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真・恋姫無双アナザーストーリー 蜀√ 桜咲く時季に 第23話

葉月さん

なんだかどんどん更新日が遅れて申し訳ありません。
第23話投稿です!

前回からのあらすじ
馬騰の説得により華雄と和解した一刀たち。

続きを表示

2011-09-27 20:53:28 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:9852   閲覧ユーザー数:6189

真・恋姫無双 ifストーリー

蜀√ 桜咲く時季に 第23話

 

 

 

 

【飛将軍呂布】

 

 

 

《張遼視点》

 

「相変わらず壮観やなぁ」

 

虎牢関に篭城して二日、昨日と変わらず、城壁から見下ろすとあたり一面に反董卓連合軍が展開しとった。

 

「まったく、馬鹿な連中なのです。呂布殿の強さを見て懲りずにまだ攻めてくるのですから」

 

ウチの横でちびっ子軍師の陳宮がやれやれと言った感じで呆れとった。

 

「せやな、はじめに恋の攻撃を見ても懲りずに攻めてくるんやからな。どないするん?ずっと篭城してるんか?」

 

まあ、今回のウチらは守りが専門やからそれが一番何やけど、氾水関じゃ、ド阿呆の華雄飛び出したからな~。

 

「……出る」

 

「出るって、あいつらとまた戦うんか?」

 

「……(コクン)」

 

こ、ここにも猪がおったか……恋ならそんなことせんとおもっとったのに。

 

「なるほど!もう一度呂布殿の力を見せ付けるのですね!さすがは呂布殿!」

 

「陳宮まで何言うとんのや!守らんでええんかい!」

 

「わかってないですね。一度呂布殿の強さを見せてもわからない馬鹿な連中には、また呂布殿の強さを見せ付け恐怖を植えつけるのです!」

 

「せやかて、そう何度もやったら効果がなくなるんやないか?」

 

「そんなことないのです!呂布殿の武は天下無双!何度だって恐れおののくのです!」

 

まあ、恋の強さはウチもよう知っとるから問題は無いとおもうんやけど……

 

「…………早く、出る」

 

「呂布殿?」

 

「どうかしたんか恋」

 

「……居る」

 

「居るってもう目の前に居るやないか」

 

「……(フルフル)」

 

「呂布殿?何が居るのですか?」

 

「…………強いやつ、居る…………だから、早く出る」

 

「呂布殿以上に強いものなど居ないのです!気のせいです!」

 

陳宮は否定しとったがウチには一人だけ思い当たる人物がおった。

 

北郷一刀。恋は昨日の戦いで一刀にあっとった見たいやけど。まったく堪らんわ。なんでウチの周りにはぎょうさん強いやつがおるんかいな。

 

恋には一刀とのやり取りを教えとらん。陳宮に話したところ。

 

『不確定要素が多すぎるのです。もしその話が本当だったとしても呂布殿には話さないほうがよいのです。呂布殿は嘘が下手ですからな』

 

と言っとった。

 

「わかった。ほな、ちゃっちゃと敵さんを蹴散らしに行こか」

 

「……(こくん)陳宮、お留守番よろしく」

 

「任せるのです!ねねも力及ばずながらですが後方からお手伝いだいたしますぞ!」

 

「……(こくん)出る」

 

「呂布殿が出陣しますぞーーっ!!準備をするのです!」

 

陳宮は大きな声を出しながら階段を下りていった。

 

「おっしゃ!ウチも出るで!気張って準備せい!」

 

「御意!」

 

ウチは声を張り上げて兵たちに気合を居れ戦場に出る準備を始めた。

 

「準備は整ったかいな?」

 

「はっ!」

 

門の前まで来るとすでに準備は整っておった。

 

「よし!ほないっちょ暴れたろか!」

 

辺りを見回すと丁度、恋も出ようとしているところやった。

 

「恋っ!」

 

「……?」

 

「生きて戻ってくるで!」

 

「………………………………(コクン)」

 

な、長い間やったな……ホンマに大丈夫なんか?

 

「霞……」

 

「ん?なんや?」

 

「……なんでもない」

 

「なんでもないわけないやろ。用があったから呼んだんちゃうんか」

 

「……(コクン)」

 

「なら言うてみい」

 

「……元気で」

 

「ちょ!れ、恋!それ、どういう意味や!ちょい待ちぃや!」

 

恋は意味深な言葉を残して先に出陣してもうた。

 

「……なんやちゅうねん!縁起でもないわ!とにかく出るで!恋とは逆の軍に攻め込む!お前ら気張ってついてきぃ!」

 

「「「おおおっ!!」」」

 

「神速の張遼の武。もう一度連合軍に見せ付けるでぇ!」

 

馬に跨り自分の得物を天高く掲げる。

 

「牙門旗あげぇ!出陣すんで!」

 

馬を走らせ門から出る。

 

「死ぬんやないで。恋……」

 

《斗詩視点》

 

「まだ虎牢関は落とせませんの!」

 

姫の声が天幕に響き渡った。

 

「まだ攻城始めてから二日しか経っていないじゃないですか姫」

 

「わたくしの作戦は完璧でしてよ!それを行えない諸侯の皆さんがいけないのですわ。お~っほっほっほっ!」

 

文ちゃんの言葉も気にも留めずに姫は自信満々に笑っていました。

 

「「はぁ~」」

 

私たちは姫の高笑いに溜め息を吐くしかできません。

 

「それにしても初日はびっくりしたぜ。まさか、呂布が出てくるとは思わなかったもんな」

 

「そ、そうだね。数千の兵をたった一人で相手にしちゃうんだもんね……」

 

私はその時の情景を思い浮かべて顔を青くして震えた。

 

「斗詩……」

 

文ちゃんは私の顔を見て、顔を強張らせていた。それだけ呂布さんの猛攻は凄かった。

 

「……ふぅ、大丈夫だって。また呂布が来たらあたいが斗詩を守ってやるからな!」

 

「文ちゃん……」

 

文ちゃんは私を気遣ってか明るく話しかけてきた。

 

「それに、あたいの斗詩に手を出すやつは誰であろうとぜってぇぶっ飛ばす!」

 

「もう、私は文ちゃんの女じゃないんだよ~」

 

「そんな冷たいこと言うなよ斗詩ぃ~~」

 

「もう、文ちゃんたら」

 

私は抱きついてくる文ちゃんに苦笑いを浮かべた。

 

ちょっと見直したと思ったらすぐこれなんだもん。でも、ありがとうね文ちゃん。

 

「それにしてもさ」

 

「なに?」

 

「あの北郷とか言うアニキ強かったよな」

 

「う、うん。そうだね」

 

文ちゃんの口から一刀様の名前が出てくると思わなかった私は思わずどもってしまった。

 

「ん?何赤くなってるんだ斗詩?」

 

「え?!そ、そんなことないよ」

 

「怪しい……まさかっ!」

 

「な、なに?」

 

「あたいに内緒でアニキと美味しいもの食べたんだろ!ずるいぞ斗詩」

 

私は思わずこけそうになりました。

 

「食べてないよぉ。ほら、それより部隊の編成するよ」

 

「へ~い、仕方ない、いっちょやるか!」

 

文ちゃんは腕を振り回しながら部隊に指示を出し始めた。

 

「もう文ちゃんったら……」

 

私は苦笑いを浮かべながらも自分の部隊に指示を出していった。

 

「それにしても、ホントに一刀様が助けてくれるなんて思っても見なかったな」

 

私は初戦に起きた出来事を思い浮かべ頬を赤くした。

 

………………

 

…………

 

……

 

開戦一日目

 

「さあ、わたくしの優秀な兵の皆さん!華麗に雄雄しく優雅に前進ですわよ!お~っほっほっほっほ!」

 

「「「おうっ!」」」

 

「ひ、姫!危険ですよ。虎牢関には飛将軍呂布さんがいるんですよ?!」

 

「何を言っているのですか顔良さん?これだけの兵力差があれば呂布など恐るるに足らず、ですわ。お~っほっほっほっほ!」

 

私の注意に耳も傾けずに姫は胸を張って笑っていました。

 

「そうだぜ斗詩。呂布が来たってあたいが倒してやるからよ。斗詩はどーんと構えてればいいんだって」

 

「もう、文ちゃんも知ってるでしょ?一人で三万以上倒したって噂!」

 

「でも所詮噂だろ?対した事無いって!」

 

文ちゃんは斬山刀を担いで先頭に向かって歩き出した。

 

「もう、文ちゃんたら!」

 

私は呆れながらも文ちゃんと先頭へ行こうとしたときでした。

 

(ギィーッ!)

 

「「え?」」

 

大きな音とともに虎牢関の門が開き一人の赤髪の少女が出てきました。

 

「なあ、斗詩。あれって誰だ?」

 

「ええ?!ぶ、文ちゃん!あれが呂布さんだよ!」

 

「はあ?あんなボケボケしてるやつが呂布なわけないって。おい、お前ら適当にあいつを倒して門こじ開けるぞ!」

 

「「おうっ!」」

 

「だ、ダメだよ文ちゃん!」

 

「大丈夫だって、あたいに任せとけって」

 

私の静止も聞かずに文ちゃんは勢い良く駆け出してしまいました。

 

「オラオラ!そんなところでぼけっと立ってると倒しちまうぞ!」

 

「……お前、弱い」

 

(ガキンッ!)

 

「うわっ!とっと!」

 

「文ちゃん!」

 

呂布さんは文ちゃんの攻撃を片手で持った得物で防ぎ、虫を払うかのように軽く振り文ちゃんを振り飛ばしてしまいました。

 

「いてて……ちょっ!斗詩、こいつすごい強いじゃんかよ!」

 

「だからダメだって言ったでしょ文ちゃん!きゃっ!」

 

「斗詩!」

 

私は小石に蹴躓き転んでしまいました。

 

「いたた」

 

「斗詩逃げろ!」

 

「えっ……っ!」

 

文ちゃんに言われ何のことか分からずその場で見上げると目の前には呂布さんが居ました。

 

「……月の敵……恋の敵」

 

「あ、ああ……」

 

私は呂布さんの殺気に当てられ恐怖で体が動かなくなり逃げられないでいました。

 

お願い!動いて!このままじゃ……私……私!

 

呂布さんが腕を高々と上げ得物を振り下ろしてきました。

 

「きゃあああぁぁぁっ!」

 

助けて一刀様っ!

 

私は咄嗟に一人の人物を思い浮かべて助けを呼んでいた。

 

「斗詩ーーーっ!」

 

(ガキンッ!)

 

「大丈夫か、斗詩?」

 

来るはずの痛みは無く、変わりに金属同士がぶつかり合う音と、聞き覚えのあるとても優しい声が聞こええてきました。

 

「……え?」

 

そこに立っていたのは白く輝く服を着た、私が咄嗟に助けを求めた人でした。

 

「……」

 

あまりの展開に私はついて行けず、ただただ一刀様を見上げているだけでした。

 

「立てるかい?」

 

一刀様は笑顔で手を差し伸べてきてくれました。

 

「あ、ありがとうございます。どうして一刀様がここに?」

 

我に返った私はその手を取って立ち上がり、一刀様に話しかけました。

 

「知り合いから情報が入ってね。袁紹さんたちが危ないかもしれないって。それにちょっと袁紹さんに用もあったからさ」

 

一刀様はあの優しい笑顔で私に微笑んでくれました。

 

「~っ?!」

 

見る見る頬が熱くなる私は頬を押えて俯いてしまった。

 

「……だれ?」

 

そんな中、呂布さんは自分の攻撃を受け止めた相手を見て首を傾けていました。

 

「君が呂布かな?」

 

「……(こくん)」

 

「俺は、北郷一刀。よろしくね」

 

「……(こくん)」

 

呂布さんは武器を下げ一刀様を見ていた。

 

「なに?」

 

「……一刀、強い」

 

「ん~、そんなに強くは無いと思うけど」

 

「……勝負」

 

「へ?」

 

「恋と勝負」

 

「えっと、誰が?」

 

「……一刀」

 

呂布さんは片言で一刀様との勝負を望んできた。

 

「えっと、悪いんだけど、今日のところは引いてくれないかな?」

 

「……?」

 

首を傾げる呂布さん。その仕草はとても天下無双とはかけ離れた可愛らしい仕草でした。

 

「お願いできるかな?」

 

「……わかった」

 

「ありがとう」

 

「……約束」

 

「約束?」

 

「……(こくん)勝負」

 

「ああ、勝負する約束って事か?」

 

「……(こくん)」

 

「わかった約束だ」

 

「……戻る」

 

呂布さんは一刀様の答えに満足したのか私たちに背を向けて虎牢関へと戻って行きました。

 

「ふう、一時はどうなるかと思ったぜ。助かったぜアニキ!」

 

「ちょ!文ちゃん?!」

 

文ちゃんは行き成り笑いながら一刀様の背中を叩いていました。

 

「ははは、別にいいよ。えっと文醜さんだよね、はじめまして北郷一刀です」

 

「『さん』だなんて止めてくれよ。呼び捨てでいいって、その代わりアタシもアニキって呼ぶからさ!」

 

文ちゃんは一刀様を見ながら笑っていた。

 

「ところで一刀様、姫に御用とはなんなんですか?」

 

「ああ。丁度合流できたんだけどさ。俺達はどうすればいいのかと思って袁紹さんに聞こうと思ってね」

 

「え、一刀様、直々にですか?」

 

「まあ、俺が来た方が早いからね」

 

「なあ、斗詩」

 

「え、なに文ちゃん?」

 

「なんでアニキとそんなに親しいんだ?『様』付けで呼ぶなんて、それにさっき真名で呼ばれてたような気がしたんだけど」

 

「前に話したよね、姫と三人で宝探しに行ったときはぐれちゃって。その時、危ないところを助けてくれた人が一刀様なんだよ」

 

「おおっ!そういうことか!」

 

文ちゃんはポンっと手を叩き納得した。

 

「なんだよ、早く言ってくれよ斗詩~。なんだそうか~うんうん!」

 

文ちゃんは一人うんうんと頷いていた。、

 

「斗詩を助けてくれてありがとうな。アニキ」

 

「当たり前のことをしただけだよ。そんなお礼を言われるような事じゃないさ」

 

「そんなことないぜ。アニキが助けに来てくれなかったらアタイの斗詩が酷い事されるところだったんだからさ。まあ、斗詩に酷い事をしようとした奴等をぶん殴れなかった事だけが残念で仕方ないけどな」

 

文ちゃんは顔の前で力強く拳を握り締めた。

 

「よし、決めた!アニキ、アタイの真名は猪々子ってんだ。アニキに預けるぜ」

 

「いいのか?そんな簡単に真名を」

 

「いいっていいって!斗詩を助けてくれた事もあるけど、アタイがアニキを気に入ったんだから、受け取ってくれよ」

 

「わかったよ。猪々子」

 

「ニシシ♪」

 

文ちゃんは両腕を後頭部に添えて笑っていました。

 

「あの~、一刀様……」

 

「ん?どうしたんだ斗詩?」

 

「もう二人だけで盛り上がらないでくださいよ~」

 

私は少し頬を膨らませて上目遣いで一刀様の事を見ました。

 

「「っ?!」」

 

「?どうしたんですか?二人して」

 

「「……」」

 

文ちゃんと一刀様は私を見ながら固まっていました。

 

「……猪々子」

 

「……なんだアニキ?」

 

「一つ言いたい事があるんだがいいか?」

 

「奇遇だなぁ、アタイも言いたい事があるんだ」

 

「なら、同時に言うか?」

 

「いいぜ」

 

「?」

 

「「せーの……」」

 

「「斗詩、それは反則だ!可愛すぎるぜ!」」

 

文ちゃんと一刀様は声を揃えて私に叫んできました。

 

「ええ?!な、何の事ですか!」

 

「猪々子!」

 

「アニキ!」

 

(ガシッ!)

 

叫んだかと思うと今度はお互い手を取り合い力強く握り合っていました。

 

「だからなんなんですか~~!」

 

………………

 

…………

 

……

 

「それにしてもアニキって面白いやつだったよな!」

 

「もう、文ちゃん笑いすぎだよ」

 

ケラケラと笑う文ちゃんに私は呆れたように溜め息を吐きました。

 

「所でさ斗詩」

 

「なあに?」

 

「斗詩はアニキの事が好きなのか?」

 

「ええ?!」

 

文ちゃんは行き成りとんでもない事を言い出してきました。

 

「き、急に何言い出すの文ちゃん!」

 

「え~だって。アニキの時とアタシの時の態度がすっげー違うしさ~」

 

「そ、そんなことないよ」

 

「それじゃ好きじゃないのか?」

 

「そ、それはその……」

 

私は言いよどみ、恥ずかしそうにモジモジしてしまった。

 

「~~~っ!!ほんっと可愛いな斗詩は~!」

 

「きゃっ!ぶ、文ちゃん?!」

 

文ちゃんは行き成り私に抱きついてきた。

 

「こんな可愛い斗詩は誰にもやらないからな!あ、アニキならいいかな♪」

 

「もう、何言ってるの文ちゃん!」

 

「顔赤くして可愛いぞ斗詩~♪」

 

「怒るよ。文ちゃん!」

 

「おぉ~!斗詩が怒ったところ見たこと無いから続けてみよ~っと♪」

 

「もう文ちゃん!」

 

「……な・に・をしていますのあなた達は!」

 

「「ひ、姫!」」

 

姫は眉をヒクヒクと動かしながら目の前で仁王立ちしていました。

 

「まったく、虎牢関を落とせていないというのにあなた達はな・に・を遊んでいるんですの?」

 

「だ、だって姫~。あんな強い奴がいたら無理ですよぉ」

 

「だってではありませんわ!まったく……しかたありませんわね。またあの天の御遣いが居る劉備さんの軍に行ってもらいましょう」

 

「ええ!?」

 

姫は行き成りとんでもない事を言い出しました。

 

「か、一刀さっ……劉備さんの軍に行かせるんですか!兵力が違いすぎますよ姫!」

 

「何を言ってますの?氾水関ではあんなに簡単に陥落させたじゃありませんの」

 

「そ、それは袁術様の所の孫策さんが居たからで……せめてまた、孫策さんに手伝ってもらうわけには」

 

「残念ですけど美羽さんに言われて孫策さんたちは使えませんわよ」

 

「ええ~!?な、なんでですか!?」

 

「そんなこと知りませんわよ。それは美羽さんに聞いて見れば良いではありませんか」

 

そ、そんなこと聞ける訳がないじゃないですか~。うぅ~、このままじゃ一刀様が危険な目にあっちゃうぉ。

 

「まあいいですわ。とにかく劉備さんたちに連絡を入れなさい」

 

「っ!わ、私が行ってきます!いえ、行かせてください!」

 

「わ、わかりましたわ。それじゃ顔良さんにお任せしますわ」

 

私が大きな声を出して立候補すると姫は慌てながらも行って良いと言ってくれました。

 

《一刀視点》

 

「と、言うわけでして……申し訳ありませんが虎牢関を曹操さんと落としていただけないでしょうか」

 

斗詩は申し訳なさそうに頭を下げながら虎牢関を攻めてくれと言って来た。

 

「そんなに頭を下げなくてもいいよ斗詩」

 

「そうだよ!顔良さんが悪いわけじゃないんだから。頭を上げてください」

 

俺の横で桃香も慌てながら頭を上げるように言っていた。

 

「虎牢関を攻めることは了解したよ。でも、攻めるに当たって問題があるんだ」

 

「もしかして、兵力の事ですか?」

 

「察しがいいね斗詩は。そうなんだよ」

 

「わかりました。そのことについては私が姫に相談して何とかして見ます!」

 

斗詩は何とかすると言っているけど、流石に二度目は無理なんじゃないかな?

 

「大丈夫です!任せてください一刀様!」

 

「あ、ああ。ありがとう斗詩」

 

俺が不安な顔をしていたからなのか斗詩はずいっと目の前に立ちガッツポーズをしてきた。

 

「顔良さん!顔近すぎです!」

 

「す、すみません!つ、つい気合が入っちゃって……」

 

「うぉ!?うむぅ!?」

 

(むにゅ)

 

桃香の注意に斗詩は慌てて離れ、俺はと言うとぐいっと桃香に引っ張られ、その勢いのまま桃香の胸に顔を埋めてしまった。

 

「やん!ご、ご主人様。くすぐったいよぉ」

 

「むごっ!むーーっ!むごむごっ!(く、苦しい!息が出来ない!)」

 

俺は桃香に頭を抱かれて胸から逃れられずに居た。

 

うっ……なんだ、この良い匂いは……これが女の子の匂いなのか?

 

俺は桃香の甘い匂いにクラっと来ていた。

 

「あぁん!み、皆が見てるのに……ご主人様ぁ♪」

 

「……何をしているのですかご主人様っ!」

 

「むぐっ!むぐぐっ!むぐぅぅっ!!(ち、違うんだ愛紗!これは事故なんだ!」

 

「何を言っているか分かりません!早く桃香様から離れてくださいご主人様!」

 

「むぐっ!?」

 

痛いっ!腕が逆に曲がってる!

 

あろうことか愛紗は俺の腕を取り引っ張ってきた。

 

「もー!愛紗ちゃん、なにしてるの」

 

そ、そうだ桃香!このままじゃ俺の腕が折れちゃう!止めさせてくれ!

 

「桃香様もご主人様から手をお放しください!」

 

「やっ!もう少しご主人様とこうしてるの!」

 

「いやではありません!離れてください!」

 

「離れないの!」

 

「離れてください!」

 

「むぐぐぐぐっ!!む、むぐぐ!むぐぐぅぅ!!(痛たたたたっ!お、折れる!折れるぅぅぅ!!)」

 

俺は痛みを堪えながらも、酸素と言うもう一つの限界が近づいていた。

 

も、もう無理だ……息、が……ああ、俺、このまま死ぬんだな……

 

「あ、あの……お二人とも。このままだと一刀様が!」

 

「「部外者は(黙っててっ!)(黙っていてもらおうか!)」」

 

「で、でも一刀様のお顔が青く」

 

「「え?」」

 

桃香と愛紗が気づいた時には既に俺の顔は真っ青になって意識が半分無くなっていた。

 

「ご、ご主人様!?」

 

「わわっ!死なないでご主人様っ!!」

 

「「「あは、あはは……」」」

 

「くっくっく……」

 

叫ぶ桃香と愛紗に苦笑いを浮かべる斗詩、そして呆れてみているほかの面々。

 

うぅ……特に星なんか凄いにやけ顔だった。

 

「ふぇぇえっ!ご主人様っ!死んじゃ嫌ですよぉ!私を置いて逝かないでください」

 

ああ、雪華だけだよ。俺の事を心配してくれるのは……

 

でも……もしかして俺って女難の相が出てるのか?

 

俺は薄れ行く意識の中でそう思った。

 

「「「ご主人様ーーーーっ!!」」」

 

そして、最後に聞いた声は桃香と愛紗、そして雪華の声だった。

 

《雪華視点》

 

「うっ……ここは」

 

「ご主人様!大丈夫ですか!」

 

あれから半刻ほどでご主人様は目を覚まされた。

 

よかった……本当に良かったです。

 

「雪華?うぅ……俺は一体」

 

「桃香様と愛紗さんのやり取りを覚えていませんか?」

 

頭を抑えながら起き上がるご主人様に先ほどのやり取りを聞いて見ました。

 

「あ、あ~~。うん。思い出したよ」

 

ご主人様は思い出したのか、苦笑いを浮かべて頷いていました。

 

「とにかくご無事でよかったです。もしご主人様がこのまま目を覚まさなかったらと思うと私は……」

 

「ははは。雪華に心配されちゃうとはね。俺もまだまだだな」

 

「ふえ。も、もう!笑い事じゃありませんよご主人様!本当に心配したんですからね!」

 

私の頭を撫でながら笑うご主人様に少しムッと来てしまい。思わず怒鳴ってしまいました。

 

「ふぇっ!ご、ごめんなさい!行き成り怒鳴ったりして……」

 

「いいや。こっちこそごめんね。別におかしくて笑ったわけじゃないんだよ。ただ、嬉しかったからさ」

 

「うれしい、ですか?」

 

「ああ。だってそうだろ?心配してくれたってことはそれだけ雪華は俺達に打ち解けてくれたって事じゃないか。俺はそれが嬉しかったんだよ」

 

「ふぇ」

 

ご主人様はそう言うと微笑みながら私の頭を撫でてくれました。

 

ふぇぇ。どうしてでしょう。いつもご主人様に頭を撫でられるととても胸の辺りが暖かくなります。

 

お父様に撫でられた時は、ただ嬉しくて気持ちよかっただけで、ご主人様に撫でられたときのような気持ちにはなりませんでした。

 

それに、ご主人様が私以外の人を撫でているのを見ると、胸の辺りがキュッとして痛くなります。

 

私は病気なのでしょうか?

 

「ところで雪華」

 

「ふえ!な、なんでしょうか!」

 

「愛紗たちの姿が見えないけど」

 

「あ、はい!ご主人様をこちらの天幕に運んで直ぐに出陣していきましたよ」

 

「な、何だって!?」

 

「ふぇっ!ど、どうかしましたかご主人様?」

 

突然、ご主人様は大きな声を上げて立ち上がりました。

 

「雪華!俺がここに運ばれてきてからどれくらい経ってるんだ」

 

「え、えっと……だ、大体半刻くらいだと思います」

 

「そんなに経ってるのか!?急がないと!」

 

ご主人様はそう言うと立て掛けていたご自身の得物と布に包まれた物を手に取り、走って天幕から出て行かれました。

 

「……ふえ!ま、待ってくださいご主人様ーーっ!!」

 

ご主人様の後姿を呆然と見送っていた私は我に返り、慌ててご主人様を追いかけに天幕から出て行きました。

 

「ご、ご主人様っ!何をそんなに慌てているんですか!」

 

「愛紗が危ないんだ!」

 

「ふえ!?どういうことですかそれは!」

 

あ、愛紗さんが危ないってどういうこと?え、だって愛紗さんはあの華雄さんを討ち取るくらい強いのに?なんで?どうして?

 

ご主人様の言葉に私は動揺してしまいました。

 

「詳しいこと後で話すよ。とにかく俺は出る!雪華は桃香たちに伝えてくれ!」

 

ご主人様は詳しい説明もしてくれないまま戦場に向けて行ってしまいました。

 

「はぁ、はぁ。や、やっぱりご主人様には追いつけないです……とにかくまずはご主人様に言われた様に桃香様たちにこの事をお伝えしないと!」

 

私は戦場に向かわれたご主人様を心配しつつも、ご主人様のご命令通りに桃香様たちにこの事を伝えるために急ぎ向かいました。

 

「ご主人様、どうかご無事で居てくださいね」

 

《To be continued...》

葉月「どうも~」

 

愛紗「元気にしていたか皆の者」

 

葉月「さてさて、いよいよ『虎牢関攻略編』が始まりましたが如何ですか愛紗」

 

愛紗「うむ。袁紹の命というのが気に入らんが腕が鳴る!」

 

葉月「でも、呂布とは一人で戦うなって言われていますよね?」

 

愛紗「ああ。ご主人様は心配性だ。私が負けるわけが無いのだがな」

 

葉月「それは呂布の強さを知らないから言える事じゃないんですか?」

 

愛紗「何を言うか。ご主人様に手ほどきをして頂いた私が負ける訳が無いであろう」

 

葉月「でも、前回一刀が言ってましたよね?過信は気の緩みに繋がるって」

 

愛紗「ぐっ!た、確かにそうだが」

 

葉月「まあ、愛紗の言いたいことも分かりますよ」

 

愛紗「何が分かるというのだ?」

 

葉月「そりゃ分かりますよ~。あの天下無双の呂布を倒して一刀に褒めてもらいたいんですよね愛紗は」

 

愛紗「なっ!何を言うのだ貴様は!」

 

葉月「あれ?違うんですか?」

 

愛紗「違うに決まっているだろ!」

 

葉月「本当に?」

 

愛紗「本当だ!」

 

葉月「それじゃ少しも一刀に褒めて貰いたいなんて考えていないんですね」

 

愛紗「も、もちろんだ」

 

葉月「そっか~。いや~、よかったよかった」

 

愛紗「な、何が良かったと言うのだ」

 

葉月「だって褒めて貰いたくないって事は一刀の事をなんとも思ってないってことですよね?そうなると一刀争奪戦に愛紗は参加しないって事ですもんね」

 

愛紗「な、なに!?」

 

葉月「そっかそっか~。そうなると桃香一強かな?いや、結構雪華も人気があるからな~」

 

愛紗「ま、待て!誰がご主人様の事を好いていないなどと言った!」

 

葉月「今自分で言ったじゃないですか。『褒めて貰いたくない』って」

 

愛紗「あ、あれは呂布との戦いだけのことであって、別にご主人様からのお褒めのお言葉をいらない訳ではない!それにご主人様から身を引いたわけではない!そこを勘違いして貰っては困るぞ!」

 

葉月「つまり、普段は褒められたいと」

 

愛紗「そうだ!」

 

葉月「そして一刀の事が大好きだ、と」

 

愛紗「そう言っている!」

 

葉月「なるほど。愛紗は一刀に抱かれたいようですね」

 

愛紗「何度も言わせるな。そうだと言っているであろうが!……ん?ま、待て、葉月よ。今なんと言った?」

 

葉月「はい?愛紗は一刀に抱かれたいって言ったんですよ」

 

愛紗「なーーーっ!」

 

葉月「なに顔を赤くしてるんですか。初心な子供じゃあるまいし」

 

愛紗「ば、ばば馬鹿を言うな!ご主人様にだ、だ抱かれるなど恐れ多いことできるか!」

 

葉月「それじゃ、抱かれたくないんですか?」

 

愛紗「そ、そんなことは無いが……」

 

葉月「ならいいじゃないですか。そうだ!どうせ私以外誰も居ないんですからこの際、大きな声で叫んでみてはどうですか?きっとすっきりしますよ」

 

愛紗「う、うむ……本当にお前だけなんだろうな」

 

葉月「見ての通り私しか居ませんよ」

 

愛紗「よ、よし……では行くぞ……すー……私は、ご主人様に愛されたーーーーーーいっ!!」

 

葉月「言い叫びっぷりですね」

 

愛紗「ああ。少しスッキリしたぞ」

 

葉月「それは何よりです。それと愛紗」

 

愛紗「なんだ?」

 

葉月「忘れてるみたいだから言っておきますけど、ここに私と愛紗以外居ませんけど。これを読んでいる人は居るんですからね」

 

愛紗「……は?はぁぁぁああああっ!?!?なっ!ど、どういうことだ!」

 

葉月「いや。どう言う事だと言われても、いつも冒頭と最後に読んでいる人に向けて挨拶しているじゃないですか」

 

愛紗「……」

 

葉月「もしかして本当に忘れてたんですか?」

 

愛紗「し、しまったーーーーーーーっ!!」

 

葉月「本当に忘れてたんですね」

 

愛紗「貴様が変なことを言うからだろうが!」

 

葉月「愛紗が忘れていたのがいけないんじゃないですか」

 

愛紗「煩い!ええい。こうなれば貴様を葬り、私もここで自害を!」

 

葉月「なに危ないこと言ってるんですか!それに勝手に私を巻き込まないでくださいよ!そんなことしたら一刀が悲しみますよ!」

 

愛紗「うぐっ!それは困るな」

 

葉月「と、とにかく次回の予告をして終わりましょう」

 

愛紗「あ、ああ。そうだな」

 

葉月「ごほん。さて、次回ですがいよいよ飛将軍呂布対愛紗たちの対決になります。しかし、そのことを知った一刀の慌てぶりは一体!そして愛紗の恋の行方はいかに!」

 

愛紗「ちょっと待てっ!私の恋の行方とか関係ないだろうが!」

 

葉月「では皆さん!また次回お会いしましょう!」

 

愛紗「ま、待て!恋の行方とかどういう意味だ!笑いながら逃げるんじゃなーーーいっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桃香「私もご主人様に抱いて貰いた~~いっ!」

 

優未「私も抱いて!一刀く~~~~んっ!」

 

雪華「ふぇ……あ、あの。私は頭を撫でて貰いたいです」

 

優未「よ~し!なら私が雪華ちゃんの頭をなでなでしてあげるぅ~♪」

 

雪華「ふ、ふぇぇぇえええっ!!」


 
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