No.320961

真・恋姫無双 花天に響く想奏譚 7話(下)

華狼さん

 7話の(下)です。 やっぱり思うけどなんで過去の私は上下に分けたのでしょうか… まぁいくら考えても『なんとなく』に帰結するわけですが。
 今回のは一刀一行からすれば過去にあたります。少なくとも十日以上として下さい。

2011-10-19 22:34:16 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:1912   閲覧ユーザー数:1555

 

 7話(下)<はりぼてプリンセス ~炎上、そして~ >

 

 

 ・黄色の火扇 街に舞い・

 

 

 ・暗中疾駆

 

 

 大勢の兵の先頭を切って疾駆する三頭の馬。 それぞれの主は、

 

「ったく なにやってんのよあのちっさいのはぁっ!!」

「袁術にどうこう言ったところで詮無いことじゃろうがっ!」

「しかし賊の襲撃でそこまで押されるとはどういうことだ!?」

 

 雪蓮、冥琳、そして祭だった。 雪蓮は代々受け継がれてきた宝剣『南海覇王』、祭は一発二射を誇る『多弦双弓』といった各々の武器を装備して、寿春への道を駆けていた。

 

 ― 寿春が大勢の賊の襲撃を受けた ―  そんな内容の寿春からの緊急伝達を受けて、雪蓮達は即座に兵を率いて寿春へと向かった。 しかし馬を飛ばしても数時間はかかる道のり、

 伝令役の兵士が発ったときには

「っ、はぁっはぁっ す、すでに交戦は激しいものとなっていて、流れは賊の一団にありましたっ!」

 だとか。 そこから行って帰ってで何時間、雪蓮達が着くころには寿春は落とされているかもしれない と言うのが見解だった。

 

「調練に数を出していると聞いたがそれでも賊の襲撃程度で落ちるものでは無いだろうっ?」

「飾りになっておるとはいえ城壁やらで守りは相応に硬いはずじゃがのぉっ!」

「あっちにそれなりに作戦があったってことかしらねっ? とにかく急ぐわよっ!!」

 

 暗がりのなか、無数の馬が地を鳴らしていった。

 

 

 ・火の手至らぬ高みに座して

 

 雪蓮達のシーンから数時間前。 街のあちこちで火の手が、灰煙黒煙が立ち上るのを、不安で心配な表情で美羽は城の自室の窓から見下ろしていた。

 西日が美羽の顔を照らしていたが、 後に思えば、落ち行く西日はこれから先のことを暗喩していたのだろうか。

 

 まだなりは小さいが綺麗に整った顔を愁眉に染めた美羽に、七乃が優しく声をかけた。

 

「美羽様、そんなに見てなくても大丈夫ですよ。 そうですねぇ、蜂蜜水でも飲んでいましょう?」

「七乃…  いらぬ、のじゃ…」

 手を ポンと合わせての七乃の提案を、美羽は首を横にふるふると振って断った。

 

 それにびっくりする七乃が一人。

 

 っ! み、美羽様が蜂蜜を断るなんてっ… そろそろ欲しいってねだる時間の空きかたなのに、蜂蜜のことぐらいしか考えてない美羽様なのに琥珀を蜂蜜が固まったものとかって勘違いする美羽様なのにっ…!

 

 …いやあんたもう少しましな形容表現無いのか、って言いたくなるが。 七乃がそう驚くほどに、美羽は目下の街のことを心配しているということだった。

 

 多少驚いたが気を取り直して。 

「…安心してください。 あんなのどうせ金目のもの盗ったらどこか行きますから。 あっちも捕まるの嫌でしょうし、無駄に街の人達傷つけたりはしないでしょう。」

「…なら、家やお金を無くした者には妾達の分を分けてやるほうがいいのかの?」

「っ、  そうですね。 この一件が終わったら、考慮しておきましょう。」

 

 ほんとに驚かせてくれますね、美羽様。 ここまで考えることをしてくれるなら、私もあなたのために城内を変えることをするのも辞さないですよ?

 

 そんな明るい未来を想像していた七乃だった。 

 

 美羽と共に歩く未来を、疑ってはいなかった。

 

 

 ・名も無き兵士の泡沫の

 

 

「袁術様の命だってことは言ったらダメですよぉ。私の命だって言ったほうが説得力ありますからね~。」

 

 七乃にそう言われて、街での一件を報告しに来た兵を取りまとめる立場の一人は、皆に張勲の指示だとして住民の保護を優先するように言った。 実際のところ七乃は美羽に注意を向けないためにそう命じたわけだが、彼がその内情を知ることは無い。

 

「おいしっかりしろ!」

「ぅ… な、中に まだ 小さい子供が…」

「分かったもうしゃべるなっ! おいそこっ、中に子供だっ!」

「了解!!」

 彼は頭から流血している男性を担いで、安全な所に運んでまた別のところに。

 彼がいるのは街の正門から真っ直ぐ城まで伸びる大通りの中で、その正門に臨む一区画。正門をくぐってすぐの商店が並ぶあたりだった。

 

 彼は美羽、即ち袁術を良くは思っていなかった。 なぜって、ただの子供だからだ。なにが嬉しくて子供の下で動かなければならないのか。 たしかに兵の中にはなんだかハァハァしてるのも居はするけど。 彼はいたってノーマルだった。むしろ七乃に想いを寄せていて、その理由がさらっと毒のあること言うのが、そして言われるのがいい、と言う…まぁ、ノーマルです。たぶん。なんとかぎりぎりで。

 

 しかし先程の、幼いながらも必死に純粋に民を助けろと言っていた美羽。 それを見て、小さいながらもちゃんと市井のことを想っているのだと感じ、ここでようやく美羽の言葉に従うことに使命感を得た。

 

 幼い。まだ幼いが、市井を想う気持ちを持ちながら育っていけばいずれは良い領主になるだろう。 なら自分はそのために支えてあげよう。 横領や不正を止めさせるべく有志を募ってこの寿春をまともな街にしよう。 その上で袁術様が良い領主になるように見守っていこう。

 

 そして、このことを張勲様にお話してみよう。 たぶん賛成してくれるだろう。

 

「そこっ、動くなっ!」

「っ! チぃっ!!」

 家の陰から飛び出してきた明らかに賊っぽい数人を見留め、彼の周りに居た兵士もその数人を取り囲んでじりじりと包囲を狭くしていく。

 

 そうだ、自分はこの街を守っていく。 仲間と、袁術様と、 張勲様と。

 

 こいつらを追い払ったら、彼女に言おう。 共に寿春を再生しよう、と。

 

 そして、  自分はあなたを…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グシャ

 

 

 

 そこで彼は真横に吹き飛んだ。 胴体を真横に薙がれて、隣に居た一人と共に民家の壁に激突。

 薙がれた所は腕を挟んで肺の横部分。 その暴力によって腕はあっさりへし折れて、肺もそれを包む肋骨が何本か砕け、壁にぶつかった時には折れた肋骨が肺や心臓を掻き回した。 肋骨はその形状上、正面からの衝撃には強いが横からの衝撃には弱くなっている。そこに人間二人をゆうに薙ぎ飛ばす衝撃を加えられれば、卵の如くに砕けるのは当然と言うもの。

 

「カ  ァ…  ぁ…」

 

 呼気と一緒に血が地面に数滴落ち、

 

「ゴボェぁっ…!」

 

 次いで派手に血をぶちまけた。 ビチャビチャと赤い水溜りが広がる。

 

 そして彼は『物』に、『血肉と骨の塊』に成り果てた。 想いの花も虚空に散華。

 

「っ! た、 隊長ぉぉぉォォォォォッ!!」

 

 残った兵士達が見た、彼を薙ぎ飛ばしたのは。 身の丈ほどの金棒を振り切った体勢の銅色の髪の少女と、他数人。

 

「…すまんなぁ。 せやけど、」

 

 そして。

 

「…死にとぉなかったら引っ込んどきやぁァっ!!」

 

 彼女が金棒で地面を突き鳴らして、それを合図に正門から大勢がなだれこんで来た。

 

 皆各々、黄色い布を体のどこかしらに身に着けていた一団だった。

 

 

 ・人の読みに絶対は無し

 

 

「張勲殿っ! 兵をほぼ全て鎮圧に向かわせるとはどういうつもりか!」

「こういうときに上に立つ存在を印象付けないと反乱の火種を作りかねないですからね~。」

「し、しかし城内の警備が少ないと」

「では代わりにあなたが鎮圧に参加しますかぁ? 出来ませんよねぇ、私だって怖いですからねぇ。」

 

 数人の官僚や文官をそんなかんじであしらって、七乃は美羽と一緒に部屋で事の収束を待っているところ。

 

 まったく。不正や横領でふんぞりかえってる割りにはこういうときに情けないったらないですね。 そもそも必要以上の数の兵士さんをいつも留めてるんですから。少しは自分で身を守ろうって考えられないんですかねぇ。

 

 城内がほぼ無防備になった今現在。先のようにすっかりびくついた輩がいる中、七乃は落ち着いていた。

 

 火を着けて回っている輩はそれなりに居るが、それでも寿春の兵のほうが圧倒的に多い。しかも城内の兵も投入しているから流れが覆る筈もない。 入り口の連絡兵を先に片付ける頭の回る者がいる以上、無駄に留まって強盗し続けることも無い。すぐに逃げるだろうという読みだったからだ。

 

 そういう、読みだった。

 

 

 ・双方、予定不調和にして

 

 

 袈裟斬りの軌跡を受けて弾いて、発生した勢いそのままに回転、相手を斜め下から金棒で薙ぎ飛ばす。 黄昏の空に名も無い兵士は吹き飛んで、炎の上がる街の地面に叩きつけられた。

 次いで他の仲間に斬りかかろうとする兵を見留めた倫琥は、背後からその兵の頭に金棒を上段から叩き付ける。結果は見届けなくても分かりきっていて、なにかが倒れた音と同時に更に金棒を左右に二振り。先に右、次に左へと人が吹っ飛ぶ。加減はしたが。

 

「なんややたらに多ないか!?」

「くっそ、まさか兵力全部向けてんじゃねぇかっ?」

 倫琥と、その傍に居た仲間が苦々しく言った。

 

 辺りはもう戦場だった。炎は家々に飛び火して予想以上に大きく広くなり、陽も落ちかけなのに街は明々としていた。そのなかで大勢が剣戟を奏で、そして地面もところどころが赤々としていた。 寿春の兵士と賊軍達の血で。

 

 方々の大火の影響で気圧の変化も出来ていて、不規則な乱れた大気の流れが生まれている。

 

 血風は煙と混乱を含んで吹き荒んで、鼻に時折付くのは炎に焼かれる人のにおい。

 

「チィッ、これやと無駄に死人出てまうやんかっ!!」

「けどここが多いってこたぁ、城内の数も少なくなってるだろっ? だったら!」

「っ、 わかっとる、わかっとるわぁァァァァァァァっ!!」

 

 迷いを振り払うかのように咆哮、次いで囲むように向かってきた数人を迎撃に入る。 右二の腕に巻いた黄色い布がひらりと揺らぐ。

 

 唐竹に斬りかかろうとする兵より先に金棒で真っ直ぐ腹へと一突き。先端は鈍い角を有していて、その痛みもあいまって相手の兵は気絶しつつ後方へと飛んでいく。 横隔膜を損傷したからもう長くは無いだろう。

 

 間髪入れずに背後から二人。 その内一人の眉間を何かが横切って視界が紅く染まる。

「がァっ!?」「なッ!?」

 ひるんだ二人を倫琥、諸共に金棒で思いっきり薙ぎ払う。 さながらあれだ、『バッター振りかぶって、 …っ、打ったぁーっ!逆転ホームランですっ!!』を想像させるようなフルスイングで。そしてボールはバックスタンドに、もとい兵士二人は屋根が燃える商店のなかに叩き込まれた。

 

 ドシャッ、 と倒れこんだ内一人の目は眉間の皮ごと裂かれていた。とは言っても綺麗な切り口ではなく、太い針で引っかいて裂いたようなもの。

 

 目を裂いたのは倫琥の武器である『玖鱗』、『封鎖双龍棍』の片側の大針だった。 鎖を介して金棒と大針を繋いでいるこの武器、本来鎖の両端はバット程度の棍が二本付いているものなのだが玖鱗の場合、金棒で叩き潰し薙ぎ払うこともできれば、先程の兵士にしたように大針を鎖で振り回して切っ先で目を裂くことも、直に持って突き刺して攻撃することもできるようになっている。

 

 力と技術、双方揃ってこそ扱える武器である。

 

「ぐ、ぁ…」

 逆手に持った大針で鎧の隙間から胸を貫き、その相手が倒れたところで倫琥は声を聞いた。

 

「頃合だリンコ、行ってくれ!」

 

 小柄とはいえ、その持ち主の身体を隠すほどの大きな盾の陰からの高い声だった。あちこちに棘が生えていてなんともえげつない盾ではあるが。ドクロマークが中心にあって、てっぺんにはこれまた黄色い飾り布が。

 

「っし、 やったらあとは任しぃ! 自分も死ぬんやないで!!」

「応よ、阿連を頼んだぜっ!」

 

 倫琥が走り去ると同時に、大きな盾は仲間に斬りかかっている兵士に向かって『すてみタックル』。体勢を崩して倒れる彼の体には、腹と背中に二本の刃が突き刺さった。

 

 

「阿連、行くでっ!」

 槍を持った兵と剣で対峙していた阿連を見つけ、相手の兵を横から蹴り飛ばして救出。 一人に苦戦していたとすると情けなく思えるが、剣道三倍段の言葉然り、敵味方入り乱れてのこの戦場という状況然り、未だ目立った傷が無いのは中々のものである。 彼もまた、バンダナの形で黄色い布を頭に巻いていた。 黄色いバンダナってちょっとファッションとしてはどうなのとか言ったらだめ。確かに黄色は難しい色だけど。

 

「ごめんリンコ、おれ…」

「死んでへんのやったら儲けモンや! せや、頃合やから他のん集めて行くで!」

 そんな二人に集まるのが数人。

「行くのか?」

「丁度よかった。 じゃあ、目立たないように分かれて城に。 途中で数を確保しておち合おう!」

 

「「っしゃァ!!!」」

 

 

 ・されど火の手は上に伸び

 

 

 賊軍の増援が加わった。 その報せが七乃の耳に入ったのは少し遅れてからだった。  というか、遅かった。

 どうやら情報の伝達を相手方が交戦現場と城の間で断っているらしく、現に城に情報を持ってきた一人の兵士も、伝達を邪魔するための攻撃を受け息も絶え絶えになっていた。

 

 そしてその彼を入れるために城門を開けたとき、

 

「退きぃやあぁぁぁぁぁァァァァァァッ!!!」

 

 街の道路から城門へと続く広い階段坂を、何人もが勢いよく駆け上がってきた。

 

 

 クライマックス、だった。

 

 

 

 

 ・落陽と共に幕は降り・

 

 

 ・縛ってムラッと 七乃さん   待て他にタイトル案無いのか作者…

 

 

「居たかっ?」

「いや、そもそも袁術の私室も見つからねぇ。 ったく税だけじゃなく城も無駄に広ぇから面倒ったらねぇ!」

 

 そんな会話が自分達の居る階層のすぐ下で行われていることは、緊張下にある七乃と美羽は知ることは無い。

 

「…美羽様、絶対にしゃべったらダメですからね。」

 In 美羽の私室。 暗がりの中には普段の本人からは想像も出来ないような、張り詰めた空気で焦りを含む声の七乃と、これまた普段(以下略)、半泣きで弱弱しい表情の美羽。

「うぅっ ななの~… 」

「…ん~、 って言ってもそれこそダメみたいですね。 仕方ないので美羽様、口塞いじゃいましょう。」

 そういうと七乃、手近な布で美羽の口を巻いて塞ぐ。 泣きそうな表情で口を塞がれているその様が、

 

「ぐすっ、 モゴムゴ?(ななの、どうしたのじゃ?)」

 

 潤んだ上目遣いで見てくる美羽が、 …なんと言うかその、

 

「…はっ! だめですね一瞬襲いたくなっちゃいました。」

 

 …こんな時なのに、そそって滾っちゃった七乃さんでした。 ほんとにだめだこいつもうどうにもならねぇ。

 

 因みに人間、戦場とかの命の危険がある場所だと動物の本能で性的にアレになるらしく。 …ほら、種を残そうとして、さ。

 でもそれは雄に関してのことだから七乃には関係ないか。 七乃は実は男、ってなことは無いですよ?そんな需要も無いでしょうし。

 

 

 伝令役と共に城内に侵入した賊は、即展開して城門から入ってすぐの広場の兵を始末。 それを見ていた城内の残りの兵と文官がすぐさま城の出入り口を閉じたから、七乃が美羽の私室へと移動するための時間稼ぎになった。

 

 しかし軽々と長大な武器を振るう武将クラスの猛者が何人か居る以上、そんなのは文字通りの時間稼ぎ。かんぬきのかませが半端だったこともあって、

 

 金棒の打撃の連続で扉は破られて、城は侵入を許してしまった。

 

 街で交戦中の兵士たちは気付かない。 住民の救護と消火に集中させていたのがあだになった結果だった。

 

 

 ・迷い

 

 

「てめぇもだなぁ、街の商人と不正やってたってやつは!」

「し、知らん! わしはそんなことは」

「往生際が悪ぃんだよぉっ!!」

 

 そしてとある文官の腹に槍が突き刺さる。 腹部大動脈を切っ先が深く捉えていて、且つ太っていて血圧も高かったせいだろう、槍を引き抜くと派手に紅い噴水が上がって、その文官の部屋の床を血に染めた。 床に広がっていた敷物は中々に高価なものだったが、今となっては血と脂にまみれて価値は皆無。敷物としての価値は持ち主と一緒に御臨終。

 

 その部屋の外で走る音。 中にいた男が槍を構えて出ると音源は仲間だった。

「どうだった!?」

「畜生、袁術の部屋は空だ! でもついさっきまで居たみてぇだからな、絶対城の中に居るはずだ!!」

 

 そしてまた城内を探し回る。 城の中で生きているものは、城の者と賊達で半々の割合ぐらいだろうか。

 

 命乞いをする文官から袁術の部屋の場所を聞き出して見つけ、突入したはいいがもぬけの空。今は全員で袁術を探し回っていた。 当然、場所を吐いた文官は昇天召された。役得で馬鹿やってたからです。

 

 一方別の地点では。

 

「おったかっ?」

「居ない。 でもあの部屋のものって全部、…子供のだった、よね?」

 

 二・三人に分かれて捜索しているグループの内、倫琥と阿連が再会していた。

 

「…せやったな。 袁術て若いとか聞いとったけどあないにちっさいとか思っとらんかった。」

「…、もしかしたら飾りの傀儡で、袁術は悪くないんじゃ」

 阿連がそこまで言ったとき、

「何を言ってるんですか!」

「殺してこそ我らの誉れになるのでしょう!」

「生かしてもどうにもならねぇよ!」

 周囲の同胞が反論。 しかしこれも阿連を思っての苦言とでもすべきものだった。

 

「わ、分かってるよ 考えただけで…」

 

 その後すぐにまた分かれて捜索を続けたが、

 

 殺して、いいのかなぁ…

 

 阿連の頭には、やはり迷いがあった。

 

 

 

 ・優先事項と取捨選択

 

 

「…様っ、 、は …です」

「 ぃじょうぶ  …から  」

 

 …呼び方から察するに首領格でその人は男性でしょうか。 たぶん姓と名で真名ではないですね。よく聞こえませんでしたけど。

 

 七乃と美羽は部屋から数階層下になんとか侵入者の目をかいくぐって降りてきていて、誰のかは知らないが文官の部屋の、無駄に大きな衣装入れに隠れていた。 しかし廊下の向こうに気配を感じて慌てて隠れたその部屋の前の廊下はいつの間にか往来の主な場所になっていて、いつ見つかるか分からない状況にまでなっていたからさぁ大変。

 

 …けど読みが外れてましたね。 まさか最初の派手なのがおとりで、本当の目的は美羽様、袁術の命とは考えませんでした。

 

 いつもの軽い調子の面影は無く冷や汗が頬を伝い、心境もとても冷静とはいえない七乃だったが無理矢理に頭を整理する。

 

 七乃の考えている通り、賊軍の一番の目的は美羽、即ち袁術の命だった。

 火付けと強盗で街の混乱を呼んで兵を城から離れた寿春正門辺りに引き付け、来たところを街の外にいた本隊がなだれ込んで派手に交戦開始。先に見張りを元から街中に潜んでいた者たちが始末したから本隊も易く侵入出来て、門からの連絡が遅れたことで火を広げる間の時間稼ぎにもなった。

 

 そしてその交戦すらもおとりで、本命は手薄になった城内に侵入して袁術を初めとする俗官僚を殺す、というものだった。

 

 しかし。最初の段階を派手で大規模な強盗に見せることで本命の狙いをカムフラージュするなど、相応に考えてはいるが誤算も生じていた。

 美羽が兵をほぼ全て街へと向かわせたことで予想以上の大乱戦になり、また火の回りも早く街全体が燃えるまでになった。

 だが混戦と大火に人員が集中した結果城内が手薄になり。 今こうして侵入者達による捜索がやり易くなっているから塞翁が馬、といったところだろう。

 

「うっ …ぅ  七乃…、妾は ひっく、殺されて ぇぅ しまうのか…?」

 

 いつの間にか口に巻きつけていた布は外れていて、しかし周囲の状況を流石に把握している美羽は嗚咽をこらえながら小さく声を出す。

 

「…、大丈夫ですよ美羽様。 美羽様は私が守ってあげますから。」

 なんとか笑みを作るが、冷や汗は頬から顎に移動してぽたりと下に落ちる。

 

 当然、大丈夫なんかではある筈が無かった。 ここに居ても見つかる確率が高いままであり、第一七乃に大勢の敵を相手に出来得るだけの武の力量は無い。一人相手でも負ける自信がある。 いやそんな自信あっても困るが、自他の力量を、出来ることを完全に把握するのは軍師としては基礎にして絶対必要条件であり、それは危機回避能力でもあって自身を生かすことに繋がる。

 

 だから戦うことはしない。 ではどうするか。 すぐさま身の安全を確保するにはどうするか。

 

 

 即ち、逃げる。 これが今の状況下において身の安全を確保する方法だと七乃は思い至った。

 

 外部からの、例えば孫家からの救援を待つという手もあるが。それが来るまで自分達の 美羽の命の保障は不確定。

 戦うなんてのは先のように論外であるし、街中の兵士をどうにかしてかき集めなおして賊を追い払うのも その兵士をかき集めなおす方法が思い浮かばない。 城の異変に気付いて集まりなおしてくれることも期待は出来ない。街の状況が状況だからだ。

 

 だから逃げる。 ちょっと待て統治組織のてっぺんの存在が、その統治する街を、住民を、兵士を置いて逃げるなんてのは倫理的にどうなのとつっこんだそこの人、ナイスです。 しかし七乃を誰だとお思いか。 

 

 七乃が大切なのはあくまで美羽。 そしてその傍らに自分が居ること。 これまでも七乃が寿春の統治側に立っていたのは、美羽が統治のてっぺんに居るからであって、別段寿春の街に思い入れは無いし、ましてや不正まみれの官僚や文官には興味も無い。

 

 当然、今戦っている兵や住民を想う気持ちは流石に存在する。まともな文官や侍女のなかに声にしはしないが美羽を可愛く、そして哀れに思っている者が居ることも知っているし、官僚・文官と不正を行っている街の商人以外の住民に罪は無い。罪が無いのに焼ける街で震えているのを想えばやるせない。 俗な輩が賊を呼んだその結果、飛び火でとばっちりを受けただけなのだから。

 

 でもそこは七乃さん。 美羽と寿春の街、どちらを取ると問われれば。

 

 一切の迷い無く美羽を取る。

 

 美羽の安全を確保する為には全部を放っぽらかして自分達だけで逃げるしか無いというなら、そこに迷う余地は無い。むしろ進んで自分自身にGOサイン。

 

 そうと決まれば話は早い。 まずは必要なものを取りに行きましょうか。幸い割りと近くですし。

 

 

 

 

 

 

 ・RPGの主人公ってあれ普通に泥棒で追い剥ぎだよねとかは言ったらだめなのは暗黙の了解

 

 

 ガシャァン  通路の先で何かが割れる音がして、

 

「!? 誰だっ!!」「袁術かっ!?」「逃がすなァ!!」

 T字において下に長い棒にあたる通路に居た賊は上の一本線、左右に分かれている通路の内、右へと走っていった。 そこへ数秒遅れてタタタと小走りする音。

 音の主はT字の下の棒を横線に向かって、つまりは賊と同じルートを辿って、しかし右には曲がらずに途中の部屋に入った。

 

「…美羽様いいですよ。 あぁっと、見たらダメですからね。」

 

 七乃だった。 賊が走っていった先には割れた花瓶があることだろう。それは七乃が下に長い紐を挟んでおいて、頃合を見て引っ張った結果割れて音を出したもの。 証拠を残さないためにも使った紐はまとめてそこらへんの部屋に放り込んでおいた。 思いつきでも効果があるんですね。

 美羽を隠しておいた衣装入れのある部屋には、刺されて事切れ血まみれの誰かさんが居た。 もとい『あった』。 あえてその部屋に隠したのは、血まみれの部屋なんてのには自然と入りたくない心理が働くのを逆手に取ったわけだが、存外に効果を発揮するものである。

 

 衣装入れから死体は見えないように目隠しをしながら美羽を出し、二人は賊が走っていった通路とは逆の左に曲がって一気に駆け抜ける。

 

 走る七乃の腰には『袁術親衛隊正式採用鋼剣』が吊るしてあった。ここまでの道中に自身の部屋に寄って色々と持ち出したものの内であり、腕に自信は無いが無いよりはあった方がましだろうという判断からだ。 因みに美羽の腰にも『袁家の懐刀』が括りつけてある。 長さはナイフ程度で多少装飾が成金臭い、宝剣に属するものではあるが一応刃物としても及第点なので持っていて損は無い。 しかし『袁家の懐刀』とはなんとも皮肉の利いたネーミングだと思ったのは私(作者)だけでしょうか。

 

 服装も街に出る際に着る地味な、でも動きやすい服に着替えていた。 ただでさえ美羽は見ての通り小さいのに、いつもの公式の服では尚のこと動きが鈍くなる。だからと七乃の部屋に寄ったときに手早く着替えたわけ、だ、が。

 どうして七乃の部屋に美羽の服が、それも洗う前のやつがあるの、とは聞いてはいけない気にしたらいけない。いちいち気にしてたら身が持たない。

 

 他にも自分の全財産やら、途中隠れた部屋にあった宝飾品やらを放り込んである袋も持っていた。 これからを見越して考えれば金銭が不可欠であって、今は火事場泥棒はいけませんとかそんな悠長なことは言ってられない。 …だってそんなこと言ったらRPGの(以下略)。

 

「はァッ はァッ  !!、止まってっ  …行きましたね。 こっちです。」

 角の先に走る音。 大きな金棒のようなシルエットを見送って、足音が来た向きに走っていく。

 

 二人が向かっているのは城の奥にある倉庫。 そこには逃げる手段が存在していた。

 

 

 ・Ego 場合によっては 信念

 

 

「…ここです美羽様、入ってください。」

 

 周囲と音を警戒しつつ、七乃は美羽を倉庫の中に促した。離れたところでは数人の足音がしていて、おそらく自分達を探している者達だろう。

 

 遠回りと隠れながらを繰り返して、二人はようやく目的の倉庫に到着していた。 しかし来る途中に姿を見られてしまい、袁術であるか否かはばれてはいないらしいが怪しいのが城内にいるのは渡っていて、見つけようとやっきになっているのは走る音からも察することが出来た。

 そんな中であっても美羽と七乃の二人がどうにかこうにかここまで来られたのは、賊の一団の詰めの甘さが大きかった。無論七乃の冷静さもあるが、城の門を固めてはいても城内の通路に見張りは置かず、捜索の際も数人単位で動くのはいいが常に一塊で走り回っていたりと数人単位で行動する利点を活かせていない。

 これだけのことをしでかしておいて、しかし最後の最後での詰めが甘かったこのことが、美羽と七乃の一番の幸運だったのかもしれない。

 

「ぁっ はァッ  けほっ、 な、七乃、 ここに何があるのじゃ?」

 神経がすりきれそうな中走って来ていて息も絶え絶えな美羽の問いに、汗を拭いつつ扉を閉めた七乃が答える。

「ここにはですね美羽様、街の外に一本で通じてる隠し通路があるんですよ。 ちょっと待っててください。」

 

 そう言うと七乃は倉庫の奥に進んでいく。 この倉庫、位置する場所も広さも中途半端で、絶妙なバランスで微妙に使い勝手が悪くなっているおかしな倉庫。 だから物もほとんど入っておらず、薄っすらとほこりがかぶっていて全然使われていない。 入って両側には棚が据えられていて、

 奥の面には石のタイルで装飾が為された壁、その前に木箱が置いてあった。使われないのに装飾が為されているのは無駄の極み、みたいなものだがとある理由を知れば成程と得心もいく。

 

 七乃は奥の面の壁に寄ると、木箱を退かして壁の装飾のタイルの一枚を剣の切っ先を使って、てこの原理で浮かせる。 するとその一枚は蓋のように開き、下からは手をかけるくぼみが出現した。 そこに手をかけて引っ張ると壁の一部、小窓程の面積が扉のように開いて、

 

 現れたのは人一人が通れるくらいの抜け道への入り口だった。

 

「古い資料を整理してたらこれに関する記述を見つけたんですよ。 結構前に誰かが作ったみたいです。」

 ぽかんとする美羽を前に七乃は簡単に説明した。 これは街近くの洞窟に通じているらしく、いざと言うときの避難用に作られたもの。しかし公的に知られていないことと、見ての通り一人が通れる大きさであることを考えると。私的なものであることは間違いなかった。どうやら記述した文面がなにかの拍子に紛れ込んでいたのを七乃が見つけて今に到る、らしい。

 おそらくこの倉庫が絶妙なバランスで微妙に使い勝手が悪くなっているのも、常に物で溢れないようにするために計算されていたのだろう。

 

「ここを使えば街の外れに出られます。 さぁ逃げましょう。」

 

 先に美羽を出そうと七乃は促した。 …別に先に美羽を出せば、狭い入り口を四つんばいで通る際に七乃側にお尻を向ける形になるから即ち下の中が丸見えになって眼福、なんてことは考えていないたぶん。 七乃が何かを期待しているように見えなくもないのは、…否定できないが。

 

 しかし美羽はちらと後ろを見つつ躊躇。 早くしないといつ来るか分からない と急かそうとすると、

 

「…、七乃、 みなを置いていって、 よいのか?」

 

 不安とも罪悪感とも、もしくは両方とも取れる声でポツリと美羽。 七乃の心もわずかに揺れる。

 

「今も街では戦っておるのじゃろう? なのに妾だけが、民や兵を置いていくのは それは、…」

 

 上手く言葉が見つからないのだろう、詰まってしまった美羽だったが言いたいことは分かる。 美羽だって怖い。だから逃げたいとは思うが同時に街の人間全てを置いて行くのはいけないこととも考えることが出来ている。それは当然良いことだった。

 

 でも。

 

「いいんです、美羽様。」

 

 七乃はそれでも美羽を生かすことを選ぶ。

 

「私は美羽様に死んでほしくありません。 それに、もう私達が居ても居なくても状況はどうにもなりません。」

 

 美羽を差し出せば今回の一件はその時点で収まることだろう。 だがそれは七乃からすれば論外。だから逃げるという結論に到った。

 当然逃げるのにも相応のリスクはある と言うかリスクしか存在しない。 街を、一帯を治める者が真っ先に逃げたなどというのは悪名悪評しか生まず、しかも袁家からも追われることとなるだろう。 仮に留まってやり過ごしたとしても、今回の一件での責任は美羽にかかることになり、面倒を省くことを考えれば袁家からして一番簡単なのは『処分』すること。もともと美羽自身が重要でないのは言わずもがな、なら代わりはどうとでもなり、残しておいても損なだけ。

 

 だから逃げる。 美羽を生かすため、自分が美羽に生きていて欲しいがために逃げる。 

 

 この先のことは考えてある。 どうにかなる。 否、どうにか『する』。 自分が美羽を支え続ける。

 

「ですから逃げましょう。 美羽様、あなたは私が守りますから。」

 

 

 

 エゴと非難するか。それもいい。 だが 時に人はそれを信念とも言う。

 

 

  

 

 ・雛はとうとう巣から地に

 

 

「なんだこの部屋?」

 

 数人の男が入ったその部屋は、長く使われていないらしい寂れた倉庫だった。奥の面には薄い石の板で装飾が為されていて、しかし物は何も無いと言っていいほどに無かった。

 

「隠れるところも無ぇみてぇだな。 他んとこ探すぞ!」

 

 よく見ることもなくその場を去ったから彼らは気づかなかった。

 

 床一面の埃には二人分の足跡が奥の面に向かっていて、壁のところで途切れていたことには。

 

 

 

 

 数十分後、街外れの小高い丘にある森の中の洞窟。 そこに二人分の人影が動いた。 美羽と七乃だった。

 

「ひゃぁっなんじゃっ!?」

「蜘蛛の巣ですよっ落ち着いてください美羽様っ。」

 

 足をふらつかせながら二人は街を臨める崖まで歩みを進める。

 

 確かにルート自体は一本道だったが、途中崩れかけていたりなんとか進めるぐらいに狭まっていたりと劣化していた。それでもどうにか必死で歩いてきた結果、街から離れた今の場所に着くことができた。

 例の装飾壁、入ってさぁ行きましょうとしたその時に七乃が気付いたのだが、入り口だけでなく手を掛けるくぼみを隠していたタイルも内側から閉じられるように取っ手が付いていた。それを使って閉めていなければ、今頃は隠し通路が賊にばれていたことだろう。 どうやら非常用の隠し通路としてよりも、こっそり城を抜け出すために作られた可能性が大きい。

 

 兎にも角にも、これで一応の身の安全は確保できたとしていいだろう。 …あくまで賊の手から逃れられただけではあるが。

 

 街を臨める崖に着くと、二人の目には闇の中、赤々と燃える寿春の街が見えた。

 

「…、街が…」

 呆然として美羽、燃える街を見つめていた。

 

「…美羽様、いつまでもここにはいられません。 早くここから離れましょう。」

 対して七乃は冷静だった。いや冷静と言うよりも麻痺していた。 これからのことは一応考えているが細かいことは疲労もあって煮詰められない。だから今一番必要なこと、休息をとることだけを念頭に置いていた。

 

 そして二人はまた歩き出す。 大体の位置関係と方角は頭にある。

 

 まずは一番近くの宿がある場所に向かうことにした。

 

 …一番近いとは言っても、人の足なら現在地からはかなりかかるが。

 

 

 

 ・新たに上がるは蓮の幕・

 

 

 ・時既に遅くて

 

 

「…あれって…」

「酷いな…」

 

 街の惨状は城壁の外からも伺え、雪蓮と冥琳は独白のように漏らした。

 

 ようやく寿春を視認できる位置まで雪蓮達はやってきた。 馬を飛ばして数時間、ほぼ無休で駆った結果馬も騎手も疲労が大きかったが、騎手である雪蓮達はその疲労すら忘れて寿春の町を見つめていた。

 

 目に付いたのは夜の闇のなかに幾条も上がる煙、煙、煙。その根元は当然寿春の町。

 

「…おおよその量と範囲からすると… 街中が燃えたようじゃの。」

 祭も苦々しく見解を。

 

「っ、 行くわよっ!!」

 言われなくとも分かりきっていた。 ギリッ と歯軋りを発して、それと同時に雪蓮は馬を駆った。

 

 

 ・面々再会

 

 

 街には先客が居た。 手近な兵に端的に話を伝え、雪蓮達の兵も展開していった。

 

 篝火が焚かれ多くの兵が動く中、雪蓮は街に目を渡らせる。

 

 惨状、だった。 先客によって死屍累々の状態から脱却してはいても、襲撃してきたという賊と寿春の兵の血とで地面が赤く染まっていて、今居る街の入り口が特に激戦区だったことがうかがえた。

 消火もなんとか収束に向かっているが、燃えて倒壊した家屋に焼け焦げた商店があちこちに。火の手は街中に広がったらしく、いまだ離れたところに煙は夜空へと上がり続ける。

 

「街中を焼くとは… 過激な輩だな…」

「…っ どこのどいつよここまでするのはっ…!」

「策殿落ち着け。 じゃが儂も多少、 気分は悪いがのぉ。」

 

 他の街、それも自分達を押さえつける袁術の街のではあっても民は民。 それを無差別に焼き尽くす所業は、自分が統治する街の市井と隔てなく接している雪蓮からすれば唾棄すべき行いだった。

 そんな戦渦と戦火に呑まれた街に立つ雪蓮達に近づくのが二人。プラス幾人かの兵。

 

「姉様!」

「雪蓮お姉ちゃん!」

 

「蓮華、シャオ!」

 呼び方からも分かるとおり、雪蓮の妹の二人だった。二人共雪蓮と同じように褐色寄りの肌と髪の色、そして美貌で成程姉妹なのだなと納得が行く。

 

 三姉妹の内の次女で、先に雪蓮を『姉様』と呼んだのは『孫権 仲謀』真名を『蓮華』。 ここには居ない者を例に出すのはどうなのとは思うが、あえて例えれば一刀と同年齢ほどの少女で、雪蓮と同じように背まで届く長い髪をしている。

 もう一人のほうは三女の『孫 尚香』、真名は『小蓮』。雪蓮の言った『シャオ』は愛称である。 長いツインテールで各々輪を作りその先端を根元で止めた髪形をしていて、数文前に美貌としたが…しかしこの小蓮はいかんせん年齢がまだ足りない。それぐらいの年頃だった。十二分に有望株ではあるのは確かではあるが。

 ってこら、『今のままがいいんじゃないかハァハァ!!!』とかの危険発言した奴はちょっとあっちの兵に出頭してきなさい。命令。

 

 

 孫家の分断に際して、三姉妹それぞれを中心に孫家の主だった武将・軍師も振り分けられてばらばらにされていて、先客と言うのは二人が率いた兵団だった。

「冥琳も祭も久しぶりね、変わりは無い?」

「おぉ権殿、儂らもそっちも変わらんようじゃの。」

「雪蓮お姉ちゃんも何も無かった?」

「えぇ、なんとかね。」

 

「このような状況でなければ色々と話も出来たのだろうが。 そうゆっくりとしていることは出来そうにないな。」

 

 再会に浸る暇も無く、冥琳の言葉で一気に現実に戻った。

「…そうね。 それで蓮華、シャオ。状況は?」

 

 同じく寿春からの伝達を受けて先に到着していた二人の話はこうだった。

 途中で合流して寿春に向かい来る二人の兵団を確認したらしく、街中で交戦していた輩は二人が到着するときには大方逃げおおせた後だった。

 後に残ったのは焼ける街と死屍累々、黒々と上がる煙と赤々とした血だまり。 それらを寿春の兵を一時的に統治下に置いて消火と死体の処分を一通り対処したのが今現在。

 

「よくやってくれたわね。 蓮華、 シャオ は、ちょっと具合悪そうだけど…」

「う、ん… ちょっと、怖かった、かな…」

 空元気を出そうとしているようだが、小蓮はまともに戦場に近い場所に出たのはこれで何度目かそこら。空気に呑まれかけていた小蓮を、消火活動が比較的軽いところに置いていたのは蓮華の思いやりだった。

 

「尚香殿は休んでおるかの?」

「な、何言ってるの祭っ シャオまだ全然大丈夫だからっ!」

 

「それならいいけどシャオ、無理なら無理ってちゃんと言うのよ。  で、袁家のお姫様はどこ? まさかこんな状況でものんきに蜂蜜がどうとか言ってないわよね?」

 小蓮に気を配りつつ雪蓮、袁術についてを蓮華に訊いた、ところ、

 

「…それが、 袁術の姿はまだ確認できてないの。 城の中まで侵入されて中の者もほとんどやられてるらしくて、 …もしかしたら」

「殺されたか、ですか。 最初から袁術の命が目的だったのかもしれませんね… だったら街を燃やしたのも囮と合点がいきます。」

「思春は城の中、明命も街の中を探してくれてるけどまだ見つかってなくて あ、丁度良かった。」

 そこへ話題にしていた二人が報告のために戻ってきた。『思春』と『明命』だった。

 

「小蓮様っ、ただいま戻 はぅあっ!? ごご御久しぶりです雪蓮様!!」

 てんぱっておかしな単語を使ったのは真名を『明命』こと『周泰 幼平』。 若干茶色に寄った腰まで届く黒髪ストレートで額には鉢金、背は低いがその背丈ほどもある長く細い長刀『魂切』を背負った、小蓮にいつも振り回されて もとい付き従っている苦労人 じゃなくて頑張り屋。 わたわたしながらもきっちり礼をする様はなんとなく犬っぽい印象を受ける。

 

「明命落ち着け。 蓮華様、今戻りました。久方ぶりです雪蓮様。」

 明命に対して常に冷静を保つのは真名を『思春』こと『甘寧 興覇』。 目は鋭く深い紫色で、こちらも髪は長いが高い位置で纏めている。腰には柄尻に鈴が付いた曲刀『鈴音』を帯びていて、ちりんちりんうるさい とか言ったらその鈴の音がした一瞬後には首から血が吹き出してさようなら、である。 蓮華に忠誠を誓ったふんどし。(チリーン)

 

 両者共に孫家の隠密に属していて、蓮華の言っていたように思春は城内、明命は街中で袁術の捜索に当たっていた。

 

「二人とも変わりないわね。 それで、袁術は?」

「今のところは見つかっていません。 城の中も大勢殺されていましたが、袁術らしい死体はどこにも。」

「わたしのほうも… 街が広いから全部を細かく見れてはないんですが。」

 

「そうか… それでは私達の兵も投入しよう。 今居る半分は住民と寿春の兵の救護、もう半分は街中の捜索に当てる。 思春、引き続き城内での袁術の捜索を頼む。 明命は私達の兵も加えて街中の捜索を。」

「「はっ!」」

 

 冥琳の指示によって雪蓮達が引き連れてきた兵も活動に加わって、ようやくここに孫家の三姉妹が集ったことになる。

 

 

 ・内実は歪みの塊

 

 

 一方、街から逃げおおせた一団の時間を数時間先送りにした時間軸と集まった現場。 街中の輩は遠方に援軍らしき一団を確認した途端、一斉にその情報を流して逃げられるところから逃げていった。 その際、街中の金品や食料を各々持ち去っていったりもしながら。

 

「何なんだよあの火の勢いはっ!?」

 中心的な者たちが集まった山中の洞窟内。篝火の中で荒い声音が響いた。 阿連の側近的立ち位置の男だった。

「あんなに街中焼いたら無駄に死人が出るだろうがっ、しかも門から離れた城近くの所にも着けやがって!」

「何言ってやがるっ、囮は派手なほうがいいってのは当たり前だろ! 第一これは全員の考えじゃねぇか!!」

「やりすぎだって言ってんだ! 住んでる奴らにも生活があんだろ!」

「じゃあ今回のが失敗してもよかったって言うのか!?」

「そうじゃない!!」

 

 そして倫琥のほうも白熱していた。

「あんたらも何で侍女の人ら殺したんやっ、なんも武器持ってへんかったやろ!!」

「城に住んでりゃ袁術と同罪だ! 大体あの女共が不正とかに協力してるってのも考えられるだろ!」

「そないことゆうたら街ん中住んどる人ら全部殺さなあかんようになるで!?」

「っ、  それが必要ってんならやってやろうじゃねぇかっ、腐った商人も殺るついでになぁっ!!」

「…ア ホぬかしなやわれェッ!!」

 

 場は一触即発の一歩手前状態だった。 風の影響で煽られて火は大きくなり過ぎ、当初の予想以上に被害が大きくなっていた。 だが問題なのは最初の火付けの数が予定より数割も多く、余剰分は考え無しに着けて回っていたことだった。 だがそもそも火の延焼を考えての対都市戦とかの高尚な戦略などではなく、漠然とした火の扱いしか考えていないからむしろ街中が燃えたほうが結果的に効率は良かったのだろうが。

 城内組も問題があった。 倫琥の言っているように戦闘意志の無い者まで手にかけまくった輩が居、その結果城内のほとんどが死に絶えた。袁術を殺せればそれでよしとしていたが、疑わしきは罰せず の反対をやってしまっていた。

 

 そんな火花散る中、即席の机としている木箱から大きく ガゴンッ と音が鳴った。 水を打ったように静かになった一瞬に、

 

「みんな少し落ち着けってのっ!」

 

 音を出したのは太い木の棒を手にした少女。どうやらその棒で木箱をぶん殴ったらしかった。

 この少女、街中で棘だらけのえげつない大きな盾を持って立ち回っていた者で名を『鈷乃(この)』と言う。全体的にザシザシとした長い灰色の髪で、後ろから見ると獣の尻尾のように見える。小さいなりなのに口調が悪く、だが一応兵法書片手にどうにかこうにか今回の策を纏め上げた軍師的位置にある。 武器はすでに出たが、棘だらけのえげつない大きな盾『嶺嵐(れいらん)』。 戦えないから専守防衛のはずだがそのくせ突撃したがる傾向があって、でもそれって軍師としてはどうなの、といった性格である。 武器にも性格って出るんですね。

 

「まずはっきりしてんのはまだ結果が出て無ぇってことだ。 こっからの説明は阿連に代わるぜ。」

 

 ほらよ と鈷乃に促されて阿連が前に。

 

「…えと、 鈷乃が言うように、まだ今回の一件がどうだったかの結果は分からない状態なんだよ。」

 自信なさげだが、それでも皆が黙って聞こうとするのは阿連に『何か』があるからだろう。

 

「おれ達の目的は知ってのとおり 袁術を殺す ことだ。 でもその袁術が最後まで見つからなかった。 隠れ通されたのかそれか逃げられたのかは分からないけど、だからって失敗したとも今の状態じゃ言い切れないんだよ。」

 

「街を治めてる奴があそこまで攻められたって言うのは間違いなく袁術が悪く言われるし、もし逃げられたなら逃げたことで絶対に責任を問われる。

 つまりどの道袁術はおれ達が攻めたことで失脚するはずなんだ。 おれ達の力で、ね。」

 

 自分達の力で、の部分を強調するのは聴衆のモチベーションを上げる効果があることは知ってか知らずか。 ともかく最後の一節で皆の中の自信が大きくなったのは事実だった。

 

「それにもし失脚しなくても、何も咎めが無かったら民衆に不満がもっと募る筈だよ。 そうすれば自然とおれ達に協力してくれる人も増える。だから今のところは様子を見るべきなんだ。 方法の是非は結果が出てからにしよう。」

 

「おいちょっと待ってくれよ阿連さん! 是非って、おれらは作戦を成功させるためにやったんだぜ!?」

「アホ言うなや! それが余計やったっちゅうとるんやろ!!」

 

 そしてまた喧々諤々。今にも掴み合わんとしそうな仲間達を鈷乃、またもや木箱をぶん殴る音で黙らせた。

 

「あ、いやだから」

「阿連、この際だからはっきり言っちまえ。」

 言いよどみそうになる阿連を鈷乃が一押し。 押しの弱さは考え物だが、阿連がそうだから支えてあげようと皆が思ってここに集っているのだから一概に欠点と一蹴することも出来ないものである。

 

 鈷乃の押しでようやく阿連は自分の譲れない部分を吐露した。

「おれは、 …やりすぎだった、 と思う。」

 

「阿連さ」「おい阿連がしゃべってんだぜ!」

 ビッ と鈷乃、木の棒を男の顔に突きつける。 

 

「殺されない為に殺すのは、…しょうがないと思う。 でも侍女の人まで殺すのはやりすぎだし火もあれは多すぎる。 おれ達はただ殺すのが目的じゃないから無駄に人を死なせるのは …良くないよ。」

 

 

 

 その後、袁術のどうこうが知れてから色々と考えることとなった。

 

 そして

 

「…阿連さん、 そういう考えだってのかよ…」

 

 一団の、とある誰かの独白だった。

 

 

 

 ・足下に一歩を今踏まん

 

 

「じゃあ全員が黄色い布をどこかしらに着けてた、ってことね。」

「死んだ者にも見て取れるからのぉ。 この輩の特徴として間違いはなさそうじゃな。」

 遺留品や目撃情報から、黄色い布は一団を特徴づけるものとしての見解が固まっていた。

 

「戦況の推移然り袁術を狙ったこと然り、数も踏まえると略奪目的が主の烏合の衆では無いな。 …これが大きくなったら厄介だな。」

「じゃな。権殿と尚香殿の援軍を見ての早々な撤退も賢明なことよ。」

 事実、雪蓮達が合流する際に兵団の内の一部を近くの森の探索に向かわせたが、大勢が通った痕跡は見られてもそれの主達はとうの昔に遠くへ逃げた後だったとの報告がついさっきあった。 ほぼダメもとでの指示だったが、各々がばらばらに逃げて後にどこかで合流するといった寸法らしいのが分かったのは儲けだろう。

「敵を誉めてもしょうが無 って、あの二人はもう…」

 

 そしてその人員を率いて報告をした当の本人が、

 

「だからバカのような大声を出すなと言っている。」

「誰がバカです! バカって言うほうがバカなんですよこのバカ!」

「今三回言ったぞ。 四回か?」

「あぐっ… い 今のは無効です無効!」

「勝手にしろ。」

「あぐっ、 ぅぁあもうこんにゃろぉっ!!」

 

 …思春に冷静にあしらわれているその人だった。

 

「明命もこれになにか言って下さいこれにっ!!」

「はぅっ!?」

「おい明命を巻き込むな。」

「るっさいんです! 明命、お前は味方ですねそうですよねっ?」

「え、えと、その」

「別段そいつの味方をしても構わんぞ明命。」

 

 実際に思春はどうでも構わないと思っているのだろうが、直属の上である思春を差し置くことは出来ないし かと言って最初に仲良くしてくれて今も姉的な彼女もないがしろに出来ない。

 揺れに揺れる明命の心と視線。さあ明命はどっちになびくのか。  …なにこのおかしな誰得三角関係?

 

 そんな三角形を祭が砕く。

 

「ほれいいかげんやめんか。 まったく策殿と権殿の直属の者がこれでは示しが付かんぞ?」

 祭の言葉で二人、特に思春が熱を冷ました。 それでも各々腕を組んで顔を背けて、敵対感情むきだしなのは雪蓮達も諦めていることだからもう気にしない。 

 

「とにかく思春、明命。 やっぱり張勲の姿も無かった、のね?」

 気にせずに雪蓮、二人からの報告を再度確認した。

「はい、 兵士の人に訊いても誰も見なかった、と。」

「同じく。 虱潰しに一部屋ごと探しましたが死体も一切。」

 再度の確認で雪蓮、冥琳、祭は確信。

 

「ということは  逃げたな。 袁術と張勲の二人は。」

 

 冥琳の言葉で周囲に小さな電流が奔る。

 

「正確には張勲が袁術を逃がした、でしょうね。」

「だ けど、燃える街に居る兵や民を置いてなんて」

「権殿、張勲ならそれぐらいは躊躇わん。 立場から儂らが一番多くあやつらに接しておったから分かるがな、袁術を生かすためならそれぐらいはするじゃろうて。 権力に執着するタチでもないからの。」

「ひっどい、放ったらかしにするなんて!」

「優先することを躊躇わない奴はそういうものです、小蓮様。 張勲が袁術を捨てるのは甘寧が蓮華様から離反することと同じぐらいにありえないことでしょうね。」

「…ふん、事実でも貴様に言われては誉れにならん。」

「なんですかこらぁ!別に誉めて言ったんじゃないんですよっ!」

「明命が尚香殿から離反するのは  まぁ、どうじゃろうな?」

「ささ祭様なんでそんな風に言うんですかっ!?」

「ん、なに明命そーいうことなのシャオのことヤだったの?」

「ちが 違います私そんなことしません!!」

 

 じと目の小蓮と必死でわたわたする明命は置いといて。 こら祭なに満足そうな顔してんの。

 

「袁術の死体なら首級として持ち去ることもあるだろうが張勲が殺されてもその死体に価値は無い。故に両方の死体が存在しないのはおかしな話だから逃げたとするのが自然だ。 もし今生きていたとしてもここまでの被害を出したことで相応に責任を問われるだろう。それを見越せば張勲のことだ、逃げることの即断は易い。」

 冥琳の見解に一同も同意見だった。 そしてこれは袁術と張勲が生きていようがいまいがもう戻ってこられないことを意味していて、

 

「でもこうなったのは私達にとっては好機だわ。」

 

 それを早くに察していた雪蓮がここぞとばかりに皆に伝える。 堂々としたその笑みは、その場の皆を纏める孫呉の王を継いだ者として相応しい。

 

「私達をばらばらにしていた袁術はもう戻ってこられない。 だったらこの機会に乗じてこの寿春の街をなんとかして手に入れてやろうじゃないの。」

 

「孫呉独立の足がかりというわけね、姉様。」

「ようやく良い風が吹いたというところかの?」

「袁術がどっかいっちゃったから、みんなまた一緒になれるのよねっ?」

「事実この時点で皆は再び集えるわけですから。不謹慎ではありますが良い風向きです。」

 

 他は弁えて口には出さないが、一様に心が沸いていた。 ここにきて降りてきた機会、ものにしない道理は無い。

 

「とにかく今は目の前のことをどうにかしないとね。 袁家のが来る前に主導権かっさらうわよ、みんなっ!」

 

 雪蓮の言葉で行動は活気を帯びて。

 

 ここに孫家復興のきっかけが成った。 先は長くなりそうである。

 

 

 

 ・即ち 土侮木 なり。

 

 

「ふぅ…」

「なぁに落ち込んでんだよ?」

 

 夜空の下、ため息をついた阿連に鈷乃が声を掛けた。

 

「鈷乃… うん、もっとちゃんとしないとな って…」

「せやで、阿連がしっかりしてへんと始まらんねんか いったぁっ!?」

 そこに倫琥も加わるが、即座に尻を鈷乃に叩かれた。 パァンッ といい音が響く。

「なにすんねや鈷乃!」

「何言ってんだリンコ、お前もでかい声で言い合ってたじゃねぇかっ お前ももう少しちゃんとしろっての!」

「あんたもなにゆうてんねや戦われへんのに戦場出てくるんに言われとぉないでっ!」

 そしていつものように口喧嘩。 頭脳派と腕力派の違いはあっても、どちらも直情型だと結果性質は似通うらしい。

 

「ちょ、二人とも暗いんだからあんまり騒いだら駄目だって。 ね?」

 いつもは他のが止めているところだが、今はその他のが居ないから阿連が間に入る。 背が高いわりに物腰はあくまで低く表情も 柔和…はっきり言えば頼りなさげなのだが、だから ふっと笑顔になられたら自然と怒気が失せる。

 

「…、わぁったよ。」

「しゃーない、阿連に免じて退いたるわ。」

 こうして二人が納まったように、阿連には無条件で力になりたく思えるような、そんな雰囲気があった。

 

「ま、とにかく今回のがどうにかなってよかったってところだな。 今頃はオレ達の特徴が黄色い布だって知れてるだろ。」

「せや、こっからやで事が大きくなるんは。 阿連がゆうとったけどこれは足ががりや。」

 

 それがあるからこそ、阿連達の一団は短期間でここまでのことをしでかせるほどに大きくなったと言えるだろう。

 

「オレ達は三公の縁者の街を落としたんだ。しかもどこよりも早く、だ。 こうなりゃ他のも触発されるしオレ達に協力するってのも増えるはずだ。」

 

 そしてこれをきっかけとして、方々で潜んでいた同志が黄色い布を掲げて動き出すことになる。

 

「うん、…そうだね。   おれ達が朝廷を倒してこの国を新しくするんだ。」

 

 

 

 

「おれ達 黄巾党が、ね。」

 

 

 

 

 ・あとがき・

 

 

 どうも。 なんだか一話ごとの内容の密度がやたら上がってきてる気がしてる華狼です。こんな調子で続けられるのでしょうか。 でも場面ごとをいちいち書かないと気がすまないタチだからこうでもしないと長々とするし。 …面倒な性格です。

 

 

 さて。 ついに美羽と七乃の二人が野に下りました。これからどうするのでしょうね。 書くのは私ですが。

 

 しかしいくら統治者が袁術だからってそこまでザルじゃないだろ、とかの突っ込みは勘弁です。私もちょっとどうなのとは思ってましたが変更もしにくかったので。ゴリ押しは好きじゃないのですが。自分で書く分には。

 

 それと孫家の面々も無理なく出せる範囲で出しまくってみました。出てないのはお留守番ですかね。 色々と相違がありますが御容赦を。

 そして孫家にもオリジナルキャラが出てしまいました。まったく全勢力に満遍なくオリジナルキャラを出すつもりなんでしょうか私は。たぶんそうなるでしょうが。 今のところは欠片ほどしか出てませんが、後々キャラデザインも明記する機会が出ることでしょう。

 まぁ、思春とのやりとりであの武将かなと察しは付くでしょうが。

 

 あとやっと黄巾党が明言できました。 ただ阿連は今のところ首謀者ではありません。複数ある各団の代表、とでも思っておいて下さい。このあと事が大きくなっていく、のでしょうね。たぶん。 

 因みに鈷乃(この)の名前の意味は『乃(なんじ)は独鈷』(独鈷は護身用の仏具。)です。誰かを守れるように、の意味です。

 武器『嶺嵐(れいらん)』は棘だらけの盾ってことで動物の『ヤマアラシ(山嵐)』をもじった名前です。 正確には『山荒』と書くことは

知ってますのでそこんとこよろしく。

 

 ここから以前に出していた某場面へと繋がっていきます。それまでにも少しエピソードを書くつもりですがその内の一つでとあるフラグの回収をします。 それがなにかはお楽しみで。 っと 待って別に楽しんでないとか言わないで下さいいくらほんとのことだとしてもっ!

 

 いやでも待て待てだったら本当に楽しんでもらえるようにするのが筋ってもんでしょうが。

 と、思い至った結果が次回です。次回はなんていうか、 …なんというか、今回もですが私の文の性質をフルに発揮したようなものになっているかと。ギャグとシリアスが混合していて、言文一致かと思えば文語調だったり、と。その上でネタや言葉遊びを思うがままにきっちきちに詰め込んでます。 …もしかして色々感想があっても突っ込みどころがありすぎて纏められなくてコメントし辛くなってたりします?前話のコメントでふと思ったのですが。

 

 そして私の文の性質に関しての質問をラウンジに書き込むつもりでいます。 これを読んだ方、もしよろしければラウンジのほうにも目を通して下さい。 応答待ってます。 Please give me!!

 

 

 では。 次回は一刀一行の視点に戻ります。 おかしなことになります。カオスです。

 

 

 PS、最後に次回の内容の小出しをば。

 

 ヒゲぼっさぁぁぁぁ な『悪魔将軍』と、ちょうちょが二匹と、わんわんです。 なんのこっちゃ。

 

 

 

 

 

 

 


 
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