No.260554

ヒロシゲ

usamiさん

一応秘封倶楽部の二次創作。
過去作に手を加えて多少違和感無くしたもの。

2011-08-05 18:21:19 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:466   閲覧ユーザー数:462

———ごとん、ごとんと。何処か心地よい振動に身を任せ、少女二人は東京へと向かう。

窓から見える景色は、とても綺麗な、青くて白い富士山が映っていて。

周りには、木々が秋を知らせるように葉を紅く染めていた。

 

「…しかし、どうしてこう、乗り物の振動というのは心地よいものなのかしら」

 

黒髪の少女が、窓際に肘をつけて、手のひらに顔を乗せながら窓に映る景色を眺めてそう一言。

 

「…さぁてね。まだ生まれる前、母親の胎内に居た時と同じ感じがするからじゃないの?」

「そう言われると納得できそうで微妙に納得できないわね」

「ま、そんな考える必要も無いんじゃなくて?」

「…それもそうね」

 

窓から映る景色は、ずっと変わらずに富士山を映し出している。

この景色は、本当の景色ではない。カレイドスクリーンに映った模作…模作の富士山。

何時か見た本物の富士山は、こんなに綺麗ではなく少し暈けているように見えた。

それは空気が汚れているからだろうか、それとも富士山自体が汚れてしまったのか。

…そんな事を、黒髪の少女は思う。

 

「…この富士山も綺麗な事は綺麗だけど、ずっと変わらないと見飽きるわね」

「だからと言って本物を見る気になるの?」

「ならないわね」

 

ごとん、ごとんと。その心地の良い振動に身を任せ、少女二人は目的地に到着するのを待つ。

 

「後、何分位で着くかしらね」

「そうね…53分で到着するから…もう20分位は経ってるはず…」

「後30分ってところ?」

「ぐらいじゃない?」

「やれやれ。その30分もの間、暇な時間が続くわけね」

「それって、私が話し相手じゃつまらないって事?」

「別にそう言うわけじゃないけど」

 

黒髪の少女はぐっと背伸びをして、立ち上がる。

 

「んー…」

「どうかした?」

「暇だから飲み物でも買ってくる。何か要る?」

「そうね…缶コーヒーがいいかしら」

「じゃ、お金頂戴」

「ツケにしといて」

「…嫌な友人を持ったものだわ。我ながら」

 

プシューという、空気が抜けるような音がして扉が開く。

どことなくレトロな雰囲気を醸し出しているこの列車だが、中身は中々高性能らしい。

53分で京都-東京間を走れるが、実際はもっと走れるとの事。

だけど、あえて53分で着くように調節されているのは、何か意味があるのだろう。

 

「…しかし、53分も同じ景色を見せられるというのは、どうもねぇ」

 

プシューという音がして、扉から二つの缶を持って現れる黒髪の少女。

 

「ほら、買ってきたわよ」

「ありがと」

「ちゃんと後で払いなさいよ」

 

金髪の少女の横に再び座ると、缶のプルタブに爪を引っかけて開ける。

くっと一口飲んで、ため息まじりに一言。

 

「あーあ…暇ね」

「じゃあ今回の活動予定でも話し合う?」

「もう十分話し合ったじゃない」

「…ま、それもそうね」

 

沈黙。金髪の少女も、プルタブに爪を引っかけて開ける。

カシュ、という音が、ごとん、ごとんと鳴る車両の中に響いた。

 

 

 

 

 

「…」

「…」

「…」

「…?」

 

ふと、横を見ると、黒髪の少女は目をつむっていた。

この心地よい振動にやられたのか。暇にやられたのか。

少女は、静かな寝息を立てて眠っていた。

 

「…ま、後30分もあるんだし、いっか」

 

———ごとん、ごとんと、ヒロシゲは走り続ける。

 

 

 

 

 

「さて。蓮子。そろそろ起きる時間よ」

「ん…もう着いたの?」

「そろそろ着くから、起きてもらってた方が色々と楽なの」

「そ。…しかし、大学生になって二回目の東京、か」

 

カレイドスクリーンに映った富士は段々と小さくなり、周りが暗くなっていく。

旅の終わりを告げるかのように、窓の景色に文字が映る。

 

「やれやれ…長い時間座ってると腰が痛いわ」

「爺臭いわねぇ。蓮子ったら」

 

ヒロシゲが止まったのを確認すると、二人は立ち上がり出口に向かう。

二人が出た後、何分後かにピリリリリリリという音を立てて、ヒロシゲは再び走り始める。

 

「さて。とりあえずは私の実家に行きますか」

「その後、秘封倶楽部の活動って訳ね」

「2泊3日の楽しい倶楽部活動よ」

「個人的にはあまり気が乗らないんだけどなぁ」

「ま、我が家だと思ってくつろげば良いわ」

「そっちじゃないて、活動。まぁ、いいわ。行きましょうか」

「ええ、行きましょう。メリー」

 

二人は、舗装された道をゆっくりと歩み始める。


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
0
0

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択