No.314786

異聞~真・恋姫†無双~異聞(ややこしい…)

ですてにさん

あるかもないかもしれない未来。

一刀がこの世界に残るなら、別に共和制にこだわる事も無いのかもしれない。
実際の物語がこうなるわけでもない。
枝分かれした形の一つ。

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2011-10-08 17:15:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:6372   閲覧ユーザー数:4803

「・・・まさか、こんなことになるとはなぁ」

 

「私は、こうなるんじゃないか、って思ってました」

 

「・・・雛里の慧眼には恐れ入るよ」

 

城壁の上で日向ぼっこ。私の膝枕で身体を休めているご主人様を独占中です。

仕事の目処はちゃんとつけているし、こうでもしないと、華琳さんとか愛紗さんに独占されてしまうので、

これぐらい出し抜かないと、なかなかこんな時間は作れません。

 

「御主人様~どこへ行かれたのですか~! ううっ…せっかくクッキー焼いたのに…」

 

朱里ちゃんも必死に探しているようです。が、もう私が先んじていますので、これも戦いの結果です。仕方がありません。

 

「朱里が探してるみたいだけど」

 

「今は、私だけの、ご主人様、でしゅ」

 

あう・・・びしっと決めたい時にしっかり噛んでしまう私の馬鹿。だけど、探しに行かれるのは、今は、嫌です。

 

「…ああ、今は雛里だけのご主人様だよな」

 

ご主人様の蕩けるよう笑顔。今は、今だけは、この笑顔を一人占めなのです。えへへ。

 

「俺、王にはなりたくなかったんだけどなぁ」

 

「助けるべき人を助け続けた結果、そうなってしまいましたし…。

ご主人様がいずれいなくなる、それも承知の上で皆さんがご主人様に王として立って欲しいと願ったのですから、

だから、ご主人様が気にやむことはない、です…」

 

「後のことを踏まえて、民主共和制の形だけでも作れたのは救いだよ。

俺がいなくなった後は、民から選ばれた代表の多数決によって、国が運営されていく。

ま、実際に、戦時以外の国の運用体制は、実質そんな状態に出来てるしね」

 

「華琳さんをはじめとして、皆頑張りましたから」

 

「もちろん、雛里もな。やっと、皆まともな睡眠時間が取れるようになってきたところだし」

 

一つ欠伸をしながら、ご主人様が嬉しそうに笑います。

だけど、当のご主人様は実際に国家の長であり、私たち皆の旦那様でもあります。

多忙を極めるあまり、ぐっすり休ませてあげることもままならない現状。

そんな今に不満を言うことも無く、ご主人様はいつも私たちを包み込むような笑顔を向けてくれます。

 

「あとは、金華琳との決戦、かぁ。思想の違いだから、こればかりは話し合いにならないからな」

 

絶対的な指導者に率いられる国。民から選ばれた複数の代表の合議により、方向性が決められていく国。

うまく行っている限りは、多分、どちらの国の在り方でもいいのかもしれません。

 

「もう少し、皆に苦労を…か、け…」

 

眠気に勝てず、ご主人様の瞼が閉じられました。一人占めする代わりに、少しばかりの休息を。

今すぐに私に出来る、精一杯の贈り物。

 

「寝顔を、一人占めです」

 

「・・・残念。二人占め、よ」

 

そよ風に乗せるように、優しく静かな声色で。

ご主人様の第一夫人、華琳さんが多分、お茶が何かが入った竹筒をいくつか持ちながら、城壁への階段を上がってきていました。

 

「とても、残念です」

 

そう言って、私は笑いました。

 

「代わりのお詫びにはならないけど…水分補給できるものを持ってきたわ。一緒に寝顔観賞といきましょう」

 

華琳さんも穏やかに微笑んでいます。

 

「魏の華琳には、決して想像もつかない、こんな幸せに満ちた時間だもの」

 

空は雲ひとつない青空。

 

「勿体ないですよね」

 

「そうよ、勿体ないことよ。ま、次の決戦で叩き伏せてあげたら、教えてあげてもいいわね。時間があればだけど」

 

もうすぐ大陸分け目の戦いだというのに。私たちはこんな幸せな時間を感じて。そんな余裕を持てる喜び。

 

「本当にありがとうございます、ご主人様・・・」


 
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