No.265198

鳳凰一双舞い上がるまで 第三章 0話

TAPEtさん

真・恋姫無双の雛里√です。
雛里ちゃんが嫌いな方及び韓国人のダサい文章を見ることが我慢ならないという方は戻るを押してください。
それでも我慢して読んで頂けるなら嬉しいです。
コメントは外史の作り手たちの心の安らぎ場です。

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2011-08-08 20:06:03 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3272   閲覧ユーザー数:2822

※※※

 

一刀たちが船に向かう少し前、雛里ちゃんが記憶を失った旅館では……

 

「こ、この女の子を連れてさっさとここを出てけ!」

 

寝薬が入った水を飲んだ雛里ちゃんは、何も知らないまま旅館のおじさんの手から江賊の者の手に渡された。

この辺りの旅館は賊とある契約を結んでいた。

つまり、旅館で泊まる幼い娘や綺麗な女があると、彼女らを誘拐し江賊たちが来る度に渡したら、自分たちの旅館が集まっているこの場所を荒らさない、というものであった。

賊の手に堕ちた女たちはそのまま賊たちの慰み者にされるか、上玉だとどこかに奴隷で売り付けられる。

それを知っている上も、彼らはこんなことに強力していた。

自分たちの財産を守るために、彼らは何の関係もない女や娘たちを誘拐し、江賊たちに捧げているのだ

 

「へへー、今回は中々上玉じゃねーか。次も頼むぜ」

「おい、あの鞄も持っていこーぜ」

「アーン?鞄なんて要るかよ」

「阿呆、こんな鞄見たことあるかよ。下に車輪までついたるで。きっとどっかの金持ちな奴の趣味だろ」

「この小娘、もしかしてどっかの嬢ちゃんじゃね?」

「さー、取り敢えずこれも持っていくか」

 

一刀の鞄も、賊の目に入ってそのまま持って行かれる

 

「っ……!!」

「……おい、その顔はなんだてめー」

「な、何だ、もう用は済んだだろ。ならさっさと……」

 

その時、雛里を受け取った賊の脚が旅館のおじさんの鳩尾に直撃する。

 

「ぐふっ!」

「調子のるんじゃねーぜ、おい。俺たちの気に障りゃ、契約もへったくれもこの旅館もあっという間に燃やしてくれるからよ。もちろん、お前も一緖にな」

「うぅぅ……っ!」

「おい、もう行こうぜ」

「ふん!次も頼むぜ。次はこんな子供より美女さんで頼むよ。巨乳な奴でな。げへへーー!」

 

江賊たちは卑劣な笑いをしながら旅館を出て行った。

 

「く……っそ……」

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

「……(雛里お姉さん!)」

 

一方、どこに行っても一刀たちを探せなかった真理は、外が騒がしくなった原因を知って旅館に戻ろうとしていた。

だけど、雛里とあと一刀さんの鞄を持って旅館を出る賊たちを見た時、体が凍ったように止まってしまった。

 

「(雛里お姉さん……私が一緖に居たら……)」

 

でも、自分で何が出来るか。

例え自分が旅館の中に居たところで何も変わらなかっただろう。

雛里を助けることもできないし、それ以前に今でも怖すぎて一歩も動けなかった。

自分は人の目に気づかれにくいから捕まらないものの、これからどうすればいいのか。

一刀たちを探すとしても、時間が少なかった。

 

「……今は、取り敢えず雛里お姉さんに付いて行こう」

 

とにかく、一刀もない今、雛里を見逃してはどうにもならない、そう思った真理は賊たちの後を追うのであった。

 

 

 

 

一刀SIDE

 

 

「!!」

 

僕と倉が賊たちの後を追った先には奴らの船がある場所だった。

船は全部で三隻。もう船には他の奴らは全部乗ったのか出港しようとしていた。

 

「おい、俺たちを待てー!」

「早く来い!大将もない今鈴の音に会ったら全滅だ!」

 

僕たちにやられた賊たちも急いで船に乗っかけた。

 

「…一刀、追わない?」

「………」

 

船の中にのっかけたらこっちが不利だ。

船の中は奴らの縄張りだし、僕も思うままに戦うことができない。

最も理由はわからないが街を離れようとする賊たちをこれ以上攻撃する理由もなかった。

 

「……!か、北郷さーん!倉ちゃーん!!」

「!」

 

そんな時に、他の街から真理ちゃんが走ってくるのが見えてきた。

 

「真理ちゃん!」

「せー……せー……北郷さん、大変です!」

「どうした。………雛里ちゃんは今どこに居る」

 

真理ちゃんが息を整えているその顔は真っ白だった。

走り過ぎたせいなのか、それとも僕の脳裏をよぎる不安な考えが当たってしまったせいなのか、知るには長い時間が経たなかった。

 

「ぜー……江賊たちが………旅館に居た雛里ちゃんを攫っていっちゃいましました」

「!!」

「一刀」

 

真理ちゃんの話を聞いた僕と倉ちゃんが振り向いた時は、既に船は残った江賊たちを乗せて港から離れつつあった。

 

「雛里ちゃん!!」

「ダメです!!」

 

長江に跳び込んで船を追いかけようとしたが、後から追いかけてきた長刀を持っていた黒髪の女の子が後から僕を捕まえた。

 

「この時期の長江は流れが激しいです!生身で跳び込んだら泳ぐ間もなくそのまま流されてしまいます!」

「放せ!」

「てわわ、北郷さん、その人の言う通りです。この時期の長江に生身で入るのは、一生長江近くで済んだ漁夫たちさえも絶対しないことなんです。落ちたら最後、そのまま溺れ死んじゃいます!」

「っっ!!うあああああーー!!」

 

雛里ちゃんが乗った江賊たちの船を追うことができなくなったことを知った僕は持っていた木刀を港の地面を叩いた。石でできている地面に木刀は刺さってしまうほど、僕の怒りは充満していた。

 

「……はぁ……はぁ…」

「……北郷さん」

「一刀……」

「…これで諦めると思うな……必ず…必ず取り返してみせる……絶対に」

 

雛里ちゃん、僕が行くまで無事に居てくれ。

 

 

??SIDE

 

「副頭!奴らが街から離れてきやす!」

「よーし、お前ら!今度こそ絶対に逃すな!鮫の巣まで追いつくぞ!」

「「「「アイアイサー!」」」」

 

我々は今、この街に白鮫江賊団の尻尾らが略奪をしているという話を聞いて奴らを追いかけてきた。

この一年、私は義賊団として長江を荒らす江賊たちを殲滅してきた。そして、多く存在していた江賊団もほぼ壊滅され、今長江で最も悪名の高い連中は白鮫江賊団、奴らのみとなった。

だが、奴らを殲滅することは中々難しかった。まず奴らの頭である、白鮫の居場所に未だ確認できない。どこか裏に隠れてこの頭の固い連中の頭脳として働いている奴がある。

そいつの頸を切り落とすまでは、いくら雑魚な連中倒したところで、江賊団の根を断つことはできない。

またもの問題があったが、それは白鮫の連中が持っている船だった。

連中の船は荊州の水軍の船を奪い取って改造したもので、私たちが持っている船よりも遙かな早さを持っていた。奴らの船を追いかけて、頭の居場所を知ろうとしてもいつも手遅れになってしまう。

ここ一ヶ月、白鮫江賊団だけを狙っていた私だったが、未だにに奴らの本拠地さえまるで知ることができなかった。

こうしていつまでも時間ばかり無駄に流していては、私が犯した罪を晴らすことなど……

 

「!!」

 

その時、私の目にある人の姿が見えた。

あ、あの方は……間違いない。

あの風貌、瞳!あの方の一族だ!

 

「お頭、どうするか。最近は水の流れが悪い。俺たちの小さな船じゃ、正直言ってこの流れでアイツらを追うのは厳しいぜ」

「……牙莎(がしぇ)」

「あぁ?」

「港に停泊する」

「は!?」

 

私の話を聞いた私の右腕、牙莎はあっけない顔で声を上げた。

 

「おい、おい、どうしたんだ、頭、いくら厳しい状況でも、諦めるのは貴様らしくもねー」

「そういうのではない。良いから早く船を港に停泊させろ」

「……まぁ、いい。じゃあこの船だけ港に付けて、他の連中は追うようにさせよう」

「…頼む」

 

牙莎は元は毒蛾江賊団という江賊団の頭だった。

元牙莎は、長江にいきなり賊が増える以前から動いていた江賊だった。略奪はするも、抵抗の無い女や娘には手を出さない、最小限の礼儀というものはある奴らだった。

それに比べこの白鮫といい、ここ一年で湧いてきたこの長江の虫どもは、人を遊びで殺し、女たちは慰み者にするか奴隷として売る下衆どもだ。

こんな奴らが頻繁に現れるようになったのに、荊州の劉表は奴らを殲滅する力はおろか、奴らに艦船を奪われる立場だ。

この世は一体どうなると言うのか……あの方が生きていらっしゃってるなら、こんなことなど起きていなかったというのに。

 

いや、こんな考えなど何の役にも立たん。

とにかく今は……

 

「お前ら!これより我等『鈴の音義賊団』の本船は港に停泊する!他の船はそのまま追いかけ続けろ!」

「「「「「アイアイサー!」」」」」

 

 

 

 

蓮華SIDE

 

「…あの、大丈夫なの?」

「…………」

 

江賊たちが港を去った後、明命と自分の連れたちに追いかけるのを止められた彼は、港の端に座って無言のまま船が去ってしまった方を眺めていた。

さっきまでの威風堂々だった姿はなく、その姿はすっかり消沈になっていた。

明命は彼と一緖に居た娘と一緖に、攫われたという娘が居たという旅館に向かっている。何か手がかりになるものがあればいいのだけれど…

 

「……お連れのことは、残念だったわ」

「…探す」

「………」

「何があっても必ず探しだす。僕の全てを賭けた。こんな始めから失ってたまったもんじゃない」

「……」

「………っ」

 

一度姿を消した江賊団を探しだすのは、ほぼ不可能に近い。

次現れるのを捕まえるとしても、その時にはもう前に捕まえた娘はどこかに売り付けるか殺した後だろう。

正直、一度奴らを見失った時点で、連れを探すことはほぼ不可能であった。

それをこの者も知っているのだろう。

 

「……っ!」

 

ポン!

 

彼が苛立ったようにそこにそこに転がっていた石をつかんで長江に投げると、石はまた跳ぶこともなくそのまま江に飲み込まれていった。

 

「そ、そういえば、さっき助けてくれてありがとうと言ってなかったわね」

「……」

 

それを聞いた彼は立ち上がって私の目を睨みつくように見た。

 

「マジで?その感謝の言葉がマジで今僕に慰みになると思って言ってるのか?」

「なっ」

「もしあの時僕がお前がそこで江賊たちに捕まってるのを助けなかったら、あの娘を助けられたかもしれないんだ」

「そ、それは……」

「………嫌、済まん。そうじゃない」

「え?」

 

一瞬申し訳ないように思っていた私は、彼の前言をひっくり返すような言葉に驚いた。

 

「人一人を助けるために他の人を見逃すなんてできたもんじゃない。そんなこと、あの娘も望まないし、僕だってあの時お前を見逃すことなんてできなかった。だから今の話は無しだ」

「え、えぇ……」

 

だが、言葉はそう言いながらも、彼の顔は決して優しいものではなかった。

やっぱり、あの時私を助けていたせいで、連れを救えなかったことを恨んでいるのかしら。

 

「その……私の名は…」

「孫権だろ、知ってる」

「!」

 

どうして、私の名を…!

 

「その髪、その瞳の色は明らかに孫家のもの。孫策の妹、孫策の年を外見で推測するに孫尚香ならまだ幼いからお前は孫権だ。そうだろ?」

「…どうして…」

 

しかも、小蓮の名前まで。

姉さまはともかく小蓮も私もは今まで一度も表舞台出たことがない。名前も知られていない。

なのに、この男はどうして私の名前を知っているの?ますますわからない男よ。

 

「その口だと…姉さまに会ったことがあるの?」

「……ああ、ある…」

「姉さまは今どうしてるの?よかったら教えてもらえるかしら」

「…三ヶ月前に会った。僕が知ってる限りは、昔と変わったことはないだろう。そのまま、誇り高き孫家の指導者の姿だった」

「……そう」

 

姉さまも頑張っていらっしゃるのね。

 

「……お前は自分の姉のことをどう思う?」

「え?どう思うって?」

「………」

「…姉さまは私や小蓮と違って幼い時から母と一緖に戦場で育ったわ。姉さまは今バラバラになった孫家を建て直せる唯一な人。そして過去からの孫呉の宿願を叶うことができる人よ」

 

そう、私が思うの姉さまはそんな人。

だけど、

 

「……あくまでも自分たちの名誉のためか」

「え?」

 

彼が再び振り向いた時、私は気づいた。

彼のその憤怒に満ちた顔は、今日この場で私へ感じた怒りでなく、

もっと昔の、そしてもっと深い怒りだということを。

 

「…あなた、姉さまとはどうやって知り合ったの?」

「………」

 

チリーン!

 

その時だった。

 

 

 

一刀SIDE

 

 

孫策の妹、孫権。

語るに足らずだった。

所詮は彼女も散った孫家の過去の名誉に取り憑かれて、他のものは見ずに自分たちのものばかりを見て他人を傷つける偽善者だ。

百合さんが孫策とは違って孫権には高い評価をあげていて期待していたが……結局は自分の姉に外見で立派な姿だけを憧れる少女に過ぎない。

彼女もまた、人を殺すことに何の違和感も待たない人間に成長していくだろう。

 

チリーン

 

「!」

 

何だ?

 

タッ!

 

振り向いた先には港に着地した女の姿があった。

女のもった剣についてある鈴からの音だったか。

 

「っ!」

 

その時、僕はいつの間に港近くまで近づいているもう一つの江賊団の船に気づいた。

 

「孫権!」

「ふえっ?ああっ!」

 

僕は孫権を前に立って女の前に木刀を構えた。

 

「何者だ!江賊ならもう売り切れだ。さっさと失せろ」

「…邪魔だ、退け」

「!!」

 

チリーン!

 

ガチン!

 

「っ!!」

 

早い!

 

「ふん!」

「っ!」

 

力で押し出すと、相手は一度下がってはまた素早いスピード仕掛けてきた。

 

ガチン!

 

「……二度も塞ぐか。私の鈴の音を聞いて立っていた奴は牙莎以来に初めてだ」

「…そうか、思い出した」

「何?」

 

鈴の音。

 

「お前、甘寧だろ」

「!!」

 

僕の予想が当たったのか相手は一瞬隙を見せた。

 

「せあっ!」

「ちっ!」

 

が、隙と思った突いた木刀の先に既に相手はなく、奴はさっきより何歩下がったところで構えを降ろして立った。

 

「貴様、どうして私の名前を知っている」

「それが重要か」

 

三国志で長江辺りで鈴の音を鳴らす奴と言ったら甘寧しかないだろ、というわけにもいかないしな。

 

「重要かどうかの問題じゃない……そこを退け。私はその方に用がある」

「そういうことなら……」

 

「あーーほーーかーーーー!」

「!」

 

その時、突然空から甘寧に向かって飛び降りてくる奴がいた。(正確にはその間港に停泊した船からだが)

甘寧はあっさりと避けたが、着地した男は更に拳で甘寧の後頭部を狙った。

でも、それもまた呼んでいたのか甘寧もその拳の移動線から頭を伏せてから男の中心軸を崩すつもりで脚を狙う。

が、更にそれも呼んでいた男は見事ジャンプ。同時に剣を抜いて下から男の頸を狙うように動く甘寧の曲刀を塞いだ。

 

なんと見事じゃな茶番…といいたいところだがあっという間に起きたその光景に、僕も孫権も口が閉じなかった。

 

「貴様…いきなり何をする」

「こっちのセリフだ、思春!突然船から降りると思えば、いきなり港の人間を狙うとはどういうつもりだ!」

「私はただ孫堅さまの肉親の方を見に来たまでだ。邪魔をするあいつの方が悪い」

「何?」

 

そしたら、男も甘寧も剣を降ろして僕たちの方、正確には孫堅の方を見た。

 

「え、えっと……どうやら…私に用事にあるみたいだけど……」

「……失礼致しました。私の名は甘寧、字は興覇。尊名をお聞きしてもよろしいでしょうか」

「わ、私は孫権よ……あなたが言っている孫堅は、私の母でしょうね」

「孫権さま……」

 

孫権の名を聞いた甘寧はまた孫権の近くに来て突然その場に土下座をした。

 

「えっ!?ちょ、ちょっと、何をするの!?」

「孫権さま、この命、あなたに預けます」

「へっ!?」

「ちょっ、お前なにやってんだよ!」

 

わー、何か大変なことになってきた。

 

「取り込み中みたいだから、僕はもう行くぞ」

「ちょ、ちょっと待ちなさい、あなた。こんなところで私だけ置いていくつもり?!」

「僕はあまり関係ないようなのでな」

「あるとかないとか関係なくここにいなさい。お願いだから私だけ置いて行かないでー!」

「引っ張るな、おい!服伸びるだろ!」

「孫権さま!」

「思春、良いから取り敢えず立ってわかりやすく説明でもしろ。お嬢さんが困ってるだろ!」

「HA☆NA☆SE!」

「絶対いやー!」

 

あー、面倒くさいことになってきた。

 

 

 

雛里SIDE

 

 

「うん……うぅ……」

 

何……頭がすごく痛いです。

あれ?

 

「あわ…?…あれ?」

 

手が、動かない…え?あれ?…どうして?

 

「!!」

 

周りを見てみると、明らかに私がいた旅館ではありません。暗くて良くわかりませんが、ちょっとずつ揺れています。

…船?そう、これは船の揺れです。

 

「でも、どうして……あっ!」

 

少しずつ何があったか思い出します。

確か街では鐘が鳴っていました。

そして私が飲んだ水…あの水を飲んだ直後私は気を失いました。

 

「江賊………?」

 

私は、今江賊に捕まってその船の中にあるんです…!

 

「……!」

 

一瞬恐怖が心を占めします。

私はどうなってしまうんだろう。このまま江賊たちにつられて、どこかに売られるか、それとも……

 

「うぅ……うぅ!!」

 

考えるだけでも気が遠くなりそうです。

他の皆はどうなったんでしょう。

倉ちゃんに真理ちゃん……そして一刀さんまで……

ここに居るのは私一人だけ?

一刀さんは私がここに居るのを知ってるのでしょうか。

…私のことを助けてくれるのでしょうか。

 

「一刀さん……怖いです……」

 

怖くてもう涙が瞼から落ちこぼれる寸前です。

 

 

 

 

 

 

「大丈夫?」

 

だけど、その時、優しい女の人の声が聞こえました。

 

「!」

「大丈夫よ。私も貴女と同じなの。捕まってここに来たの」

「だ、誰ですか?」

「私は……あ、それよりも取り敢えず、手の縄を解きましょう」

 

そして柔らかな手が私の縛られてる手を解いてくれました。

 

「あ、ありがとうございます」

「……あなたも港で捕まってきたの?」

「良くわかりません…私は旅館の中に居たのに……いつの間にかここに…」

「…どうやらその旅館は、裏で賊と契約をしていたみたいね」

「へ?」

「女の子を捕まえて渡すと、旅館を荒らさないとか……そんな約束をしていたのでしょう」

「そんな…!」

 

旅館のおじさんが江賊と内通していたなんて……!

でも、そうしたら私が鐘の音について聞いた時、あのように答えたことも納得がいきます。

私を安心させて、薬を入れた水を部屋に用意しておいて、私が水を飲んで眠ってしまうと、その間私を江賊たちに渡す。

 

「でも、どうしてあなたは縛られていなかったんですか?」

「え?…あぁ、縛られてたけど、何か縛ったのが緩かったの。だから……ね?」

「あ……なるほど……」

「…私も街で逃げ遅れてここに捕まってきたの。来る時は袋の中に入られてわからなかったけど、ここは多分、江賊たちの船の中でしょうね」

「……捕まったのは、私たち二人だけなのですか?」

「ここにはね。でも他のところにまだ居るかもしれないわ」

 

確かに……でも、私たちも捕まっている状態です。手は自由になったけど、何も出来ることがありません。

 

「あ、私は鳳統って言います。お姉さんの名前は何ですか?」

「え?私?……うん、私はね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左慈、左慈っていうの」

 

 


 
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