No.342330

真・恋姫†無双~とある外史の妖術使い~8

ですてにさん

雛りんを愛でる回。
だがしかし風はただでは転ばない。

2011-12-02 16:40:29 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:6131   閲覧ユーザー数:4499

「しっかり捕まってろよ~落ちるぞ~」

 

「あわわわわわわわわわ! 地面が! じ地面があんな小しゃく!」

 

こんな錯乱している状況ですら、ちゃんと噛んでしまうお約束をしっかり果たす雛里んは可愛いなぁ。

…というわけで、北郷一刀。雛里を連れて空のお散歩中です。

 

浮力の術式は雛里にもかけているので、実際落ちることはないんですがね。

 

華琳は昼食までには戻るけど、多分一騒動あるから、朝食はしっかり取りなさい、と忠告してから出かけて行った。

星はその言を聞いて、黙々とメンマを食べてた。それ朝食なのな。

瓶三つぐらいは作り置きしてから出てきたので、戻るまでは…。

 

「もたないかもしれませんね~」

 

「そうなの? どんだけ好きなんだ…」

 

「あわわわわわわわ! なぜ脈略も無く、会話が成立しているのでしゅか!」

 

「『あわわわわわわわわわわわわわわわ』って噛まずに言える雛里んがよっぽど凄いと思う」

 

「お兄さんの言う通りです。『あわわわわわわわわわわわわわわわわわわ』と活舌良く言いきれる雛里ちゃんの方が凄いのです。

あ、ちなみにお兄さんとの会話は元からこんな感じなので、気にするだけ損ですよ~。『そういうもの』ですから」

 

「様式美だよな」

 

「…しょんなに長く『あわわ』って言えないでし…」

 

両腕に愛らしい幼女二人組を抱えてホクホクでござる。しょんぼりする雛里んマジ天使。

実際には風は十八歳以上のはずなので、何の問題もない! 紳士たちよ、悔しかったら君達も外史の扉を開くといいよ!

 

「私も雛里ちゃんのおかげで淑女に目覚めそうですしね~」

 

「愛でられる側と愛でる側を自由に行き来するわけだな! 羨ましいぞパルパル…」

 

「おっとお兄さん、さすがにメタり過ぎですよ」

 

「…一刀さんと風さんが仲がとてもいいことだけは良く判りましゅ」

 

 

「しょ、しょんな超常的な現象があるなんて信じられません!」

 

場面転換の間に、ちょっぴり混乱し過ぎて疲れた結果追いついた感じの雛里んに、俺たちの能力を説明した。

うん、信じられないよね。これが真っ当な反応だよな。風や星の順応性は異常だったんや…。

 

ん? 華琳? いや、華琳は自分で覚醒してしまってるしね。

 

「でもさ、実際今空を散歩してるわけじゃないですか」

 

「…はっ! あ、あわわ? 一刀さんが手を離してるのに、私、浮いてましゅ!?」

 

「「計画通り」」

 

「しゅっごく悪い笑顔でしゅ!? それにしてやったりとばかりに、がっしり握手!?…あう、驚くのにも疲れてきました…」

 

「そうですよ、血圧が上がっちゃいますよ~どうどう~」

 

「お二人のせいじゃないでしゅか…」

 

疲れた様子の雛りんに氷砂糖を差し出す。こういう時は甘いものが元気が出る。

風と俺が舐め始めるのを見て、雛里もおそるおそる口に入れ…『ぱぁああああああ』と、すぐに笑顔を輝かせた。

 

「甘くて…美味しいでしゅ…っ!」

 

それでも噛むんだ。ゆっくりと味わっている彼女に、ただ代償もあるんだよ、と儀式の説明もさくっとしてしまう。

 

「…それは女性側にあまりに覚悟を強いるものではありませんか? 契約者には逆らうことが出来ないんですよね…」

 

雛里、ではなく、彼女が知謀の士、鳳士元の理知的な雰囲気を纏う。

眼力の強さも、語られる言葉も、一寸前の彼女とは比べようも無い。

舐めていたはずの氷砂糖は…あぁ、飲み込んでしまったのか。残念。

 

「ん、おまけに相手の女の子を騙して…偽の愛情を育ませて、契約結んでしまえば、実際には俺のやりたい放題になるからなぁ。

極端な話、精神干渉するような術式もあるんだよ。とっかかりに好意を植え付けておいて、その感覚に慣れさせたら、

徐々に術の効果を薄めていって、なんてゾッとするやり方もあると思う」

 

まぁ、精神支配して偽りの感情植え付けて、悦に入る趣味は無いなぁ。

一晩のお遊びならまだしも…感情表現が可能な『お人形』で自慰するようなもんだと、俺は思うんだが。

第一、華琳や風が死んじゃう可能性があると思えば、迂闊に他の女性を抱きたいなぞ思えんぞなもし。

小市民たる北郷一刀は、小さな幸せを守ることに全力を尽くすのであります!

 

「まぁ、お兄さんはそんなことはしない人ですし、風たちがさせません」

 

凛々しい顔でカッコいい台詞を言い放つ風さんなのですが、ふ~よふ~よ揺れながら浮いているので、違和感が半端ない。

…はっ! これがギャップ萌えか! 狙っているなっ貴様っ!

 

「ふふふ~」

 

「だがあえて乗るのが俺のジャスティス!」

 

思いきり抱き寄せて、風の長髪に顔を埋める。鼻孔をいい匂いだけが満たし、俺は幸せな気分に浸る。

 

「…こんな風にお兄さんは風にぞっこんなので~。風を失うようなやり方は出来ないのですよ。

まぁ、まだ大人の恋愛をしていない雛里ちゃんには難しいと思いますが~」

 

俺はこの幸せに浸っているのでいいんですが、風さんや。何故に雛里んを挑発していらっしゃるので?

まぁ、いいや。風が考えることだし。あー、いい感じに脳みそ溶けるわーマジ気持ちいいわー。

 

「…私が子供だと?」

 

「違わないと思いますが~?」

 

「体格はそれ程変わらないと思います」

 

「女としての経験が圧倒的に違いますね~」

 

「…いいでしょう、一刀さんの心を私だけに向けてみせましょう。この鳳士元の知謀の全てを尽くして」

 

「ふふふ、そうたやすくはいきませんよ~。気付けば雛里ちゃんがお兄さんに絡め取られているかも…」

 

なんだ~? 暴風やら火花が飛んでいるようにも思えるんだが~。

あーだめだ、このいい匂いに浸ってると、頭回らねー。

 

「ほら、お兄さんの蕩けた顔。風の魅力に浸かりきっているのですよ~」

 

んー、それは風のいい匂いがいけないのだよー。

 

「私とて書物で知識は十分に学んでいます。あとは一刀さんで実践すればいいことですから」

 

「せいぜい頑張るといいのですよ~」

 

「というわけで一刀しゃん!」

 

むがっ! おろ、日だまりのような匂いから、急に甘い、これはマシュ…マロのような…。

だが、風よりも残念な弾力…いや、真っ平ら…?

 

「私の知略と魅力で一刀しゃんを夢中にさせてみせましゅ!」

 

風の謀略にまんまと乗った雛里さんが俺を抱き締めていたのでした。

うわー、風さん、めっちゃイイ顔してますよー。

 

…ううむ、雛里んも風とは違った甘い匂いがするのぅ…。

 

 

○余談

 

「秋蘭。私は天を手に入れたわ」

 

「…私は華琳さまが何時もの貴女様にお戻り頂いたのが何よりの喜びです」

 

「ふふ、ありがとう。あの禍々しい覇気もお陰で完全に私の力となった。さて、粛々と覇業を始めましょうか。

袁家と孫家の者はどうしたかしら?」

 

「袁術は袁紹の元に向かったようです。捨て置いておりますが。孫家の者は一命を取り留め、今は休んでおります」

 

「回復したら、江南の地をくれてやりなさい。既に袁術が捨てた土地。英傑が治める方が民にとっても望ましい」

 

「ははっ」

 

「…呆けた顔をして。惚れ直したかしら」

 

「…恥ずかしながら」

 

華琳は負の感情から湧き上がった異形の力を、結局、一刀への想いで制御してみせたのだから、

秋蘭には増して輝かしく見えるのも、無理ならぬことであった。

 

(一刀は、雛里は元より、水鏡女学院の生徒…諸葛家の子瑜孔明姉妹や徐元直、一刀が消えた後に蜀の名政治家として名を馳せた向巨達…

さっと思いつくだけでもこれだけの名を思いつくけれど、ふふ、どこまで口説き落としてくれることやら。楽しみなこと…)

 

主がそんなことを考えているなど、彼女は知る由も無かったのである。


 
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