No.343926

【腐】イド総

スドウさん

男同士でちゅっちゅしているのでご注意ください。とてもはずかしい。
ニコ配信で久々にファフナーを観てやっぱり面白いので昔書いた文を発掘してしまいました。
365 Themes(http://www3.to/365arts/ )のお題「109.クチビルノスルコトハ」として書いたものです

2011-12-06 02:12:15 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1903   閲覧ユーザー数:1195

どこからか冷たい空気が染み出し、肌に触れる。

快適とはいえない温度に重い瞼を持ち上げてみると

そこには見慣れたシステム内の変わり果てた姿。

壁一面を鈍く金色に光る蔓のようなものが覆っている。

そしてそれは総士の体にまで広がっていた。

 

―――僕はどうなった?

 

一騎の叫び声が今もまだ頭の中に響いている気がする。

しかしいつのことだったのか思い出せない。

あの時、ワーム・スフィアーと呼ばれる黒い球体に自分は飲み込まれた。なのに、

 

―――何故僕はここにいるのだろう。

 

総士の右目は確かに目の前に広がる光景を映している。

 

『アルヴィスの子よ』

 

耳慣れない声が総士の体を貫いた。一気に意識が覚醒していく。

『我々は私によってお前の智恵を得る』

 

瞬間、総士の思考は答えに辿りついた。

 

―――僕は、フェストゥムによって生かされているのか。

島をフェストゥムから守るために生まれた自分が今まさに、彼らの道具となろうとしているのだ。

それは―――屈辱でしかない。

その事実に声も出せず呆けていると、

目の前で金色の粒子が集まり人の形を成していく。声の主だろう。

『お前は私だ』

 

―――違う!

 

全身に響き渡る彼らの意識を追い払うように叫ぼうとするがやはり、声が出ない。

まるでこの体は自分のものではないように。

フェストゥムと同じ光を放ちながらひとりの男が現れた。

 

『だったらなんだ?お前達はなんだ?』

 

―――何、だと。お前達こそなんだ!?

問い掛けてきた者は人間の男にしか見えない。しかし、人間ではない。

 

―――その姿も人間から奪ったものだろう!

 

所詮、今の彼らには表面を真似ることしかできないのだ。

理解には程遠い、それは只のレプリカにすぎない。

「本当に理解したいのか」

声が出た。少し、取り戻した。

「僕は、僕だ。お前じゃない。今のお前にはわからない」

『私はお前によって我々にそれを理解させる』

そう言って男は総士へと手を伸ばす。総士はヒュッ と息をのみ身を引くが、

蔓に絡めとられ身動きがとれず失敗に終わった。

「寄るな!」

抗議の声も気にすることなく伸ばした男の指が総士の頬に触れ、ビクリと総士の肩が震える。

男はそのまま左眼の傷へと指を滑らせた。

「っ! 嫌だ、やめろっ! その傷に触れるなっ!!」

『これがお前の「傷」か』

「…? 何をっ、ぁあっ…!」

急に男は両手で総士の顔を包み、傷を舐めあげる。

総士は突然の刺激に跳ね上がった体を抑えつけ身を捩って逃げようとするが、

両手両足の自由を蔓に奪われているため小さな抵抗にしかならない。

皮膚を上下するぬめった感触に大事な傷を汚されていくような屈辱を感じ、

いっそ舌を噛み切ろう、と考えた。

が、思考を読んだのか男は自らの舌を総士の唇に滑り込ませる。

「んっ…!」

ぬるり、と舌に絡まるものに総士は目を見開く。

遠慮なく口内を這い回るその不快感に顔を逸らすことは男の大きな手が許さなかった。

しかも男の舌はいくら噛みついても動きを止めようとしない。

 

―――まだ、痛みを感じることを覚えないのか。

 

心の苛立ちとは反対に体は徐々に快感へと流されていき、零れる息も甘いものに変わっていく。

「…ぅっ! も、やっ、やめ…」

唇を貪っていた男は様子が変わったことに気づき、動きを止める。

『なんだ? その感情は』

顔を真っ赤に染め荒い息を吐く総士の唇から糸を引く舌を抜き、

まじまじと見つめると総士は目を逸らし俯いた。

 

(一騎以外の奴にこんな姿を見せるなんて…)

 

そう思うと自然と涙が滲む。

「…見るなっ」

男から顔を隠すようにその場に蹲るとそれは一筋、頬を流れていった。

『皆城総士?』

「…っこれでわかっただろう! 僕とお前は違うものなんだ!

 ひとつだったらこんなっ、こんなこと…!」

自分でも分かるほどその声は震えていて今すぐここから逃げ出したい衝動に駆られる。

それが叶うならば疾うに実行しているだろうが。

『……』

耐え切れずぼろぼろと涙を零しはじめた総士を眺めながら男は立ち尽くしていた。

システムを通して伝わってきたらしいそれにどうしたらいいのかわからない。

じわりと広がるようなこれは、

 

なんだろう。言葉というもので表すならばアツイような、イタイような。

 

イタイ…?

 

「フェス、トゥ…ム?」

目元を赤く腫らした総士が驚いた顔でゆっくりと男を見上げた。

「これはお前の感情か…?」

熱いような痛いような胸を刺す感情。

皆城総士のものではないのか。

ならばそれば―――

 

『我々は私にその概念を理解させない』

「な、何故だっ! 何故理解しようとしない! お前はお前達に理解させるために

 僕を連れてきたのだろう!? 受け入れることが怖いのか?

 それすらも受け入れられないのか!?」

『私は、私によって我々は、それを理解しない』

「それはお前の意思じゃないのか!!」

『我々に意思という概念は存在しない。お前によって我々は理解したことは』

そう言って激昂する総士の腕を掴み引き寄せ、軽く唇を重ねる。

「!!」

『お前達が接吻と呼ぶ行為』

掴まれていた腕を解放され、総士はへたり、とシステムの床に座り込んだ。

顔を上げるとあの男はもうすでに消えていた。緩んだ蔓を振り払う。

 

「…覚える順番が違う」

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択