No.344460

本編補足

根曲さん

・必要事項のみ記載。
・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。

2011-12-07 17:31:22 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:260   閲覧ユーザー数:259

安い命

C1 英雄

C2 トイレの前

C3 豹変

C4 死化粧

C1 英雄

 

グリーンアイス連邦議事堂内。円形の議場を埋め尽くす都市国家代表者達。中央の高く巨大な柱の上にあるお立ち台の上にグリーンアイス連邦総代表レッサーパンダ獣人ラスが居る。

 

ラス『名誉あるグリーンアイス都市国家群連邦同胞よ。今日は良い知らせがある。あの憎っきユグドラシル大陸王国に上陸したアレクサン代表率いる遠征部隊が勝利を治めた。』

 

議場より歓声。

 

ラス『これよりユグドラシル大陸王国と講和を結び、アレクサン代表に華々しい凱旋をさせようではないか!』

 

ダランセルが立ち上がる。ラス及び各代表たちはダランセルに目を向ける。書記長席のバルコフ・スターリングは口を開く。

 

バルコフ・スターリング『ゴーラン市ダランセル代表。』

 

バルコフ・スターリングの声が議事堂内に響き渡る。

 

ダランセル『総代表殿!奴らと講和を結ぶなど、私は承服致しかねます。ユグドラシル大陸王国は超大国。小手先の大勝利だけではすぐに我々の喉元に刃の切っ先を突き立ててくるでしょう。幸い前王クセルクセス・ユグドラシルはボケが進み、幽閉され、今、国を統治しているのはバトゥでは無くブゼンです。このまま首都まで攻め込み、講和に持ち込んだ方がよろしいでしょう。』

 

ラスは眉を顰め、顎をさする。ニールレイグが起立する。書記長席のバルコフ・スターリングは口を開く。

 

バルコフ・スターリング『ダルク市、ニールレイグ代表。』

ニールレイグ『議長。私もダランセル殿に賛成です。インペルガにアポカリョプス等の諸勢力の反乱が起こり、今こそ好機。必要な物資を揃え、我々もアレクサン代表と共に戦おうではないですか!』

 

議場より歓声。

 

掛け声『英雄アレクサンに続け!』

 

更に歓声。

 

ラスはバルコフ・スターリングの方を向く。バルコフ・スターリングは立ち上がり、腰に手を当て口髭を指でなぞる。

 

バルコフ・スターリング『少し時間が早いですがここで一旦閉幕とさせて頂きます。3時間後、攻めるか引くか決めた後、またこの場にお集まりください。』

 

都市代表達は議場を去っていく。

 

C1 英雄 END

C2 トイレの前

 

グリーンアイス連邦議事堂廊下を歩くニールレイグ。

 

ニールレイグ『ああ、早くアレクサン殿と戦場で馬を隣に並べたいものだ。』

 

ダランセルがニールレイグに近寄る。

 

ダランセル『同志ニールレイグよ。今は勝てる見込みがあるから良いが、もし負け戦だった場合、そのような事を言っておられないぞ。』

 

ダランセルはニールレイグから離れる。ニールレイグは眉を顰めダランセルの後ろ姿を見つめる。前方、トイレの前にラスとバルコフ・スターリングが居る。バルコフ・スターリングがラスの耳元で囁く。

 

ラス『キッ、キィーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』

 

うめき声をあげたラスの握りしめられた拳は震えている。バルコフ・スターリングは書類を抱えると、ラスに頭を下げて去っていく。ニールレイグがラスに駆け寄る。

 

ニールレイグ『総代表殿…どうなされたのです?』

 

ラスの顔は青ざめた顔で口を閉ざし、トイレに凄まじい勢いで駆けこんでいく。

 

ニールレイグ『そ、総代表殿!!!』

 

ニールレイグはラスに向かって手を伸ばす。ラスの後ろ姿が消えると彼は手を下げる。

 

ニールレイグ『いったいどうしてしまったのだ?総代表殿は…。』

 

 

C2 トイレの前 END

C3 豹変

 

バルコフ・スターリング『では、これより議会を再開いたします。』

 

グリーンアイス連邦議場にバルコフ・スターリングの声が木霊する。ラスがお立ち台の上に登る。

 

ラス『ユグドラシル大陸遠征はアレクサン代表の提案で行われた。その結果、我々に勝利をもたらした。しかし、それは我々の行った支援によるところが大きい。だが、アレクサン代表は見た目だけの勝利により評価されようとしている。』

 

議場はどよめく。ラスの腕を動かすジェスチャーは更に大きくなる。

 

ラス『奴は、アレクサンはグリーンアイス連邦の英雄として、国家の最高指導者の地位を狙っているのだ!奴が凱旋しようものならグリーンアイス連邦の平等かつ対等な都市国家群の連携は失われ、我々は、奴の門前に馬をつなぐしかなくなるのだ!!』

 

ダランセル、都市国家代表達は頷く。ニールレイグは起立する。

 

ニールレイグ『総代表殿!!』

バルコフ・スターリング『ニールレイグ代表!議長は話の最中であらせられるぞ!!』

 

都市国家代表Aが立ち上がる。

 

都市国家代表A『ニールレイグ殿。話の途中に横槍を入れようとはなんと非常識な。』

ニールレイグ『私は…』

 

ニールレイグは顔を下げる。しばらくして顔を上げ、都市国家代表Aを睨みつける。

 

ニールレイグ『私は…そのようなつもりで言ったのではない!』

 

都市国家代表Aは鼻息を立て、そっぽを向く。

 

ラス『我々は長年手を結びあい共同統治を実施してきた。その平穏が、今、一人の男によって破壊されようとしているのだ!』

 

ニールレイグの潤んだ瞳にラスの姿が映える。

 

ニールレイグ『このままではアレクサン殿が悪者にされてしまう…。』

 

ニールレイグは議場から出ていく。

 

ラス『奴を英雄として認めて良いものか!我々の均衡を失って良いものか!!』

 

C3 豹変 END

C4 死化粧

 

ラス『我々は、国賊アレクサン議員のユグドラシル大陸遠征の支援を直ちに停止し、彼を永久にこの崇高なる議場から、いやグリーンアイス連邦からの永久追放を命じる!!』

 

議場は盛大な拍手で包まれる。

 

ニールレイグ『お待ちください!』

 

議場に現れるニールレイグ。その眼元にはアイシャドー。頬にはチークが塗られ、口には桃色の口紅が塗られている。ラスは顔をしかめる。ニールレイグは一歩踏み出し、口を開く。

 

ニールレイグ『ラス議長!』

 

ラスは後ずさりし、口を開く。

 

ラス『ケバい…。』

 

ニールレイグは口を閉ざし、眼を閉ざす。そして、再び目を開け、口を開く。

 

ニールレイグ『ラス議長!アレクサン殿はその様な私利私欲の輩ではございませぬ。それは同郷の私、ダルク市代表ニールレイグが保証致しましょう。私と彼は親友でございます。』

 

ダランセルは立ち上がり、ニールレイグを睨みつける。

 

ダランセル『ニールレイグ殿、貴公はここで奴に媚びるための恩を売り、そのおこぼれにあやかろうとするか!何と愚かな!』

 

ニールレイグは眼を丸く見開き、ダランセルを見つめる。

 

ニールレイグ『ダランセル殿!アレクサン代表は国家の為にユグドラシル大陸王国を攻めたのですよ!我々と我々の同志の力を見せつけ、彼らの戦意をそぐために、我々を戦乱の恐怖から守る為にその苦境の渦中に彼は飛び込んだ!その勇気に対し我々は敬意を払うべきではないのですか!我々は自身を安全な地に置き、アレクサン代表の率いる軍勢だけ死地へと向かわせたのですよ。その行為を恥じるべきではないのですか!勝利の風が吹けば靡き、自らの椅子を揺るがすような大人物は排除する。何と醜く愚かなことでしょうか。』

 

ダランセルは立ち上がり、ニールレイグを睨みつける。

 

ダランセル『なっ、なんという暴言!ニールレイグ代表!!これはグリーンアイス都市国家連邦に対する名誉棄損だぞ!!』

 

議場の都市国家代表達はニールレイグに野次を飛ばす。バルコフ・スターリングは立ち上がる。

 

バルコフ・スターリング『静粛に。静粛に。』

 

議場は静まる。バルコフ・スターリングは周りを見渡す。

 

バルコフ・スターリング『して、警備兵はおるか?』

 

警備兵達はバルコフ・スターリングの傍らに駆け寄る。

 

バルコフ・スターリング『ニールレイグをひっ捕らえよ!』

 

ニールレイグは胸に握り拳を当て、後退りする。警備兵達の額から汗が噴き出す。

 

警備兵A『へっ!?し、しかし!罪状が…。』

 

バルコフ・スターリング『国賊アレクサンに加担した罪だ。』

 

バルコフ・スターリングは口髭をなぞり、細い目でラスを見る。

 

バルコフ・スターリング『ニールレイグが来る以前に議場ではアレクサンを国賊として追放処分するという決定がなされていた。そうですな。議長。』

 

ラスはバルコフの方を向き、二回頷く。

 

ラス『そ、そりゃその通りじゃ。』

 

バルコフ・スターリングは警備兵Aの顔を覗きこむ。

 

バルコフ・スターリング『分かったな。』

警備兵A『はっ、はひっ!!!!』

 

警備兵達は駆けて行き、ニールレイグに向け槍を構えて取り囲む。ニールレイグは眼を閉じる。

 

警備兵A『ニールレイグ、国賊に加担した罪で捕縛する!』

 

ニールレイグは眼を開ける。ラスはバルコフ・スターリングの方を向く。

 

ラス『捕縛したとして処罰はどうするのじゃ。』

 

バルコフ・スターリングは顎に手を当てる。

 

バルコフ・スターリング『そうですな。国賊に加担したことのみならず、我々都市国家連邦の根幹を揺るがす暴言や他都市国家代表への名誉棄損等々吟味いたしますと代表資格の剥奪のうえ死刑が妥当かと。』

 

ニールレイグは立ち上がり、手前の警備兵の槍をゆっくりと手で押しのける。

 

ニールレイグ『我がグリーンアイス都市国家連邦の秩序は失われた!正義も誇りも邪な者の私欲の為に捻じ曲げられたのだ!!見よ、平等かつ対等を大義に椅子にしがみつく醜悪な自らの姿を!ならば、私が都市国家代表である内に、同志アレクサンに変わり正義と誇りを見よ!グリーンアイス連邦万歳!英雄アレクサン万歳!!!』

 

ニールレイグは自身の席から飛び降りる。鈍い音が議場に響き、幾人かの都市国家代表の顔に血飛沫がふりかかる。

 

都市国家代表B『うわっ!汚ねえ!』

都市国家代表C『何ということだ!神聖な議事堂を地で汚すとは議員としての恥さらしだ!!』

 

お立ち台の下にあるニールレイグの首の骨の折れた死体。後頭部流れ出る血が堕円状に彼の頭の周りに広がる。バルコフ・スターリングは立ち上がり、腰に手を当て、口髭を指でなぞる。

 

バルコフ『死体の処理ゆえ、これにて閉幕といたします。』

 

都市国家代表達は議場を去る。ニールレイグの死体に唾を吐きかけて、去っていく都市国家代表も多数。

 

C4 死化粧 END

 

END

 

 


 
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