No.321212

真・恋姫無双 ~魔王降臨~ 導入編

ぴかさん

 真・恋姫無双の二次小説です。
日本で有名なあの魔王が、恋姫世界へ下り立ちます。
導入部という事で、下り立つところまでを書いてみました。
最初のシーンは、日本の歴史上もっとも重大な事件というべきあの部分を自分なりに書いてみました。
うまく書けているといいのですが……。

続きを表示

2011-10-20 14:39:02 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:12337   閲覧ユーザー数:11192

 一人の男が、奥の座敷にいた。

本来は寝ているような時間なのだが、その男は何かを見据えるように視線を崩すことなく、その場に座り込んでいた。

男が思うのは、これからの未来かそれとも過去の所行か……。

ただただ、その場で微動だにしなかった。

 

 しばらくして、周りから騒がしい音がしてくる。

男は一人頷くと立ち上がりお付きの者を呼んだ。

 

「何事だ?」

「はっ、おそらく民衆が騒いでいるものと思われます」

「そうか……」

 

そう言って、男は後ろを向いた。

そして、周りの者すら分からないくらい表情を一瞬緩めたかと思うと、前にむき直した。

その時、別の者が駆け込んできた。

お付きの者の報告が、間違いである事を伝えに……。

 

「申し上げます!! 敵襲でございます!! すでにここは包囲されております!!」

「――その相手は?」

「旗の紋は桔梗にございます!!」

 

紋の内容を聞いて、お付きの者は驚いた。

桔梗の紋を有するのは、この男の側近中の側近だからである。

その瞬間、これは謀反である事が分かった。

だが、謀反である事が分かってもその男の表情に変化はなかった。

むしろ余裕させある。

その男、織田信長は全てを知っているかのように、その場に佇むのみであった。

 

 

 外の騒音は、時間が経つにつれより一層激しさを増していく。

その様子からすると、戦力差がかなりありこちらが不利である事は一目瞭然であった。

お付きの者が、信長に進言した。

 

「今すぐお逃げ下さい!!」

 

その言葉に、信長は視線を空に向けた後言い放った。

 

「是非に及ばず!!」

 

それはもう逃げる事は不可能であると、悟っての言葉だった。

 

「女衆を逃がせ!!」

「はっ!!」

 

信長の覚悟に、お付きの者は従うほか無かった。

 

 しばらくすると、男の元に首謀者とおぼしき者が姿を現した。

それは、信長の側近、明智光秀であった。

 

「この状況でも逃げないのですね?」

「うぬとの最後の舞……興じよう……ぞ」

 

そう言って、信長は自分の得物を抜いた。

抜いた得物には見慣れない紫の湯気のようなモノが取り巻いていた。

普通の人間なら、それを見ただけで体が動かなくなるのだが、光秀は違った。

 

「相変わらずのようですね。では、私も」

 

そう言って、光秀も得物を抜いた。

普通の日本刀にように見えるそれも、よく手入れされた上等なモノだった。

 

「では、失礼します」

 

そう言って、走りながら突きを繰り出す。

信長は、すんでの所でそれをかわす。

信長はかわす動作と同時に、横に得物をふるった。

光秀は、突きを繰り出した刀をすぐに戻し、信長の一撃を刀で受け止める。

そして、その一撃をはじきながら自らも攻撃を加える。

しかし、それもすんでの所でかわされてしまった。

 

 光秀は、間合いを取るため一旦飛び退いた。

 

「どうした? うぬの実力、その程度では無かろう」

 

信長は、自身が追い込まれているにもかかわらず、それすら感じさせないほどの余裕のある表情で言った。

逆に光秀には、なぜか余裕がなくなってきていた。

 

 なんでしょうか、この違和感。

 そして、この圧倒的な重圧感。

 やはり、私ではこの方には……。

 

光秀は色々考えてしまい、動きが止まってしまった。

周りにいる者達と一緒に戦えば、さすがの信長も如何ともしがたいだろう。

だが、周りの者達は信長の圧倒的な重圧感に身動きが取れなかった。

 

 

 光秀が間合いを取ってどれくらいが経ったのだろう。

それほどの時間ではないはずだが、光秀にとっては一日以上に長く感じていた。

と、その時火矢が放たれて、建物が燃えだした。

光秀が突入するにあたって、火矢での攻撃はある程度止めていた。

だが、内部の状況の分からない外の者が勢い余って放ってしまったようだ。

どんどん燃えさかる炎。

このままでは信長はもちろん、光秀も危うかった。

 

「皆の者!! 待避せよ!!」

 

光秀はそう言うと、自分以外の部下達を外へ逃がした。

信長はそれを追うことなく、その場で光秀の動きを注視していた。

 

「うぬは逃げぬのか?」

「それはお互い様です。私はあなたを討ち取るまでは逃げるわけにはいきません」

「ならばくるがよい!! うぬの一撃受け止めようぞ!!」

 

信長はそう言うと得物を構えた。

 

「いい覚悟です……。いざ!!」

 

光秀も得物を構えると、信長に向けて突進した。

光秀の渾身の一撃が信長を襲う。

信長は、防御の動作を取らなかった。

 

「なぜ、防がないのです!!」

 

そう言いながら、光秀は得物をふるった。

鈍い音と共に、何かを斬り伏せた感触を光秀は感じた。

 

 遂に、私がこのお方を討ち取った。

 

光秀はそう思った。

今目の前にいるのは信長。

信長は自分の一撃をかわしたり防いだりしなかった。

一撃の後の、何度も戦場で感じたこの斬り伏せた感覚。

その状況を総合すれば、間違いなく光秀は信長を討ち取った事になる。

だが、実際に光秀が斬ったのは信長ではなかった。

 

 光秀が信長の状態を確認する間もなく、信長の居た辺りから目映い光が溢れ出した。

光秀は、そのまぶしさに目を手で隠すのが精一杯。

その光は建物を突き破り、周りの者達にも分かるほどであった。

皆が動きを止めその光を呆然と見つめる。

 

 しばらくして、光が収まった。

建物の火は、なぜか消えていた。

光秀は、手をどけて信長の姿を確認した。

 

「なっ!!」

 

なぜか、その場に信長の姿はなかった。

ただ、割れた古い鏡だけがその場に落ちていた。

その瞬間、信長はこの世界から消えてしまったのである。

 

 

 周りは何もない荒野。

時折吹く風は、空気の乾いている事を充分に感じさせてくれる。

明らかに日本ではない、そんな場所に信長は立っていた。

 

「ここは……」

 

さすがの信長もこの状況には戸惑ってしまった。

見慣れぬ場所というのは、人を混乱させるのに充分である。

 

 しばらくすると、信長は落ち着きを取り戻し改めて辺りの状況を確認した。

どこまでも続く荒野。

遙か向こうには山々が見える。

少なくとも、ここが日本ではないということは、誰の目から見ても明らかだ。

こういう時は、闇雲に動いてはいけない。

そのうち何か動きがあるだろう。

そう思っていた信長だったが、それは予想よりも早く訪れた。

 

「おい、にいちゃん。その着ているモノと金目のモノを置いていってもらおうか」

 

物盗りである。

三人組みの物盗りが信長を取り囲んでいた。

先ほどの発言は、三人のうちリーダーとおぼしき背の高い男が話した内容だった。

 

「うぬら、この儂からモノを奪おうというのか?」

「アニキ~、なんかこいつ話し方変ですぜ」

「話し方なんかどうでもいい!! おい、命が惜しければ置いていけ!!」

 

そう言って、その背の高い男がナイフを取り出した。

そして、それをこれ見よがしに見せつけてくる。

普通の人なら、その姿に怯え金品を置いていくだろう。

だが、相手は信長だ。

その程度で怯むはずがない。

 

「はははは……」

「!?」

 

突然信長が笑い出した。

三人は、そんな信長の行動にビックリして動きを止める。

少しして気を取り戻した男が、信長に話しかけた。

 

「何が可笑しい!!」

「その程度で儂とやろうというのだから、笑わずにはいられぬぞ」

「うるせえ!! 覚悟しやがれ!!」

 

信長の言葉に頭に血の上った男は、ナイフを前に突き出しながら突進してきた。

信長はそれをひらりとかわすと、手で男の手首を叩いた。

その痛みで男はナイフを落としてしまった。

男は、信長に叩かれた手首を押さえながら言った。

 

「おめえら、やっちまえ!!」

 

男の命令に残り二人が襲いかかる。

背の低い男には、かわした後横蹴りを加え、太った男は、かわした瞬間に足を引っかけ転ばせた。

三人とも、その信長の動きに唖然となってしまった。

信長は、腰の得物を抜くと刃先を三人に向けた。

三人は、その物腰に恐怖を感じ震え出す。

 

「儂に挑んだ勇気に免じて見逃すが、次同じ事をするようならその命消え去るモノと思うがよい」

「はっ、はい!!」

 

三人は急いで立ち上がるとその場を走り去った。

信長は得物を元に戻す。

すると、すぐそばで拍手の音がした。

信長が驚き音の方向を向くと、そこには二人の少女の姿があった。

 

 

 黒髪の長い少女が、信長に向けて拍手を送っていた。

もう一人の背の低い少女は、憮然とした表情をしていた。

二人は、信長に近づいてきた。

 

「見事です!!」

 

黒髪の少女がそう言った。

 

「悪い奴がいたのに暴れられなかったのだ!!」

 

背の低い少女はそう言いながら憮然とした表情のままだった。

 

「うぬらは?」

 

信長の質問に、黒髪の少女は表情を改めた。

 

「これは、失礼しました。私は姓は関、名は羽、字は雲長と申します。そして、こっちは……」

「鈴々は、姓は張、名は飛、字は翼徳なのだ」

 

信長は、二人の名を聞いて表情は変えなかったが内心驚いた。

関羽雲長と張飛翼徳といえば、古の英雄の名ではないか。

情報伝達手段の乏しい信長の時代でも、三国志の登場人物の名は広く知られていた。

だが、言い伝えられていた二人は男性のはずだ。

今目の前にいる二人はどう見ても女性。

何か違うのだろうか。

信長は色々考えてみた。

しかし、結論など出ず今はこの場の流れに任せることにした。

 

「そして、もう一人……」

 

関羽が後ろを振り向くと、三人の居る場所に駆けてくる人影があった。

その人影は、三人の居る場所に来ると息を整えながら話しだした。

 

「もう、二人とも早いんだから!!」

「桃香様が遅いのですよ!!」

「ぶぅ」

 

関羽の言葉に、桃香と呼ばれたその少女はふくれっ面になった。

だが、その表情を見る限りそこまで怒っているようには見えなかった。

 

「うぬは?」

 

信長は改めて、その少女に問いかけた。

 

「あっ、ごめんなさい。私は姓を劉、名は備、字は玄徳と言います。よろしくお願いしますね、天の御遣い様」

「天の御遣い……」

 

笑顔で話す劉備。

 

 劉備の話した、天の御遣いという言葉。

信長は、何かおかしな事に巻き込まれる事になりそうだと、本能で感じ取った。

 

 

あとがき

 

 ご無沙汰です。

約二ヶ月ぶりくらいのアップでしょうか。

 

 とりあえず、書いてみました。

何番煎じか分からない、恋姫の世界に信長登場の話です。

この信長は、戦国無双に出てくる信長をイメージしています。

うまく書けているかなぁ。

 

 続きを書くかは未定です。

なんとなくああしようこうしようと構想はありますが、まだまとめきれていません。

風ストーリーで長編を書くことの難しさを身をもって感じたので、ある程度話をまとめることが出来たら書くかもしれません。

なので、あんまり期待しないで下さい。

だったらアップするなよとか言われそうですけど、書いていて日の目を見ないのは可哀想かなと……。

 

 そんな感じでこれからもダラダラと書いていくつもりなので、見捨てないでくれると嬉しいです。

 

 今回もご覧いただきありがとうございました。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
19
2

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択