【呂蒙 side】
「私は姓は士、名は徽…そして孫権様、貴方の嫁です」
その瞬間部屋の空気が急に寒くなったように感じました。
一刀様を見ると口をぽかんと開けて固まっています。
その隣を見ると思春さんも同様に固まっています。
しかしそれも少しの間の事。
「「…嫁!?」」
思考が回復した一刀様と思春さんは先程士徽さんが言った言葉を叫びます。
「だから、一刀様の嫁は私ですー!」
一刀様の嫁と言う言葉に食ってかかったのは、もう何度目になるか、この言葉が出るたびに文句を付ける烈火ちゃんです。
「凌統!貴様は黙っていろ!話がややこしくなる。
…それより士徽と言ったか。嫁とはどういうことだ」
うわ~、思春さん、すごい顔で士徽さんの事を睨んでいます。あんな顔で睨まれたら私気絶してしまうかもしれません…
しかし士徽さんはどこ吹く風といった表情で、
「嫁とは結婚するということです。私孫権さまの奥さんです、妻です、女房です。
わかりましたか?」
思春さんの殺人的視線を受けても表情変えず淡々と答える士徽さん。
「いや、だから何故貴様が孫権様の妻となるのだ!!えぇい!貴様では話にならん!
…亞莎!貴様、今回の責任者だったな?説明しろ!」
ひえ~!殺人光線は士徽さんから私に矛先を変えて来ました。
あれを受けて平気でいた士徽さんは凄いと思いました。
「は、はひ!分かりました!
……私達は一刀様たちが出発した数日後に交州へと向かったのですが、そこで待っていたのは交州の軍では無く、太守の士燮様でした…」
士燮様は私たちの前に現れるとこう叫びました。
『私は交州太守の士燮です!呉の皆様ようこそいらっしゃいました!』
『『『……はぁ!?』』』
士燮様は私たちを歓迎する、そうおっしゃいました。
後ろの兵士を見ると『熱烈歓迎!』という横断幕を掲げています。
すると士燮様は立ち話も何なのでと自らの屋敷に私たちを案内しました。
『いやー、遠いところわざわざご苦労さまです。ささっ、食事を用意したので冷めないうちにどうぞ。この料理はこのあたりでとれた素材をふんだんに使ったものでしてね、お口に合えば良いのですが。
あ、それとこの酒は…
ぺちゃくちゃ
ぺちゃくちゃ
HAHAHAHAHA
ぺちゃくちゃ
ぺちゃくちゃ
…と言うことなんですよ』
『『『はぁ…』』』
この人すごい速さで話します。内容も多すぎて、途中何を言っていたか忘れてしまうほどたくさんの事を言われました。
『それでですね。今回、呉の皆様が来られたということでこちらも色々と用意しているのですよ。
まず…
ぺちゃくちゃ
ぺちゃくちゃ
HAHAHAHAHA
ぺちゃくちゃ
ぺちゃくちゃ
…まあ、そういうわけで、私たち交州は呉に降ることを決めました』
『『『はぁ…………はっ!?』』』
い、今なんと言いました!?私たちに降ると、そう言いましたか?
あまりに多くの事を話すので大切なところまで通り抜けてしまいました。
『それは、戦わずに私たちに降伏すると言うことですか?』
『はい、そうです。交州は戦というものが嫌いで逃げて来た人が多くいます。なのでこれまで、出来るだけ戦いに関わらないようにとしてきました。なので今回、呉の皆様が来られて、その力を持って私たち交州を守ってもらおうと考えたわけですよ。
それで…
ぺちゃくちゃ
ぺちゃくちゃ
HAHAHAHAHA
ぺちゃくちゃ
ぺちゃくちゃ
…ということで私の娘である士徽をあなた方に人質として預けようと思います』
『士徽です。よろしくおねがいします』
もう嫌ですこの人!また大切な部分がよくわからないまま話が進んでいました。
もしかするとこの人、わざとこういう風に話しているのでしょうか。そうだとしたら侮れません。
『
『分かりましたお父様。孫権様の妻として、この良々、一生懸命頑張って参ります』
『『『つ、妻ー!?』』』
か、一刀様の妻!?一体どこがどうなったらそんなことになってしまったのでしょうか。
唖然とする私たちをよそに士親子は別れの挨拶を粛々を進めてゆくのでした。
その後、士徽さんに飛びかかろうとする烈火ちゃんを抑えるのはとても大変なものでした。
【呂蒙 end】
亞莎は話し終えると済まなそうな顔を服の袖で隠した。
「申し訳ございません……」
「…いや、亞莎は何も悪くないよ。兵を損なわずに交州を手に入れることができたんだ、良かったよ」
そうは言ったがいろいろなことがあって本当は頭が痛い。
つまり、彼女は呉に恭順の姿勢を示すための人質ということである。
「我等も別に人質など必要ないと言ったのだが。しかし士燮が無理やりにな……」
亞莎の補佐のためその場にいた冥琳もやはり困ったような顔をしていた。
「……これは人質にかっこつけた政略結婚だな。士燮はアレでかなり強かな男だった…」
「分かってるよ…」
声を潜め報告する冥琳は真剣な表情をしていた。
「ま、後はお前次第だがな。くれぐれもこれ以上こじらせてくれるなよ…」
冥琳の怒気を孕んだ警告を受け、より一層の圧力が俺にのしかかってくるのだった。
「まあ、そういうことです。よろしくお願いしますね、孫権様」
士徽は抑揚の無い口調で話す。
「…あ、間違えました。よろしくお願いします、旦那様」
「「だから違ーう!!」」
いつも喧嘩している思春と烈火の息がぴったりと合ったのは、後にも先にもこの時だけだったかもしれない。
ということで今回一刀の嫁登場でした。
ここで新キャラ紹介!
士燮。字は威彦。
交州の太守。
本人は戦いが嫌いで戦乱の世でも自ら打って出ようとはしなかった。そのため安寧を求めて多くの民が交州へと流れてきた。
とても早口で一人でずっと話している。軽い感じがするが相手を惑わず話術で交渉を有利に進めようとする強かさを持っている。
士一族を絶やさないようにと、娘の士徽を呉へと向かわせた。
士徽。真名は
士燮の娘。眠そうな目と無表情な顔が特徴。
薄い茶色のウェーブがかかった髪をひとつに纏め、右肩に垂らしている。
歳は一刀よりも少し若く、背は少し小さいが、出るところは出ている。
武も知も人並みで、特に特出した能力は持っていない。
自らを『一刀の嫁』と称す、思春の恋のライバルとなる人物?
士族からこの二人が登場しました。
士燮はよく喋るよく喋る。一人で一日中話していることが出来るほどおしゃべりが好きです。
士徽はポーカーフェイスですが恋の様に無口ってわけではなく普通に話します。
今後出る予定は今のところありません…
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久しぶりに呉に返ってきた一刀達。
そこに待っていたのは「一刀の嫁」と称する少女だった…
ではどうぞ!