No.303004

新訳 真紅の鬼神 第八鬼 ~黄巾の乱終幕。恋の懐妊!そして乱世への扉~

リンドウさん

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2011-09-19 00:41:34 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:4632   閲覧ユーザー数:3738

一刀達が昨日包帯を分けてくれと頼みに来てから、少し分けたあと一緒に官軍の戦う姿を観るという約束をし別れた。

 

そして翌朝。

 

「おはよ~焔」

「うっす一刀」

 

まだ白く靄がかかっている時間に二人はいた。

昨日用意させた机と椅子に座り戦場となるであろう場所を見る。

 

「今日は、孫堅と曹操とかが出るらしいな」

「どんな戦い方するのか楽しみだ」

「てか、腹減ったな」

「だなぁ、なんか早起きしてしまったんだよなぁ~」

「あぁ分かる。俺もなんか早起きしてしまった」

 

別にワクワクした訳じゃ無いがなんか、早く起きたのだ。

それは一刀も同じようで眠たそうに目を擦っている。

この時間だ、飯も用意されているわけじゃないし・・・・

 

「干肉ならあるが食うか?」

「マジで?有難くいただくよ」

 

俺特性の干肉、いつも携帯していたから役にたった。

 

「めっちゃ美味いな!!」

「だろ?俺が作ったんだぜ」

「マジかよ!」

 

色々な話をして盛り上がっているうちに日が昇り、兵の奴らが朝食を持ってきたのでいつの間にか俺の横に座っていた恋と一緒に食ってから、出陣していく官軍を眺めていた

 

 

「一番前は孫堅軍か~」

「あそこは戦闘狂じみた奴らが多いいからな(汗」

「俺は嫌いじゃないけどな~そういう奴ら」

 

強いのと戦うのは楽しいからな~

 

「あっご主人様ー!」

「桃香?」

「劉備か」

 

手を振りながら走ってくる。そのたびに胸が揺れて・・・自己主張の強い胸だなぁ~

っと恋。冗談だよだから俺の足を踏むの止めてくれ!本当に痛いから!!!

恋が踏むのを止めたので、ふと一刀を見ると同じ事を考えたのだろう。顔がニヤけていた。

 

「ふぅ。もう先に行っちゃダメだよ~!」

「ゴメンな~目が覚めちゃってさ」

「愛紗ちゃん物凄く心配してたよ!『ご主人様がいな!?もしかして何かあったのか!?』とか言ってさ」

「あちゃ~後で謝っておこう」

 

うむ。劉備達も一刀に支えられながらも仲間の信頼関係はいいんだな。

後は自分達の領地でも持てば更に強くなるだろう。

 

「あっ!おはようございます!呂布さん!呂姫ちゃん!」

「あぁおはよう。随分と朝から元気だね」

「・・・・・おはよ」

「はい!元気だけが取り柄ですから!」

 

笑顔で答える姿を少し眩しく思う。

 

「・・・・始まった」

 

恋の言葉で戦場へと目を向けると孫堅軍と黄巾軍が当たっていた。

といっても古城を攻めているだけだが・・・

 

「孫堅が正面で曹操は西門か~」

「ん?あの妙に派手な軍はどこの軍?」

「あぁ一刀は知らないんだよな、あの軍議には出てなかったし、あれは袁紹。馬鹿の代名詞だ」

「え?でも正史じゃ」

「薄々気づいていると思うけど、ここは正史とは微妙にズレがあるからな」

「あっ・・・」

 

再び目を戦場に向ける。

一刀も攻城戦を初めて見るのか真剣な目で見つめている。

そしてもう少しで城が落ちそうと思った時。

 

「報告します!!」

「どうした?後方より黄巾の援軍が!」

「なんだって!?焔!」

「分かっている!数は?」

「目測で1万!」

 

まだ集結しようとしている部隊があるとはな・・・

 

「急ぎ戦闘態勢を取れ!各将軍に伝えよ!」

「ハッ!!」

「一刀のところは大丈夫か?」

「なんとか戦えそうな人を合わせても2千だ。」

「なら俺の部隊の後ろに付いてくれ。」

「了解だ!」

 

そこで一旦一刀と別れ、自分の天幕へと急ぐ。

 

「若殿!」

「騰か、兵を纏め陣形を取らせろ・・・否、ねねに全てを任せろ。陣形も策も全てだ」

「・・・ハッ」

 

騰は走りその場を去った。

天幕へと辿り着き、中にある黒と金の甲冑を着けていく。

もちろん恋が付けてくれているんだが。

最後に赤いお揃いの布を巻きつけ、方天画戟を掴む。

指笛を鳴らし赤兎を呼び跨る。

同じく恋も黒兎に跨る。

 

「焔さん!」

「焔!」

「ん?月に詠か」

「武運を」

「頑張りなさい!」

「ハッハハ!任せろ直ぐに片付けてくる!なぁ恋」

「・・・・・(コク)」

 

兵たちが作った通り道を進み一番前へと出る。

 

「おっ焔ちんに恋!」

「おぉ!焔!恋!待っていたぞ!」

「霞、華雄。準備は・・・万端そうだな」

「「当たり前(だ!)(や!)」

「悪い待たせた」

「一刀」

「ん?なんや御使いの兄ちゃんやないか」

「初めまして俺は北郷一刀。宜しく」

「華雄。字はない。」

「張遼。字は文遠やよろしゅうな♪」

「霞と華雄は左右から敵を囲む様に進撃してくれ俺達は正面から行く」

「分かった!」

「了解や~」

 

自分の部隊へと戻っていく。

 

「若殿」

「騰か・・・ねねは?」

「ここにいますぞ」

 

少し顔色が悪いな無理もないが・・・

 

「大丈夫?」

「だ、大丈夫ですぞ!」

「ねね」

 

俺の声にビクリとして向く。

 

「怖いか?」

「・・・(コク)」

「いいか、おそらくこの乱はこれから続く乱世の始まりに過ぎない。そして俺達は確実に乱世に絡むことになる。その時、軍師と言うのはどうしても必要となる。そしてこの

 

戦はねね・・・お前の軍師としての『適正』を試す。」

「適正・・・」

 

実質、ねねは初陣。

初陣の軍師見習いがこのような万の戦争を指揮するのは正直無謀なのだ。

普通の戦でもその戦場の独特な『空気』に呑まれ、使い物にならなくなる。

実際、詠も昔は相当苦しんだと言っていた。

ここで、ねねが軍師としての『適正』を示せば良いのだが・・・

 

「今までは机上の軍師だが、今は戦場だ。お前が今まで使ってきた一駒には数百人もの命が宿っている。お前の指示で数百の命が消える。だが、呑まれるな」

「ッ!!」

「お前は俺達の軍師になるべき者だ。だから決して呑まれるな。呑みこめ全てを兵の命を戦場の『空気』をそして俺に示せ!お前の強さを!」

「はいですぞ!」

 

よし、今さっきまでの表情はなくなりいつも以上に活気に満ち溢れている。

 

「騰、ねねの事を頼んだ」

「ハッ!お任せを!」

「さて、早速だがねね、どうする?」

 

しばらくねねは考え、顔をあげる。

 

「まずは、霞や華雄が左右からぶつかり次第騎兵のみで突撃。その後に歩兵。騎兵が打ち損じた賊を掃討。義勇軍の兵はねね達の兵と離れない様に、御使いは歩兵と共に」

「分かった!」

「騎兵は突撃したまま、霞と華雄の部隊と合流し挟み撃ちの状態を作り敵をすり潰すのです」

 

ねねは手を擦り合わせる。

その目はもはや戦場を呑み込むが如く深い深い金色の目が輝いていた。

 

「了解だ。行くぞ!我が軍の強さを今一度敵に示せ」

 

俺がゆっくりと前へ進みだし、徐々に加速していく。

そして速さが頂点に達し、霞、華雄の部隊が敵と接触した瞬間。

黄巾と騎兵がぶつかった。

 

結果は圧勝。

騎兵の突撃により前線を一瞬で崩され、左右からもジリジリと削られ、騎兵によって打ち損じた者達は後から到着した歩兵に接滅された。

中央と左右からの挟み撃ちにより黄巾党一万は大した反撃も出来ず壊滅。

それと同時に城の方から歓声があがり黄巾の乱の首謀者である張角。張梁。張宝は城と共に燃え、死体を確認できなかった。

しかし実質的に黄巾の乱は終幕し、一時の平和が大陸に訪れた。

しかし、今回の乱により漢王朝の衰退は目に見えて明らかとなり、その威光は失われつつあった。

 

「ほぅ。一刀達は平原の県令となったのか」

「そうなのですか?」

「あぁほら見てみろ」

 

一刀から来た手紙を騰へと見せる。

 

「ねねも見るのです!」

「おぉならこっちへ来なさい」

 

ねねを膝の上へと乗せ手紙を一緒に見ている。

その姿はまるで親子のようだ。

黄巾の乱が終わり俺達は涼州へと戻り、特に賊も暴れていないので平和を満喫していた。

そして今日もボーと中庭でしている。

 

「それにしても恋どこにいるんだ?」

「ん?そう言えば恋殿は今日は見てないのですぞ!」

「ワシもじゃ」

 

おかしい。いつもなら俺の横でベッタリとしているか、寝ているのに・・・

 

「探してくる」

 

なにか合ったのかもしれない。

そう思い立ち上がると一人の侍女が血相を変えて走ってきた。

 

「呂布様!!呂姫様が!呂姫様が!!」

「ッ!!恋がどうした!?」

 

つい怒気を上げて言ってしまう。

その形相と声に侍女は固まる。

 

「若殿!・・・侍女よ恋様がどうかしたのか?」

「っ!そうです!恋様がお倒れになりました!」

 

その言葉を聞いた瞬間、俺は走り出していた。

 

バンッ!!!!!!!

 

「恋!大丈夫なのか!?!?!?」

「あっ焔」

 

恋がいると聞いた部屋へと辿り着き扉を蹴りやぶり入る。

中には医者と侍女が何名かいた。

皆一様に俺をみて笑顔になる。

 

「おめでとうございます。呂布将軍」

「は?」

 

何がおもえでとうなんだ?

恋を見ると大事そうにお腹を摩っていた・・・まさか!

 

「ご懐妊です」

「っ~~~~!!!!しゃぁァァァァァ!!!!!!!!!」

 

底知れぬ喜びが俺の身体を駆け巡りつい叫んでしまう。

俺は恋へと近寄り抱きしめる。

 

「ありがとう!恋!うれしいよ!本当にありがとう!!」

「ん・・・恋も焔の子供出来て嬉しい///」

「恋殿!大丈夫ですか!?」

「恋様!」

 

遅れてねねと騰が入ってきたが、この事を聞くと同じように喜んでくれた。

 

「恋。結婚しよう!」

「ん。する!」

 

この後、月達に懐妊と結婚を報告すると、月と詠は泣いて喜び。霞と華雄は声を上げて喜んでくれた。

結婚式は俺の両親に羽生さん。同じ涼州の馬騰やその他の豪族。遠方からは一刀が参加した。最終的には宴会となったが・・・

また遠方から来た一刀達は次の日には帰ったが、お土産として俺が買った馬を譲った。

 

結婚式から数ヶ月。

ちょうど春に俺と恋の子供が産まれた。

 

「元気な男の子ですよ」

「おぉ・・・恋よく頑張ったな」

「ん・・・赤ちゃんは?」

 

医者から子供を渡され大事に抱きしめる。

 

「恋と焔の赤ちゃん・・・」

 

恋は静かに涙を流す。

それにつられ俺も涙を流す。

今っきまで大声で泣いていたのに、今では規則正しい寝息を立てぐっすりと寝ている。

 

「・・・名前」

「そうだな。実はもう考えてるんだ・・・性は呂。名は項。字を炎鳴。真名を一夜。真名は一刀が考えてくれた。」

「ん・・・いい名前。恋も賛成」

 

そっか・・・子供の頬をプニっと押す。

するとその指をギュッと握られる。

 

「意外と力強いなぁ~」

「きっと強い子に育つ」

 

まぁよく考えればそうだよな、恋と俺の子と言うだけでも凄いのに名付け親はあの天の御使いである一刀だ。

これが強く育たないと言ったら大変なことだろう。

 

「しかし・・・元気に育ってくれよ息子よ」

「・・・・(コク)」

 

それからは大変だった。

初めての子育てだ。分からないのが当たり前。子供を育てたことのある侍女に色々と教わりながら失敗をしながらも恋と二人で頑張って育てている。

数ヶ月もすれば慣れるもので、恋は今では一人でも十分に世話をしている。

 

「殿~」

「騰?どうした?」

 

そうそう。俺が結婚してから騰は俺の事を若殿と言わなくなった。

なんでも、

 

「もう焔様は立派な大人です。若殿と呼べなくなりましたのぅ」

 

だそうだ。俺にはあまり意味が分からんが・・・

 

「兵が待っておりますぞ」

「了解。今行くよ。じゃぁ恋行ってくる」

「ん・・・行ってらっしゃい」

 

部屋から出て調練所へと向かう。

恋は子育ての為、休暇中だ。

まぁ、休暇じゃない時も殆ど俺と騰、ねねに任せてたからなぁ~

兵の調練だけはしっかりとしてたけど・・・・

 

「さて、今日は快晴。絶好の調練日和だな!」

「ハッ!その通りですのぅ!!」

「そういや、ねねは?」

「ねねですか?ねねなら少し倉庫へ本を探した後に恋様の元へ行くと言っておりましたぞ」

「そうか」

 

ねねもあの初陣から更に努力してるみたいだな。

関心関心っと・・・

 

「殿に向かって拝手!!」

 

オオォ!!!!!

 

「おはよう。早速だが調練に入るぞ。まずはーーーーーーー」

 

 

 

 

 

「お疲れ様です。」

「ふぅ~。大分強くなってきたウチの連中は」

「殿に毎日鍛えられその後に畑仕事や自主鍛練をすれば嫌でも強くなりますぞ」

 

調練を終え、部屋へと戻る道中に騰と今日の事などを話す。

 

「あっ!呂布将軍!」

「ん?どうした」

「ハッ!月様が至急、王座の間に来るようにと」

「月が?分かった直ぐに行くと伝えてくれ。」

「御意!」

 

ふむ、また何かあったのか?

兎も角、恋に一声かけて行くか・・・・

 

 

王座の間に着き、警備の兵が扉を開ける。

中へ入ると男がいた。

 

「殿・・・」

「あぁ分かっている。」

 

あれはおそらく、洛陽からの使者だろう。

しかし洛陽の使者が何故ここに?

横目で見ながら俺は月達の近くへと行く。

霞も華雄も月と詠の下に待機している。

 

「それで、大将軍亡き後、洛陽は腐敗していく一方。そこで皇帝陛下は董卓殿に助けていただきたいと。どうかお願い申しあげる」

 

そういって一つの手紙を月に差し出す。

俺はそれを受け取り、月に渡す。

 

「これは・・・ッ!」

「月・・・私にも見せて」

 

詠は月から手紙を受け取り中身を見る。

そして少し驚きながらも読み終える。

 

「すみませんが、今すぐに返答は出来かねません。後日お答えするので今日の所はお引き取りください」

「ハッ・・・」

 

使者が下がったのを確認し、俺達は月を見る。

 

「なんて書いてあったん?」

「見ればわかるわ」

 

そう言って例の手紙を霞に渡す。

 

「なんや、これ・・・血?」

「血書か・・・」

 

そう、血で書かれた手紙。

皇帝の血で書かれたであろう手紙には、今の洛陽の状況。民の事などなどと見ていて痛々しいものばかり書かれていた。

華雄は途中から目を瞑り腕を組んでいる。

霞はプルプルと震え怒りを我慢している。

 

「どうするんだ月」

「私は・・・皇帝陛下の元へ向かいたいと思います。この手紙が本物ならば今すぐにでも行き民を助けなくていけません」

「月・・・」

「それでこそ月や!!」

「うむ!さすが月様!そう言ってくれると信じてました!」

「さて、と俺は兵と米糧の用意えおしてこようかな」

「皆さん・・・」

 

後日、使者に洛陽へ向かう事を告げた。

しかし、これが乱世への扉を開いた事になるとは焔意外だれも知ることは無かった。

 


 
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