No.329368

thankyou for the music

siaさん

歌詞の掲載ってどうなんだろうね?やはり問題あるんだろうか?

2011-11-04 13:38:48 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:328   閲覧ユーザー数:328

小さな頃から歌うのが好きだった。

お絵かきやおまま事が嫌いなわけでもなかったけれど、いつの間にか私は歌っていた。

 

歳を取るにつれ、私は歌手という夢を追いかけることとなる。歌声一つで人を感動させたり笑顔にさせる仕事に私は大きな希望を憧れを抱いていた。

 

 

「おーい!そばかすメリーがまた独りで歌ってるぞー!」

 

学校が終わり、いつもの場所でいつものようにからかわれる。

男の子はいつも邪魔をするから嫌い

 

「黙りなさい!あんた達は帰ってセサミストリートでも見ていればいいわ!」

 

私を助けてくれる声が聞えた。ダイアナの声だ!

 

「ダイナソーだー食われるぞー逃げろー」

 

「今度ふざけたまねしたら家ごと叩き潰すからね!」

 

長身の彼女にピッタリのセリフに私はつい噴き出してしまった。

 

「なに?あんたも私のこと馬鹿にしてんの!?」

 

「ううん。ただ凄い迫力だったから。」

 

「まぁいいわ。あんたもあんな奴らのこと気にしなくていいんだよ?そばかすなんてそのうち消えるんだし、なにより歌手に顔なんて関係ないでしょ?」

 

「ありがとうダイアナ。でもマドンナもマライアも皆美しいわ。やっぱり人前に出るためには顔も大切よ。だからダイアナはいい歌手になると思うな。」

 

 

「ありがとうメリーでも私はダイナソーよ?吼えることならできるけど。」

 

ダイアナはいつも冗談交じりに自分の体格のことを言うけれど、本当はもっと細くなりたいと願っているということを、私は知っている。それでも笑い話にできるダイアナが、少し羨ましい。

 

「じゃあねメアリー。」

 

「またねダイアナ。」

 

彼女といつもの場所で別れ、私はいつもの場所で歌う。

木があって池があって。芝生があって花が咲いているこの場所で私はいつの曲を歌う。

 

人はいない一人だけのステージ。私にとっては静寂が歓声。ここには私を馬邪魔する人も、顔を見て笑う人もいない。気持ちよく歌い終える。

 

はずだった。

 

パチパチパチパチ

 

乾いた音が一人だったはずのステージに響き渡る。振り向くとそこにはサングラスをした大きな男の人と一匹の犬がいた。

 

「いい歌声だね。ひょっとして歌手の人かな?」

 

私は突然のことで声がでなかった。

 

「あぁ失礼。こいつがいきなり明後日の方向に歩き出してね。何かと思ったら君が歌っていたんだよ。こいつは耳が良いからね。」

 

そういって犬をなでながら笑っていた。

 

「あの・・・目が見えないんですか・・・?」

 

思わず聞いてしまった。彼はなおも笑いながら私に言った。

 

「うん。糖尿病でね。まぁ慣れたけどね。」

 

「すみません!失礼な事を聞いてしまって!」

 

「気にしてないよ。僕はこれがハンデだとは思っていないしね。むしろ大きな個性が出来たと思って今では喜んですらいるよ。」

 

「個性・・・ですか・・?」

 

「そう。個性さ。目が見えない人なんてあんまりいないだろ?人と違うってことは特別な事さ。少なくとも僕にとってはね。」

 

なんていったらいいのか分からなかった。それでも、不思議と楽しい気分になったのは彼の魅力のせいなのだろうか。

 

「おっとすまない。今日は時間がないんだ。早く行かないと・・・そうだ、君も来るかい?」

 

 

「え?」

 

「僕の名前はジェフ・ブラックマン。君の名前は?」

 

「メリー・・・メリー・ウィリアムスです」

 

「よろしくメリー。実は僕は舞台俳優でね。今から講演会をしに行くんだが・・・どうだい?一緒に来ないかい?」

 

「いいんですか?」

 

「勿論。大歓迎さ」

 

 

私はかれに付いていく事にした。

少し不安もあったが悪い人ではなさそうだし、なによりこの盲目の俳優を名乗る人物に興味があった。

 

しばらく歩くと病院の前に着いた。頭のおかしい人だったのかと思い少し躊躇したが、ジェフの背中についていく。連れていた犬はコートのようなものを着せられていた。しばらく歩くと、レクリエーションルームと書かれた部屋に入っていった。

 

「来た来た!メクラのトップスターがご到着だ!」

 

「やぁダドリー。怪我治す前に口のほうを縫合してもらったらどうだい?」

 

「ジェフ!今日も楽しみにしてるよ!」

 

「ありがとうマックス。是非最後まで見ていってくれ。」

 

「こんにちはジェフ。素敵なショーをお願いね。」

 

「キャシーありがとう。後悔させないよう頑張るよ。」

 

 

いろいろな人がジェフに声をかける。まるでブロードウェイスターのようだ。

 

「すごい人気ですね」

 

「あぁ。役者冥利につきるってもんさ。」

 

「ジェフ。今日もありがとう。」

 

今度は看護婦が挨拶に来た。

 

「なに。俺の演技を見てくれるって人がいつなら、いつでもどこでも駆けつけるさ。」

 

彼は冗談混じりに言っていたが、その眼には熱い情熱が宿っていた。

 

 

看護婦は私の緊張をほぐすようにと、しきりに話しかけてくれた。些細な気遣いが、少しダイアナに似ている。

 

しばらくしてジェフの演技が始まった。内容は盲目の詩人が酷い容姿を持つ女性に恋をするというラブコメディで、私は頭がおかしくなるんじゃないかと思うくらい笑っていた。

 

演技が終わりジェフが挨拶をする。彼らしいユーモアたっぷりのパフォーマンスで最後まで笑いが絶えず、私も時間を忘れて楽しんでいた。

しかし、最後に彼はとんでもない事を言い出したのである。

 

「ここでみなさんに紹介したい人がいる。素敵なシンガー・・メリー・ウィリアムスだ!」

 

突然のことに私は動けず唖然とした顔をしていたが、さっきの看護婦が私を引っ張って壇上に上げた。パチパチと拍手が起こる。

みんなが私の顔を見ている。そばかすだらけの酷い顔を・・・

思わずうつむいてしまう。こんな醜い顔を見られたくない。

そう思って泣きそうになっていたらジェフがそっと手を置いた。

 

「君の歌声は、池の魚や木に止まる鳥達よりも、人に聴かせてあげるべきだ。」

 

心の中で、何かが壊れた。

周りを見る。みんなが笑顔で私の方を見ている。

嘲りや見下した笑みではなく、期待に満ちた柔らかい笑顔・・・

 

「・・・オルガンを借りてもいいですか?」

 

客席にいる看護婦に聞く

 

「もちろんよ。なんなら私が弾きましょうか?」

 

「いえ、ありがたいんですけど・・・私、自分のタイミングじゃないと上手くいかなくて・・・」

 

「OK。わかったわ。素敵な演奏を期待しているわよ。」

 

何人かが協力して、部屋の隅にあったオルガンをステージまで持ってきてくれた。

 

オルガンの椅子に座り、一呼吸置く。こんな大人数の前で歌うのは初めてだ。緊張からか手が震える。

 

「あの曲を。君がいつも歌うように」

 

ジェフの声が聞えた。でも私はもう歌うことしか考えられなかった。

あの幸せな瞬間が、あの素敵な時間が訪れる。

 

 

「I'm nothing special, in fact I'm a bit of a bore 」

 

ゆっくりとピアノを鳴らしながら歌う。

緊張が消えていく。まるで縛り付けていた鎖が解かれていくように。

 

「If I tell a joke, you've probably heard it before」

 

気持ちが軽くなる。何もかもが光の世界に包まれていく。

 

「'Cause everyone listens when I start to sing I'm so grateful and proud All I want is to sing it out loud 」

 

 

So I say

 

 

Thank you for the music, the songs I'm singing

 Thanks for all the joy they're bringing 

Who can live without it, I ask in all honesty

What would life be?

Without a song or a dance what are we?

So I say thank you for the music

For giving it to me

 

 

 

 

 

春の風が花の香りを届けてくれる。鏡をみるとそばかすはもうない。かわりにファンデーションと淡いルージュが引かれている。

 

あのステージに上がってから10年。私は今、たくさんのファンに囲まれて歌っている。

大きな舞台にも立ったしいくつかの賞を取ったけれど、あの日の記憶は未だ薄れず、胸の中にしまってある。

目を瞑ると、そこには包帯だらけのおじさんや、痩せすぎた、あるいは太りすぎたおばさんたちがめいいっぱい拍手をしてくれている。

 

あの瞬間が、私にとって最高の瞬間だったと今でも思う。

人に歌を聴いてもらえる喜びを始めて教えてくれたのがあそこだった。

 

「メリー?準備はできた?」

 

「今行くわダイアナ。」

 

今日はダイアナとホームパーティーをする約束をしている。あまり自由な時間を使えなくなってしまった今でも、ダイアナは私の友達でいてくれる。

 

「そういえばメリー。ポストに荷物が入ってたわよ?」

 

「ありがとう。だれから?」

 

「ジェフ・ブラックマン」

 

「・・・ダイアナ・・それ本当?」

 

「えぇ本当よ?ほら。」

 

そういってダイアナは小包を見せてくれた。

 

送り主の署名には、しっかりとジェフ・ブラックマンと書かれていた。

 

「ダイアナ・・ちょっと一人にしてもらっていい?」

 

「あとでメガサイズのセットを奢ってくれる?」

 

「わかったわ」

 

「OK。じゃあ外で待ってるから。」

 

ジェフはあれから一年後に病気が悪化して死んでしまった。

彼の笑顔が徐々に消えていくのが辛かった記憶がある。

それでも最後は笑っていた。その笑顔に対し私は泣く事しかできなかった。

 

自然と涙がこみ上げてくる。せめて最後は笑顔で別れたかった。

 

包みを空けると中にはカセットテープが入っていた。再生してみるとジェフの言葉が入っていた。

 

「やぁメリー久しぶり。このテープは君が大物スターになったら届けてもらうよう看護婦さんにいっておいたんだ。これが届くという事は、君はもうワワールドクラスのミュージシャンになったのかな?是非ともステージで歌う君の声を聴きたかったんだが、まぁいいさ。 君と話が出来ただけでも僕は幸せだったよ。 さてメアリー。僕は今病院の中でこれを録音している。何もない静かな部屋さ。きっと僕はこのまま死んで天に昇るんだと思う。天国ってのはきっといいところなんだろうが、ひとつだけ残念な事がある。それは君の歌が聴けないってことだ。そこで、死者の最後のわがままを一つ聞いてほしい。できれば僕のお墓の前で、一度きりでいいから、あの時君が歌ったあの曲を聴かせてくれないか。花も酒もいらない。ただ君の声を天国で聴きたい。あの素晴らしい歌声を神様にも聴いてもらいたいんだ。僕の願いはそれだけだよ。それでは。さようなら。親愛なるメリー・ウィリアムス。ジョン・ブラックマンより、愛を込めて。」

 

 

私は急いで家をでた。外ではダイアナが待っている。

 

「準備はOK?」

 

「メガセット2つ奢るからもう少し待って!」

 

「・・・OK。ただし30分以上遅れたら3つ奢ってもらうからね!」

 

車を出して彼が眠った場所へと向かう。そう遠くはない。

ジェフの柔らかい笑顔を思い出し泣きそうになる。いや、すでに泣いているのだが、これ以上涙を出すわけにはいかない。彼の前では笑顔で歌いたい。

 

墓地に着く。そこには誰もいない。静寂だけが支配している。まるで彼と初めて出会ったときのようだ。

 

「ひさしぶり。ジェフ。」

 

私は涙を堪えて笑った。不意に肩に手が置かれたような気がする。

 

「あの曲を。君がいつも歌うように。」

 

ジェフの声が聞える。こんどははっきりと感じ取れた。

 

「OKジェフ。オルガンはないからアカペラだけど。」

 

大きく息を吸い込んで一度落ち着く。

もう涙はない。自然に笑みがこぼれる。

 

天に捧げるよう、私は大きく両手を挙げ、静かに歌い始めた。あの時のように・・

 

I'm nothing special, in fact I'm a bit of a bore

If I tell a joke, you've probably heard it before

But I have a talent, a wonderful thing

'Cause everyone listens when I start to sing

I'm so grateful and proud

All I want is to sing it out loud

 

So I say

Thank you for the music, the songs I'm singing

Thanks for all the joy they're bringing

Who can live without it, I ask in all honesty

What would life be?

Without a song or a dance what are we?

So I say thank you for the music

For giving it to me

 

Mother says I was a dancer before I could walk

She says I began to sing long before I could talk

And I've often wondered, how did it all start?

Who found out that nothing can capture a heart

Like a melody can?

 

Well, whoever it was, I'm a fan

 

So I say

Thank you for the music, the songs I'm singing

Thanks for all the joy they're bringing

Who can live without it, I ask in all honesty

What would life be?

Without a song or a dance what are we?

So I say thank you for the music

For giving it to me

 

I've been so lucky, I am the girl with golden hair

I wanna sing it out to everybody

What a joy, what a life, what a chance!

 

So I say

Thank you for the music, the songs I'm singing

Thanks for all the joy they're bringing

Who can live without it, I ask in all honesty

What would life be?

Without a song or a dance what are we?

So I say thank you for the music

For giving it to me

 


 
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