No.313954

自然科学―民俗学境界 第五章

JohnBrownさん

ついにこの小説も最終章となりました
最後まで読んで頂いた皆様には感謝をしております
本当にありがとうございました

2011-10-07 01:37:08 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:722   閲覧ユーザー数:717

 

第五話 自然科学―民俗学境界

 

 

「ふぃー、やっと授業終わったぁ」

 放課後を伝えるチャイムの音が学校中に響き渡る。

 退屈な一日もやっと終わりを迎えた事と明日が休日な事に喜びを感じる。

「ふあぁーっ、っと良く寝た」

 授業中ずっと居眠りをして気だるくなった身体を起こすかのように俺は大きく伸びをした。

「お前…よく一日中寝れるな」

 隣にいた友人が呆れた顔で言った。

「寝る子は育つ、って言うだろ。それに俺いつも帰り遅いしな」

 首を左右に振りポキポキ、という音を鳴らしながら俺は友人に答えた。

 俺の名前は城島勇(きしま いさむ)、どこにでもいる普通の高校生だ。

 ただ違う所があるとすれば俺には両親はいない。

 といっても別に親に捨てられたと言う訳ではない、両親は幼い頃に事故で亡くなってしまったのだ。

 親代わりとして叔父夫婦が実の子供のように育ててくれたが高校に入ってから自分の事はなるべく自分でしたいという事で今では叔父の家を離れ自分でアルバイトをしながら生活費を稼いでいる。

 でもアパートを借りれたのも今でも仕送りを送ってくれるのも叔父からなので完全に自立している訳でもないが…。

「あぁ、お前今一人で暮らしてるんだもんな。 でもいいなぁ、俺も一人暮らししてぇなぁ」

 羨ましそうに友人が言った。

「何言ってんだ、家事とかそういうの自分でやらなくちゃいけないんだぞ。 それにやっぱり帰りを待つ人がいるってのはいい事だぜ」

「じゃあ何でお前一人暮らししてるんだよ・・・」

 的確なツッコミを返す友人。

「俺にも色々あるんだよ」

 確かにそうだ、まだ大学に行くまで叔父の家のお世話になっても良かった、事実叔父夫婦からも気負う必要は無い、お前は実の息子と変わらないとも言われた。

 だが自分としては何か迷惑をかけているような気がしてならないのだ、彼らはそんなこと思っていないのだろうが、やはり血が繋がっていないという事は子供ながらにも思う所があるのだろう。

 叔父もそんな自分の心情を感じ取ってくれたからこうして一人で生活できるチャンスをくれたのだろう、私も本当の父母と同じように感謝をしている。

「色々ねぇ…まぁいいや。 ところでさ、勇今日ヒマか? たまにはどこか遊びにいこうぜ!」

 行きたいのも山々だが俺も生活費を稼がなければならない、悪いが今回は辞退せざるを得ない理由があるのだ

「悪い、俺今日バイトあってさ。 また今度誘ってくれ!」

「マジでー!? それじゃあ仕方ないが、次は一緒に行こうぜ」

 友人には申し訳ないと思いつつも帰りの身支度を整えると、一度家に鞄を置きに行こうと帰宅した。

 いつもの帰り道、季節は夏なので放課後でもまだ太陽は高い所に昇っており、まるで地球上の人間を焼き焦がすかのように容赦なくギラギラと照り付けている。

 自分の家は学校から歩いて大体十五分ぐらいと近く的近い所にある、そこからバイト先へは自転車でおよそ五分ととても近い所だ。

 友人は独り暮らしに憧れているようだが、学生とアルバイトの両立というのもなかなか大変だ。

 平日は放課後になれば部活も出来ないし寄り道などしていられない、休日は余裕はあるものの、溜まった洗濯物は干さなければならないし部屋の掃除など家事もしなければらない。

 だが一人でいる方が気楽な事も結構ある、家事を行うにも時間帯があるものの自分のペースで行う事ができる、食事に関しても食べたい時に食べればいい。

 確かにそういう面では楽ではあるがたまに人恋しい時もある、家に帰ると帰りを待っていてくれる者がいる有難味というのが実感できるのも一人暮らしの良い点だろう。

 まぁ、そんな事を思いつつもこの日常は変わる事は無いだろう。

 学校に行って、バイトして、家に帰ってまた次の日も同じ事をする。

 平凡な人生であるだろうが、俺の人生ではこれ以上大きな事件に巻き込まれるのは御免である。

「ふぃー暑ぃ、家帰ったらバイト行く前にシャワー浴びよう…」

 夏の太陽もまた変わる事なく俺達を容赦なく照りつける、汗を吸った夏服のYシャツはまるで土砂降りにあった時のように濡れて透けている。

 ようやく自分の家である三階建のアパートが見えてきた、十分の道のりのはずがこの暑さの中ではまるで途方も無く広い砂漠を歩いているような気分だ。

 アパートの階段を一つ上に上がり自分の部屋の前に自室の家の鍵を開け扉を押した。

 その時である、部屋に入ろうとした時自分の靴のつま先に何かが当たった感触がした。

 「おわっ!」

 早く部屋に入りたい一心で全然気がつかなかったので驚きのあまり声を上げて一歩下がった。

 一体俺は何に足をぶつけたんだ、恐る恐る俺は自分の足元を見下ろした。

 するとそこには――

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰宅したあなたは小汚い犬を家の前で見つけました。

 まだ息はあるようです。どうしますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自然科学―民俗学境界      完     

 

 

 
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