No.318990

HUNTER×HUNTER (転生オリ主)

帽子さん

とある出来事で死んでしまった少年。
何と、神からの厚意で転生させてもらえる事に!!
しかし、その転生先はなんとHUNTER×HUNTERの世界!?
この常に死亡フラグを孕む世界で少年はどう生きるのか?
続くかどうかは未定

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2011-10-16 00:25:50 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:22639   閲覧ユーザー数:21960

 

 俺がこの世界に来てから既に数年が過ぎ去った。最初この世界に来たときは驚いたものだ。なぜかって?それはこの世界が「hunter×hunter」の世界だったからだ。

 勿論俺は最初こんなへっぽこな世界、いやこんな危険が満ち溢れている世界で生れ落ちたわけじゃない。・・・・・・それもまた違うか俺はこの世界で別の生という形で生れ落ちたが、言いたいことはそうじゃない。

 俺はもともと何気ない普通の世界の生まれだった。こんなへんてこな世界ではなく、普通にサラリーマン等が働いている世界だった。そしてそれがどういう訳か俺は前の世界で不慮の事故で死に、この世界で再度生を受けた。何故だろう・・・・・・。いわゆる転生というやつだという事は分かるが何故俺はこんな世界に転生させられたのかが分らない。

 勿論俺にも漫画の世界にいけたらなという、中学生のような夢は勿論あった。だがそれも所詮過去形で、今・・・・・・。前の世界ではもうそんな思考は卒業していた。だからもしこの世の中に神様がいるとしたら転生という馬鹿な事ではなく本当にちっぽけな願いの方をかなえてくれても良いはずだ。

 俺の願い?・・・・・・。勿論ハーレムを作りたいということさ!!男なら誰もが一度は考えるだろう?皆から頼られそしてたくさんの女性たちを侍らすのだ。かなり最低な考えだと自分でも自覚する事ができるが、それでも男なら一度くらいは夢として持つはずだ。・・・・・・これも中学生のような夢だな。

 

 そこで俺はふと前世死んだときの事を思い出した。そういえば俺の周りには誰もいなかったな。そんな事を思い出して悲しくなってきた。

 幽体離脱といったものだろうか、俺が死んだとき。リビングにいたのだが、誰にも発見されず数日間そのままだったのだ。そのときにはもうすでに両親は他界していたので近所の方が気づかなければ俺の遺体はずっとそのままだっただろう。彼女なんて前世生まれてからできた事も無いので、発見も遅れたというわけだ。

 俺はいわゆる年齢=彼女いない歴といった男で、女性の手を握った事も無ければ女性と話したことも全く無い。まるでダメな男だった。しかし、男友達はそれなりにいたので寂しいという訳ではなく。たいしてつらくは無かった。

 男友達曰く俺の顔はひどい物ではなかったそうだ。しかし、女は寄り付かなかった。何故だろうか、友達も不思議がっていた。なにやら女性でも遠ざけるフェロモンでも出ていたのだろうか・・・・・・。

 

「こらーーー! ○○! そろそろご飯にするからお風呂を上がってきなさい!」

 俺が、一人そんな事を浴室で考えていると今の母親の俺を呼ぶ声が聞こえた。前世で親にこのような形で呼ばれたことなど数年も前の話であったため、忘れてしまったが口うるさい親だったという事を覚えている。生まれ変わった後も、そういった親というものは全く変わらない物なのだが。今の親はものすごく優しい。いけないことはいけないと叱るのだが、それは仕方の無い事だ。いけない事なのだから。しかし、話す言葉一つ一つに俺に対する愛が伝わってくる。それは、前世一人で死んでいったものとしてはかなり暖かいものだった。

「分かったよ! お母さん」

 俺はそう返事をすると小さい両手を見る。見事なまでに小さく、小枝のように細い指。俺はこの世界に生を受けてからまだ六年しかたっていないのだった。その事を思うと俺は早く強くならなくてはという念に押されてしまう。この世界では命なんて物ほど軽いものは無い。人が人を殺すなんて事はとても簡単だ。人は息が出来なくても死んでしまうし、何も食べなかったら死んでしまう。もちろん致死量の攻撃を受ければ即死んでしまう事だろう。

 この家には父親がいなかった。勿論俺という前世の記憶を持った自我はこの世界に生れ落ちた直後からあったわけではないので父親の事は覚えていない。この家には家族を守るべき存在である大黒柱がいなかったのだ。この世界では先ほど言ったとおり簡単に殺されてしまうし、盗賊もいるし、普通に人身売買も行われている。この世界には脅威が多すぎるのだ。それから母親を守るためには一刻にも修行をし強くなる必要があった。

 だが、たかが六歳でやれる修行なぞ何もないと思うであろう。普通に修行しただけではダメなのだ。この世界で通用しなくては意味が無い。だが、俺には一つだけ強くなれる為の当てが会った。だが、それは明日の朝までのお楽しみだ。今はご飯とママリンが俺を呼んでいる。

 俺は、既に身体と頭は洗い終えていたので、最後にササッと身体を湯船に溜まっているお湯で流し、風呂から出て寝巻きを身にまといリビングへと向かった。

 

 俺がリビングに着くとそれに気づいた母さんが俺の方を向く。その時俺は母さんと目が合いなんとなく立ち止まり、見返してしまった。すると、母さんは俺の後まで小走りともいえない微妙な速さで歩いてきて「さっ、ご飯は出来てるわよ。座って座って」そう言いながら俺の背中を押しながら早く座るよう催促してきた。

 俺は母さんに催促されながらいつも座っている自分の席についてテーブルの上を見ると、もうすでにおかずが三品ほど並んでおり、後はご飯をよそって食べるだけとなっていた。

 そして母さんは俺がテーブルの上を見ている間に、いつの間にか俺の茶碗にご飯をよそっていた。

「はい。○○。いっぱいあるからねー」

「うん。ありがと。お母さん」

 そう笑顔で良いながら茶碗を私って来る母親に俺も笑顔を持って返した。俺はこの母さんの優しい笑みが大好きだった。

 

 

 

 俺は母さんから茶碗を受取って、その茶碗をテーブルの上において母さんも席に着くのを待つ。そして母さんも自分の分のご飯をよそり自分の席に着いた。

 そして俺達は神に祈るように両手を開いたまま合わせ、二人で音頭をとった。

「「いただきます」」

 そういった瞬間俺はそれはもう凄い勢いでご飯をかき込む。その勢いはたまにご飯粒が口の中に入らず外へ飛び出すほどだ。そんな俺を母さんは微笑みを浮べながら少しづつご飯を口にしていく。

 俺はいつの間にか一杯目のご飯を全て口の中に放り込み、おかずであるコロッケを半分に割って口の中に詰め込む。そして空になった茶碗を母親に突きつけて言った。

「ぐもも!(おかわり!)」

「はいはい」

 母さんはそんな俺が突き出した茶碗を手に取ると再び、ご飯をよそりにいくために席を立つ。その隙に俺は口の中に入っているご飯とコロッケを味噌汁でムリヤリ胃に流し込む。

「ぷっはー。やっぱりお母さんのご飯は最高だ!」

「ふふふ、ありがと」

 そんな俺に母さんはやっぱり笑顔で俺にご飯が山盛り入ったお茶碗を渡してくれた。それを見るたびに思う、ここがhunter×hunterの世界じゃなければ良かったのに・・・・・・。と。

 ちなみに、一杯目はがっついて食べた俺だが、二杯目からはちゃんと味わって食べた。

 その後は、テレビを見たり母さんと話をしたりして時間をつぶし眠くなったので、普通に自室へ行って眠りに着いた。

 

 

 翌日、俺はお日様がこんにちわをする前に一人でに目を覚ました。目を開けようとしてみたが、かなり重い。まるでまぶたが瞬間接着剤でくっつけられたようだ。まだ眠りたい!という欲望が俺の頭の中を駆け巡っている。前世の俺であったのなら徹夜など屁でもないのだがこの世界では、俺は子供の姿になっているためその容姿に考えや欲求が引っ張られるためかかなり眠かった。

 しかし、これから俺のことを待ってくれているお友達の事を思うと眠くても頑張らなくてはならない。

「んっ・・・・・・。・・・・・・」

 俺は目をこすりながらベッドから降りる。俺の部屋は母親の部屋とは既に別室であり、大きな物音を立てなければ別に出て行ったとしてもばれる事はない。俺は手際よく動きやすい服をクローゼットの中から選び出し身につけた。

 そして、部屋についてある窓をこっそりと開けた。思いっきり開けない限りはたいした音はしないのだが、何故かこういうときは慎重になってしまう。

 俺は、窓が完全に開ききり外を見ると、今日は月が雲に隠れている為かいつもよりも暗かった。俺は一度部屋の中を見、忘れ物が無いかを確認すると、窓枠に足をかけてそのまま外へと飛び出した。

 

 俺が暗い街の夜道を進んでいるといつもどおりの森の入り口が見えた。そして、足早にそこへと向かっていく。そして俺がそこへ足を踏み入れるとなんとなく闇に食べられるような感覚に見舞われた。俺はそれが怖くて。足を踏み入れたと単に目をつぶりながら走り出した。

 こんな事を暗い森の中ですれば、転ぶか、木にぶつかるかすると思わるだろうが、ここは俺が小さい頃から毎日のように来ていた場所なので、何かにぶつかるという事は滅多に無かった。まぁ、滅多にというだけあってぶつかる事は今になってもあるのだが・・・・・・。

 だから、俺は目の前に大きな大木が迫っていたとしても気づけなかった。

「うっ・・・・・・。」

 俺はそのまま、前に走っていけばクラッシュ一直線かと思われたがその前に俺と大木の間に割り込んできた一人の人物がいた。

 ポスンという気の抜けるような音を立てて彼女の胸に俺のちいさな身体が収まる。俺はそれに驚き目を開けるとそこにはいつもの俺のお友達の顔があったので俺はその驚いていたであろう顔を笑顔にした。

「まったく、こんな暗いところを目つぶって走ってたらあぶないだわさ。気をつけるだわさ」

 そういって俺を抱き上げその顔を俺にこすり付けてくるのはビスケット=クルーガー彼女である。

 

「う?、う、うわぁぁああああああん!!」

 

 

 

 俺は視線を上にあげビスケの姿を確認すると安心からか、涙が出てきてしまった。その事態に焦って出てくる涙を止めようとするがドンドン涙がこぼれて止まらなかった。恐らく先ほどまでの暗闇が怖かったせいだろう。ここらへんはまだ容姿に精神が引っ張られているようだ。

「こわかったぁああああああああ!!」

「あぁ、よしよしだわさ。男の子なんだからって、そういえばまだこの子は六歳だったわさ。ならしょうがないわさね。よしよーし。もう怖くないだわさ」

 俺はビスケの鎖骨の辺りに顔をうずめ思いっきり涙を流していた。女性の服に涙のあとがつくとかそんな細かい事は考えられなかった。

 そんな俺をビスケは泣き止むまで頭をポンポンと撫でてくれたのだった。

 

 さて、ここらでビスケの容姿について確認しておこう。今のビスケの容姿は原作でおなじみの美少女の方ではない。なので、普通なら精神が肉体に引っ張られている俺がそんなビスケの姿を見たら恐くて泣いてしまうと思われるが。泣かなかった。それには訳がある。

 

 俺とビスケがはじめてであったとき、その時の俺はまだ自我が生まれてから少ししか経っていないころで今から1年くらい前だっただろうか。俺はここがhunter×hunterの世界だと気づきお母さんを守るのだといきこんでこの森の中に流れている川で鍛錬をしていたら、うっかり足を滑らせ川へと落ちてしまったのだ。その時俺はまだ身体が小さかったのと前世では泳ぎが得意ではなかったのでおぼれるしかないと思ったのだが。それをこっそり離れたところで見ていたビスケが大慌てで俺を救出してくれたのである。後日談ではあるがビスケもあの森を念の鍛錬所として使っていた層なのだが、俺が着てからはなんとなく危なっかしげだったので見守っていたと言う。俺は涙が出た。そしてその時に俺はビスケの姿を見た。ビスケも俺に姿を見られかなりビクッとしていたが、俺はおぼれていた所を救出してもらったので、ビスケがヒーローに見えたのだ。だから、俺は自分の母親にするときみたく微笑みながらありがとうと言うと、ビスケは驚いた表情をしたがすぐにその顔は少女のような笑みをあらわにした。しかし、俺がおぼれた事を思い出し何故あんな事をしているのかと問いただされたので父親がいなく、そのためにお母さんを守るためには自分が強くならなくてはいけないという木っ端図かしくなるようなことを熱くビスケに語った。すると、ビスケはその理由に満足いったのか「なら私が鍛えてやるだわさ」といった話になりそれ以来俺はビスケに基礎体力の向上と、ちょっとした武術。そして念の一端を教えてもらっている。

 それから俺とビスケはこうして夜な夜なこの森で落ち合い、修行をつけてもらっているのだ。

 

「よし、泣き止んだわね? それじゃ今日の修行を始めるだわさ」

 俺が泣きやんだのを確認するとビスケはだっこの常態から俺を下ろして地面に立たせた。

 しかし俺は先ほどまで泣き続けていた恥ずかしさからかビスケの片足にガシッと抱きつきふてくされていた。

「大丈夫だわさ。六歳なら泣く事は恥ずかしい事じゃねぇだわさ。泣き方を忘れないうちに泣けるだけ無いとくと良いだワサ」

 そんな慰めにも似た言葉を聞きながらもまだ俺はしばらくビスケの脚でぐずり続けていた。

 

「さて、今日の修行をつたえるだわさー」

「おうおーう!」

「ふむふむ、今日もいつもと同じく良い返事だわさ。なら今日は腹筋、腕立て伏せを百回ずつに挑戦してもらうだわさー」

「むっ!!」

 威勢よくビスケに返事をしていたが今回はそれが仇になってしまったようだ。どうしてだ、こうすれば母さんはいつも喜んでくれたのに・・・・・・。それにしても、腕立てと腹筋を百回ずつか、前の身体ならともかく今の身体でそれが出来るのかどうか。

「おやぁ? 怖気づいただわさ?」

 ビスケが明らかな挑発をしてくる。しかし、俺も男怖気づいたと言われて何も言わないわけが無い。

「むっ!! 怖気づいてなどいない」

「なら、頑張って見せるだわさー」

 ・・・・・・・・・・・・。しまったぁぁぁああああ。今になってあの言葉は罠だったという事を理解した。何ということだこんな恐ろしい罠を仕掛けてくるなんて。これが前世でも有名な孔明の罠という物か

 それから俺は空が明るみだしはじめ太陽が顔をだしたときあたりに何とか腕立て伏せと腹筋を百回ずつし終えることが出来た。そしてまだ帰るまでは時間があったのでビスケに抱っこしてもらいながら時間になるまで眠り続けていた。

「まったく、可愛い寝顔だわさ」

 

 

 

 

 

 俺はあの後、そろそろ時間だわさーという声に起こされ自分は修行に来ていたのだということを思い出すと修行が終わったとしてもそれだけで眠りこけてしまった自分を情けなく思っていた。

「そんなん、気にする事ないわさ。これから慣れていけばそんなこともなくなるわさ」しかし、ビスケのそんな言葉により安心した俺はいつもと同じ、いやそれ以上のすがすがしい気持ちで自分の部屋へと戻っていった。

 

 開けておいた窓から入りこみ靴の泥を落としてクローゼットの中に隠しこむと母親が起こしに来るまでもうちょっと寝ておこうという発想に至り再びベッドで寝息を立て始めていた。

「○○起きなさい!!」

 そしていつもどおり少し経つとニコニコ顔のお母さんが俺を起こしに来た。俺はその時はもうすでに三度寝であったので、あっさりと起きることが出来た。まぁ、幾分からだがだるかった事は否定できないが・・・・・・。

「あら、一回で目覚めるなんて珍しい。朝ごはんはもう出来てるから顔を洗ってらっしゃい」

 俺はそういわれて、目をこすりながら洗面所へと向かった。

 

 それからは、なんら特筆すべき事などなにもない普通の出来事ばかりである。洗面所へと向かった俺はその足でそのままリビングへと行き、いつもの椅子に座ると、テーブルの上に既に置かれていたパンにバターを塗りそれを片手にスクランブルエッグを食べ始めた。その後は、お母さんの食器洗いの手伝いをして「えらいわねー」とほめられる。そして、このあたりには学校まったくなかったので通信で取り寄せている教材をこなしていた。本当は念の練習をしたかったのだが、お母さんの手前下手を打ちたくない。というより心配を掛けたくない。

 そして、いつもの夕方がやってきた。いつもどおり、お母さんにお風呂で呼ばれ、夕飯を一緒に食べる。そして他愛のない話をして眠りにつく。それだけだった。

 

 その日俺は何故だか眠りずらかった。いや、いつもと同じ時間に眠ったのだがそれでもいつもと違う感じがして嫌だった。その日俺はそんな嫌な感じがどうしても自分にまとわりつくのでお母さんと一緒に寝ようかとも思ったくらいだ。それならそれで、お母さんは拒まないでくれるだろうが、俺の安っぽいプライドが許さなかった。

 

 

 その日の夜俺は眠っていたがいきなり外が騒がしくなってきて目を覚ました。

「ん・・・・・・?」

 俺は何故こんなに騒音が辺りに響き渡っているのかその幼く、寝起きの頭ではしばらく理解が出来なかった。なので、俺は何も考えずただ足が動くままにお母さんのいる部屋に行こうとした。 しかし

 ドン!

 俺の部屋のドアがいきなり大きな音を出して開いた。その音に俺はびっくりして方をすくめてしまったがそこから現れた人を見て顔がほころんでいった。

「お母さん!!」

「あぁ、○○!!」

 お母さんは俺の顔をみて安心したのか俺を抱きしめるとそのままお姫様抱っこのように俺をだき、そのままリビングへと連れて行った。

「どうしたの? お母さん」俺は俺を運んでいるときの尋常ではない母親の顔を見て今起きている出来事が普通ではない事に気がついた。外を見ようと窓を見ると、そこは赤色がてらてらと映えていた。

「分かった! 盗賊が攻めてきたんだね!! でも大丈夫、こんな日が来たときのために僕はお母さんに内緒で。いーっぱい修行をしていたのだ」

 その赤色を見て俺は来るときが来たかと、思い気を引き締める。いままでいっぱい修行をしてきたのだ。昨日だって、腕立てと腹筋を百回ずつできるようになったのだ。それに、うまく出来ているかどうかはわからないけど念だって使えるんだ。ビスケ師匠だって、ほめてくれた俺なら大丈夫だ。

「そう、えらいわね。ありがとう。そんな○○が大好きよ。でもね、ダメ決して闘ってはいけないわ」

 しかし、先ほど放たれた。母親のセリフによって俺の思いは打ち砕かれていった。

 

 

 

「なんで?」俺は言っている意味が良く分らなかった。現に俺はこの間までは出来なかった腕立て伏せと腹筋が百回も・・・・・・。あっ、あああああああぁぁぁぁぁぁあああ。そこまで言っていて俺はようやく気がついた、腕立て伏せが腹筋が百回出来たとしてもそれは今の六歳である俺であるから凄い事であって、大人からすればそんな事はなんてことはないと言う事を。ようやく気がついたのだ。

「それはね。お母さんは○○の事大好きだからよ。だから○○には危ない事をして欲しくは無いの」

 お母さんは俺に言い聞かせるように座り込み俺と目線を合わせるようにして言う。

「あなたはね。もう死んじゃったけど。あなたのお父さんと私のいとしの息子なの。もう可愛くて可愛くてどうしようもないほど。だからそんな可愛い可愛い○○には危ない事をさせられないの。大丈夫よ。恐い人が来ても私がやっつけちゃうんだから。お母さんこう見えて結構強いのよ」

 そう言って俺・・・・・・、僕に力こぶをみせるお母さんは明らかに無理をしているように見えた。恐いのだろうこれからやってくるであろう。盗賊たちがしかし僕のために怯える訳にいかない。こうして僕を寄り代にして自分の精神を正常に保っているのだろう。僕はその姿を見て無意識のうちに涙がでた。そんな時ある考えが思い浮かぶ

「そうだ! 山に僕の師匠がいるんだ。その人なら強いから盗賊なんてやっつけてくれる」

 そうだった、山にはビスケ師匠がいるのだ。呼べばやってきてくれるだろう。最初僕を助けたときのようなヒーローのように。もしかしたらもう異変を感じてこっちに向かっているかもしれない。

「だめよ。「なんで!!」賢い○○なら分かるでしょう? 今、この状態で外に出ることがどんなに危ない事なのか」

 しかし、その考えもお母さんは否定する。お母さんの言うとおりだどうすれば良いのだ。涙が止まらなくなってきた。

「もう!! お母さんの馬鹿!! やだぁ。お母さん死んじゃうの? そんなのやだぁ・・・・・・。うわあああぁぁぁああああ」

 もう僕は本格的に何も考えられなくなってきた。お母さんが死んでしまう。どうすればいいんだ

「大丈夫よ。静かにしていれば悪い人たちは直ぐに通り過ぎちゃうわ」

 僕はそんなお母さんに抱きつき声をなるべく出さないようにして泣いた。これから自分が、お母さんがどうなるのか分からず恐かった。

 

 バタン!!

 

 しかし、現実はつねに残酷である。自分の家のドアが乱暴に開けられる。そこには盗賊と思われる人間が一人いた。

 盗賊たちはこの町を人海的にまわり殺しつくしてきたのだろうか、それで無ければこんなちんけな何処にでもあるような家が狙われるはずが無い。

 

「ちっ、やっと女かとおもったらガキもちかよ。しらけるぜ」

 盗賊がそういうと先ほどまで僕を抱いていた、お母さんの圧力がきゅっと強くなった気がした。僕も、見た目は子供であるが中身は、子供ではない。今の言葉の意味は分かる。つまり、もし僕がここにいなかったらお母さんは盗賊たちに嬲られ、慰みものにされたかもしれなかったのだ。そう思うと、身体の芯から寒気が起こってくる。

 母親が父親ではない他人に乱暴されているのを見たら確実にトラウマ物であろう。いや、心がその光景を受け入れられない。もしそうなったら精神が死ぬ。

 

「しょうがねぇな。子持ちの需要は全然ねぇからな。ここで殺して、子供はそうだなその筋の奴らにでもうっぱらうか」

 盗賊は僕達を見て何も抵抗をしないと見るや、僕達をどうするかの算段をしていた。最悪だ。もう僕とお母さんの未来に希望は無いのだろうか。

「この子は私が絶対に守って見せます」

「お母さん!!」

 すると、お母さんは僕を抱いていた腕を振りほどき僕と盗賊の間に立ちふさがるように立った。

 何してるの?お母さん。僕が、僕が、お母さんを守ってあげたいのに・・・・・・・。畜生!なんで足が動かないんだよう。震えてないでうごけよ!この日のために頑張って修行してきたんだろう?

 そう必死に念じるが俺の足が動いてくれる事は無かった。俺の足を止めているもの、それは恐怖。現実ではありえない。そんな非日常的なことが目の前で起こっている。それに俺は恐怖し、足が震え、動けなかったのだ。念を使おうにもこんなに精神が乱れていては使えない。それに、いま考えてみると、本当に念が使えているかどうかが怪しいのだ。ビスケ師匠は俺の喜んだ顔見たいがためにああいっていた気がする。しかし、それをビスケせいにするわけにはいかない。ビスケもまさかこんな事がおきるとは思わないし。それに、そのビスケの嘘によって俺とビスケは互いに笑顔になれたことも事実だ。

「はいはい、そうかいそうかい。ならあんたを殺した後でその子を攫うからなにも問題ないな」

 

 

 

 盗賊はそういってお母さんに向かって刃物を構える。その刃物は元から盗賊が持っていたものだ。

 お母さんが殺される。そう思ったとき、お母さんはその盗賊にタックルを食らわせたのである。

「ぐはぁっ!」

 その事により、盗賊と母さんは重なり合って倒れる。

「ぐっ、逃げてぇ!! ○○逃げてぇ!!」

「逃がすっかぁ!!」

 俺はお母さんの声に反応して逃げようとするがいかんせん俺の足は動かなかった。

 盗賊は上に乗っかっていたお母さんを乱暴にどかす。その時にわかったことだが、その盗賊の持っていたナイフはお母さんの胸に深く突き刺さっていた。殺気のタックルのときだろう。そこからはとめどなく血が溢れている。

 俺はそのままお母さんに近寄りその身体をゆする。

「お母さん? お母さん。お母さん!う、う、マ、ママぁぁぁぁぁああああああ!!」

「お願いだから、グフッ、お願いだから逃げて○○。逃げるの分かる?逃げるのよ」

「いやだぁぁぁああああああ。ママを置いて逃げるなんてぇぇぇええええ!!」

「言う事を聞きなさい!! お願いだから・・・・・・」

 母親の目には涙がこぼれていた。そしてその口からも血が溢れている。もう先は長くはない事をさとっているのだろう。

「くっ、このアマ。ふざけやがってまとめてぶっ殺してやる!!」

 そう言って盗賊は胸のうちのポケットからナイフを取り出した。

「おらぁああああああああああ!!」そしてその盗賊は奇声を発しながら俺に向かってナイフを振りかぶり、そして振り下ろそうとしていた。

「うわぁぁぁああああああああん。だれがたすけてぇぇぇぇぇぇ。おどうざぁぁあああああん、びずけぇぇえええええええ!!」

 僕が思いつく限りで自分たちを助けてくれそうな人を叫んだ。そのとき、

「ぐわぁぁああああ!!」その盗賊はすさまじい勢いで吹っ飛んでいき壁にぶつかり、めりこんだ。

「すまないだわさ。気付くのに時間がかかった!!」

「ビスケ!!」

 ビスケが来てくれた。

 

 

 ビスケが来てくれた。その事がこんなに嬉しいことは無かった。だから、僕は顔を輝かせてビスケの方を見るが。遅かった、遅かったのだ。

 僕はビスケの方へ向けた視線を胸にナイフが刺さったままのお母さんを見る。もう息が絶え絶えで生きていることが奇跡だった。

 ビスケは僕の様子に気付き近付いて来るが、僕の手の先にあるものを見て顔を曇らせた。手遅れであった事をさとったのか・・・・・・。

「すまないだわさ」ビスケはその一言しか言えなかった。ここで、何を言っても良いわけになってしまうからだ。

 

 そんなビスケをお母さんは目も既に朧だというのに見た。

「お母さん!!」僕は呼びかける。しかし、お母さんは僕の言葉を無視して続けた。

「ふふふ、あなたがビスケさんですか。ありがとうございます。いままで○○の面倒を見てくれて」

「いや、私自身も○○を気に入っているし救われてもいるから、そんな面倒でもなかっただわさ」

「そうですか。なら良かったです。それなら気に入りついでにこれからのこの子の面倒を見てはくれないでしょうか。私はこの通りもう数分の命でしょう。私はこの子を守って死ぬ。それは本望なので良いのですが。この子の将来を見届ける事ができなかったのはとても残念で悔いが残ります。なので、この子が貴女を気に入っており、貴女もこの子を気に入っているならもう。貴女を信用するに値します。どうかお願いですこの子の面倒を見てはくださいませんか?」

 それは、死ぬ直前の最後の炎といったものだろう。最後に一際鋭い光を放ちそして

「わかったわさ。この私ビスケはこの名にこの子を立派な大人に育てると誓うわさ」

 

 

 

「あ、りが、とうござい・・・・・・ま・・・・・・・・・・・・」

 最後鋭い光を放った後は儚く消えていく。

「お母さん? ねぇ、お母さん。お母さん! うわぁぁああああああああああああああああああ!!」

 

 僕は一際大きな声で泣いた。そんな僕をまるでお母さんのようにビスケは包み込んでくれたのだった。

 

 

 

 あの後、僕は気を失ってしまったらしい。そして僕が起きた後起こった出来事をここに記そう。

 僕が目をあの後目を覚ましたのはもう既にお日様は空高く上っている頃だった。町被害はそうとうだったようだが、生きている者も多くいた。勿論殺されてしまった人も多くいて、その人と関係が深かった人は悲しみに暮れていた。その時に聞いた話だが、ビスケが異変に気付き僕を探していたとき、片っ端からそお盗賊たちをぶちのめしていたのだというそのせいか、被害は軽くなり。その分僕の所に来るのが遅くなってしまったわけだけど。責めるわけにも行かなかった。

 

 僕はビスケの手伝いを借りながら、お母さんをお墓に埋葬した。本来ならちゃんとした手順を踏まえて埋葬してあげたかったが教会の人たちは皆殺されてしまっていた。のだった。いずれ、教会の人が来てもっと綺麗に埋葬してくれるだろう。

 

 こうして、僕は名実供に両親とも、お母さん、見たことが無いお父さんを失い。家族を失ってしまった。帰るべき家もお母さんを思い出し泣き喚いてしまうので帰ることもできなかった。

 

「一人になっちゃった」

 僕は一人粒やいた。

 

 そんなちいさな呟きが聞こえたのか傍らに見守るようにいたビスケが言う。

「わたしは○○のお母さんから○○の事を頼まれただわさ。だから、一人ということは無いわさ。もしそれが家族がいなくて一人というのなら、わたしと○○はすでに家族だわさ。それぐらいの絆はあるし、もし、もしだわさ。○○が自分の気持ちにけりがついたなら私のことをお母さんだと思ってくれるとうれしいわさ」

 

 僕は頬を赤らめながら言うビスケを見て、再び泣きそうになる。

 

「つらいときは泣いたほうがいいわさ。泣いて泣いて、泣いて泣いて全てをぶつけると良いわさ。わたしは全部受け止めてあげるわさ」

 

 僕はそういわれてもう我慢できなかった。

 

 ビスケの胸にダイブするように飛び込み泣いた。どれだけの時間泣き続けたか分からないくらい泣いた。

 

 けれど、ビスケは全て受け止めてくれてまるでお母さんみたいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今はまだ、呼べないけれど、○○がビスケのことをお母さんというのもそう遠くは無い話かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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