No.298780

【TOX】ガイジュ+ウィンで発売前妄想

サカナさん

ガイ→ジュ前提、ガイアスとウィンガルの発売前妄想。
ウィンガルがどうしても苦労人で、ガイアスがstkにしか思えない。
とってもガイアスが残念で、アルヴィンが不憫な話。
※まだ私はTOXをプレイ出来ておりません\(^o^)/

2011-09-12 20:42:04 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1894   閲覧ユーザー数:1888

【苦労人】

 

おかしい。

おかしいというよりも、変だと言うべきか。目の前の状況を認めたくなくて必死に視線を逸らそうとしてみる。

けれど結局は上手くはいかずに、あまり見たくもない背中が見えてしまって、溜め息を吐きそうになるのを寸でのところで堪える。

 

「ガイアス」

「なんだ?」

 

名前を呼べば、ちゃんと返事は返ってくる。

一応は自分がここにいるのだということを分かっているらしい相手に、安堵半分怒り半分。

気付いているのならば、さっさとそのおかしな行動をやめて欲しいというのは、ウィンガルの切実な願いだ。

仮にも王であるガイアスがするには相応しくない、おかしな行動。

ジュードという少年を付け回すことを――どう贔屓目に表現しようとしても付け回す、だ――ここ最近頻繁にみかけるようになった。

現に今とて家と家の間ようは物陰にいる。

ジュードがとある街に立ち寄ったという情報を手に入れた途端「出かける」と言って姿を消したのを、追いかけてみればこのざまだ。唯一の救いはそれに気付いているのが自分だけ、ということで。願わくば自分しか気付いていないところで止めて欲しい。

というか、何度も「やめろ」と言った。だのに――

 

「くそ!またあいつだ!」

 

舌打ちをして、今にも飛びだして行きそうなガイアスをなんとか羽交い絞めにしつつ、物陰から覗き見てみるとアルヴィン、と名乗った男がいる。

記憶の中おぼろげに引っかかっている名前を引っぱりだしてから、またかと呆れる。ガイアス曰く、「あいつはジュードにまとわりつく疫病だ」らしい。

別段、自分の目から見ればおかしいところも感染を心配するような病気を持っているとも思えないのに、どうしたものかと息を吐く。

 

「落ち着け」

「落ち着いている!」

 

怒ったように声を荒げるガイアスに、どうにもならないと匙を投げたくなる。

投げた所で結局は自分へ返ってくるから投げても意味はないのだろうけれど。

副官としてもしくは幼馴染としてどうにかしろと、せっつかれるのが想像できてしまう。それぐらいわかってしまう自分が嫌だ。

落ち着いていると手を払うガイアスに、とりあえずは突撃することもないだろうからと羽交い絞めにしていた腕を緩めた途端、ガイアスが剣を構えたものだからあっけにとられる。

 

「な、」

 

何をするつもりだ。

問う前に剣圧が砂埃を上げてアルヴィンとやらの男の背中に激突する。

飛ぶ斬撃。くぐもった苦しそうな声をあげて倒れる男。呆然とそれを眺めてから空を仰いだ。

 

(ああ、今日も快晴だな)

 

現実逃避だとわかっているのに、目を逸らさずにはいられない。

これがどうしてあの毅然とした王と同じ人物だと誰が信じられるだろうか。いっそ偽物だと言われたほうがよっぽどマシで、いっそそうであって欲しいと切実に願う。

 

「あ、アルヴィン!?ちょっどうしたの!?」

 

姑息にも、ジュードが買い物をしていてアルヴィンに背を向け、こちらを見ていない時に剣圧を飛ばしたものだから、ジュードにはきっと突然アルヴィンが倒れてしまったように映っているのだろう。

おろおろと、うつ伏せに倒れこんだアルヴィンを必死に呼んでいる。

医学生らしくというべきか。唐突に倒れた相手に焦りはしていても、無駄に体を揺らしたりすることなく意識の有無を確認している。

それに少しばかり感心していると、あっという間にガイアスが物陰から進み出て歩み寄るものだから目を瞬かせる。

自分で攻撃をしておいて、何をするつもりなのか。慌てて、後を追う。

 

「大丈夫か?」

「あ、ガイアスさん……えっと、その突然アルヴィンが倒れてしまって……」

「ほう……」

 

何にも関係ありません。

たまたまここを通りかかったんです。

とばかりに表面上、真顔で声をかけるガイアスの演技力に、内心だけで感嘆する。

大丈夫かもなにも、アルヴィンに攻撃をしかけたのはガイアス自身なのだからその聞き方はおかしいだろう。

 

「あ、ウィンガルさんも」

 

ぺこり、と頭を下げられて会釈を返す。

たったそれだけなのにガイアスの視線が痛い。強く痛い。視線が刺さって嫌な汗をかきそうになる。どれほど、この少年の事を気に入っているのだ、と喉から出そうになった言葉をどうにか飲み込む。

 

「ジュード、お前一人では運ぶのは無理だろう」

「え!?そんな、悪いですよ」

「遠慮するな。そんなに急いではいない。この男の方が気になる」

「それは、そうですが……」

「突然倒れるなど、タチの悪い病気だとしたら、心配だ」

「ガイアスさん……」

 

いくつか挨拶のような会話と現状を確認してガイアスが申し出た言葉に「これが目的か」と内心だけで深い息が出る。

ガイアスの他人を労わるような言葉に感動したのか、少年の瞳は若干輝いている。それがひどく苦しい。ガイアスが心配などしているわけなどない。そのそも犯人がガイアスなのだから。

 

「宿はこっちなんで、お願いしていいですか?」

「ああ……」

 

自分を置き去りにして、進められる会話。

病人を扱うというほどの手つきではなく、いささか乱暴に男を担ぎあげるガイアス。

脳裏に、今日までが決済期限だった書類やら、予定やらを思い浮かべながら、もうどうにでもなれと思った。


 
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