No.365365

STEINS;GATE-After Days Les Préludes- 2

まさか8ヵ月も続きを書けなくなるとは……。
実際のところ、2か月くらいで今回投稿分の半分以上は書いてたのですが、書き途中で寝落ちしたところ、PCがプログラムの自動更新で勝手に再起動して原稿がタイムリープするというアクシデントが……orz
 これも運命石の(ry 
……すいません。単純に私の筆が遅いだけです(-_-;)

2012-01-19 09:10:04 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:907   閲覧ユーザー数:880

Chapter.1 破鏡重円のアセスメント

 

 

 

2010年12月31日。天候は晴れ。時間は……朝の九時を少し過ぎたところ。

 

私は飛行機から降り、日本の地へと足を踏み入れた。

 

研究所での作業が一段落つき、ようやく休暇を取れた。

 

本当はもっと早くに帰ってこられるつもりでいたのだけど、予想していた以上に時間が掛かった。

 

「二ヶ月半か。もっと長い間ここから離れてた気がするなァ」

 

 

空港を出た私は真っ直ぐに秋葉原を目指した。

 

私の、大切な仲間たちが待つ場所を。

 

私がそこで過ごした時間は、9月の終わりからわずか二週間足らずの間だったけど、実際は『そうじゃない』ことを私は知っている。

 

それを教えてくれたヒト。――岡部倫太郎。自称・狂気のマッドサイエンティストで、私の<運命>を変えたヒト。それでいて私の大切な・・・・・・

「仲間よ! 何を考えているのよ私!」

 

思わず自分の思考に対して声を出してツッコミを入れてしまった。周囲の人々数人が可哀想な人を見る目でこっちを見てくる。

 

ハァ・・・・・・完全に舞い上がってるな。本人を目の前にする前にこんな調子でどうする。

 

彼は私の命を救ってくれた命の恩人。身を挺して<私の死>という運命を覆したヒト。

 

あの日から、私の運命は大きく変わった。

 

 

 

 

          *          *

 

 

7月28日――

 

本来 <私の死> という運命が存在した日。

 

私はこの日、父に呼ばれ、タイムマシン理論の発表会に来ていた。何年も会っていなかった父との再会。

 

その父が私を呼んでくれたことが本当に嬉しかった。

 

だから私は、そんな父に認めてもらいたくて、独自にタイムマシン理論を組み立て、発表会後それを見てもらいたくて父を呼び出していた。

 

 

しかし、そこで待っていたのは感動的な再会などではなく、無慈悲な現実。そして裏切り。

 

父は私の論文を自分の名で公表をすると言い、私は首を絞められ論文を奪われた。

 

私はここで死ぬのかなぁって真剣に思った。

 

そのとき私を助けてくれたのが岡部だった。

 

まるでこの状況が起こることを予見していたかのように、彼は物陰に身を潜めていて、私を助けてくれた。

 

しかし彼は私を庇ったことにより父に刺された。

 

そんな彼を助けようと彼に駆け寄ったところまでは覚えている。

 

次に私が気づいたときは、私は血溜りの中で倒れているところを救急隊の人に助け出されるところだった。

 

 

どうやら、彼に駆け寄った際にスタンガンか何かで気絶させられたらしい。

 

私は血まみれで血溜りに倒れていたわけだが、どこもケガはなかった。強いて言うなら、スタンガンのせいで首筋が痛かったくらい。

 

私はすぐに血溜りの主を探した。

 

しかし警察や救急隊の人がいくら探しても、そんなケガ人は見つからなかった。

 

出血量からいって、そんな遠くに行けるような状態ではないはずにも関わらず、彼は忽然と姿を消したのだ。

 

おかげで事件当初は私の自作自演の狂言や、私が加害者という疑いが掛かった。

 

たしかに現場状況を見ればそれが一番合理的な考え方。

 

私が同じ立場だったら、間違いなく同じ結論に達するでしょうね。

でも違うものは違う。

 

実際に私を助けてくれた彼は存在したし、彼は間違いなく父に刺された。

 

まぁ私の自作自演じゃないのは、残された血液がDNA鑑定で人間の血だとわかった時点ですぐに証明はされたし、刺した当人である父が、亡命先のロシアで拘束されたことによって、容疑者からも外れるのにもさほど時間は掛からなかった。

 

 

その後も私は彼を探し続けた。

 

8月中に日本を経つ予定でいたのだが、このままでは日本を経てるわけがない。

 

彼にはどれだけ感謝してもしきれない。

 

それに聞きたいことがたくさんあるのだ。

 

 

そんなまま9月も終わりに差し掛かっていた。

 

10月にはさすがに日本を経つ必要がある。

 

正直諦めかけていたそのときだった。

 

視界の端に何か写った。

 

白衣。

 

秋葉原の往来で白衣だなんて、明らかに異質なのに、どこか懐かしい姿。

 

おもわず道行く人だかりの中で立ち止まる。

 

跳ねる鼓動を必死に抑えながら、恐る恐る振り返る。

 

すると相手も同様に立ち止まってこちらを見ていた。

 

「やっと・・・・・・会えた」

 

頬に涙が伝う。

 

「あなたを、ずっと捜していました。あのとき、助けてくれたあなたをずっと――」

 

 

出会いから二ヶ月経った9月26日。やっと彼を見つけ出したのだ。

 

 

*         *

 

 

再会を果たした後、私と彼は近くの喫茶店に来ていた。

 

席に着いて早十五分は過ぎただろうか。

 

注文時に口を開いて以降、何とも言えない空気の中、お互い沈黙を続けていた。

 

聞きたいことは山のようにある。

 

なぜ私を助けてくれたのか?それ以前に、なぜまるで私が襲われるのを知っていたかのようにあの場所にいたのか?

 

 

他にも疑問はまだある。

 

 

私はあの日、彼とは三度出会っている。

 

最初に出会ったのは会見の直前、階段の踊り場で。

 

その時の彼は、とても悲しそうな、そしてどこか懐かしそうな、優しい目で私を見ていた。

 

そしてたった一言。

 

『・・・…俺は、お前を助ける』

 

そう囁いて去っていった。

 

二度目は発表会の会見中。

 

その時の彼は、先ほど出会った時とはうってかわり、厨二病全開の痛々しい態度でまるで別人のようだった。

 

最初に出会った時の言葉の意味を尋ねたが、これまた痛々しい回答が返ってくるだけで、正直なところ

 

さっきの台詞は、私の聞き間違いか人違いかと思ったくらいだ。

 

そして三度目。私がパパ・・・Dr.中鉢に襲われている時。

 

そこでの彼は最初に出会った時と同じ、優しい目。そして何か決意を秘めた目。

 

会見で出会った彼とは完全に別人だった。

 

二度目に出会った彼とそれ以外の彼。

 

この奇妙な違和感が示すものはいったい何なのか。

 

実はそっくりの双子の兄弟だと言われたら、むしろそっちを信じたいくらいのレベルの違いだ。

 

そして、今の私にあるこの不可思議な既視感。

 

先ほど再会した際、彼の最初の一言は

 

『また会えたな、クリスティーナ』だった。

 

私は彼に……いや、彼以外にもそんな呼ばれ方をしたことはない。

 

そのはずなのに――

 

『いや、だから私は助手でもクリスティーナでもないと言っとろう――』

 

自然にその言葉が出ていた。

 

考えて喋ったわけじゃなく、反射的に。

 

私は以前にもこの人とどこかで・・・・・・?

 

 

 

思考が全然まとまらない。

 

こんなことは初めてだった。

 

何から聞けばいいのか。むしろ何を聞けばいい?

 

どこまで踏み込んで聞いていいのだろう? 

 

彼は答えてくれる? 

 

もしも答えてくれなかったら―――

 

さっきからずっとこの思考のループ。

 

全然私らしくない。

 

そうこう悩んでいると、悩んでいるのが顔に出ていたのだろうか。

 

彼から話しかけてきた。

 

「どうした? 先ほどからずっと難しい顔をしているが……。どこか体調でも悪いのか?」

 

「いえ、そういうわけじゃないんですけど・・・・・・」

 

「そんなに緊張しないでくれ。俺は、サイエンス誌に論文が載るような天才少女・牧瀬紅莉栖に緊張されるような器の大きな人間じゃない。ただな平凡な大学生だ」

 

また違和感。

 

会見中に会った彼は、こんな殊勝な人間ではなかった。

 

もっとこう、敵意剥き出しで好戦的な性格だった。

 

こんなの彼らしくない。

 

――彼らしくない? 私は彼とは今日会ったばかりのはずなのに、なぜこんな事を感じるのだろう。

 

まるで、私じゃないもう一人の私の記憶が薄まった状態で混在しているようなそんな感覚。

 

……ええい、ごちゃごちゃ考えたって答えが出るはずもない。

 

むしろ答えは目の前にあるのだ。

 

 「えっと、あ……」

 

しまった。まだ名前すら聞いていない。

 

どんだけテンパっているというのだ私は。

 

すると、彼も名前を名乗っていないということに気づいたらしく、 「岡部、岡部倫太郎だ」 と名乗ってくれた。

 

「あの、岡部さん、改めてお礼を言わせてください。あの時は、危ないところを本当にありがとうございました」

 

「……礼なんていいんだ。俺は、お前が無事でいてくれたことがわかっただけで十分だ」

 

やはりこの人は 『私』 を知っている。

 

きっと、この既視感の正体も。確証があるわけではない。

 

ただの直感だ。直感だなんてちっとも論理的ではない。

 

しかし今の私には、どんな論理よりも、この既視感から来る直感が信頼できた。

 

「あの、あなたにいろいろと聞きたいことが――」

 

「だが断る」

  

即答。一瞬何を言われたのかわからなかった。が、すぐに我に返り慌てて反発する。

 

「ちょっ……まだ何も言ってないですけど!?」

 

まさかここで@ちゃん用語で返されるとは予想だにしておらず、思わず叫んでしまった。人がせっかく真剣に質問をしているというのにこの男は――

 

「やっと普通の顔になったな。」

 

「……え?」

 

「さっきも言ったが、そんな緊張しなくていいし、思いつめる必要もない。お前が何を言いたいか、何を聞きたいかは想像がつく。心配せずとも、俺の答えられる範囲で全て答えるつもりでいるから、一つずつ聞きたいことを聞いてくれればいい」

私の緊張を解すためにワザとあんな台詞を?

 

「まぁ、ねらーのお前なら、@ちゃん用語が緊張を解くには一番だと思ってな」

 

「誰がねらーか!誰が!」

 

「ふっ、今更隠す必要はないぞ。お前が栗ご飯とカメハメハというコテハンで、ID真っ赤にしてアンカーで写真うpしてるのはすでに割れているのだからな!」

 

「なんでそんなことまで……って、あることないこと勝手に言うな! ID真っ赤になどしとらんし、アンカーで写真うpもしとらんわ!」

 

 

 

ここまでの会話で一つわかったことがある。

 

私が緊張していたように、彼もまた緊張していたのだ。

 

要は、緊張から鳴りを潜めていただけで、根底は何も変わっていない。

 

やはりラジ館で三度出会ったのはこの彼だ。若干雰囲気に違いはあるが、思っていたほど性格が激変したわけではない。

 

「はぁ……。一気に疲れさせてくれましたね。そろそろ真面目に質問してもいいですか?」

 

「なんなりと聞くがいい。ただし……」

 

「ただし?」

 

「話の内容を信じるかはお前次第だ。俺を信じられるか?」

 

「……? わかりました」

 

この人のあの日のラジ館での行動そのものが、すでに信じられないことだらけなのだ。

 

今更ちょっとやそっとのことで疑うつもりはさらさらない。

 

「単刀直入に聞きます。あなたはあの日、私が襲われることを知っていたんですか?」

 

回りくどく聞いても仕方がない。直球で聞いてみる。

 

「……知っていた。Dr.中鉢がお前の父であるということも、封筒の中身がタイムマシンに関する論文であることも、それをヤツが奪うということも全て。」

 

本来ならそんな非科学的なことがあり得るわけがないし、信じられるわけがない。

 

しかし、そうでもない限り説明ができないことが多過ぎるのだ。

 

なので、ここまでは予想された回答。問題は次からだ。

 

「あなたは、どこでどうやってそれを知ったんですか? それに、私のことをあの日出会う前から知っているようですし、以前にあなたにどこかで会ったことがありましたか?それに、あんな大怪我した状態で一体どこに――」

 

「じょ……助手よ」

 

「はい?」

 

「一気にまくし立てないでくれ。あと、質問は一つずつで頼む。」

 

私の勢いに気圧されてしまったのか、彼が若干萎縮気味にそう口にした。

 

「す、すいません……。」

 

「いや、気持ちはわかる。だが焦る必要はないぞ助手よ。俺は逃げも隠れもしないからな。」

 

私は助手じゃないし、ラジ館から姿を忽然と消したのはどこの誰か。

 

……と口にしそうになったが、また話がずれてしまうので敢えてツッコミは入れずにおく。

 

「じゃあ一つずつでいきます。あなたは、本来知り得ない情報をどこでどうやって知ったんですか?」

 

 

少し考える素振りをする岡部。

 

言葉にしにくい内容なのだろうか。

 

「実はな。我がケータイには、我らがラボメンの未来に起こる出来事が、時間を歪め九十日先までを日記形式で表示するという、神をも欺く機能を宿しているのだ。その名も悠久の未来日記(エターナル フューチャー ログ)!」

 

「厨二病乙」

 

「き、貴様!さっき信じられるかと聞いたら、わかったと言ったではないか!」

 

「あ……。どこかで聞いたことあるような設定だったのでつい……。それ、本当の話なんですよね?」

 

「いや、冗談だ。これは未来ブログという漫画の――」

 

駄目だコイツ。早くなんとかしないと。

 

「今すぐにおのれの頭を開頭して、海馬に電極ぶっ刺してやろうか!?」

 

「ま、待て!!落ち着け、クリスティーナ!!ただ俺は、お前がどこまで信じてるかの確認をだな……」

 

「誰がクリスティーナか!いらん茶々を入れないで真面目にやってください!」

 

一喝してやると、それが効果があったのか、それとも別の理由からなのか。岡部の表情が、神妙な面持ちに変わる。

 

「……すまん。俺自身、どこからどう説明していいのか迷っているのだ」

 

もう少しマシな迷い方でお願いしたい。

 

「最初からを、ありのまま話してください」

 

彼の顔を真正面に捉え、はっきりとした声で伝える。

 

「さっきの厨二病設定よりも酷い内容かもしれんぞ?」

 

「あなたがちゃんと真剣に真実を語ってくれるのであれば、それがどんな内容でも受け入れる覚悟はあります。」

 

私の決意が伝わっただろう。彼もまた覚悟を決めた。

 

「……わかった。では今後は一切嘘や冗談を挟まない。全て真実だ」

 

「わかりました」

 

 

まさか予想のさらに斜め上をいく突拍子もない話を、納得した上で朝まで延々と語ることになるとは、この時の私は思いもよらなかった。


 
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