No.363506

MAFIA MARCH HARE 第四章

TENさん

第四章です。
今回の話はC80で漫画として制作予定だった漫画版MAFIA MARCH HAREの後半部です。
何か思ってたよりも長くなったので、前後に分かれました。
このまま順調に行けば、小説版MAFIA MARCH HARE vol.1が次の例大祭までに完成しそうです。
頑張ります_(:3」∠)_

続きを表示

2012-01-15 01:31:46 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:847   閲覧ユーザー数:844

 

第四章  モロトフのように紅く

 

「開店が遅くなりまして大変申し訳ございません!!昨夜当店に泥棒が入りました!」

 いつぞやの男性定員が、店頭に集まっている来客や野次馬達に向けて大声を張り上げ、お店の現状を報告しています。

 私は直にそこへ混じったりせず、はす向かいに建つスカーレット系列の銀行の、やたら西洋かぶれな建物の正面意匠の陰に身を潜めて、そこからお店の様子を伺っていました。

 純和の中に異国情緒を次々に持ち込むなんて――それまでは、齢五百余年程度のお子様らしい趣味だと少し皮肉っぽく見ていたものですが、少なくとも今は、その装飾の用途に素直に感心しております。

 紅魔館本家程大きな建家でもないのに、主階には見栄の権化とも呼ぶべきコリント式の列柱(※1)が立ち並んでおり、そのお陰で私が隠れる空間が十分に用意されているのですから。

 そんな中、お店の前には日頃の開店時を超える人集りが。

 いよいよもって何かがあったな、と言うその雰囲気は、兎にも角にもひしひしと伝わっていたのでした。

「泥棒は、薪やお客――炭の類を盗んで行きました!その関係で、本日はお料理の準備――んが、食材の方は無事です!!現在出来る範囲で準備中でございます!!」

 時折手前を通る自動車の音で掻き消されてしまいますが、店員が大きく声を上げているので、その声は難なく耳に入って来ます。

 どうやらてゐ女史の言う『腕利きの部下』は、お店が備蓄していた薪や炭を奪うことで、今日の営業の妨害をしたようです。

 しかし残念ながら。

「火を通さないお料理は、もう少々!もう少々で、準備が整います!!お鍋の方は、本日が炭の配達日でございます!用意が整い次第、順次ご注文を承ります!!大変、ご迷――が、今しばらく、今しばらくのご辛抱を、お願い申し上げます!!」

 そう、今日が炭の配達日である、と言うことを、忘れてはなりません。

 一体全体何を学習したのか――月に三回、十日に一度と、あれ程口を酸っぱくしてお教えしたと言うのに。

 この有様が失敗のそれだと言うのは、誰がどう見ても明白でしょう。

 日程を高らかに宣言して失敗とは、何が腕利きの部下か。

 所詮兎などそんなもの――私がたかをくくって撤収しようと思ったその時。

「ちょっと失礼」

 おやおや、部下の尻拭いでございましょうか。

 ドン因幡ご本人のご登場です。

 何分背の低い、可愛らしいお方ですので、いつからそこにいらっしゃったのかは、私にもはっきりとは分かりません。

 が、兎に角聴衆を押し退けて店員の前に躍り出て下さったことで、ようやくそのお姿を見ることが出来ました。

 間も無く入る、おうささま、おうささまと言う、合いの手の声。

 人の波の浦々に垣間見える今日のお召しは、あの伝統の白装束――いえ、今や私には、まさに死に装束にも見えております。

 因幡の素兎は、自らをふかの前に差し出すお覚悟なのでしょうか。

 もしそうならば、何とあっぱれな頭領のお姿でございましょうか!

 いやはや責任感が強いとは、全く以て難儀なものです。

 天狗になっている天狗の上層は、必ずや彼女の粛々たるお姿をしかと目に焼き付け、実際見習って頂きたい!

 失い掛けた興味を取り戻した私は、実際シェイクスピアのそれには劣る喜劇を見続けるべく、虎の子のオペラグラス(※2)を取り出して、文字通りの高みの見物と決め込みます。

 そして間も無くてゐ女史は、外野席にも十分響き渡るような、大きくはっきりとした声で、最初の台詞を述べたのでした。

「結局、あの炭屋を使うのを止めなかったのですね」

「あんた……あん時の嬢ちゃんか……」

 店員の唖然とした表情。

 静かにこくりと頷いたてゐ女史は、更に次の言葉を述べました。

「部外者の私がこのように深入りするのは差し出がましいことと思いますが、この事件は、貴店が藤原妹紅と契約していたが故に、起こるべくして起こったのです」

 それを聞いて、誰もが、勿論私も驚きました。

 ざわっと、一瞬にして広がるどよめき。

 誰もが善人と思って疑わない、あの妹紅さんにその罪を擦り付けようとは――。

 店員は目をぱちくりとさせ、反論しようとします。

「はっ?いや、何を言って――」

「ご存知ではありませんか。藤原妹紅は、奇怪な術を巧みに使い、人を騙して回る根っからの詐欺師、妖術使いです」

 言い切る前に遮るその様子は、あたかも昨日の私を見ているかのよう。

 他を許さないその態度に、店員ですらその口を噤むしかありません。

 反論が無くなったのを見計らい、てゐ女史は再び言います。

「貴店の炭の消費は、この界隈でも際立って多い。藤原妹紅はそれを狙って、貴店との契約にありついたのです」

 並々ならない自信を感じさせる物言い。

 誰もが反論も野次も飛ばすのも忘れ、次の言葉を待ち構えています。

 突如として現れた名探偵の、実にもっともらしいその名推理を。

「藤原妹紅は、他の炭屋のように炭俵を使うことはせず、木箱で納品しております。まるで、炭を厳重に保管しているかのように」

 てゐ女史は周囲を見回しながらそう言い、釣られて私も周囲を見回せば。

 隣家の窓からも、その隣家のそこからも―沢山の観衆と言う観衆達が、それを興味深そうに眺めているのが見えました。

 既に格好の見世物と化したこの騒ぎ、最早身を隠す必要は無いでしょう。

 踏ん切りがついた私は、物陰に隠れて覗き見るのをやめ、堂々と身を顕にして、その渦中を見下ろすことにしたのでした。

「しかし実際はその逆です。木箱には、あらかじめ式神のようなものを付けております。見ておりませんか。木箱に一つとして残さず付けられた、行先票のようなものを」

 小さなどよめきがまた一つ。

 確かに私も、一つ一つに律儀に貼られた行先票を見ております。

 いよいよ店員の顔色が悪くなって来て、私は知らず知らずの内に笑みを浮かべておりました。

「こう言っては俄には信じ難いかもしれませんが、あれこそが今回の元凶。配達日に中身を転送し、空箱にするものなのです」

 一際大きなどよめき。

 そんな式神があれば、薬売りだって大儲けでしょう。

 ひょっとして、てゐ女史は実際にその方法で懐を肥やして来たのでしょうか。

 いえあるいは、単に自らの欲求を言葉にしただけなのでしょうか。

 どちらにせよ、真相はまだまだ闇の中にありました。

「ところで店員さん。思ったことがありませんか。思っているよりも減りが早い。もう何箱か残っている筈だったのに、全て空になっている、と」

 自らの主張を通すだけだったてゐ女史は、初めて店員に意見を促しました。

 野次馬達が一斉に振り向き、店員を睨み付けます。

 その後ろを、私から見れば手前を、のそりのそりと通り過ぎる電車。

 きっと乗客達も店側の席に集まり、何事かとこぞって覗き見ていたことでしょう。

「……あ、ある」

 店員は声小さめに答えました。

 てゐ女史は大きく頷きながら、次の疑問を提示します。

「宜しい。では、その転送された炭はどうなったのか」

 聴衆はお互いを見回しながら、考えるような素振りをしています。

 店員はすっかり萎縮してしまい、遠目から見ても分かる程、その身をぶるぶると震わせているだけ。

 特に返答が無いのを見ながら、てゐ女史がようやくその答えを言います。

「実に簡単な答えです。今日の配達分として、ここに戻って来るのです。」

 またしても聴衆に大きなどよめきが走りました。

 いやまさかと否定する者あり、合点が行き手を打つ者あり。

 聴衆達は得体の知れない術を前に、一瞬にして混乱に陥ったのでした。

「契約当初こそ」

 てゐ女史の声で聴衆が黙り、それを聞き漏らすまいと耳を傾けます。

 それを尻目に見ながら、てゐ女史は言葉を続けました。

「藤原妹紅は貴店の桁違いな納品数に持ち堪え、無条件の信頼を得て来ました」

 頷く聴衆達、うつむく店員。

 てゐ女史は尚も言い続けます。

「しかしこうして明かしてみれば、いかがです。延々と貴店を騙し続け、何箱分かを水増し請求して来た。そして今日のご覧の有様です。遂にぼろが出て参りました」

「ばっ、馬鹿言うな!!」

 ここに来て初めて、ただ黙っているしかなかった店員が反発しました。

「い、いつもなら、まだ中身が半分ぐれぇ残ってる箱があらぁ!そいつぁどう説明しやがる!?」

 話の流れからすれば、まるで妹紅さんを弁護するような言い方です。

 どうしてこの店員が妹紅さんを庇うのか、段々とそちらが疑問に思えて来ます。

 が、それには言い及ぶことは無く、てゐ女史は至って簡潔に答えました。

「途中まで使った箱の中身等、転送しても仕方が無いでしょう?」

 店員がするよりも早く、聴衆達が首を縦に振りました。

 全てがてゐ女史の意のままに、とんとんと運ばれていたのでした。

 軽く咳払いをしたてゐ女史は、改めて店員に尋ねます。

「ところで聞き忘れておりましたが、日頃から薪や炭、燃料の類の在庫確認をしていらっしゃるのは誰です?」

「お、俺だ」

 店員本人が、すぐに返事をしました。

 小さな名探偵を前に、今となっては取り繕うことすら出来ないようでした。

「先程の証言からお察ししますと、昨日の閉店までに、開封済みの箱をたまたま使い切りました。相違ありませんね」

「ああ。確かに昨日、閉店の時に、丁度空になった」

 てゐ女史の問い掛けに、店員は素直に答えました。

 続けててゐ女史は尋ねます。

「昨日、在庫確認を行いましたか?」

「あ、ああ……し、した……」

 初めて、妙に歯切れの悪い返事が返って来ました。

 私でさえ分かったのに、一体誰がそれを見逃すと言うのでしょうか。

「……本当ですか?」

「あ、ああ。まだ開けてない炭箱が、いつものところに三箱……」

「開けて中身を確認しましたか?」

 執拗な尋問ならぬ問責に、店員はがっくりとうなだれて答えました。

「……して…ねぇ……」

 聴衆達の間から漏れる大きな溜め息。

 てゐ女史もやれやれと言わんばかりに首を振りました。

「昨夜、確かに幾つかが、いつもの場所に残っておりました。しかし残念なことに、貴方は中身を確認しなかった」

 沈黙を以って、店員はそれを肯定しました。

「そして今朝確認しところ、全て空箱だった。そう言うことですね」

 店員はより一層身体を震わせながら、ただただ頷くしか無かったのでした。

「もう一つお聞かせ下さい。ごくまれに、未開封の箱を積んだ側に空箱が残っていることはございませんか?」

 てゐ女史の問い掛けに、間も無く店員が答えました。

「……ある。ときたま新入りが、空箱を置く場所を間違えるからな。」

 再び聴衆の間から溜め息を漏らした後、店員は突然顔を上げ、反論しました。

「で、でもな!んなもんあったとしても、何個かある内の一、二個ぐれぇだ!今朝みてぇに、全部開けてみりゃ全部空だったなんてこたぁ……」

 そこではっとして、店員は自ら口を噤みました。

 その時、きっとてゐ女史は、にやりと微笑んでいたのではないでしょうか。

「ほら、今貴方が、ご自分の手で証明なさったではありませんか」

「じゃ、じゃあてめぇ、薪の方はどうなりやがんでぇ!!何とか言ってみやがれ!」

 結論に向かわせようとしたてゐ女史に、店員はもう一度突っかかりました。

 苦し紛れにとは言え、あの店員にしては中々良い反論です。

 てゐ女史は炭に固執するばかり、薪の盗難については何一つ言及していません。

 それに気付いた聴衆も、ざわざわと思い思いに騒ぎ出します。

 さぁ、どのような答えが返って来るのか、私もわくわくして参りました。

 多大な期待を寄せられたその口が、今、しばらくの沈黙を経て開きます。

 

「……さぁ?流石に貴店がどこから薪を入手しているのかまでは存じませんので」

 

 ……正直に申し上げましょう。

 ずっこけました。

 ずっこけて、大変がっかりしました。

 聴衆達も唖然に憮然、辺りは溜め息とブーイングの嵐です。

 ここまで名推理を聞かせておいて、何て苦しい!

 半ば泣き掛けていたそこの店員ですら、肩の荷が一気に降りたかのよう。

 そして今までのそれがこけおどしだったことに気付き、笑みすら浮かべる始末。

「は…はははッ!!そんじゃ、信憑性って奴が足んねぇなぁ!しっかし、良くもまぁここまで話を盛れたもん――」

 店員がそこまで言ったその瞬間、てゐ女史が店員に向けて拳を突き付けます。

 一瞬の出来事に私も聴衆達もはっと息を呑みます。

 その手には、幾度と無く私を脅して来た、あのオートマチックが―無い。

 てゐ女史は、真っ直ぐに伸ばした人差し指一本で店員の口を黙らせ、怒りに声を震わせながら言い放ったのでした。

「私は貴店の炭の行方について物を申し上げている!!薪の行方が知りたいのなら、改めて別の方にご知見を仰いだら如何か!!」

 ……その咆哮の後、そこは静寂に包まれていました。

 実際は、往来の喧騒がごそごそと遠巻きに聞こえていましたが、少なくともそこにいる誰もが、てゐ女史のその剣幕に言葉を失い、ただ棒のようにそこに立ち尽くすのみ。

 やがててゐ女史がおもむろに腕を下ろし、お召しの襟元を荒々しく直しながら咳払いをすると、聴衆たちが一斉に息を吐く音が聞こえました。

 全く、あの小さな体で何て迫力をお持ちなのでしょうか。

 楯突く者がいないのを見計らったてゐ女史は、一度は荒立った口調を戻し、もう一度丁寧に、自らの主張を述べました。

「私は、たまたま十日前に貴店が藤原妹紅から炭を仕入れているのを知りました。ですから、その時に警告したのです。そいつと手を切れ、その炭を使うのをやめろ、と」

 その通りです。

 十日前にその事実を知ったてゐ女史は、店員にその旨を伝えてここを離れました。

 きっと、それを目の前で見た方も、この聴衆の中にいらっしゃるはずです。

「しかしながら貴店はそれを無視された。そして今朝、このような結果を迎えた。如何です。何かおかしな所はございましょうか?」

 しかしてゐ女史からすれば、妹紅さんはお互いに勝手を知り尽くした、ご近所同士のお方です。

「さぁ、顔が割れて来ました。最も怪しいのは藤原妹紅です。警察を呼びましょう。今すぐに、法の裁きを受けさせるべきではありませんか」

 素行は悪くありません。

 そこそこの人望もあります。

「何故貴店は、営業を妨害されるような被害を受けているのにも関わらず、警察を呼んでいらっしゃらないのです?何か後ろめたい事でもあるのですか?」

 

 何故貴方は、そんな見え透いた嘘で、あの方に罪を押し付けようとするのです?

 

 

※1 コリント式列柱

 ギリシア建築、ローマ建築の建物にある、列をなした装飾円柱の様式の一つ。ギリシアのコリントス発祥。

 飾り気の少ないドーリア式(例:パルテノン)と異なり、柱頭には植物(アカンサス)を象った装飾が施されている。

 歴史主義建築の建物によく使われ、日本では比較的古い博物館や銀行、生命保険会社の建物で見ることが出来る。

 

※2 オペラグラス

【Opera glasses】英

 双眼鏡のこと。レンズを組み合わせて作る光学器械と言う意味ではカメラの祖先と言える。

 本来の「双眼鏡」にあたる訳語はbinocular (バイノキュラー)だが、観劇・スポーツ観戦用の双眼鏡はオペラグラスと呼ばれることがある。

 文中では「写真機」の意味で「オペラグラス」と記述しているが、単に隠喩が目的である。

 

 

「今日が配達日だからな」

 その時、てゐ女史以外に課せられた、その沈黙を破った人がいました。

 私も聴衆もはっとして、その人物を探します。

 そしててゐ女史と店員が店内の方に振り向いたのを見て、一時乱れた注目が再び騒動の中心へと戻りました。

「どうせ戻って来るのなら、警察なんぞ呼ぶ必要は無い」

 声の主がようやく姿を現したのを見て、店員が気の抜けた様な声を上げました。

「て、店長ォ……」

 やや背が高くて若干痩せ型、髪に白髪が混じり始めた頃合の、線が細い中年男性。

 日頃は自ら猟に赴いてしまい、滅多に店に姿を現すことが無い鳥料理屋の店主、そのご本人が、そこにいらっしゃったのでした。

「知っているぞ。警察の目が中々届かない里外れで、盗人共に襲われている米屋や八百屋に現れては、筍やら山菜やらを配って場を収め回っている、大国主の遣い、因幡てゐだろう?」

 公衆の面前で手柄話をされたてゐ女史は、心なしか機嫌良さそうに言いました。

「ご存知でいらっしゃいましたか。なら話は――」

「全く大した傑作だ。あの盗人共は貴様の差し金だろうに。一体何軒騙したのやら」

 ……空気が、一瞬にして凍り付きました。

 聴衆の顔が引きつり、何人かの注目が店主からてゐ女史の方へ移ります。

「……ちょっとちょっと、私が人を騙すような兎に見えます? 全く人聞きが悪い」

 きつい冗談だと言わんばかりに、その場を取り繕おうとするてゐ女史。

 しかしながら店主は。

「わにを騙くらかして海を渡ったのは、一体どんなだったかな。大国主の遣いよ」

 武勇伝から今回の騒動の真犯人まで、てゐ女史を疑って掛かっています。

 にわかに漂い出す、不穏な湿ぼったい空気。

 反論する気を失ったのか、てゐ女史はやれやれとその肩を軽く竦ませます。

 そんな様子を見てにんまりとしながら、店主は続けて言いました。

「妹紅さんはとは大変良い付き合いをさせて頂いている。どこぞのブン屋が宣伝し続けているお陰で、ウチの人気は衰えを知らず、炭の消費量は実際非常識だ」

 明らかに、私への皮肉を含んだ言い草。

 確かにその通りだった訳で、私としては否定のしようがありません。

 罪無き鴉達の命を売り渡したのは、紛れも無く私だったのですから―。

「仮に妹紅さんがウチを騙して、水増し請求していたとして、だ」

 店主は店員の肩を軽く叩きながら言います。

 間も無く店員は横へと退き、てゐ女史の目の前に店主が立ちました。

「それでも妹紅さんは、毎回しっかりと配達して下さる。これは紛れも無い事実だ。」

 店主はそう言うと、不意に顔を上げました。

 私は慌てて身を隠し、姿勢を低くしたままもう一度顔を出してみます。

 幸い店主は私の居場所を突き止めていた訳ではなく、その後もしばらく明後日の方を見回し続け、そしててゐ女史の方に向き直って言いました。

「だから、少し位割増で払っても、俺は痛くない」

 ……私は身を隠しながら、奥歯をぎりと強く噛み締めました。

 それが私への当て付けなのは、疑う余地もありません。

 今朝の私の新聞に目を通し、昨日私が通常入稿に間に合わなかったことを知った上で、わざわざそれを口にしたのです。

 きっと、裏で糸を引いているであろう、間抜けな鴉天狗を嘲笑う為に――。

 ただただ恨めしい―今すぐにでも、あの首から上を食い千切ってやりたい。

 私を嘲笑い続けて来たあの男を、白昼堂々殺すことが出来たらあるいは。

 私が、天狗社会に属していなかったらあるいは!

 私が、鴉天狗でなかったらあるいは!!

 もっと冷静であれば、それが酷く矛盾していると言うことに気付いたでしょう。

 兎に角、私は湧き上がる激しい怒りに堪えました。

 その薪を盗み、文字通り臥薪嘗胆の思いで堪えて、耐えて――。

 もう一度だけ、あの妖怪兎に、やり直しの機会を与えてやろうと思いました。

 それが、今の私に出来る精一杯のこと。

 私ですら、官吏のように、私自身が目の敵にしている天狗の上層達のように――。

 他を使役する以外に、仕方が無かったのでした。

「怪しい術を使う?だから何だ。妙な力を持つ者なんぞ、幾らでもいるではないか。その妖術で妹紅さんが俺の商売を支えて下さっていると言うのなら」

 店主はそこまで言うと、てゐ女史の両耳を掴んで乱暴に自分の際へと引き寄せ、大胆不敵と言う言葉がしっくりするその顔で、余裕たっぷりに言い放ちました。

「むしろ万々歳なのだよ。分かるか。兎のあやかしめ」

 妖怪を少しも恐れぬ物言い。

 その手をガリガリと引っ掻かれようとも、店主はびくともしません。

 そしてその耳を引っ張り上げたまま、店主は続けて言います。

「あの鴉天狗と言い、お前達妖怪共はどいつもこいつもさんざっぱら有ること無いことをうそぶいて、俺の商売を妨害したがっているようだがな」

 そして薄笑いすら浮かべていたその顔を鬼のような形相にして、目の前の小癪な兎に向けて怒鳴り散らしました。

「俺の店は、絶対に貴様らに屈したりはせんぞ!!」

 ……これを、失策と言わずに何と言うべきでしょうか。

 こんな結果を迎えるなんて、半日前に予想出来たでしょうか。

 今更悔やんでも、今この状況で形勢逆転はまず望めそうにはありません。

 早いところ、てゐ女史を救出してとんずらするのが吉でしょう。

 一度は放ってしまおうかとも思いましたが、散々上司の批判をした手前、そんなことは意地でもあってはなりません。

 しかしながらはてさて、この危機を打開するには一体どうしてやったものやら。

 この聴衆に囲まれた状況では、文字通り袋の鼠としか言いようがありません。

 助けようにも、人の目が余りに多すぎます。

 いっそ窮鼠は窮鼠らしく、潔く猫を噛んで頂く他は無いと思うのですが――これ以上騒ぎを大きくしてしまうと、次に手を出すのが難しくなります。

「ところでお客様方。この店の屋号は勿論ご存知でしょうや」

 私が悶々と考えを巡らせる中、店主はてゐ女史を掴んだまま、聴衆に尋ねました。

 間も無く、羽屋、羽屋と、合いの手のように返って来る固有名詞。

 店主は満足そうに頷きながら、聴衆に向かって言いました。

「結構。一羽、二羽の『羽屋』でございます。お客様方の多くは、当店を鳥料理の専門店と思っていらっしゃる方も多いでしょうが」

 そこで一旦言葉を切った店主は、今しがた生け捕りにしたばかりの一羽の獲物を聴衆に見せびらかすように、高く掲げて言いました。

「俺は、鳥専門と言った覚えは無い」

 その言葉が意味するのは、ただの敗北よりもむごたらしい未来。

 最早、失策の範疇を超えていました。

「お前が捌け。在庫確認を怠ったのは、それで見逃してやろう」

 店主は、横に退いていた店員の前にてゐ女史を突き出して引き渡すと、店の奥へと促しながら命令したのでした。

 

 

「こんにちはぁ」

「やぁ妹紅さん、良い所に」

「えっ?どうかなさいましたか?」

「いや何、今朝方燃料の類がさっぱり盗まれましてねぇ。今日は仕込みが全然出来とらんのです。それで妹紅さんの到着を首を長くして待っていたところなのですよ」

「そりゃ大変、今すぐ開けますか!?」

「ええお願いします。これでようやく店が開けますよ。いやぁ本当に良かった」

「災難でしたねぇ」

「ところで話は変わりますが」

「はい?」

「今度、新しい献立を出そうと思うのですよ。それで、もし宜しければ妹紅さんもその試食会に如何かなと思いましてね」

「えっ、いえそんな」

「いやいや、日頃お世話になっとりますので、是非とも参加して頂きたいのです。無論お仕事があるでしょうから、長居はさせませんよ。如何ですかな」

「う、うーん。それじゃあ、少しだけ」

「そうですか!それでは、大急ぎで準備致します」

「え、今日ですか?」

「ええ。何せ、亀より足が早い食材ですので」

 

 私はてゐ女史との約束を破り、羽屋の屋根の上に下り立ちました。

 丁度、てゐ女史が店員にその耳を掴まれて、裏口から出て来たところでした。

 そしてその裏庭の中央に鎮座する狭い卓の上に、てゐ女史を乱暴に叩き付けます。

「まさか妖怪兎だったたぁな。見掛けじゃ分かんねぇもんだ」

 店員はそう言いながら、後頭部を強か打ってぐったりとしているてゐ女史の細い首を、ベルトで卓上にしっかりと固定しました。

 衛生上、毎日しっかりと水とブラシで清掃しているのもあって、思いの外小綺麗になってはいましたが、それでも卓の周りには、血で赤く染まった羽根がちらほらと残っています。

 そしてその卓はどす黒く、まるで表面が焦げるまで綺麗に火に掛けられたよう。

 しかし、実際にその卓を黒く染め上げたのは火でも塗料でもなく。

 ここで食材にされた、あまたの鳥達の血だと言ったら、一体どれだけの方が信じて下さるのでしょうか。

「俺だって噂ぐれぇ聞いてんぜ。でも店長の言う通りだぁな。この御時世に、んな殊勝な奴がいてたまるもんかよ」

 店員の手には、クリーバーと呼ばれる型の、分厚く四角い大包丁。

 鈍く光るその刃を、薄目で睨みつけるてゐ女史に見せ付けて、店員は尋ねます。

「でよ、妖怪兎ってうめぇのか。雁首を落としゃ、兎に戻んのか?」

 返事はありません。

 返事をしようとしたところで、首が絞まっていてはその声も出せるかどうか。

 そしてそのてゐ女史の目が、やっと屋根の上から顔を出す私を捉えます。

(今、お助けします)

 私は身振りと口ぱくでそう伝えましたが、てゐ女史は厳しい顔で、小刻みに頭を振って私を睨み付けました。

(やめろ、来るな!)

 実際そう思われているのかは分かりませんが、少なくとも良い顔ではありません。

 だからと言ってそれを黙って見過ごせるものでしょうか。

 せめて、あの店員の頭か首に、下駄靴の歯を一発お見舞いしてやらなければ。

 私は全力でそれを伝えましたが、それでもてゐ女史は頑として、頭を縦に振ろうとはしませんでした。

「あんだてめぇ、キツく締めたから息が出来ねぇってか?」

 暴れるてゐ女史に気付いた店員が、ベルトをぐいっと、更に強く絞め付けます。

 目をかっと見開き、声にならない悲鳴を上げるてゐ女史。

 店員はそれを見て、笑みすら浮かべて言いました。

「苦しいか?じゃあとっととやってやんよ。なぁに一瞬だ。怖がるこたねぇ」

 もう駄目です、我慢の限界です。

 それで無くとも包丁が高く振り上げられ、リンチの一線を超えようとしています。

「あばよ!偽善者ァッ!!」

 その声と共に、私は屋根から飛び降りました。

 高く振り上げられた包丁に私は右足を伸ばし、蹴り飛ばそうとして―空振り。

 速度の増した包丁が、今、その首に向かって――!!

 

「「てぇぇぇぇぇぇ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「開店でーす!いらっしゃいませー!!」

「「「いらっしゃいませぇ!」」」

「ん?今何か……」

「どうされました」

「ええ、今何か、裏の方で何か大きな物音がしたようなって」

「ああ、今丁度裏で捌いているところです。厨房でする訳にも行きませんからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カラン、カラン。

 

 包丁が卓に刺さり、そのまま自重で石畳の上に落ちる音。

 私の最初の蹴りはそのまま空を切るだけでしたが、左足が店員の体に減り込み、その筋肉質の胸板を蹴り飛ばしていました。

 しかし、その吹っ飛んだ店員の胸元には、紅く、高く噴き出る鮮血が。

 ぐったりと倒れる身体と、その白い割烹着の上に広がる、真っ赤な染み。

 着地した私が、はっとしててゐ女史を見ました。

 真っ直ぐと伸びたその右腕の先に握られるのは、今尚も白煙をふわりと上げる、あのオートマチック。

 その腕が力尽きて崩れ落ちた時、私はようやくてゐ女史の首を締め付けるベルトを外し、彼女の気道を確保したのでした。

「てゐさん!」

「ハァッ、ハァッ……野郎っ、キツく縛りやがって!マジで逝きかけた!!」

 ぜえぜえと激しく息を繰り返すてゐ女史。

 私が店の十間以内に来ていることなど、最早全く気にもしていないようでした。

 しかし怒りの治まらないてゐ女史は、下ろしたその腕をもう一度、けれども出鱈目に振り上げて、既に事切れて奥で倒れている店員の屍を再び撃とうとします。

「もういいですから!これ以上騒ぎを大きくするつもりですか!!回る首も回らなくなりますよ!」

 私はその手を取り押さえてなだめます。

 平生の冷静さを無くしたてゐ女史が、いつまたその引き金に力を加えるか、私も気が気で無かったのでした。

 やっとの思いで拳銃を取り上げた私は、そのか細いその身体を抱えて言いました。

「兎に角今日はもう失敗です!出直しましょう!」

 しかしてゐ女史はそれを聞いて、今度は私に向かって怒鳴り散らします。

「ふざけるな!!失敗だと!?何勝手に決めつけてやがる!!」

 この期に及んで、何て往生際の悪い方なのでしょう。

 私も少々頭に来て罵り返しました。

「何詰まらない意地を張っているんです!?誰がどう見ても大失敗でしょうが!!」

「黙れ!!その口ぶち抜くぞ!!」

 おもちゃを取られた駄々っ子か何かのように喚き散らし、失態を認めようともしない。

 あの冷静沈着な頭領の本性が、まさかこんなくそがきだったなんて!!

「ああもうやかましい!飛びますよ、グダグダ言ってると舌噛みますからね!」

 私はそれ以上物を言う気にもなれませんでした。

 翼を広げ、大地を蹴り、垣根を越え。

 羽屋から十間離れたその時、私に抱えられた小さな聞かん坊が、ぼそりと言ったのでした。

「お前こそ、舌を噛むなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キンッ。

 カラン、カラン。

 

「あれ?何か蓋に……妹紅さん、こりゃ一体何です」

「はい?何がです?」

「蓋の裏に、何かの金具が」

「えっ?」

「ほら、これ」

「い、いえ、何がなんだか……ん?箱の方にも何か……」

「な、何だこれは」

「「……コーラ瓶?」」

 

 

 

 

 ズドォォォォン!!

 

 耳をふさぎたくなる程の凄まじい音。

 背中をびりびりと小刻みに震え立たせる、痺れにも似た空気の震え。

 私を一瞬で追い抜く熱風と、八方から戻って来る反響。

 驚いて羽屋を見返せば、そこにはもうあの町家は見えず。

 分厚い爆煙と真っ赤な火柱が、嘗て羽屋と呼ばれる店が立っていた場所から噴き上がっているのでした。

 そしてもう一度、もう二度と、同じ場所から何度も立つ小さな爆発音。

 その音の落ち着きと共に段々と聞こえ出す、沢山の人間たちの悲鳴。

 けたたましく鳴り出す火の見櫓の半鐘の音。

「……言っただろう。失敗じゃないと」

 口をあんぐりと開けたまま呆然とそれを見やる私を尻目に、てゐ女史が落ち着きを取り戻して言いました。

「契約通りだ。店主と店員諸共、店を畳んでやったぞ」

 険が取れたその顔は、ようやっと、肩の荷が下りたと言わんばかり。

 確かに彼女は、私がお頼みした仕事を、見事にこなし切ったのでした。

「……一体どうやって……」

 俄に信じ切れなかった私は、その達成感でこのまま寝息を立てても可笑しくないてゐ女史に尋ねます。

 その目を細めて、てゐ女史は素直に答え下さいました。

「妹紅だよ」

 そう言われて、私ははっとします。

 十中八九、あれは口から出任せだったのでしょう。

 あの時、てゐ女史は兎にも角にも妹紅さんの危険性を訴え、しかしそれを信じられることはありませんでした。

 その忠告に真摯に耳を傾け、あの時点で一方的に契約を破棄していれば――。

 羽屋は、臨時休業と言う代償によって、今日を生き長らえたかもしれません。

 しかし羽屋はそれを拒み、いつものように妹紅さんを迎え入れて開店準備を進めました。

 そして客席に燃料を配る為、配達早々その炭箱のどれか一つを開ける必要がありました。

 すなわち、今日の配達分として来た炭の中に――。

「箱に手榴弾を一つ、その周りにモロトフ(※3)を仕込んでやった。箱を開けて、十秒でドカン。ガソリンが飛び散って炎上する。それを、あの店に搬入する箱全部に仕込んでやった」

 てゐ女史がそう言い切ると同時に、店の方からまた爆発音が。

 まさか、百パーセント信頼出来る相手から買っている、百パーセント信頼出来る筈の炭から、手榴弾が出てくるなんて、夢にも思わなかったでしょう。

 そして現場に残るのは瓦礫と、数多の焼死体と、一人だけ生き残る―不死身の妖術師のみ。

 どんな姿に成り果てようとも、あの爆発と火災の中でたった一人だけ生き残った彼女を、果たして人々は、奇跡の生還者として手厚く介抱するのでしょうか――。

「あんなに分が悪かったのに――」

 何て悪運の強い方なのでしょうか、と言葉続けようとして、私ははっとしました。

 今、私がこうして両腕で抱えているのは、巷でもその噂を欲しいがままにする、正真正銘の幸せの妖怪兎。

 他人にその幸運を分け与えてもお釣りが残る、引きの強さの塊のような方です。

 そのような方が、情けを利かせてその幸を分け与えようとしたのに、店はそれを無下にしました。

 そんなことをして、無事で済む訳がないでしょう――。

 私は霧雨店の時計台の前に下り、てゐ女史を下ろしました。

 まだ若干ふらふらとしておりましたが、てゐ女史は自分の脚でしっかりと立ち、向こうで黒い煙を上げる羽屋をじっと見つめていました。

 そして自分の懐をまさぐり、いつもの銘柄の煙草の箱を取り出して軽く振ると。

「……あぁ、そう言えば切れてたか」

 てゐ女史は箱を逆さにして、わざわざ刻まれた煙草の葉屑を振り落とし、そしてそれをくしゃりと握り潰しました。

 そう、それは本当に無いのか、と念入りに確認するように。

「どうぞ」

「ん?」

 そんなてゐ女史に私が差し出したのは、今朝市場で買った、新品の煙草の箱。

「銘柄はラッキー・ストライクでしたよね」

 差し出されたそれを見てしばらく目を丸くしていたてゐ女史は、ばつが悪そうに自分の頬を掻きながらも、結局それを素直に受け取って下さいました。

 そして蓋を開け、中の一本を取り出し、うん、と小さく頷くと、てゐ女史はにやりと笑いながら言ったのでした。

 

 

 

「全く、どいつもこいつも中を確認し忘れやがって」

 

 

※3 火炎瓶

一九三九年のソ連のフィンランド侵攻(冬戦争)の際、フィンランド陣営で「モロトフに捧げる特製カクテル」と言う名前で量産された手投げ焼夷弾のこと。

燃料等と普通の瓶で作られている。モロトフは当時のソ連の外相の名前。

「パンの投下」と言う名目でフィンランドを爆撃させたことから、そのお礼と言う皮肉を込めて名付けられた。

 

 

Column 7

『兎肉は幻想郷では人気の高い食材の一つである。かくいう私も大好物』(東方香霖堂より)

 

 日本の食肉の歴史やその背景には、私自身おいそれと言及する訳には行かない複雑な事情がありますが、これに対して何らかの意見を主張するものではありません。

 少なくとも鳥類と兎は、日本においても古くから食用とされて来た、と言う客観的事実に基づいてシナリオを制作しております。

 何卒ご了承下さい。

 今回の章は、PCゲーム『マフィア2』の中盤から終盤に掛けての各シナリオからも着想を得ております。

 本物のマフィアが実際にそのようなことをしていたのかどうかはまだ疑問の域を越えておりませんが、食肉加工に使う道具がそのまま拷問に流用出来ること、またその章で殺害することになる元同僚ルカ・グリノが肉好きであり、菜食主義に対する中傷者でもあったことから、このようなシナリオが出来たと推測します。

 幻想郷では、妖怪の存在により人間の上にも更に食物連鎖が続く訳ですが、本来弱者だった妖怪兎達は、一体どのような立ち位置となるのか。

 妖怪兎が『ボーパルバニー』と同義となった時、その連鎖はまた少し、複雑に変わって行くのかも知れません。

 

Column 8

 

「六発で終わると思ったか?残念、七発だ」

 

 てゐが使用する銃は、現在でも世界中に愛好家がいる自動式拳銃の傑作コルト・ガバメントです。

 てゐの体格と手の大きさでは少々大き過ぎる気もありますが、そこはご都合と言うことでご了承下さい。

 映画等の演出もあり、マフィアやギャングと言えば大型銃やサブマシンガンを片手に派手にドンパチする、と言うイメージが強いですが、一説によりますと、禁酒法時代の前半またはそれ以前は、自分の手のひらに収まる程度の、小さな銃を持つ傾向が強かったとも言われています。

 その理由は、大型銃が専ら軍用で手に入りにくかったこと、また単純に発砲音が大きく、街中で使うに適さなかったこと等が挙げられます。

 しかしその後、その音を出すだけで邪魔を牽制出来ると言う利点や、警察と敵勢力が装備の増強を進めたと言う事情から、次第に火器の大型化が進行し、遂に実戦で使わざるを得なくなった、とも言われています。

 話中では、てゐ一味は既に大型の銃を使用しておりますが、今後更に変わる可能性もあるかも知れません。

 

 

 
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