No.362411

真・恋姫無双 三人の天の御使い第三部[街で噂の皇帝陛下]其の二

雷起さん

第三部 「街で噂の皇帝陛下」其の二をお送りします。

現状打破の目的を忘れて二喬のために奮闘する一刀。それは女の子に対する一刀の優しさか、はたまた下半身の反射行動か?


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2012-01-12 18:37:26 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:4094   閲覧ユーザー数:3411

 

城を抜け出した俺(北郷一刀・赤)と祭さん、そして小喬の三人は大喬のいる宿へと向かったのだが・・・・・・大喬が出掛けてしまっていた。

「お姉ちゃん・・・一体どこに行っちゃったのよぅ!」

小喬が俺たちに会いに来るのに出掛けるとき大喬が今日は宿で休んでいると言っていたそうだ。小喬はもちろん俺たちに会いに行く事は黙っていたが。

「喬家の使用人も宿屋の者も何処に行くかは聞いていないそうじゃ。」

さすが祭さん、気が回るなぁ。

「大喬が行きそうな場所の心当たりはある?」

「あたしたちこの都に来てまだ三日しかたってないんだよ、どこに何が在るかさえほとんど分からないのに・・・」

今にも泣き出しそうな小喬の姿が俺の知っている小喬とかけ離れていて・・・新たな感動を覚えるなぁ。もしかしてこれが本来の小喬の姿なのかも・・・あの外史の冥琳はどんだけ仕込んでたんだ?

「なるほど、都に不案内となると・・・行きそうな場所は昨日北郷と出会った茶店近辺ではないか?」

「うん・・・確かに祭様の言うとおりかも・・・」

と、言うわけで今度は昨日の茶店のある界隈へ向かった。

 

そしてなんと!茶店に着く前に大喬を見つけることができた・・・のだが、一緒にいるのは・・・。

「おぉお!主さまじゃ!!やっと会えたのじゃぁあぁあ。」

美羽だった。

俺を見つけた美羽が涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら走ってきてしがみ付いた。

なんかこの子、精神年齢が会うごとに下がって行く様な気がするな。

「お姉ちゃん!もう、心配したんだからね。」

俺が美羽に捕まっている間に小喬が大喬のところに駆け寄っていた。

「あ、あの・・・小喬ちゃん・・・あちらは・・・」

大喬は俺の方を見て固まってしまっていて小喬の声が頭に届いていないようだ。

「祭様のおかげで来てもらうことができたんだよ!」

「祭様・・・?」

言われてようやく大喬の視界に祭さんが映ったようだ。

「暫くじゃ大喬、どうやらやっかいな病に冒されたようじゃな。」

「お、お久しぶりです、祭様!そ、そんなわたしは・・・」

「お、おぬしはこーがいではないかっ!」

美羽も祭さんの存在に気付いて声を上げ

「と、ということは・・・もしかして・・・この近くに孫策が・・・」

美羽の顔がどんどん青ざめていく。

「お、あそこに策殿がっ!」

「ぴいいいいいいいいぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃ。」

遂に悲鳴を上げて俺にさらに強くしがみつきガタガタブルブル言っている。

「祭さん、あんまり苛めないであげてよ・・・。」

「あっはっはっはっ!いやスマン、ついな。」

なんかいろいろ脱線したけどようやく大喬と話ができる。

「えぇっと・・・大喬、昨日は・・・怪我はしなかった?」

「は、はい・・・陛下が庇ってくださったおかげで・・・ありがとうございました。」

なんかこう改まって話すと照れるなぁ。

「・・・あの、陛下。お伺いしてもよろしいですか?」

「う、うん。なに?」

「あのとき・・・わたしの名前を呼ばれました・・・どうして・・・」

知っていたのか?か。まあ、そうだろうな。この外史の・・・目の前にいる大喬は俺が調べた限り滅多に屋敷から出ることは無かった。その代り小喬は姉のため外に出掛け色々な物を買ったり採ってきたりしていた。双子の姉妹であるこの顔を見れば『小喬』だと思い込むのが普通なのだ。

「俺は以前から大喬と小喬のことを知っていた・・・噂を聞いて知っていたって意味じゃなく、俺がこの国に来る以前から・・・天の国の記憶って言うのかな、俺にとって君たちはその生まれ変わりなんだ。」

「わたしたちが・・・」

「天人の生まれ変わり・・・?」

「だから逆に二人の噂を聞いて驚いた。俺の知っている大喬は確かにおとなしい子だったけど笑顔が素敵な子だ・・・君と同じ体でも。」

大喬は複雑な表情で聞いている。よかった、俺が大喬の秘密を知っているのを聞いて取り乱す覚悟もしてたんだけど。

「俺は・・・大喬、君の力になりたい。もし君たちさえ良ければ城に来ないか?」

大喬が口元を両手で押さえて何かを堪えるようにしていると、みるみる目にいっぱいの涙ため・・・ついに頬を伝い落ちた。

「ど、どうしよう小喬ちゃん・・・わたし・・・夢見てるのかな・・・?」

「夢なんかじゃないよお姉ちゃん!」

小喬も貰い泣きで涙を流しながら微笑んでいた。

「のうおぬしら。円満解決で誠に結構なんじゃが・・・そういうことは往来でやらんほうがよいぞ。」

「え!?」

祭さんに言われてここが往来のど真ん中で、しかも周りに野次馬がひしめいているのに初めて気が付いた。

「おぉ、主さますごい注目されておるぞ、妾は鼻が高いのじゃ。」

ずっと俺の腰にしがみ付いたままだった美羽が嬉しそうになんか言ってるけど・・・こんな注目のされかたは嫌過ぎる!

「と、とにかく城に行くぞっ!」

俺は右手に大喬左手に美羽の手を握って走り出した。そして大喬のもう片方の手は小喬の手を握っている。

「ここまで付き合ったんじゃ、最後まで面倒見てやるか。」

祭さんも俺たちの後ろから走ってきた。

「お嬢さまぁ!一刀さん!待って下さいよぅ。」

野次馬の中から七乃が飛び出し追いかけてくる。さてはあいつ野次馬にまぎれて見物してたな。

「美羽!七乃!城に着いたら色々聞きたい!」

「うむ、妾も主さまにいろいろ聞いてほしいのじゃ!」

「え~?面倒くさいなぁ・・・」

 

走っていく一刀たちの一団を屋根の上から見下ろす影・・・蒲公英が声を上げる。

「どうしてご主人さまが街に出て来てるわけぇ?今日は一日執務室に監禁だって聞いたのにー!」

蒲公英は成す術もなくその後姿を見ているといきなり目の前に明命が現れた。

「うわぁ!お、脅かさないでよっ!」

「す、すいません!緊急事態だったものですから。蒲公英さんもどなたか追跡されていたのですよね!」

「ていうことは明命も?えっと、たんぽぽは美羽を。」

蒲公英は朱里からの要請で、美羽と七乃が都入りしたという情報が入ったので罠を使ってもいいから少しでも城に来るのを遅らせてほしいといわれていた。

「そうですか、私は小蓮さまの命令で大喬さんを見張っていました・・・なるほど、大体察しが着きました。」

「???どゆこと?たんぽぽにはさっぱりなんだけど?それにあの白い服の女の子何者なの?・・・まぁ、なんとなく嫌な予感はするんだけど・・・」

「その女の子が昨日赤一刀さまが助けた方です。そしてその方は『江東の二喬』と呼ばれ噂になっている大喬さんと小喬さんです。」

「あぁ!その噂たんぽぽ知ってるよ。へぇあの子たちがそうなんだぁ。」

「実は赤一刀さまは建業にいたころに二喬さんの事を調べられていたことがありまして・・・」

「ご主人さまがぁ?なんからしくないなぁ、ご主人さまって来るものは拒まずだけどそんなふうに追いかけることってない人なんだけどなぁ。」

「確かに、私もそう思います。でも、あのときも小蓮さまに見つかって一刀さまは折檻されていました。」

「あはははは!まぁその二喬ちゃんのことは分かったけど、なんで美羽がその子と顔見知りなの?しかも今日は執務室に監禁されてるはずのご主人さままで現れてお城に連れてっちゃったから、たんぽぽの任務失敗だよぉ。」

「では、順を追っていきますね。喬家は江東ではそれなりの身分の家柄です、たぶん幼少のころから袁術さんの遊び相手をしていたのでしょう。そして一刀様ですが、祭様が一緒にいましたよね。」

「うん、そういえば・・・」

「祭様と二喬の母君はご友人なので小喬さんが祭様にお願いして一刀様を連れ出したのでしょう・・・大喬さんだけを監視していたわたしの判断が甘かったです。」

「へぇ・・・・なるほどねぇ。でも、今の状況でお城に連れて帰ったらご主人さまやばくない?」

「・・・・・・・そ、そうですっ!我々も早く帰城しましょう!」

「りょうか~い。大丈夫かなご主人さま・・・・・・でも面白そう」

蒲公英はきししと笑って明命の後を追って城に向かった。

 

城にたどり着いた俺と大喬、小喬、祭さん、そして美羽と七乃は執務室に戻っていた。

本当はもっと落ち着いた場所で話がしたかったんだけど、考えてみたら俺はまだ罰を受けている最中で、この部屋から出られるのはトイレの時だけと言われてたんだった。

「おう、お帰り!早かったなぁ、あと2時間くらいは掛かるかと思ってたんだけど。」

「お疲れ!大喬を連れてきたな・・・って、なんで美羽と七乃もいるの?」

「いやぁ・・・それが・・・」

走って喉が乾いたであろう女性陣にお茶を薦めて、その間に紫と緑に城を出てからの経緯を説明した。

「往来のど真ん中でか・・・」

「まあやっちまったもんは仕方ないさ。それよりも・・・」

「そうだな・・・大喬と小喬を城に迎えるって言っちまったんだ、どうやってみんなを納得させるか考えよう。」

考えたが情報不足で答えが出ませんでした・・・。

「ごめん、大喬、小喬。美羽との関係を教えてほしいんだけど?」

テーブルでお茶を飲んでいる女性陣に振り向いてお願いする。

「は、はい。わたしたちの母が孫堅文台様にお仕えしていたのはご存知ですか?」

「あぁ、小喬から教えてもらった。」

「その頃の文台様は荊州袁家の客将をなさっていて、それで母は美羽ちゃんのお母さんとも知り合いだったんです。」

美羽の・・・母親?・・・なんか麗羽のグレードアップバージョンを想像しちゃったぞ・・・。

「北郷・・・多分おぬしの想像は間違っておらんぞ。」

祭さんがすごい疲れた顔してるよ・・・

「その関係であたしとお姉ちゃんが美羽と遊んであげてたって訳。」

小喬もすっかり元気を取り戻したようだな、よかった。

「それじゃあ次は美羽に質問。」

「うむ、何でもきいてたも!妾も主さまに話したいことがたくさんあるのじゃ。」

こんなに目をキラキラされると言い出しづらいな。迂闊なこと言えないぞこりゃ。

俺たちへの報告では『美羽や麗羽たち五人は成都の暮らしが気に入っていてなかなか引越しを始めない』と聞いていた。だから俺たちは美羽と七乃がこの都に突然現れて驚いたのだ。

「美羽たちはいつこの都に着いたの?」

「今朝なのじゃ。だけど主さま、驚いたぞ。このような新しい都を作って、しかも三人揃って帝となっていようとは、さすが妾の主さまじゃ。」

「いやぁ、俺たちも初めてこの房陵にきたときは何にも知らされないままでさ、いきなり新帝国の旗揚げと即位でここから動けなくなっちゃって・・・美羽たちのこと気になってたんだよ(いろんな意味で)。」

「ほら七乃!妾の言うたとおりであろ。主さまは妾が良い子にしておればポイッてしないと約束してくれていたのじゃ!」

「えぇ、お嬢様の言う通りですぅ。誰かさんが邪魔をしない限りちゃんと一刀さん・・・帝とお呼びしたほうがいいですか?」

「公の場でなければ今まで通りで大丈夫。」

「そうですかぁ、では改めて・・・邪魔されなければ一刀さんに会えますよ、お嬢様。」

七乃は気づいてるな、俺たちも今ので察しが付いた。この引越しで忙しいときに麗羽たちが厄介事を起こされるのを警戒して誰かが策を練ったんだろう・・・・気持ちは分かるけど。

「あれ?そういえば麗羽たちとは一緒に来なかったのか?」

「成都を出発するときは一緒だったんですけどぉ・・・」

「途中ではぐれたのじゃ。」

「はぐれた?なんでまた・・・」

「ぶんしゅーのやつがまた地図を持ってきて・・・なんの地図と言っておったかのう七乃?」

「韋駄天の財宝って言ってましたねぇ。」

「・・・猪々子の奴、ついにそんな怪しげな物にまで手を出したか・・・」

「で、気がついたらいなくなっていたのじゃ。」

あ~・・・・実に分かり易い理由だな。まあ、麗羽たちのことだからいつか現れるだろ。

「それでの主さま、妾と七乃がこの都についてから城をめざしてたんじゃが、なぜか運悪くなかなか城にたどりつけなくての、七乃ともはぐれてしもうて心細くなっていたところで大喬にあったのじゃ。」

「ひと目で美羽ちゃんだって分かりましたから・・・泣きそうな美羽ちゃんを見つけて・・・気がついたら駆け寄って手を握ってました。」

照れて微笑む大喬、自分だってその時は落ち込んでたはずなのに・・・強いな。でも、大喬小喬が雪蓮、冥琳と関わっていないこの外史だから有りうる関係なんだろうな。

「良かったな美羽・・・ところで城に着けなかった理由を具体的に教えてくれるか?」

「うむ、工事中で行き止まりだったり、落とし穴に落っこちたり、たらいが落っこちてきたり、人ごみにもまれたり・・・ほかに何かあったかの?」

「蜂蜜に釣られて箱に閉じ込められたじゃないですかぁ、お嬢様。」

・・・蒲公英の仕業か。

「だけど一刀さんも相変わらずというか、あんな往来の真ん中でお嬢様を腰に抱きつかせたまま大喬ちゃんを口説き落とすなんて、憎いよこのぉ幼女殺しの鬼畜大魔王め。」

「口説き落とすって、俺は・・・」

言いかけたところで七乃が耳に口を近づけて囁く。

(一刀さんがどういうつもりだったか分かりませんが大喬ちゃんと小喬ちゃんはすっかりその気ですよぉ。)

(へ?それってどういう意味?)

祭さんも今の七乃の話が聞こえたらしく俺に耳打ちする。

(大喬と小喬は北郷の寵姫となる意を決したということじゃ。)

(寵姫!?俺は二人を保護するために城に来るように言ったつもりなんだけど・・・)

(あ~あ、これですよ黄蓋さん。)

(まったくじゃ。あの状況で勘違いとはとても言えんぞ、責任は取れよ北郷。)

「どうしたの?一刀様、すごい汗をかいてるけど。」

「大丈夫ですか?一刀様、お顔の色も優れませんが・・・」

「ちょ、ちょっと待っててね、大喬、小喬。」

俺は紫と緑に今の話を伝えた。

「・・・どうしよう?」

「まさか小喬までこんなに早く俺たちを受け入れるとは予想外だぞ。」

「雪蓮と冥琳の影響がない無垢な状態だからじゃないか?首輪もしてないし・・・」

「つまりこの外史で俺たちはあの二人の役回りも兼任してるのか?」

俺たちがコソコソ話をしていると背中に柔らかくて温かいものがしがみ付いてきた。

「一刀様ぁ、何を困ってるの?もしかしてあたしとお姉ちゃんの相手をする順番んで揉めてたりとか?だったら気にしなくても大丈夫ですよぉ。あたし達二人で三人同時にお相手しますから。」

ヤバイ!首に手を回して息を耳に吹きかけながらそんな事言われると一部がとっても元気になっちゃうんですけど。

「だめえええええええええええええ!もう我慢できないっ!!ちょっとあんた一刀から離れなさいよっ!」

叫び声と同時に扉を開けて突入してきたのは・・・小蓮!?

「な、なによあんた・・・って、尚香様!?・・・ふぅんだ、いくら孫家の姫様でも一刀様の前では引かないわよっ!!」

「シャオは一刀の妻なんだからあんたは遠慮しなさいよっ小喬!」

「一刀様が正妻をお決めにならないって話は巷でも有名なんだからそんなの聞けません~!」

「し、小喬ちゃん・・・喧嘩しないで仲良くしようよ・・・」

「主さまの妻と言うなら妾だってそうなのじゃ!」

「「そこまでっ!!全員静かになさいっ!!」」

大音声と共に叩きつけられた凄まじい殺気のせいで全員が竦み上がった。

そして現れたのは華琳と雪蓮。その後ろに桃香と蓮華、更にここからは見えないけど廊下にもかなりの人数の気配がする。

「一刀、貴方達昨日の騒ぎといい、今のこの状況といいもう少し考えて行動しなさい。」

「昨日の件に関しては軍師の子達の暴走もあったから大目に見るけど、今日のは庇いきれないわよ~。祭も冥琳が後で話があるって言ってたわよ。」

「な、なんじゃとぉ!?」

冥琳は来てないんだ・・・じゃなくて、祭さんゴメン。

「そうね、昨日の件は桂花の入れ知恵も有ったことだし、私としても咎める気はないわ。」

桂花のアドバイスもバレてるし・・・。

「・・・あ、あのう因みに桂花はいまどちらに・・・」

「ウフフ、お仕置き部屋よ。どうなっているかも聞きたい?」

満面の笑顔でお答えになる華琳様に背筋が凍りつく。

「「「いいえ!滅相も御座いませんっ!!」」」

俺たち三人は同時に土下座する。

「だけど偶然とはいえ美羽と七乃までこの場に居合せるなんてねぇ・・・って、七乃。美羽どうしちゃったの?」

「もう!孫策さんが驚かせるから気絶してお漏らしまでしちゃいましたよぉ。」

雪蓮が居るのにいつものガタブルが聞こえないと思ったら限界を既に超えていたか。

「あちゃー、これでまた仲直りに掛かる時間が伸びちゃったわ・・・一刀、この責任もとって。」

「それは俺らのせいじゃないだろ!」

「さてと、それじゃあ今回の被害者『江東の二喬』とは貴方達ね、初めまして。曹孟徳よ、華琳と呼んで頂戴。」

被害者って・・・加害者は俺らですか?しかも華琳が真名をいきなり預けるなんて・・・。

「私のことは知ってるわよね、雪蓮ってこれからは真名で呼んで頂戴ね。」

大喬はもちろん小喬もさっきの小蓮への威勢も消し飛んでただ首を縦に振るのが精一杯だ。

「あ、次わたしっ!劉備玄徳です、真名は桃香。ヨロシクね、大喬ちゃん小喬ちゃん♪」

「私も自己紹介はいらんな、こ、今後は蓮華と真名で呼んでくれ・・・一刀のことは・・・その・・・いや!何でもない!とにかく今後もよろしく頼むぞ。」

これで三国の王から真名を預けられたな・・・そうか・・・。

「華琳、ありがとう。恩に着るよ。」

次々に真名を受け取ってゆく大喬と小喬、その姿を見ながら華琳に礼を言う。

トップが真名を預ける。つまり二人を仲間に加えるのを認めたということ。しかもみんなが真名を預けやすくなるからな・・・。

「フフ、私だけじゃなくあっちの大酒飲みにも感謝なさい。蓮華はあれのおかげで折れたんだから。」

見ると雪連は小蓮の説得をしていた。

「そっか、じゃあ美羽との仲直りを俺らが取り持ってやらないとダメだな・・・ところで、どの辺から居たんだ?」

「あんたが二喬を連れて戻って来たところからよ。」

「・・・さいですか。やけにすんなり執務室に戻れたのはそういうことだったのか。」

「そうね、これがもし真直ぐ閨にでも行っていたらどうなっていたかよく考えておきなさい。」

想像しなくても分かる・・・というか想像したくないなぁ・・・。

「ご主人様・・・あの、この度は申し訳ございませんでした・・・」

朱里、雛里、亞莎、風、月、詠の六人が並んで頭を下げていた。

「今回の街に出した御触書はやりすぎだったわ、反省してる・・・」

あの詠がここまで素直に謝ってくるなんて余程だよな。

「もういいよ、別に怒ってる訳じゃないし、みんなをそこまでやらせる様な俺たちの行動にも問題があった訳だし、今度からは誰かしら護衛をつけて出掛けるようにするからそれで今回の件は終わりにしよう。」

「ありがとうございます!一刀様!」

亞莎がまだ申し訳なさそうな顔をしながらもはっきりと答えてくれた。

「ちょっと悪乗りが過ぎましたねぇ、ごめんなさいですお兄さん。」

「まぁこいつらも仕事が忙しくて兄ちゃんの相手が出来なくて焦ってたんだ。男なら笑って許してやれよ。」

宝慧の言う事も、成る程確かにその通りか。

「ごめんな、俺らもみんなが相手をしてくれないからって甘えてたんだな。許してくれ。」

「はわわ!ご主人さまが謝ることはないですよっ!」

「あわわ、私たちもどうかしていたんです。」

「はうぅ、お顔を上げてくださいご主人さま。」

「それじゃあ、お互いこのことは水にながそう。ね。」

顔を上げると俺は笑ってこの話は打ち切る事にした。

さて、次は大喬と小喬をどうするかだけど・・・。

「ところで月と詠にお願いがあるんだけど。」

「は、はい。何でしょうか?」

「大喬と小喬を月たちの所で使ってやってほしいんだ。」

「あのぉそれはご主人様のお世話係ということでしょうか?」

現在俺たちの身の回りの事をしてくれているのは月と詠が率いるメイドさん部隊なのだ。

「う~ん、それもあるけど政務の手伝いもさせて欲しいかな。あの二人の能力は未知数だからいろいろやらせてみて。」

「つまり管轄はボクらで、みんなのところで仕事を手伝わせて早く打ち解けさせようってことね。まったくこういうことには頭が回るんだから。」

「はは、そういうこと。」

「わかりましたご主人様、私も早く仲良くなれるよう頑張りますね。」

月は人当たりがいいからこういうとき頼りになるなぁ。

「ふふ、一刀。悪くない采配よ。」

横で見ていた華淋が満足そうに頷いている。

「華琳に褒められると照れくさいなぁ。」

「ところで一刀、ちょっと耳を貸しなさい。」

なんだ?何か問題でもあったかな?とにかく少し屈んで華琳の口元に耳をよせる。

(直ぐにとは言わないけど二喬を閨に呼ぶとき、いつか私にも声を掛けなさい。)

はあ!?

(二喬の噂を聞いて前から狙っていたのよ。先を越されたからこの場はあなたたちに譲るわ。)

・・・・・・確かに三国志演義で曹操が二喬を手に入れようとしてるくだりが有ったけど、あれって孔明の嘘じゃなかったっけ?

華琳の表情を伺ってみると・・・うわっ!目がマジ!血走ってるしっ!

俺は華琳に気圧されて思わず首を縦に降ってしまった。

「んっふっふっふっ。楽しみに待っているわよ、一刀。」

うう、とんでもない約束をしてしまった・・・。

あれ?もしかして華琳が率先して今回の騒ぎの事態収拾をしてくれたのって・・・・・・大喬と小喬が目当てだったからかっ!!

「一刀様!みなさんがわたしたちを歓迎する宴を催してくださるそうです。」

大喬が嬉しそうに報告してくれた。

「おっ、もうそんな話が出てるのか。」

雪蓮を始めとする酒飲みたちにはいい口実だもんな。

「一刀様!あたしたちもお仕事させてもらえるんですね!月さんから聞きました、がんばって勉強して早く一刀様のお役に立てるようになります!」

小喬が俺の腕に抱きついて嬉しいことを言ってくれる。

「あぁ、二人とも宴会も仕事もみんなと打ち解けるいい機会だ。早く仲良くなれるのを期待してるよ。」

「「はいっ!一刀様!」」

大喬と小喬の満面の笑顔。俺の当初の思惑以上の成果が出せたんじゃないだろうか。

 

 

この後俺たちは騒ぎを聞きつけて現れた愛紗に大目玉を食らった後、抜け出した罰として執務室でのカンヅメが三日間に延長された・・・。

 

大喬と小喬が城に来てから数日後、俺たち『北郷一刀』三人はまたしても中庭の東屋で顔を突き合わせていた。

「おかしい・・・」

「未だに街で女の子を見かけないぞ。」

「前の御触書を無効にする御触書は確かにあちこちで見かけるのに・・・」

俺たちがうんうん唸っていると蒲公英と明命が通りがかった。

「ご主人さま~!三人揃ってこんな所でなにしてんの?」

「一刀様方、お疲れ様です!何かお悩みのご様子ですがこの周幼平にできることでしたらいつでも仰って下さい!」

そう言えば俺が街から大喬を連れて来る時二人はそれぞれ美羽と大喬を見張っていたって報告が有ったっけ。

「ほら、例の御触書で俺たちが街で女性を見かけなくなっただろ、それが取り消す御触書を出しても以前と変わらないからどうなってるのかと思って・・・」

説明を終えると二人はキョトンとなって、それから二人同時に溜息を吐いた。

えぇ?ナニこの反応?

「いい?ご主人さま。元々前の御触書のとき街の人たちは噂でしかご主人さまの女好きを知らなかったのに奥さんや娘さんを隠したんだよ。」

「噂に乗って面白半分というのも有ったでしょうがこの間の大喬さんと小喬さんとの事はその噂を真実と受け取らせるには十分な効果があったと思います。しかも、それまでは武将や軍師といった言わば『お城の中での話』でした。ですがお二人は『庶人』です。街の男性たちは本気で危機感を覚えています。」

「「「・・・・・そんなに?」」」

「あの場面を見たらねぇ。まるで芝居の山場を見てるみたいだったよ、たんぽぽなんか思わず『なんであそこに居るのが自分じゃないの?』って思っちゃったぐらいだからねぇ。だから街の女の子から嫌われたんじゃなくて、逆に人気は鰻上りだから安心しなよ。」

「ちょっと待った!女の子の人気が上がるってことは男たちが余計警戒して女の子を外に出さなくなるってことじゃないか!?」

「そ、そうなりますねぇ・・・でも、人の噂も七十五日って言うじゃないですか、時がたてば元に戻りますよ。」

「うぅ、暫く俺らは男だらけの街しか見ることが出来ないのか・・・」

「あ、そうだ。芝居で思い出したけど、あの場に芝居小屋の人がいて感動したから芝居にして上演するって阿蘇阿蘇に書いてあったよ。」

ノオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!

「それじゃあ何か!?俺たちは芝居の上演期間が終わるまでこの状態ってことぉ!?」

「人気が出たらいつまでも上演し続けると思うよ。」

今俺たちの中で何かが崩壊する音が確かに聞こえた・・・。

「・・・俺たちはもう城の中でしか女の子と会うことは無いんだ・・・」

「・・・いっそ引きこもってしまおうかな・・・」

「・・・何故だ・・・何故こうなってしまったんだあああああぁぁぁ!」

俺たち『北郷一刀』の叫びは虚しくも蒼天に消えて行くのだった・・・。

 

 

真・恋姫無双 三人の天の御使い 第三部 「街で噂の皇帝陛下」 了

 

 


 
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