No.334423

恋姫夢想 ~至高の鍛冶師?の物語~ 第四話

続けて第四話投稿!
真也の秘密(?)が明らかに。

それではどうぞ。

2011-11-14 12:01:42 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:6391   閲覧ユーザー数:5382

「で、どうなんや、真也」

 

霞の質問に対して、俺は自分の事を話す事に決めた。

 

 

「…鍛冶師なのは本当だ。『ただの』ではないが」

「ほんなら、一体なんや」

「簡単に言うと、武を学ばされる鍛冶師の家系の鍛冶師だ」

「「「「「……は(え)?」」」」」

 

まあ、それだけ聞いても訳わからんよな。

 

「……すまない、説明を頼めるか?」

 

華雄が皆を代表し、俺に訊ねてきた。

俺は頷く事でそれに応える。

 

「俺は代々鍛冶師の家系の生まれなんだが…この家がちょっと変わっててな。

『武具を一流に扱えて初めて、最高の武具が作れる』って考えなんだ。

 だから鍛冶を学ぶ前に、まず武を学ばされるんだよ」

「なんでまたそんな面倒を?」

「家のご先祖は普通の鍛冶師だったそうなんだが、自分の作る武具が

 武人達が求める武具と違ってて全く売れなかったらしい。

 どうすれば武人達の求める武具が作れるのかって考えた時、

『自分自身がその武具を使う武人になればいい』って思い至ったんだそうだ」

「それはまた…単純やな」

「けどそれで武具が売れるようになったらしい。要するに、その名残だ」

 

まあ、頭の柔軟なご先祖様って事は確かだな。

 

 

 

 

 

「ん?って事は、真也はいろんな武具を扱えるんか?」

 

…今の話を聞いたらそう思われるのも分かるんだが。

 

「だったら良かったんだが、俺は武具を使った戦闘はほぼできない」

「へ?」

「俺は鍛冶師という点では家の歴代の人間を省みても一、二を争う腕前って

 言われたんだが、反対に武具を使うという点では才能がほとんど無い。

 だから俺は自然と無手での格闘術になったんだ」

「それで私との戦いでも装備無しでやったのか」

「いや、また別の理由だ」

「何?」

 

詠が俺を睨んできてるが、安心しろ。あの事をバラす訳じゃない。

 

「俺はさっき『ほとんど才能がない』と言った。つまり使える武具は

 僅かながらあるって事だ。もっとも今回は使えなかったけどな」

「何故だ」

「俺が使えるのは手甲・脚甲の類なんだが、御前試合とはいえ模擬戦には変わりない。

 威力を上げる装備をしてどうする。他の武具みたいに布で包むんなら着ける意味が無いしな」

「む」

「防具として使うにしても、俺は速さも重視するから中途半端に重いと却って邪魔なんだ。

 かといって軽くして防御力を下げると華雄の金剛烈斧相手じゃ無意味だしな。

 身体に着けなかったのも同じ理由だ。

 もっとも、軽くて頑丈な物ができれば、喜んで使うけどな。

 だからあの戦いは、俺にとって本気とも、そうでないとも言える」

 

嘘は言ってない。確かにそれも理由だからな。

 

「ならば鷹原、お前の納得いく武具ができたらもう一度私と戦え」

「ああ。約束しよう」

「でも真也、手甲や脚甲以外の武具でも、華雄の【はるば~ど】みたいにあんたに

 合わせて作ればいいんじゃないの?」

「ハルバードじゃなくて金剛烈斧だ、詠。残念だが、合わせると言っても俺がやってるのは

 その人間と相性のいい武具を作る事だけだ。相性その物をどうにかできる訳じゃない。

 言ってみれば、俺が手甲や脚甲以外の武具を使うっていうのは、

 月様に大斧を使わせる様な物なんだ」

 

俺の言葉に納得したのだろう、詠はそれ以上口を開かなかった。

 

 

 

 

「とまあ、これが俺が鍛冶師ではあるが、ただの鍛冶師ではない理由だ。

 納得してくれたか?」

 

「納得したわ。すまんかったな、真也。疑う様な真似してしもて」

「必要がないだろうと思って説明しなかった俺にも非がある。気にするな」

 

疑問が解消されたことで、場の空気が和らいだ。

ところがその直後に

 

「…ねえ、真也。ちょっといい?」

「ん?」

 

詠が再び俺に話しかけてきたのだ。

 

 

 

「なんだ、詠」

「あんた言ったわよね。

 自分は『鍛冶師という点では家の歴代の人間を省みても一、二を争う腕前』って」

「そう言われた、だ。それが?」

「けどその後に『武具を使うという点では才能がほとんど無い』って言ったわ」

「その通りだ」

「おかしいじゃない。武を学ぶのは鍛冶に活かす為って事なんでしょう?そして

 あんたは間違いなく一流。ならそれで十分じゃない。他の才能が出てくる必要はないわ」

「あ」

「あんた、まだ話して無い事があるでしょう」

 

また視線が俺に集中した。

 

「……話さなきゃ駄目か?」

「さっさと吐きなさい」

 

……あんまり話したくない事なんだがなあ。

 

 

 

 

「…俺の家でも当主の概念があり、代々これを受け継ぐ。ただし、これには

 ある条件がある」

「条件?」

「……鍛冶師であると同時に、様々な武具を扱える武人である事」

「え?」

「さっき話したご先祖様が初代の当主なんだが、武人としてもかなりの腕前に

 なったそうなんだ。それも使う武具を選ばない程の。

 それに倣って、代々当主には鍛冶師の腕前と武具使いの武人としての腕前が

 求められる様になった。

 まずは武を学ぶと言ったが、鍛冶を学んだ後でも鍛錬は継続される。最終的には

 刃引きしてない武具で打ち合う位に」

 

この世界ならともかく、元の世界の事だからな。一体いつの時代だよって思ったもんだ。

子供の頃はそれが普通の鍛冶師だと思ってたけど。

 

「え~~と…って事は」

「鍛冶師としての腕は確かでも、武具使いの才能がほとんどない俺は、早々に

 当主候補から外された訳だ。

 鍛錬自体は続けられたし、後になって無手とは相性がいいって事が

 分かっていくつかの武術に手を出したんだが、それでも使えるのは手甲・脚甲が

 精々だから候補に返り咲きなんて事は無かった」

 

次期当主が誰になろうと、今の俺には知る術はないし関係もないけどな。

諸に自分の醜態の事になるから話したくなかったんだ…。

 

「「「「詠(ちゃん)……」」」」

「賈駆……」

「う……ごめん、真也」

「いい。でももう触れないでくれると助かる」

「わかったわ…本当にごめん」

「だからいいって」

 

さっきにも増して空気が重くなっちまった…。どうすんだ、これ。

と思ってたら

 

「……ご飯食べる」

 

恋が突然そんな事を言い出した。

 

 

 

「れ、恋?」

「ご飯食べれば、皆幸せ……」

 

俺を含めた一同が呆気にとられ、少しすると苦笑し出した。

 

「ふふ。恋ちゃんらしい」

「さすがは恋殿ですぞ!」

 

なんていうか、恋がいると重い空気なんか意味がなくなるな。

 

「なら、飯食いに行くか。全員で」

「お、やりい!真也の奢りやな!」

 

どさくさ紛れに霞が図々しい事を言ってきた。

けど霞、お前は大事な事を忘れてるぞ。

 

「ところで霞」

「ん?なんや?」

「いや、お前にお返しをしようと思ってな」

「お返し……あ」

 

今更気付いたか。霞が汗をだらだら流し始める。

 

「とりあえずここにいる全員の飯を奢ってもらおうか」

「ちょ、ちょっと待ってえな!?恋もいるんやで!?それに今うち金欠で…」

「俺に奢らせようとした人間の言葉じゃないな。とりあえず今回は立て替えてやるよ。

 次のお前の俸給から引かれるようにしてもらう」

「そんな勝手に『いいわよ』詠!?」

「決定だ。良かったな恋。腹いっぱい食べな」

「ん」

「鬼いいいいいいい!?」

 

とりあえず、その日の飯はとても豪勢だったと言っておく。

 

 

 

 

 

おまけ

 

「うまく誤魔化したわね、真也」

「なにがだ?詠」

「あんたの武具の話。作る気になれば、今回の御前試合にも間に合ったんじゃないの?」

「嘘は言ってないだろう。武具ができてないのは事実だしな」

「まあね。でも良かったの?再戦の約束なんかしちゃって」

「気は進まんが、下手に無視して関係にひびが入っても困るしな」

「ふ~~ん」

「…何か言いたそうだな」

「そんな事ないわよ(なんだかんだ言って、華雄との関係が気に入ってるって事かしらね)」

 

 

 

 

 

~後書き~

真也の秘密(?)でした。

真剣での戦いが真也にとってはごく当たり前なので、対峙して戦うという事に関しては

真也は問題なく戦えます。技量や身体能力の差が埋められる訳ではありませんが。

 


 
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