No.309655

邂逅

仮面ライダーの二次創作作品。同人誌で頒布した流転の後編に収録予定だった小話を文章で申し訳ないですが、こちらでも公開。 爆発の中、火野映司は謎の男に助けられる───

2011-09-29 19:15:56 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:922   閲覧ユーザー数:918

─アフリカ大陸 某国─

 

「うわぁあああん」

 

崩れたビルの近くに佇む黒人の少女。

 

「はぁはぁ…もう少し…だっ…」

 

少女のいる場所まであと数メートル。

周囲は瓦礫の山で歩くのも困難なのに、必死に近くに行こうとする青年がそこにいた。

いくつもの爆発が起こる。

 

「! またか! くそっ、待ってて!」 

 

少女に向かって声をかけて、少しでも泣くのを止めようとしている。

 

再び爆発が起こる。

 

少女がに向かって手を伸ばす。

 

「よしっ!あとちょっとだから!」

 

映司も手を伸ばす。

 

「!!!」

 

一瞬にして目の前を光が占領した。

 

「うわっ──」

 

目の前が見えなくなり、映司に爆風が迫る。

 

「!!!」

 

その時、“誰か”に後ろからがっしりと掴まれる映司。

 

「間一髪だな。む、気を失ったか」

 

彼は映司を腰に掴んで、その場を飛び去った。

 

 

─アフリカ大陸 某国 野戦病院 室内─

 

「………う…ぁ…」

 

野戦病院の一室で寝ていた映司の目が開いていく。

夕日を背にして、うっすらと近くにいる男の姿が映し出される。

男は椅子に座った姿勢で映司に声をかけた。

既に映司が負った傷の手当はされていた。

 

「目が醒めたようだね」

 

「…あ、あなたは?」

 

男は立ち上がり名乗り上げる。

 

「俺は、本郷猛」

 

「ホンゴウタケシ…」

 

「あぁ、日本人だ。キミもそうだろう?」

 

「…はい、俺は火野映司っていいます」

 

少し呆け気味に答える映司。

直前の気を失う直前の事を思い出す。

 

「そういえば、俺、あの時、目の前で爆発に巻き込まれて……。あっ!あの娘は!?」

 

険しい表情になる本郷。

 

「………」

 

本郷は辛い顔のまま、何も言わなくなる。その様子を見て、絶句する映司。

上半身を起こし、近くのテーブルに握った拳をたたきつけた。

拳からは血がにじみ出ていた。

 

「ちくしょう!」

 

「やめたまえ!」

 

すぐに映司の身体を押さえる本郷。

 

「うう…ちくしょう、…ちくしょぅ」

 

徐々に振り下ろす腕を弱め、泣き崩れる。

 

「すまない。悔しいのは俺も同じだ。あの爆発の中、助けられたのはキミだけだった…」

 

「………」

 

「悔しいか?」

「…当たり前ですよ!どうして、彼女じゃなくて俺なんですか!?

俺が助かって、あんな小さな子が助からないなんて!」

 

涙を流しながら、本郷を威嚇する映司。

 

「すまない…」

 

 

 

気がつくと、夜になっていた。

映司に落ち着きが戻ってるのを確認した本郷。

 

「…一つ、聞いてもいいか?」

 

少しずつ泣きやんでいる映司。涙を使える片手で乱暴に拭う。

 

「…っ、……はい。なんでしょう?」

 

「彼女とは知り合いだったのか?」

 

「はい…。一ヶ月ぐらい前から彼女が住む村でお世話になっていて…」

 

「そうか…」

 

「でも、今週になって村がテロリストに襲われて、

それで仕方なくあの場所まで避難してきたんですけど…。また、アイツらが…」

 

「そうか…。だが、安心してくれ」

 

「え?安心って…」

 

本郷は、天井を見上げる。

 

「あぁ、安心して欲しい。もうヤツらは現れないし、この地域は荒らさないだろう」

 

「ど、どうしてそんな事が言えるんですか?」

 

「………」

 

問いに答えない。何かに気がついたように顔を向ける映司。

 

「まさか…」

 

「…いや、違う。キミが思っているような事はしてないさ。

俺はたまたま通りかかって、キミを助けただけだ」

 

「そうですか…」

 

「ちょっとした話をしよう。

俺もな、昔、キミみたいに色んな所に旅をしていた事があったんだ。

ある国にいた際、目の前で事故が起きてな、

当時、知り合いだった子が死んでしまった。

だけど、それからは目の前で手が届く範囲にいる人を助けようと誓って、

出来る限りそれを続けているんだ」

 

堅い決意、信念を込めた目を真っ直ぐに向ける。

映司はそのまなざしに、威圧されてしまう。

 

「………」

 

「もしも、キミが今後、似たような場面に遭遇した時、

手が届く距離までいい、俺がキミを助けたようにキミも誰かを助けて欲しい。

もちろん、出来る範囲で」

 

「できるはんいで…」

 

「そうだ。だけど、キミ自身が潰れてしまっては本末転倒だ。それだけは気をつけてくれ」

 

「はい…」

 

映司も本郷に負けじと真っ直ぐな目を向けた。

 

そのまなざしを見届けた本郷はうなずく。

 

「よし!それじゃ、俺はこれで行くよ」

 

「えっ?」

 

「あぁ、すまない。キミの無事を見届けたら、この国を去ろうと思っていたんだ。

明日には君のご家族も此処へ来るだろう」

 

「!なんで、アイツの事を知ってるんですか?!」

 

「色々あってね」

 

「…わかりました。ありがとうございます」

 

本郷に向けて、深々と礼をする映司。

 

「ではな、また会うこともあうだろう」

 

本郷は背中越しに話した。

 

【───このとき、二人は知るよしもしない本郷が“仮面ライダー”であることを、

そして、この後で映司も“仮面ライダー”となることを──】


 
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