No.350336

きみがキッチンに立つまぼろしを見た

minyuoriさん

タイトルは変身様よりお借りしました。初燐しえです

2011-12-21 08:47:51 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:738   閲覧ユーザー数:734

 

 

「燐は将来素敵なお嫁さんになれるね」

 

 そう、燐の胸に爆弾を放った本人――杜山しえみは、シチューのスプーンを口に運び、ほっぺたに手を当てて「美味しい」と連呼している。

 一方の燐はタイミング悪く水を飲んでいたところで、吹き出しそうになるのを必死にこらえた。

 げほげほとむせていれば「大丈夫、燐?」と尋ねてくる。

 

 お前の頭が大丈夫かよ――という言葉は飲み込んで、テーブルの向こう側の相手を見据える。

 

「普通そこは〝お婿さん〝だろ……!」

 

「ご、ごめん! ……でも、とっても美味しくて…………」

 

 もじもじしながらもごもご言う。

 突っかかっているつもりはないが、それにしてもお嫁さんはない。断じてない。

 

「私、お料理あんまりできないし。特に洋物のことはよくわからないから……燐はやっぱりすごいよ」

 

 ま、当然。

 燐が鼻の下を伸ばしかけた時、

 

「そうだ、私がお味噌を作るから燐はそれでお味噌汁作ってよ! 」

 

「は、はあ!?」

 

 超展開に燐はついていけない。

 けれど、しえみの方は瞳をきらきらさせて、

 

「燐の美味しいお味噌汁が毎朝食べれたらすてき!」

 

 本当は作り方も教わりたいんだけど、そこまで迷惑かけれないし――うんたらかんたら。

 

 燐の美味しいお味噌汁が、毎朝、毎朝、毎朝食べられたらすてき!

 しえみの言葉が頭をかけめぐり、心臓がヒートアップする。何故だかわからないがスプーンを握る手が震えているし、椅子に座っているのに膝が笑っている。

 

「お前、意味分かって言ってんのか?」

 

 妙な緊張感に襲われながら、恐る恐る訊いてみた。

 うん、勢いよくかぶりを縦に振ってしえみは言う。

 

「そういうの、

 

 〝ぎぶあんどていく〟って言うんでしょう?」

 

 楽しみにしててね、燐。

 蕩ける笑顔を浮かべるしえみに燐は頭を抱えた。

 どうしてか目頭が熱かった。

 

 

 

2011*8/10

天然キラーなんだけどしえみちゃんここまで鈍くはないかな。何が書きたかって、辟易するかわいい燐君をだよ(爆)


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
1
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択