No.344924

【ボカロ小説】歌手音ちゃんお祝い計画【歌手音ピコ+VY組】

七莉ひおさん

歌手音ピコちゃんお誕生日おめでとうございます!なのに遅くなりました; 以前の「みずきちゃんお祝い計画」の続きっぽいですが、未読でも全く問題ありません。今度はVY組が歌手音ちゃんをお祝いします。別所投稿と同日アップです。

2011-12-08 21:44:28 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:704   閲覧ユーザー数:702

 

 

 

スタジオでの収録後、ピコが勇馬のもとへと駆け寄ってきて一言。

「勇馬っ、僕の誕生日覚えてる?」

「はい」

よかった、と言うとチラシを一枚、その手に渡す。

「?」

「この赤丸つけてある物のどっちかがいいな。誕生日プレゼント」

「これかこれ、ですか」

そうそう、とにっこり微笑む。

「お姉さんの時もプレゼント悩んでたでしょ。だから二択まで絞っておいてあげました」

「…ありがとうございます」

「よろしくねー♪」

 

 

  ++ 歌手音ちゃんお祝い計画 ++

 

 

 

「それは優しいと言うべきなのかしら」

弟から経緯を聞いたミズキは思わず苦笑する。

「プレゼントは今買ってきました」

「もしかしてさっき出かけたのはその為?」

「はい」

確か勇馬は一時間半程外出をしていた筈。

チラシのお店には往復で三十分程。

「…お店に一時間もいたんだ。他にも何か見てたの?」

「いえ、どちらにしようか迷っていたんです」

「…やっぱりピコくんは優しいと思うわ。もう何も悩む必要もないわね」

「そうなんですけど…」

どうにもはっきりしない語尾にミズキは首を傾げた。

「何かあったの?」

「本当にこれだけでいいのかと。ピコが本当に欲しい物ってこれなのかなって…」

「私にはよく分からないけど、他にもあげたい物があるならあげればいいんじゃない?」

勇馬は考え込むように黙り込んで俯いたまま。

ミズキの方もそれ以上は特に何も言わず、手元のお茶を口にしつつ弟の次の言葉か行動を待つ。

数分後、考えがまとまったのか、決めた、と呟くと顔をあげた。

「姉さん、ピコへの誕生日プレゼント、協力して貰えませんか?」

「私? 私に出来る事ならいいわよ」

「ありがとうございます! 俺が考えているのは…」

 

 

 

 

 

 

そして当日、勇馬とミズキの二人はピコの家へと向かう。

用意する料理の都合もあるだろうから、事前に二人で行く事は伝えてある。

 

「いらっしゃい! ミズキも来てくれてありがとう」

「ちゃんとプレゼント持ってきたから安心してね」

そう言って手元の箱を上げて見せる。

「別にそんなの良かったのに。あ、勇馬忘れてない? ちゃんと買えた?」

「はい。ちゃんと買えましたよ」

「よしよし。よく出来ました♪」

まるで子供に確認するかのようなやり取りにミズキは思わず笑いそうになる口元を押えた。

「…でもさ、僕の頼んだものってそんなに大きい袋に入れるものじゃなかったよね…?」

勇馬の手にある大きな袋を見てピコの表情が僅かに歪む。

「これは別の物が入ってるから大きいんですよ」

「よかった。間違えてとんでもないもの買ってきたかと思っちゃった」

ピコはほっと胸を撫で下ろす。

「さ、二人とも中に入って!」

 

中に入るとケーキやお菓子、ジュースがテーブルの上に並べられていた。

まずはプレゼントを、と二人それぞれにピコへと手渡す。

「私からはあのチラシにあった勇馬の選ばなかった方なんだけど良かったかしら」

「どっちも欲しかったから嬉しいよ! 二人ともありがとう!」

それじゃあ椅子に座って、と促すが勇馬は他にもプレゼントがあるんです、と言って先程の大きな袋の口を開いた。

ピコの目が驚きで大きく開かれる。

「あのチラシのだけで良かったのに! もしかしてチラシ渡す前に何か用意してた?」

「いえ、品物じゃないんです」

「?」

言葉の意味が分からず戸惑うピコに、勇馬は力強い声で発表する。

「俺と姉さんでピコの家族になります!」

「はい??」

「ピコの所に妹か弟が来るまでの話ですよ」

「…来るかなぁ…もう期待はしてないよ。一人でも別に寂しくなんかないよ」

はぁ、とため息。

「そんな事言わないで下さい! ピコは家族欲しくないんですか?」

「それは…ちょっといいな、って思うけど…」

二人を見ながらぼそりと呟く。

「思うんですよね? だったら、俺を父さん、ミズキ姉さんを母さんと思ってください!」

「姉とか弟もいいとは思うけど…って、えええ!? ちょっと待った! 親になる気!?」

まさかの親発言にピコの声も裏返る。

「まずは形から入ろうと思って付け髭とかスーツ持って来てみました。ピコはどんなお父さんがいいですか?」

「その大荷物は何かと思ったら仮装セット!?」

ミズキまでその袋に手を入れて何かを取り出してくる。

「割烹着とエプロンがあるけどピコくんどっちがいい? 呼び方はお母さんでもママでもいいよ」

「勇馬の発想は仕方ないとしてもミズキが止めてよ! 何で一緒になってやろうとしてんの!?」

ミズキは困ったように眉を寄せて首を傾げてみせる。

「可愛い弟の頼みは断れなかったの」

「ちょっと面白がってません?」

 

親になろうとする勇馬を説得するのに約五分

 

「普通に友達として今まで通り付き合ってくれればいいんだよ」

伝えたいのはとにかくこの点なのだが、どうにも上手く伝わらない。

「俺と姉さんでは駄目でしたか」

「そうじゃなくて…気持ちは嬉しいけどね。僕の事考えてくれたその気持ちだけは。」

気落ちした様子の勇馬にどう伝えればいいのか。

顔では冷静さを装いながら、頭の中では必死で説明を探す。

「僕は今のままの、後輩で友達の勇馬がいいんだから、親になってその勇馬が消えられるのは嫌なんだよ」

「今の俺ですか」

「そう、今の勇馬がいい」

「…分かりました」

本当に分かったのかは怪しい所だが、その口元が微かに笑っているように見えたのでピコもひとまず安堵する。

「お話まとまったならケーキ食べましょう。凄く美味しそうよ」

いつの間にか着席していたミズキがケーキナイフ片手に二人を呼ぶ。

その声に二人も席へと着いた。

「でもピコが家族欲しくなったら、いつでもお父さんになりますからね」

「だから何で父親なんだよ…ミズキと勇馬は姉弟なのに…」

 

親にも弟にもなってもらうつもりはないのでそれ以上の突っ込みはやめ、お祝いされながらのケーキの味を楽しむ事にするピコであった。

 

end

 

 
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