No.277477

氷の彼(2)(夢小説)

active13さん

ダンボール戦機の仙道夢です。
氷の彼の続編です。

2011-08-18 15:47:28 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2799   閲覧ユーザー数:2788

 

 

注意!

 

この作品は夢小説です!

 

間違って入ってしまわれた方はお戻りください!

 

 

 

 

あのカフェで会って以来彼…仙道ダイキとは会っていない。

私はミソラ二中で彼はミソラ一中であるから会う機会は多分ないだろう。

それに彼はどうやら私よりも2歳年上らしい。

だから登下校の時間もおそらくかなり違ってくるはずだ。

そんなわけで私は特に仙道について気を病まずに、相変わらず彼と会う前までと同じ生活を送っている。

 

キーンコーンカーンコーンと今日も学校の終わりを告げるチャイムが鳴り、生徒たちがいっせいに校門から飛び出していく。

私もそろそろ帰らねばと思い荷物を持ち教室から出る。

 

「セツナー!!」

 

ドンッと鈍い衝撃がリュック越しに伝わる。

この声の持ち主は…。

 

「アミちゃん…なんでいつも体当たりなの。」

 

ジーンとする背中にさらにのしかかるアミを少しジト目で睨む。

この今私に体重を預けている少女、アミこと川村アミとは幼馴染なのだ。

私とはまったくの間逆の例えるなら太陽のような性格の持ち主のアミとは幼馴染でなければきっと話すこともなかっただろう。

明るい太陽のような彼女に話しかけるなんて幼馴染でなければ自分には到底無理だと考えられた。

 

「ごめん、ごめん。だって、セツナの背中ってなんか体当たりしたくなるような背中だからつい、ね?」

 

つい、ね?じゃないよ、アミちゃん…。

あと、体当たりしたくなるような背中って…私そんな背中してるのかな?

うーん、と顎に手をあて考える。

 

「あー、もうだめだめ!まーたなにか考え始めたんでしょ!ほら、さっさと帰りましょ。」

 

そう言ってアミちゃんは私の手を引く。

セツナはいっつも考え事するときは顎に手をあてるわよね、とアミは頬を少し膨らましながら言った。

そう、顎に手を当てるのは私の考え事するときの癖なのだ。

そして、いったん考え始めたらもう空想の世界の住人になり、なかなか現実の戻れなくなってしまう。

それでいったい友人を何回泣かせたことか。

 

 

外に出るともう運動部の部員たちが練習の準備を始めていた。

少し早足になりながら校門を出て、二人目的地に急いだ。

 

 

 

 

 

 

「遅いぞ、アミにセツナ!」

 

キタジマ模型店のDキューブではすでにLBXハンターとLBXアキレスの戦闘が始まっており、二人の白熱したバトルが繰り広げられていた。

 

「ごめん、カズ。これでも急いできたの。」

 

そう言いアミは自分のCCMとLBXクノイチを鞄から出す。

一方の私は親から反対されて自分のLBXを持っていないので今日も観戦するため二人が戦っているDキューブに近づき中の様子を見た。

今のところ形勢はカズが有利なようだ。

 

「今日は俺が勝つぜ、バン!」

 

「そうはさせない!」

 

カズが操るハンターが高所の物陰からバンのアキレスめがけてスティンガーミサイルを雨のように浴びせる。

 

「くっ!」

 

土埃でアキレスの視界は遮られてしまった。

 

「そこだ!」

 

完璧に相手を見失ったアキレスめがけてハンターが物陰から姿を現し、専用のハンターライフルを構えアキレスの動力炉に狙いを定める。

 

「これで終わりだ!」

 

ハンターのライフルが火を噴き銃弾がアキレスめがけて飛ぶ。

 

ドーン!

 

すごい爆風が巻き起こり砂埃がDキューブの外まで出てきた。

これじゃあアキレスは…。

 

「悪いな、バン。今回は俺のか…。」

 

カズの勝利宣言を言い終わらないうちにバンが叫んだ。

 

「アタックファンクション・ライトニングランス!」

 

「な、に!?」

 

物陰から出て丸見えのハンターめがけてアキレスのライトニングランスが天を突いた。

 

ドーン!

 

またしてもすごい爆風が巻き起こる。

バン、カズ、アミ、私それに白熱したこの先の見えないバトルが気になったのか先ほどまで店番をしていた店長まで含めた5人でGキューブに顔を突っ込み勝利の行方を探った。

土煙が止み、戦闘の激しさが残るフィールドから左腕のとれたアキレスと完全にダウンしたハンターがでてきた。

 

「おいおい、ここまできて負けかよ…!」

 

あの好形勢だったにも関わらず負けてしまったのがよほど悔しいのかDキューブをドンッと叩く。

 

「なるほど、腕を打たせてその銃弾の方角からハンターの場所を計算して攻撃したのね。」

 

アミがうんうんと頷きながら左腕がとれたアキレスを見る。

 

「肉切らせて骨を断つか…。いい作戦だ、バン。それから、カズは詰めが甘いな。ちゃんと相手がダウンしたか確認するまでは気をぬいちゃいけないさ。」

 

店長はそういいながらいつものカウンターに戻るとメンテナンス用の金具を引っ張り出してきた。

バンとカズはそこから必要な工具を手に取ると損傷したパーツを取り換え丁寧に機体の汚れをふき取り始めた。

その隣では先ほどまで激戦を繰り広げたGキューブですでにアミと店長が試合を開始している。

 

意外に手先が器用なバンは狭そうな隙間に入った砂をふき取っている。

作業しているバンの隣に置いてあるバンのカバンの入口にとれたアキレスの腕が置いてあった。

見た目からしても外装はぼろぼろでなかに通っている、切れてしまった銅線が剥きだしになっている。

このパーツはもう使えないだろう…。

 

「あの、バン君、これ多分もう使わないよね。私リサイクルボックスに入れてくるよ。」

 

カバンの上のアキレスの腕を指して私はいった。

 

「…ありがとう。…じゃなくて!それは待って!!」

 

珍しく切羽詰まったようなバンの声に驚いてバンの方を見る。

 

「あ、突然叫んでごめん!えーと、そのアキレスの腕はまだ捨てないでほしいんだ。」

 

バンはカバンの上に転がっているボロボロの腕を見て言った。

 

「もう使えないのに?」

 

その問いにバンは笑って答えた。

 

「そうだね、多分この腕はもう使えない…。だけど…この壊れた腕も今まで戦ってきた大事な仲間なんだ。…だからさ、今しばらくはこれと一緒に過ごしたいんだ。」

 

「壊れても仲間…。」

 

「ああ、この壊れた腕だって大事な仲間だ。確かにこれはもう単なるジャンクパーツかもしれない。だけど、例えジャンクパーツでもこの腕はアキレスとずっと一緒に戦ってきた仲間さ。」

 

そう答えたバンの笑顔は眩しいくらい輝いていた。

ああ、これだから彼は強いのかもしれない。

ものをモノと捉えない価値観。

それは弱さであり同時に強さでもあると思う。

バンのその態度からLBXの本質を教えられたような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、またなー!」

 

バンの元気の良い声がキタジマ模型店の前に響く。

またね、と私も皆に別れを告げ、帰路に就く。

学校を出た時はまだまだ明るかった空も今では赤い夕焼けの名残が気持ち程度にしか残らないほど暗くなっている。

商店街では同じく家路を急ぐと思われるサラリーマンたちが少し疲れた表情で去っていく。

暗くなってきたし早く帰ろうと思い、路地裏の抜け道に足を踏み入れた。

 

 

 

それがそもそもの間違いだったのだ。

今、私の目の前には無残にも内部コアまで抉れ、四肢が断絶されたLBXともう二度と顔を見せるなといったあの男がその肩に愛機を乗せて佇んでいる。

 

「…。おまえ、この前言ったこと覚えてるか?」

 

ジロッと微かに睨みながら目の前の男はため息交じりに言う。

いや…どちらかと言えば私の方がため息をつきたいのだが…、しかしそんなことしたら私がこの目の前に転がっているLBXと同じ運命を辿ることになることが容易に想像でき、私は視線を伏せた。

 

まさか、この路地裏で仙道ダイキがチンピラ風の男とLBXバトルをしていたなんて誰が想像できたろうか。

 

はっきり言って今のこの状態は完全に不可抗力だと思う。

別に私は故意に彼と出会おうとはしていない。

むしろ会わないようにミソラ一中の制服が見えたら、その場から去るよう努力しているぐらいだ。

だいたい、例え私が金輪際会わないように努力したとしてもお互い隣町に住んでいるのだから避けるにも限界があるだろう。

 

「なんか言ったらどうだ?」

 

何も言葉を発せず、俯いている私にいらついたのか仙道が少し語尾を強める。

 

この場に来てからずっと考えていたことがある。

私は足元のLBXを見た。

彼はどうしてここまでLBXを破壊したのだろうか。

通常アンミリテッドのバトルはご法度だ。

…まあ、彼が、協会が決めた規則を礼儀正しく順守するような人物にはまったく見えないのでアンミリテッドバトルを行ったこと、それは理解できる。

しかし、ここまで破壊するまで攻撃し続けた仙道の真意がわからない。

 

内部コアはLBXの動力と言っても過言ではないほど重要な部品で専用の機器を用いなければそれを取り出せないほど頑丈に守られている。

その内部コアが露出ところまで破壊するなんておそらくダウンした後も相当傷めつけなければそんなことにならないはずなのだ。

 

 

なぜ?

 

いったいなんのために?

 

 

そんな考えが私の思考を支配していた。

 

「なんで…壊したの?」

 

気づいたら勝手に言葉が出ていた。

なんか言えよと言ったくせに仙道は少し驚いたような表情をした。

会ってからずっと俯いて一言もしゃべらなかった私が初めて話しかけたのだから無理もないかもしれないが。

 

「はっ、ちゃんとしゃべれるんだな。てっきり口がきけないのかと思ったよ。」

 

「…。」

 

明らかに馬鹿にしたもの言いに腹がたったが、下手に突っかかってもろくなことにならないと思い踏みとどまる。

そんな私を見ながら彼は面白そうに言葉を紡いだ。

 

「…そうだねえ。つまらなかったから…とでも言っておこうかねえ。」

 

つまらない…。

ますますわからない。

つまらないだという理由だけで普通ここまでLBXを破壊するものか?

いくら考えてもこの壊し方やはりおかしい…。

この壊し方はまるで…。

 

それにアミから聞いたが、あのアングラビシダスに参加していたほどの実力者だ。

ならば相手を見ればおおよその戦闘レベルがわかるはずである。

なぜ、仙道程度のプレーヤーならわかるはずのつまらない明らかに格下のLBXをなぶり壊しているのか。

 

 

「ここまで壊す理由は本当につまらないから…だけ?」

 

「…。どういう意味だ。」

 

不敵そうに笑っていた仙道から笑みが消え、瞳が徐々に冷たさを帯びていく。

 

「…そのまんまの意味。」

 

あの鋭く凍てつくような冷たい瞳が私を射抜き恐怖を覚えたが、ここまで質問していてはもう最後まで会話を続けないわけにはいかなかった。

 

「…。」

 

お互い黙ったまま視線が交差する。

私は仙道の瞳からその真意を見つけようとするが彼の瞳はあの時と変わらない冷たい瞳だった。

 

 

「…もう俺に話しかけるな。」

 

 

そう言って仙道はくるりと背を向け、すっかり夜の帳が降り、深い深い闇が広がる路地裏に消えていった。

 

 

 

 

残った四肢のない傷だらけのLBXだけが私を見つめていた。

 

 

 


 
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