

「え・・・」

 

「綾乃ちゃん、誕生日おめでとー」

『先輩、おめでとうございます!』

「・・・」

 

 一瞬なにが起こったのかわからず、机に広げられているお菓子の中にコンビニで

買ってきたケーキが数種類並べられていたのを見て、その様子を感じて、

ようやく自分の誕生日だと私は気づいた。どうやら忙しすぎて気づけなかったようだ。

 

 その意味が徐々に心に染みるように広がっていくのを感じると嬉しさと共に

目から暖かい何かを感じた。指で目元を触るとそれは涙ということに気づく。

嬉し涙だろうか。慌てて拭おうとしたが、千歳にハンカチを手渡され、涙を拭きながら

笑ってみんなにお礼を言った。でも・・・。

 

「みんな、ありがとう。でも、時間も遅いし、ここでやるわけには・・・」

 

 ここを私物化するわけにはいかないと思ってその言葉を呟こうとした際に

遅れて生徒会室に西垣先生が入ってきた。

 

「いやぁ、悪い悪い。遅れてしまって・・・ん、どうした、杉浦?」

 

 戸惑う私の顔を見てから私の後ろにいる会長に視線を合わせると何かを悟ったように

ニヤッと笑って私の肩に手を置く先生。

 

「心配しなくていいぞ。ここの許可はこの私がちゃんと取ってある。

せっかくの誕生日だ。仲間と祝うのも良いものだろう?」

「先生・・・」

 

 普段は爆発のことしか考えていない先生がこんな先生らしく見えるなんて。と

思っていたらつい口から漏れてしまったらしく、先生は苦笑しながら、私の背中を

軽く押してみんなの目の前に出る。

 

「主役なんだからシャキッとしろ」

「わ、わかりましたよ。・・・みんな、ありがとう」

「相手が歳納さんやなくて、残念やろうけどなぁ」

 

「ち、千歳・・・!」

 

 千歳が私に勢いをつけようとして言ってくれた言葉に乗った私を見て、

みんなの少し固くなっていた表情が柔らかくなって小さなパーティーが始まった。

確かに歳納京子がいないのは残念だけど、大事な仲間達と気楽に楽しむのは

今の私には最高だと思えた。

 

「綾乃ちゃん~、これからもがんばろな」

 

 飲み物を手渡されて蓋を開けた直後に飛びつくようにくっついてきた千歳が

脈絡もなくそう私に言うと、どれのことなのか見当もつかなかったが千歳の

暖かい表情を見て私は頬を火照らせて頷いた。

 

「当たり前じゃない。何言ってるの、いまさら。これからも私の傍にいなさいよ。

千歳」

 

 いつもさりげなく私を傍で支えてくれて後押しをしてくれた千歳に感謝を

しながら、このパーティーを全力で楽しもうと心に決めたのだった。

 

 その後、いつも通りに大室さんのやる気がなくなって片付けが大変だったのも

良い思い出になりそうだった。

 


 
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