No.346241

真・恋姫無双 魏が滅亡した日 Part52 大局

見習いAさん

大局に逆らうな

2011-12-11 21:18:34 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:3188   閲覧ユーザー数:2836

「お~い、お~い一刀」

 

「・・・・・・・」

 

「・・・・一刀!」

 

「おゎ!」

 

「どうしたんだ急にぼ~っとして、へっへっへ、俺に負けるのがそんなに悔しかったか?」

 

「及川?」

 

「おい、本当に大丈夫か?」

 

そこは及川の部屋だった

 

「そろそろ止めにしようぜ、一刀」

 

俺達は及川の家で新作格闘ゲーム『真・恋姫†夢想 ARCADE EDITION』で対戦していた

 

「このまま終われるか。もう一度だ」

 

「はいはい」

 

及川は根っからのゲーム好きで、腕前は俺より遥かに上

勝てるはずもなく、既に20連敗・・・・・

 

「また魏から選ぶのか。魏は上級者向けだから、初心者向けの蜀から選べって」

 

「へん、次こそ華琳で勝利を掴んでやる」

 

俺は及川に借りた蒼○航路がきっかけですっかり魏贔屓になっていた

それが恋姫にまで影響を与えるなんて

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

それから何時間もゲームに熱中していた

そして

 

「はい98連勝、一刀そろそろ諦めろ」

 

「むむむ、もう一度チャンスを!」

 

「そう言われても、ほら」

 

及川が時計を指差した

 

「もうこんな時間だぞ。お爺さん、怒ってんじゃないの?」

 

時計の針は午後11時を回っていた

それを見た瞬間、体中から血の気が引いていく

 

「・・・・・稽古さぼっちまった・・・・」

 

やばいやばいやばいやばいやばい

ゲームに熱中しすぎてじいちゃんと約束してた稽古サボっちまった

 

「こ、殺される」

 

及川の家族に挨拶もせず、後ろを振り返ることもせず

靴を履き終えるとダッシュで家に向かった

 

今更走ったところで結果は変わらないのにね、はぁ・・・・・

 

「はぁ、はぁ、はぁ、裏道行くぞ」

 

普段使わない裏道

細い路地を全力で駆け抜けた

 

外はだいぶ寒くなっていたけど、今の俺は全身燃え上がったように熱かった

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、おりゃぁぁぁぁぁ!」

 

ダッシュのスピードが上がる

裏路地はもう少しで抜けられる

 

「よっし、もう少しで家・・・・うわぁ!!」

 

足元を黒猫が横切った

黒猫を避けようとした俺はスピードがMAXだったのもあり前のめりでバランスを崩してしまった

 

派手に転んでしまった先は細い路地を出た道路の上だった

 

「痛っててててて・・・・・!?」

 

左の方からキキッー!と、大きな音がした

 

顔をそちらに向けると、二つの大きな光が見えた

トラックだと思う

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「満月じゃない。あれは・・・・ヘッドライト・・・・・」

 

この世界に来たとき、光に全身を包まれたことは覚えていた

けれど、その光が何かまでは覚えていなかった

俺を包んだ光はヘッドランプだったんだ

 

「・・・・・これで、大局の意味が分かったかのぅ」

 

「・・・・・・・・大局は、俺自身、それも、本当の俺」

 

やっと、やっと分かった

この世界の意味が

 

「・・・・・俺は、その後どうなったんだ」

 

当然の質問をした

けど、許子将さんは何も言わなかった

 

「・・・・・そっか、大局に逆らうな。それってつまり・・・・・・俺、死んだんだな」

 

「曹操も驚いていたよ。あのように狼狽する姿を見るなど、わしだけかもしれぬのう

どうじゃ、わしの提案を受け入れる気になったか?全て終わらせようではないか」

 

「・・・・・・・・・あんた、何者なんだ」

 

「ふむ、言うなれば外史の管理者。お主のように新たな世界を構築する者は他にもいる。

作られた外史は一つや二つではないのじゃ。そんな外史が無尽蔵に増え続けたらどうなる?

人によって生まれた世界は必ず終わりも迎えねばならぬ。終わらぬ世界が無尽蔵に増え続ければ

作られた世界は無限に広がり続け、やがて限界を超え、次元そのものが崩壊する

その崩壊はどこまでも波及し、真に世界が滅びるじゃろう

まぁ、お主のように運命を受け入れず、外史を作り続ける者は稀じゃがの」

 

そう言って笑って見せた

顔を隠していた布の向こうに見えたのは、華琳と変わらない年代の女の子だった

 

それを見て腰から力が抜けてしまい尻餅をついた

 

「ははは・・・・・はっはっはっはっは」

 

涙が止まらなかった

全て、自分で作った世界

自分で作った世界だから、皆が俺に優しかっただけだ

 

「さあ、終わりにしよう。あの者達への未練はないな?」

 

あの者達・・・・・華琳、春蘭、秋蘭、季衣、名前を挙げていったらきりが無いたくさんの大切な人たち

その人たちの顔が走馬灯のように走り抜けていった

 

さよならをしなくちゃならない・・・・のか?

 

「・・・・・・・・・・いやだ」

 

「む?」

 

「・・・・皆まだ戦ってる」

 

「むぅ」

 

「それなのに・・・・・俺だけここで諦めていいのかよ。皆まだ戦っているんだ。俺だけ・・・・」

 

「ふむ、仕方ない奴じゃのう」

 

そう言うと、許子将は水晶を取り出した

 

「ほれ見てみい。おぬしが作り上げた者達は風前の灯じゃ。もうじき、全てが終わるじゃろうて」

 

水晶には何も映っていない

なのに不思議と映像が脳内に送り込まれてくる

炎上する魏・蜀連合軍陣地 崩壊する合肥城 撤退する長安の蜀軍 そして、息を切らせ秋蘭の攻撃を必死にかわす華琳

 

全てが絶望的に見えた

 

「皆・・・・・」

 

「・・・・・終わりじゃ」

 

水晶が眼前に出される

 

「ぅ・・・・ぁ・・・・・・」

 

終わる

全てが

俺は、諦めた

 

 

 

 

 

 

 

 

何かが刺さる音がした

 

「・・・・・ぅぐ・・・・・・・・誰じゃ・・・・・・・貴様ッ!!」

 

「!?」

 

水晶に飲まれそうになった俺は突然意識を覚醒させられた

上を見上げると、こちらをのぞきこむように見ていた許子将さんの胸から銀色の剣の先が見えた

 

「諦めるな北郷、お前には私達がついているじゃないか」

 

「ぱ・・・・・・・・・白蓮さん?」

 

「桃香も、華琳も、雪蓮も、絶対に負けない、諦めない。だから、お前も諦めちゃだめだ」

 

許子将さんの口から血が吹き出した

 

「だ、誰じゃ貴様、貴様なぞ知らんぞ!」

 

「公孫賛だ!白馬将軍の公孫賛だ!!蜀陣営の将で・・・・・・・一刀殿と真名を交わす仲だ」

 

白蓮さんの頬が赤くなっていた

許子将さんは公孫賛と聞いて考え始める

 

「こ、公孫・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わ、忘れてたぁ・・・・orz」

 

「そ ん な こ と だ ろ う と・・・・・・・思ってたよ!!」

 

白蓮さんが剣をなぎ払う

白蓮さんの剣に切られ、許子将さんの体が大きく横に切られていた

どう見ても致命的な傷なのは明らかだ

 

「お、おのれ、影が薄すぎて存在を忘れてしまうとはなんたる不覚」

 

「むっがぁーーーー!!」  「白蓮さん落ち着いて」  「止めるな北郷!!」

 

白蓮さんが許子将さんに更に攻撃を加えようとしたので羽交い絞めにする

俺は暴れる白蓮さんを必死になだめた

 

「落ち着いて白蓮さん。許子将さん、あなたの負けです。俺は、皆を捨てるなんてできない。すぐに軍を引いてください」

 

「ぐぅ・・・・この程度の傷すぐに回復・・・・・・・しない?なぜだ?」

 

許子将さんの傷は出血こそ少ない物の、回復する気配は無い

はっとした表情で白蓮さんを睨む許子将さん

 

「まさかその剣は、宝剣か?」

 

「は?」

 

驚いていたのは白蓮さんもだった

白蓮さんの剣は確か『普通の剣』だったはず

市販品と同じ物のはずだけど

 

「この剣は父より受け継いだ剣だ。私は物を大事にするのが好きでな。ずっとこの剣を使っていただけなのだが」

 

「い、一本の普通の剣を何年も使い続けていたんですか?」

 

「だって、一々交換していたらもったいないじゃないか」

 

どこまで普通なんだこの人は

いや、ある意味普通じゃないのかも

そういえば、真桜も白蓮さんの新武器だけ作り忘れたって言ってたな

 

「・・・・ふ・・・・ふふふ・・・・はははは、確かに私の負けだ。まさか貴様の作った人間を一人見逃すとはな

だが、兵は引かぬよ。夏侯姉妹、典韋、周泰にかけた呪いも解かぬ

貴様が強情にも運命を受け入れぬなら、強引に受け入れさせるだけ

皆の亡骸を見ればその考えも変わるだろう」

 

そう言うとまた水晶をかざした


 
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