No.269641

【BSR】官兵衛さんの怪談

techi33さん

 戦国BASARAに二次創作。史実は無関係。
 オカルト大好きな大谷さんと、とばっちりでろくでもない目にあった事を回想する官兵衛さんのお話。
 でろでろの耳雄君ばりに怪奇現象にあうのに普通に対処する官兵衛さんと、除霊スキル持ちの大谷さんが出てきますが作者の趣味です。
 なぜか輿がオカルトアイテムになってます。 
 

2011-08-11 10:11:45 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:685   閲覧ユーザー数:675

 

 

 

 

 

 怪談か…小生は呪いの類いは信じないタチなんだがな。

 ただまあツイてないからな。

 刑部みたいなのと付き合いが長いせいか”そういった”体験はわりとしたことがあるぞ。

 

 え、実際に体験してるのに、心霊現象を信じてないなんておかしい?

 

 仕方ないだろ。

 一々信じてたらきりがないんだから。

 …よく考えてみろ。時代を遡れば何処だって古戦場じゃろ?

 もし怨霊なんて実在するんならこの部屋中怨霊でみっしり詰まってることになる。

 そこいらへんに半透明の人間もどきがうようよしてるなんて考えは持たない方が絶対いい。

 面倒くさいし。

 

 そういうものとは距離をとれってのは孔子の論語にも載ってる。

 別に小生は罰当たりじゃない。割り切ってるだけだ。

 お地蔵様からまんじゅう盗んだりはしないさ。

 どうせ腐ってるか黴びてるだろうからな!

 

 話が逸れたな。

 ええと、今から怪談を話せばいいんだな?

 

 よし。

 これは小生が太閤に仕官してすぐの頃、本当にあった話だ。

 …怖いぞ。かなり怖い。

 真っ黒い格好した刑部の次ぐらい怖いからな!

 

 

 *****

 

 

 

 黒々と茂る雑木林。

 湿度の高いじっとりとした空気とそのくせ冷たく吹きすさぶ風。

 小生と刑部は薄暗い雑木林を歩いていた。

 「ここの木が必要なんだな刑部。」

 寒さに手をこすりながら小生が呼びかけても、三歩先で杖をつく刑部は何も答えない。

 「疲れてるならおぶってやらんこともないぞ。」

 無言でゆっくりと足を動かし、足場を確かめながら歩く刑部は小生に一瞥くれるとまた黙々と歩き出した。

 

 小生は刑部に頼まれて、そう珍しく弱みをにぎって脅したりせず普通に頼まれて移動用に使う輿の材料を取りに連れ出されていた。

 

 その時はまだ、ギリギリ歩けちゃいたが刑部はもう自分の足が動かなくなることが分かってたんだろうな。

 先が分かれば先手が打てる。

 刑部は賢いからな。

 さっさと足代わりを決める事にした。

 で、色々試したがカラクリでは扱いづらいから自分で輿を造るって言い出して、それに三成と半兵衛が賛成したんで刑部はなにやら色々準備しだしてた。

 これはそんな頃の話しだ。

 

 刑部は小生を無視してとぼとぼ歩く。

 その早さに合わせてこっちもゆっくり歩く。

 先に行こうにも、刑部の目当て…つまり木が生えてる場所なんてわからんから後ろをついていくしか無い。

 

 しばらく黙々と歩いていたんだが…。

 なんか地面に白い手が生えてて歩きづらいんだよ。

 自殺の名所だったんだろうな。

 あいつそういう場所好きだし。

 刑部は厄いモノを集めるのが趣味じゃろ?

 ほら三成とか第五天とか。なんでも淫靡な美しさだとか儚さだとか、そういうよく分からんものに強く惹かれるらしい。

 

 そんなんだから、あいつは怪しい場所によく出かけててな。

 それで小生もいっつも巻き込まれて大変な目に…。

 

 む、なんかただの刑部の悪口になってきたぞ。

 

 地面に白い手が生えてるとこまで話したよな?

 割とこういうのは慣れてたんで慌てたりはしなかったんだが、こう…手に足首掴まれて歩きずらくてな。

 それでいつものこととはいえ八つ当たりぎみに刑部に頼んだんだよ。

 

 「おい刑部なんか地面に手が生えてるぞ!!

 これお前さんの得意分野じゃろ?なんとかしてくれ!」

 「無視しやれ。そのうちに消えるゆえ。」

 

 さっきまで、話しかけても無視してた刑部が声だけで返事してきてだな。

 いつもなら、どうやってるのかは知らんがそういう厄いのを消してくれるくせに面倒くさいのか疲れてたのか、なにもしてくれなくてな。

 

「引っ掴んでくるもんを無視できるか!」

 

 足首掴もうと寄ってくる手を踏みながら言い返してやったら、刑部がまたうんざりした様子でこれ見よがしにため息なんぞついて、ひどいこと言ってきてな。

 

 「”地面に手なぞ生えておらぬ。ぬしは茸に蹴躓いただけよ。”

 暗よこれで…。」

 「それはないじゃろ!ほら小生の足の下に!!」

 「ええい暗め…踏んでどうにかなるなら茸とでも思って踏みつぶしやれ!」

 

 少し言葉を遮ったけど、いつも通り言い返しただけなのに急に怒り出してきてな。

 ひどいじゃろ?

 で、刑部はそれを言ったきりまたもたくた歩きだしてしまって、仕方ないから小生も何とか歩いていったんだよ。

 

 そしたら刑部がぶつくさつぶやいててな。

 

 たしか内容は言霊がどうたらこうたらで、とにかく小生がいちいち相手するからそういうのが湧いてくる的なことを言ってた気がする。

 ああいうのは、かまってもらいたがりらしい。

 …そんなん分かるか!お前さん陰陽師にでも転職しちまえばいいのにって言い返したら、三国志の孔明もこの程度の呪いは行っていたって怒られた。

 …ものすごく怒られた。

 

 刑部が胡散臭い場所に行かなきゃそもそも問題ないだろうに感じ悪いじゃろ?

 小生は頼まれたからついてきてるのに。

 

 で、やたらと時間がかかったがやっとこさ刑部の目当てが見えてきた。

 なんか穢された神木とかいうもんでな。

 

 たしかその時いってたのは…。

 

 「この木よ。このキ。ヒヒヒ。

 かつてこの地は鎮守の森であった。

 しかし里が戦で滅び、守る者が亡くなりこの神木は血と亡霊に穢れた。

 哀しいことよカナシイ。

 だがこれに宿った力は有効活用せねばなるまい。

 力あるモノをただ無為に朽ちさせるなど勿体無い事よ。」

 

 あー、そうじゃな。

 そんなもん欲しがるなんて刑部は変わってるだろう?

 

 でも、悪い魔法使いみたいな言動だけど刑部は一応軍師だからな。

 半兵衛の次ぐらいだけど賢いし。

 豊臣では三番目に頭がいいぞ。性格最悪だけど。

 呪い屋とか陰陽師じゃないぞ。

 本職並みにそういうマジナイが得意なだけで。あいつは軍師だ。

 たぶん。転職してなかったしな。

 

 話しは戻るが…とにかく木を伐採することになった。

 木は伐採して乾燥させて板にして初めて材木になる。

 刑部に必要なのは呪われた木じゃなくて呪われた材木だからな。

 いや、呪われた空飛ぶ輿か。

 

 斧で木を切り始めたんだがな…。

 なんか赤い汁がいっぱい出て生臭くてな。

 後から考えると、木を伐採してるっていうより木の形をした肉塊切ってる感じだった。

 

 「おい!刑部!すっごい生臭い!

 魚?森なのに魚?」

 「どんどん切りやれ。

 魚市にでも行った気持ちで耐えるがよかろ。」

 「汁で手がヌルつく!」

 「さようか。

 すっぽ抜けぬよう気をつけよ。」

 

 小生が頑張ってるのにそんな調子でな。

 何かもう、戦の後の三成みたいな感じになって、大変だった。

 ごしごし拭かれるし。犬を拭く様な感じで痛い。

 三成の半分ぐらい、小生にも優しくして欲しいって思うぐらい痛かった。

 

 木が倒れるときに、わざとらしい悲鳴とかあがって気持ち悪いし。

 

 え?ああ木が断末魔の悲鳴あげたんだよ。

 小生もびっくりだ。

 

 刑部は笑ってたけど。ほら、あいつ本当にこういうの好きだから。

 あいつ怨霊とかになったら、ノリノリで人とか祟りそうで怖い。

 

 今でも祟ったり、呪ったりしてると思う。

 

 その後?ふつーに材木に加工して、輿造ったらなんかよく分からんけど浮いてた。

 小生は普通に輿を造ったのに…カラクリとか仕込んでないのになんで浮いてるんじゃ?

 考えてみたら、それも怖いな。

 小生が造ったのにそれの原理が分からんなんて、本当に怖い。

 

 

 

 

 

 *****

 

 

 

 せがまれた怪談を話し終えて相手の様子を伺う。

 

 …反応がない。

 

 実際にあった話しだから少しケレン味が足りなかったか?

 話すならオチとして刑部を祟りで死んだ事にした方が良かったな。

 あいつの方が祟り殺しそうだが。

 でも、こういう怪談は体験談を話すんだから話しのオチに嘘は逆に体験談らしさが失せるか?

 うーん。

 

 「…どうだ、まあまあ怖かったろう?」

 「ぬしが語り部ではどんな話も笑い話よ。」

 

 音も無く輿に乗って、突然刑部が表れる。

 すーっと音もなく現れ、ぷかぷか浮く姿は、正直お化けっぽい。 

 いつも通り怪しげな格好で、どういう原理かわからん方法でこの輿は宙に浮いているのかと思うと、なんか怖い。

 流石は呪いの材木製じゃ。

 

 「げ、刑部!」

 「現場責任者が呼んでおる。早にいけ。」

 

 ずっと話し込んでいたから気づかなかった!

 あわてて声のする方へ走っていく。

 

 小生が出て行った後も何やら刑部が話している声がする。

 

 「あの黒田を闇に誘おうとは…ぬしも無駄なことをする。

 暗を暗闇に誘っても無意味よムイミ。早に余所にうつりやれ。」

 

 なにを話しているんじゃ?

 気になって引き返してしまう。

 

 ん?刑部しかいない??

 

 「あれ?あの童…帰っちまったのか。」

 

 さっきまで怪談を聴いていたのに…きょろきょろと薄暗い穴蔵を見回す。

 小生に何を言ってるんだ、と言わんばかりの表情で刑部が口を挟んでくる。

 

 「…ぬしはアレを童と見やるか。アレならば長く見ていたいモノではないゆえわれが祓った。」

 「はらうって…犬猫おっぱらうみたいに言うなよ。

 というか勝手に帰すなよ!いい話相手だったのに…。」

 

 あいかわらず、自分の好みに合わないやつには本当に冷たいな。

 この面食いめ。

 むくれる小生に刑部は顔を近づけしみじみと何かに納得しながら呟いた。

 

 「ぬしは呼び込む癖に狂わぬのな。」

 「は?」

 「もうよい。」

 

 相変わらず訳の分からんヤツめ、と呟くと後ろから数珠でどつかれた。

 

 そういえば、思い出したんじゃが小生は割と憑かれやすい体質らしい。

 でもそんなの気にしてたらきりがないし。

 小生は今日も元気に生きてるし。

 

 まあ、時々ヤバい事もあるが、なんとかなってる。

 

 なんとかなってる?

 と、思う。

 

 

 

 

おしまい

 

 

 

 

 

 

 

 

 
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