No.287382

真・恋姫無双 魏end 凪の伝 52

北山秋三さん

ようやく第三部開始です。

2011-08-28 23:43:03 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:10564   閲覧ユーザー数:4697

みんな、死ね────

 

一刀の口は確かにそう動いた。

 

春蘭がわずかな希望に縋る様に手を伸ばした先で、一刀は残像を残して掻き消える。

 

手にした『靖王伝家』が鈍い残光と共にまっすぐ恋を目指す。

 

どんなに速くとも、軌道は読める。

 

恋はその軌道上に『方天画戟』を合わせた。

 

確実に防げる一撃。

 

「ッ!?」

 

肌が瞬時に粟立つ。

 

マズイ、と本能が認識した。

 

無意識に闘気が放出されるが、それが恋の命を救う。

 

一刀の持つ『靖王伝家』を恋の『方天画戟』が受け止めた瞬間、大気が弾けた。

 

思わず耳を押さえたくなるような大音響が二人の間で響き、恋が僅かに体勢を崩して一刀が数メートル後方に飛んだ次の瞬間、機械音が響く。

 

<<甘寧のデータをロード>>

 

聞こえた機械音に全員が驚愕する間もなく、着地した途端一刀は再び黒い風となる。

 

今度はさっきとは違う。

 

恋は確かに闘気を開放していた。

 

────真横からの、一撃。

 

目で追えなかった。

 

ギリッ、!!と体をむりやり捻り、『方天画戟』を盾のように構えたその腕に凄まじい衝撃が伝わる。

 

恋の腕がしびれ、小さく呻く。

 

そして見たその先に、だが一刀の姿は無かった。

 

ゾクリ、とした気配は下から。

 

「────!!!!!!」

 

恋はその気配に向けて踏みつけるように地面を叩いた。

 

ドゴンッ!!!という爆音と、抉られた地面が石飛礫となって吹き上げるが、手応えは無い。

 

突然、土煙の中から恋の顔を狙って"脚"が現れる。

 

頭を下げて辛うじてかわした恋の目の先に、一刀の顔があった。

 

混乱する恋だが、すぐに理解した。

 

最初の『方天画戟』への衝撃は、攻撃に見せかけて『方天画戟』を掴んだ衝撃。

 

その腕一本を支点にしてくるりと逆立ちをするような格好から放たれたのが、さっきの蹴りだった。

 

アクロバットな、まるでカポエラの蹴りのような攻撃。普通であれば力が入らない筈の一撃は恋の髪を数本引きちぎる。

 

その事が恋の闘志に火をつけた。

 

お互いにバッ!と離れ、もう一度、今度は正面からぶつかる。

 

最初のシーンの焼き直しのようなその一撃は、恋が数メートル後ろに下がった。

 

いや。恋が"力負け"して、後ろに下げられたのだった。

 

驚愕に見開かれた恋の瞳は、目の前にいる一刀の目を捉える。

 

 

 

 

 

 

 

黒く濁った、その殺意に溢れた目を。

 

 

 

 

真・恋姫無双 魏end 凪の伝 第三部 52話

 

 

『最悪の結末への道』

 

 

 

 

「恋!!」

 

愛紗が『青龍偃月刀』を構え直して一刀に向かって突撃をするが、それよりも速く一刀の拳が地面を穿ち、爆煙を巻き上げる。

 

────目晦まし。

 

それを悟った二人が闘気を開放する。

 

ゴオッ!!!と突風が巻き起こり、爆煙を拡散したそこに・・・黒い獣がいた。

 

低く屈み込むような構えで『靖王伝家』を持つその姿は、黒豹のようにしなやかな獣を連想させる。

 

だが、その中身は────

 

 

 

<<張飛のデータをロード>>

 

<<趙雲のデータをロード>>

 

<<馬超のデータをロード>>

 

 

 

立て続けに聞こえた機械音に全員が顔色を変える。

 

「まずいわ!!!このまま強制ダウンロードを続ければご主人様の体が・・・!!!」

 

貂蝉が焦りの色を浮かべた声を聞く余裕は、一刀の目の前の二人には無かった。

 

ポツポツと雨が降り始め、二人の顔を打つがそれを拭う余裕が無い。

 

全身の神経をただ一人の男に集中して、筋肉一つの動きさえ捉えようとする。

 

最強の力を持つ二人でさえ奪われる余裕。

 

それだけ、目の前の黒い獣は"異常"だった。

 

 

 

<<周泰のデータをロード>>

 

<<文醜のデータをロード>>

 

 

 

「『靖王伝家』ああああああ!!!!止まれッつってるだろぉぉをを!!!!」

 

<<停止コードを拒否します>>

 

吼える桃香の声を、冷たい機械の声が淡々と拒絶する。

 

「ちぃッ!!??」

 

焦る桃香の舌打ちと共に恋の筋肉が音を立てて盛り上がり、闘気をまとった『方天画戟』が振るわれるたびに竜巻が起こった。

 

そして愛紗の一撃一撃が空間すら切り裂ける程の鋭さで地面に穴をあける。

 

衝撃波で岩が吹き飛び、"破壊"が周囲を支配した。

 

 

 

────しかし────

 

 

 

それらを上回る"殺意"がたった一人の男から発せられている。

 

振るわれる『靖王伝家』は周囲の地面をズタズタに切り裂き、拳は空間を打ち抜いて蹴りは大地を割った。

 

降りしきる雨が一刀にも降り注ぐが、降り注いだ雨は即座に蒸気に変わる。

 

立ち上る湯気は、まるで一刀に取り付いた悪魔のように歪む。

 

「・・・・・・ははっ・・・・・・」

 

小さな笑いが零れる。

 

それは────

 

 

 

 

 

桃香。

 

 

 

 

 

「あははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!さすがご主人様!!!!!!すごい!!!!!!すごいよご主人様!!!!いつも私の予想を遥かに上回るんだ!!!!!!!すごいすごいすごい!!!!!!!!!」

 

気でも狂ったか。春蘭がそう思うほど愉悦に歪む桃香だが、瞬時に真顔に戻った。

 

「貂蝉・・・一時停戦ね」

 

「そうね・・・一時、ね・・・」

 

苦々しい表情を浮かべる桃香に、貂蝉が頷く。

 

激闘を続ける三人に、貂蝉が加わった。

 

三方向からの同時攻撃。

 

しかし、一刀はそれすらもたやすく回避する。

 

ドオオオオオオン!!!!

 

と、突然一刀の周囲に炎が舞った。

 

それを察知したように三人が一刀の側を離れる。

 

炎は桃香の持つ札から放たれ、一刀を取り囲むように燃え上がった。

 

炎の牢獄。

 

「恋ちゃん!!」

 

一瞬の隙をついて桃香が恋を見つめる。

 

「・・・・・・本気?」

 

訝しげに眉を顰め、ポツリと呟いた恋の言葉に頷く。

 

「仕方がないわ・・・このままご主人様を暴走させたままにしておくわけにはいかない」

 

 

「『伯達』の力を使って」

 

「と・・・桃香さま!!?」

 

驚愕の表情を見せる愛紗だったが、すぐ横に跳ぶ。

 

その後を一刀の放った衝撃波が地面を抉った。

 

炎の牢に囚われながらも、めちゃくちゃに『靖王伝家』を振るう一刀の放つ衝撃波は確実に炎の牢獄を削っていく。

 

このままではすぐにでも出てくるだろう。

 

「わかった・・・」

 

はぁ、と溜息をついて両手をだらんと下げる恋。

 

俯いた顔からは表情が消え、闘気が急速に萎む。

 

それはまるで戦うのを拒否したかのような態度。

 

「・・・どうするつもりだ・・・?」

 

季衣に抱えられた春蘭の声が雨に遮られる。

 

「しゅ・・・春蘭さま・・・なんか、変です」

 

「どうした?季衣・・・?」

 

と、そこで自分を抱える季衣が震えているのに気が付いた。

 

「れ・・・恋ちゃんが・・・こ、怖いです・・・」

 

何度も戦場で顔を合わせ、その強さを知っている筈の季衣が恐怖に震えている。

 

もう一度恋の姿をみた春蘭は────そこに"あれ"を見た。

 

雨が一際強く全身を打つ。

 

だが全身で感じる寒さは、目の前の恋が放つ気配から。

 

ゴオオオオオオオオオオ!!!!と恋の周囲の空間が歪み、恋の服が黒い神事服のような姿に変わる。

 

その周りでは地面が割れ、岩盤が盛り上がった。

 

剣山のようにせり上がる岩盤の中で、恋の口角が吊り上る。

 

ゆらり、と動いた恋に残像のようなものが重なっていく。

 

そして・・・あの機械音のような音が聞こえた。

 

 

 

 

 

<<呂布データを、呂布にダウンロード>>

 

 

 

<<エラー。エラー。同データの加算はできません>>

 

 

 

<<司馬朗 伯達の存在を確認>>

 

 

 

<<特殊システムの発動>>

 

 

 

<<呂布データを"乗算"します>>

 

 

 

 

 

 

 

突然。

 

 

 

 

 

 

世界が音をたてて歪んだ。

 

 

タイトルは『最悪の結末への道』ですが、バットエンドルートに入ったということではありませんのでご注意をー。

 

もう秋祭りの季節ですね。

 

また、また1日でおにぎり400個作る仕事が始まるを・・・。

 

ガクガクブルブルしている秋三でした。

 

ではまた。

 


 
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