No.316041

人類には早すぎたあの人が恋姫入り 七話

TAPEtさん

鳳凰一双の方を上げるはずだったのにどうしてコレをあげているのか、私にもわかりません。
あっちの方はもうちょっと補正してから上げます。ご了承ください。

2011-10-10 18:56:02 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:5093   閲覧ユーザー数:4118

流琉SIDE

 

「兄様、頼まれた資料持って来ました」

「……うん」

 

皆さん、お久しぶりです。典韋です。

最初季衣と一緒に護衛隊所属となっていた私は、華琳さまのお願い半分、そして自

 

分の私心半分して今や兄様の仕事のお手伝いをしています。

仕事のお手伝いと言いますけど、具体的に何か主な仕事があるわけではなく、お茶

 

などを淹れるなどの地味な世話から、他の部署から資料を持ってきたり、街の見回

 

りの時護衛をするなど雑務から個人な世話まで幅広く働いてます。要するに兄様の

 

お世話役というわけです。

 

兄様は見た目はああですが、すごく頭の冴えている方で、普通の人おろか、私たち

 

の軍の軍師の桂花さんまでも、兄様の知恵には届かないところが多いらしく、もは

 

や兄様は、私たちの軍になくてはならない人となっています。

でも、外のことではあんなにしっかりしている兄様ですが、自分のこととなるとま

 

ったく気を使わないのです。放っておいたら何日が経っても食事を取らなかったり

 

、寝ることも忘れて仕事をするなど、誰かが常に見ていないとすぐに体調を崩して

 

倒れてしまってもおかしくないぐらいです。

私が側に居るようになってからはそういったことは少なくなりましたけど、以前は

 

大変だったらしいです。

にも関わらず、本人は大したことのないようにするから尚かつ質が悪いです。

 

兄様がもうちょっと自分のことを大事にしてくださったら私ももうちょっと安心で

 

きるのに…

 

「る…典韋」

「あ、はい」

 

兄様には真名を預けたのですが、何故か兄様は私のことを真名で呼んでくれません

 

私に限らず、華琳さんを含めた魏にある将の皆さんのことも真名をもらっていなが

 

ら名前や字でしか呼ばないらしいです。

理由はわかりませんが、最近になって、兄様は一瞬私を流琉と呼ぼうとして、典韋

 

に言い替えることが多くなりました。

これって、兄様が私に対して心を開けてくれている…とみてもいいのでしょうか。

 

ちょっと嬉しいです。

 

「俺は最新の資料を持ってきてくれと言ったはずだが…?これはもう半年もすぎて

 

いるだろ」

「すみません。でもあちらでもコレが一番最近調査したものだって……」

「…使えない奴らだ…」

 

そうつぶやいて、兄様は立ち上がりました。今日寝起きて初めてです。

 

「出かけるぞ」

「どこにですか?」

「街にだ。資料が無いなら自分で見て資料を作るまでだ」

「は、はい、お供します」

「…いや、今日はついてこなくて良い。視察がてらに行くのだから結構長時間出ま

 

わることになる」

「大丈夫です。というか、そんなに長く出歩くのだったらなおさら護衛は必要です

 

。この前だって、私が知らない間出かけてお腹減って街の隅で倒れてたじゃないで

 

すか。私が間に合ってなければ、あのまま街のチンピラたちに素っ裸にされてまし

 

たよ?」

「……記憶にな、」

「前週の話です」

「………」

 

兄様は無言のまま部屋を出て行きました。

これならついて行っても文句は言わないでしょう。

 

 

 

兄様の後をついて街で出ると、いつもの活気の良い陳留の街の情景が目に移ります

 

この区画は、兄様の計画で造る最初から計画された計画地区だそうです。

 

「あぁ、あの肉まん美味しそう!」

「……」

「兄様、肉まん食べますか?」

「お前は食え。俺は良い」

「………」

 

いつもの無表情な顔に手はポケットに突っ込んで、腰は老いて絶対曲がるだろうな

 

ぁと思うぐらい曲げて歩いている兄様の姿を見ていると、この街で一番不審なのは

 

この人じゃないかと思ってしまうぐらいです。

実際、この街の治安を管理している人なのに……。

 

「典韋、この街を見て何か気づくことはないか?」

「はい?」

 

ふと兄様がそう聞いてきて、私はもう一度街の周りを見回しました。

 

「賑やかですし…いい街なのではないのですか?」

「賑やかだと言って必ずいい街とは言えない。街が賑やかなことは国と商店街の経

 

済状況においていい影響を与えるのは確かだが、逆に治安の問題が多くなる問題も

 

ある……典韋、あの左から二番目にある黄色い布をしたチビを捕まえろ」

「はい?」

「良いから早く、現行犯だ」

「!」

 

その言葉を聞いて私がもっと良くみると、兄様が言っていたその男は賑やかな人衆

 

の中で人の財布を自分の手に取っていました。

 

「そこのあなた!」

「!」

 

私が大声で叫んで走っていくと、そのすりもこっちに気づいて逃げ始めました。

 

「街が賑やかだとああ言った泥棒をつかまえるにも一苦労だ」

 

そう暢気なことを言っている兄様を後にして私は自分の武器を取り出そうとしまし

 

た。

 

「伝磁葉々(でんじようよう)なんて使ったら他の人たちにも被害が行くぞ」

「じゃあ、どうするんですか!」

「知るか。取り敢えず追え。そもそもつかまえる前に今から捕まえに行くという方

 

がおかしい」

 

うわぁーん、言い返せない自分が馬鹿みたいで泣きたいですー!

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

「待ちなさーい!」

「待てと言われて待つすりがあるかぁー!!」

 

兄様から離れて賑やかな街中でなんとかすりの姿を逃さず追う私でしたが、正直全

 

然距離が縮む気がしません。

 

「あ!秋蘭さま!」

「?」

 

でもその時ふと、街の露店の前に立っている秋蘭さまを見つけたのです。

 

「その人泥棒です。捕まえてください!」

「何!?」

「!」

「ええい、退けーー!」

 

すりを目の前にしていた秋蘭さまがその人をつかまえるために前に出ました。

でも、その時、

 

「はぁぁーー!!」

「ぐぉーっ!!」

「!」「!」

 

突然露店場に座っていた人が立ち上がっては、秋蘭さまの前に立って走ってくるす

 

りを見事に蹴り上げたのでした。

すりはそのまま宙に浮かんでさっき見たものを含めた人の財布たちと共に地面に落

 

ちました。

 

「ぐぅ……ぅぅ…」

「こんな誰もが苦労をして生きていく世の中で、人の者を盗むなど、恥を知れ!」

「あ……」

「すごい」

 

銀色の三つ編みの髪に鋭い目つき、そして見事な蹴り攻撃を入れてからのその発言

 

この女の人、ただの露店商人じゃないです。

 

 

 

秋蘭SIDE

 

今日は姉者と華琳さまと共に、街の治安の視察のために出かけていた。

 

「華琳さま、北郷は連れて行かないのですか?」

「何!秋蘭、何故アイツの名が出てくるのだ」

「姉者、あいつはあの街を計画している者であり、治安を担当する警備隊長でもあ

 

るのだぞ」

「うぅん……それはそうだが…」

「確かに、一刀を連れていった方がこの視察の意義を考えれば妥当かもしれないわ

 

ね。でも、一刀も自分の仕事があるわけだし、今更に連れていこうとしても断るに

 

違いないわ」

「華琳さまがお呼びしているのに断るなどこの夏侯元譲の剣の錆にしてやります!

 

 

ああ、相変わらず姉者は一々かわいいな。

 

「そういうわけだから、秋蘭には悪いけれど、今日は一刀は無しよ。それとも、彼

 

が居た方が秋蘭には良かったのかしら」

「いえ、そんなことは……」

「まぁ、いいでしょう。それじゃあ各人分かれてこの街を視察しなさい。昼頃には

 

ここに戻ってくるように」

「はいっ!」

「分かりました」

 

私は華琳さまにそう答えて、私に任された地区に向かった。

 

・・・

 

・・

 

 

「これは…ながなかすごいな」

 

北郷の計画通りに街を作り始めて半年。

私が通っている街は、北郷の街の開発計画が始まった後から造られた街、北郷が一

 

番念を入れて作った街だ。

 

「…悔しいが、あいつがいつも華琳さまに言っている無礼言は実力から来ていると

 

いうのか」

 

北郷の能力は、もはや華琳さまが居ない陳留ほどに欠かせないものになっていた。

北郷の発案で始まった、この街の開発案を含めた革新案の数々、少しずつだがその

 

成果を見せてくれていた。

他の所では考えられないほどの速度で、我々の地域が発展して行く。

もしかしたら、北郷は政治面にあっては華琳さまや桂花よりも上かもしれない。

いや、そもそも何故あいつは我々の下に居るのだろう。あんな能力を持っているな

 

ら、この乱世の中、功を挙げて自分の軍を作り上げるとしたら、華琳さまの覇道に

 

おいて一番危険な存在になるだろうに……。

あいつが敵ではなくてよかったと思うぐらいに……

 

「…何を疑問に思っているのだ、私は」

 

あいつがそんなことをするはずがない。

あいつが我が軍に居ることを感謝するまでもない。

何故ならあいつは……

 

「うん?」

 

そんなことを考えながら歩いていたら、ふと異様な空気を感じた。

賑やかな街の中で、一箇所だけ静かな場所。

人群がないというわけではない。ただ、静かだった。

 

「…お前は…?」

「見ての通り露天商です。竹籠は必要ですか?」

 

籠屋……?

 

「…良い籠だな」

「どれも入魂の一品です」

 

確か部屋の籠が壊れて、新しい奴が必要だった。

だけど、私はそれよりその籠を売っている者の方が気になった。

他の店の商人たちが人を呼び寄せるために頑張っている中、彼女だけは静かに、私

 

のような人を呼んでいた。

人には気というものがあって、武人だとその気を読む能力を極めなければならない

 

私の目の前にいるその露天商人は、とても静かに、でも逆に強い気を発していた。

 

とてもただの商人とは思えないような……

 

「秋蘭さまー!」

「?」

 

そう考えているうち、私は慣れた声を聞いて振り向いた。

向こうから流琉が走ってきていて、その前には流琉に追われてるように逃げる男が

 

一人。

 

「その人泥棒です。捕まえてください!」

「何!?」

「!」

 

その一瞬、座っていた露天商の女の気が動いた。

 

「ええい、退けーー!」

 

私がその男を制圧しようと構えた先にその静かに自分の気を秘めていた商人は立っ

 

ていた。

そして、秘めていたその力を一気に目の前の泥棒男に叩きこむ。

 

「はぁぁーー!!」

「ぐぉーっ!!」

「!」「!」

 

見事な蹴りによって男は空に浮かびものすごい音と共に落ちた。

 

「ぐぅ……ぅぅ…」

「こんな誰もが苦労をして生きていく世の中で、人の者を盗むなど、恥を知れ!」

「あ……」

「すごい」

 

此奴、只者ではない。

 

 

 

 

流琉SIDE

 

「捕まえたか?」

 

後ろから兄様の声が聞こえて私はその女の人に見とれているのをやめて後ろを振り

 

向きました。

 

「兄さま、……って、なんですかそれは」

「見ての通り肉まんだ」

「どうして、肉まんを食べているのですか?」

「お前が走って行った後、ちょうど美味しそうな肉まん屋を見つけたのでな」

 

それは私が一緒に食べようと言った店の肉まんですよね?どうして私が言った時は

 

冷たそうに言って、人が苦労をしてるうちに暢気に肉まんを食べながら歩いてくる

 

のですか。酷いです。

 

「食べるか?」

「食べていた物を差し出さないでください」

「そうか…」

 

はっ!私は今、すごく勿体無いことをしてしまった気がします!

 

「それはそうとそこの君」

「!」

 

すりを倒した露天商の女の人が、兄様を見てまた構えました。

まぁ、確かに不審者姿ですしね、兄様は。

 

「俺はこの街の治安を任されている者。君の名前を教えて欲しいのだが」

「……楽文謙と言います」

「………」

 

相手の名前を聞いた兄様の目が鋭くなりました。

 

「興味深い……妙才。彼女が売っている竹の籠を経費で落としてもらえるか?」

「!」

「……北郷、一体何を考えている」

「さっきの動き、気に入った。例に言っていた俺の副将、この者を雇いたい」

「何?」

 

副将…?

確かに兄様は最近仕事に追われていて、ちゃんと外に出ることもないほど忙しいよ

 

うでしたけど、会ったばかりの人にそんなこと…しかも相手は城を回りながら商売

 

をする露店商人ですよ?

 

「あの、私を雇いたいとは、どういうことですか?」

「聞いての通りだ。俺はこの城の街の開発、治安を一任されている者だが、人材が

 

なくて最近良い者が居ないが探していた。だけどなかなか眼鏡に叶う奴が居なかっ

 

た。だが、君の腕なら俺も納得できる」

「待て、北郷。そんな話、いくらなんでも勝手すぎるぞ」

 

秋蘭さまがそうおっしゃいましたが、

 

「孟徳は俺の副将を選ぶことを俺に任せると言った。妙才に文句を言われる筋合い

 

はない。孟徳にも同じくだ」

「…!」

 

わ、わ、お二人が凄い勢いで互いを睨み合ってます。不味いです!

 

「に、兄様、ダメですよ。そもそも文謙さんは街を回る商人なのですよ?文謙さん

 

の事情もあります」

「……お前はこれでも食べて黙っていろ」

「うっ!」

 

兄様は持っていた食べかけの肉まんを私の口に入れて黙らせました。

 

「あの、大変失礼な話ですが、その話は呑めません」

 

そしたら、今度は文謙さん本人がそう言いました。

 

「……理由は?」

「私は、いえ、私たちは私たちの村の人たちが作った籠を売るためにここに来まし

 

た。竹籠を売った金を街に持って帰らなければ村の人が食べる食料を買うことがで

 

きません」

「……他にも連れが居るのか?」

「はい」

「その村というのはどこにある…」

「陳留から東に2日ぐらい行った先にある小さな村です」

「……なら、ここで働くことはできないと」

「はい、残念ながら、私は私たちの村のためにしなければいけないことがあります

 

。私の力を高く見てくださることには感謝しますが、ここに仕えることはできませ

 

ん」

「………」

 

兄様は無言のままその人を見つめていました。

でも、本人が嫌だといった以上、兄様だとしてもこれ以上無理を言うことはできな

 

いでしょう。

 

「…典韋、そいつは頼んだ」

「え?ああ、兄様!」

「北郷、どこへ行く」

「お前も来い、妙才。街の視察のために来たのだろ。お前もそろそろ約束の時間が

 

近いから孟徳のところに戻った方が良い」

「お前、知っていたのか?」

「朝から剣の錆にするなど物騒なこと言っておいて何を言う」

「……!」

 

兄様は文謙さんが売っていた籠の中で一つを取り上げて秋蘭さまに投げました。

 

「なっ」

「お代はこれで十分だろ。お釣りは商売を邪魔した分だと思い給え」

 

そして、文謙さんにはそこにある籠を全部買えそうな金額を渡して街をあるいて行

 

きました。

 

「……待て、北郷!」

 

秋蘭さまも、買った籠を持って兄様の後を追って行きました。

 

「………あの…大丈夫ですか?」

 

私は突然の兄様の変化に面食らっている文謙さんを見てそう言いました。

 

「え?あ、はい……少し変わった方ですね」

「私もそう思います。でも、悪い気があってそうするわけじゃないです。それに、

 

兄様が自分から誰かが欲しいというの、私初めて見ました」

 

いつも万能で、何もかも一人でやってしまいそうな兄様ですが、体は一つ。誰かの

 

助けが必要な時だってあります。

でも、私や他の人たちが側に居ても、本当に大事なことは全部自分でやっつけて、

 

私何かに任せてくれるのは誰にでもできる小さな事ばかり。

そんな兄様が必要だと思う人なんて、どんな人だろうと思ってたのですが……なる

 

ほどって肯けれます。

 

「一緒に働けなくて残念です。あのそれじゃあ私もこれで失礼します」

「あ、あの、この金ですが…」

「持って行ってください。きっと兄様なりに気を使っているのでしょうから」

「あ………はい」

 

そして、私は気絶しているすりを連れて街の警備所に向かいました。

 

 

 

華琳SIDE

 

「で、どうして二人して同じく竹籠を抱えているのかしら」

 

約束した時間に約束した場所に到着してみたら、春蘭と秋蘭が、約束でもしたかの

 

ように同じ竹の編み籠を持っていた。

おまけに、春蘭の籠の中には沢山の服が入っていて、そして秋蘭は…

 

「あなた、私が今日出かけるってわかってここに来たのね」

「……いつも政務で部屋に引きこもっている孟徳が出かけるのだ。これほど興味深

 

いことは無い」

「あなたがそれを言うの?」

 

私よりも部屋に引きこもっているじゃない。

顔を見たのも何日ぶりか思い出せないわ。

 

「で、今日は何をしに来たんだ?」

「ふん!そんなこと見たら分かるんであろう!」

「……服を買いに来たのか?」

 

一刀は春蘭の服を詰めた籠見ながら言った。

 

「なっ!ち、違う!これは……その、季衣へのお土産だ!」

「なるほど……孟徳、何か興味深いことはないか?」

「はぁ……」

 

私はあなたの暇つぶしをするためにこんなことをしているわけじゃないのだけどね

 

 

「まぁ、別に今日は孟徳が何でもないくだらないことのために出かけたとしても許

 

そう。今日はなかなか興味深い経験が出来たしな」

「へー、それは是非とも聞きたい話ね。後で詳しく言いなさい」

「孟徳が持ってる話が興味深いものだったらな」

「ふっ、期待してるわよ?」

「………」

 

「そこのお方…」

 

その時、例の者がやってきた。

 

「貴様、何者だ。無礼にも華琳さま気安く呼び止めるなど…」

「春蘭、少し控えていなさい」

「はい?」

 

今日出かけた理由、一刀が仕上げた街の視察もあるけど、本名はこちら。

亡くなった父上の友人であり、有名な占い師であるこの人に会うことが、今日のお

 

出掛けの目的だった。

 

「強い相をお持ちじゃな……世に二人もないとても強い相じゃ」

「一体何が見えると?」

「力……兵を揃え、優秀な智を持ち、この国の器を満たしまた更に潤わせるほどの

 

強い相……この国に置いて、歴史に刻まれるほど偉大な英雄になれる者の相……」

「ほほぅ、良くわかっているではないか」

 

春蘭はそういうけれど、耳いい話だけなら聞くだけ無駄。他にはないの?

 

「じゃが、その力故にお主は孤独であろう」

「……!」

「お主の尊い想いの重さ故に、誰もお主のある場所にたどり着くことが出来ぬ。一

 

層凡人の相を持っていれば、人に恵まれ、苦労をするも幸せに生きることができた

 

ものを……どうしても結局貴女はその道を一人で歩まなければならぬ」

「…………」

 

覇道の道は、皆のための者ではない。

それはたった一人にのみ歩くことが許された狭い道のり。

わかっている。私はこの道を一人で行かなければならない。

 

「乱世の奸雄よ。誰が貴女と共に歩むことが出来よう」

「……私にその資格がないと?」

「……その資格があってこそ、天から授かし才は呪いであることでしょう」

「貴様、華琳さまを愚弄する気か」

 

秋蘭が後ろで弓構えていて、私はそれを止めようとした。

 

「なかなか興味深いことを言ってくれる。俺の相も見てはくれないか?」

 

でも、先に声を出したのは一刀の方だった。

 

「北郷!」

「だからお前は孟徳と同じ道が歩けないんだ、妙才」

「…!」

「………」

 

一刀…

 

「どうなんだ、俺の相は?」

「……この世に属しない者よ。何故ここにおる」

「聞いているのは俺の方であって、あなたは答えてくれる方だ。違うか?」

 

どういう意味?

 

「……世と戯れし者よ。何故それを私のような者にお聞きされる」

「答えろ」

「………大局の示すまま、流れに従い逆らわぬようになされ。さもなければ、貴方

 

の身はあなたの言動一つ一つで破滅されていくであろう」

「…身を慎めてか」

「それが貴方の質問の答え」

「………孟徳、彼に謝礼を」

「あなたは?」

「無一文だ。用があって全て使った」

 

まったく……

 

「なかなか興味深い話が聞けた。感謝しよう」

「で、あなたのその興味深い話って何?」

「良い将を見つけた。是非ともこちらに入れたい」

「で、その者はどこに?」

「が、任官を断られた」

「何?使えないわね……」

 

期待して損したわ。

 

「自分で行くなどとは言わないのか?」

「私がそうするぐらいだったら、あなたがここに居るわけがないでしょ?その者が

 

住んでいる村まで付いていってでも仕官させるでしょうに…」

「……ふっ、まぁ、暫くは待ってあげてもいい」

「また来ると?」

「それは言えないな。身の破滅が関わっている故……」

「…………」

 

相変わらず、勝手ね。

 

「春蘭、秋蘭、戻るわよ」

「は、はぁ……」

「なぁ、秋蘭、今のは一体どういうことなのだ?私にはさっぱり分からぬぞ」

「………」

 

難しそうな顔をする秋蘭を後にして私は先に向かう一刀の後追った。

 

「あなた、私の前に立つなんて無礼にもほどがあるわよ?」

「孟徳、空から背を測れば、この中では孟徳が一番背が高そうだな」

「……あなた、死にたいの?」

 

・・・

 

・・

 

 

 

 


 
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