No.254798

C80新刊情報【文月堂 フ-24a】

藤杜錬さん

コミックマーケット80の新刊のサンプルです。
東方Projectの現代学園物二次創作の小説です。
レミリアの誘いで避暑に出かけた映姫と優曇華達生徒会のメンバーの話になります。
とらのあなで委託をお願いしています。
http://www.toranoana.jp/mailorder/article/04/0020/02/06/040020020691.html

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2011-08-02 08:02:24 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1145   閲覧ユーザー数:979

 

 花映映学園に転校生として、レミリア・スカーレット達がやってきた事により始まった騒動を現生徒会長である四季映姫が無事収めるという転覆騒動があってから、しばらくたったある日の事である。

 学園に平穏が戻ってきたと思われていた、そんなとある休日の事である。

 とある洋室の一角。

 窓際で外の景色を見ながら一人の少女がティーカップに口を付けた。

「咲夜、例の準備はできたのかしら?」

「ええ、できております……。ですが、お嬢様、本当にやるのですか?」

 どこか迷いのある面持ちでそう聞き返した十六夜咲夜に、レミリア・スカーレットは手に持っていたティーカップを置いた。

「当然よ。私があのまま引き下がるわけにはいかないのよ」

「御意、それでしたら準備万端整えましょう、お嬢様」

「そうね、夏の休みが楽しみだわ、見てなさい四季映姫……」

窓の外に見える、花映学園の校舎を望みながらレミリア・スカーレットの哄笑が響くのだった。

 

 §§§§§§§§§§§§§§§§

 

 季節は梅雨。

 連日気の重くなるような天気が続いていた。

「こう毎日雨が続くとなんだかやる気がなくなるよね……」

 生徒会室で机に突っ伏しながら窓の外を眺める仙優曇華院は心の底からやる気のない声を上げる。

「そうだねー、こんな時はぱーっと晴れた空の下で清々しい空気に当たりたくなるわよね……」

 普段はもっときりっとしているアリス・マーガトロイドも毎日降り続く雨に日ほとほと気が滅入っている様子だった。

「アリスがそんな感じって事は相当だよねー」

 面倒くさそうに見る方向を変えた優曇華院が、アリスの事を見る。

「なによそれ、私がこいう事を言うのがそんなにおかしい?」

「いやそうじゃなくて、アリスがそうやって、愚痴っぽく言うのって珍しいなって思って」

「言われてみればそうね……。でもこう毎日じめじめじめじめじゃ、私じゃなくても愚痴りたくもなるってものよ」

「そうだねー、早く梅雨明けして欲しいね。梅雨明けしたらすぐ夏休みなのに」

 二人の会話を脇で聞いていた因幡てゐがすかさずそれに合いの手を入れた。

「でもその前に期末テストだよね、鈴仙は大丈夫?」

「……あ……」

 てゐのその言葉に思わず優曇華院は動きが止まる。

「私は大丈夫だし、アリスも大丈夫だよね。でも鈴仙はどうかなー?」

「あ、あはは……、な、何とかなるよ、多分…」

 乾いた笑いを浮かべる優曇華院にてゐは更に追い打ちの言葉を投げかけた。

「何とかなると良いよね。高校二年の夏休みは一回しか来ないんだから」

「そ、そうだね……」

「慧音先生に聞いたけど、赤点三つあると夏休みの間特別補習だって」

「そ、それは避けたい……って私はそこまで成績悪くないよー」

 現実に立ち返り、自分の成績のを思い出した。

「ま、そう言うことにしておくねー」

 そんな二人のやりとりを見ながらやれやれという感じで、窓の外の雲をアリスは眺めながら小さく呟いた。

「本当、早く夏になって欲しいな……」

「そうだね。でも夏になったら夏になった、暑いよね」

 優曇華院はウンザリとした声でアリスと一緒に窓の外を眺めた。

「あの流れる雲のように涼しい場所で避暑でも出来ればいいよね」

 流れる雲を見ながら優曇華院は呟く。

「そうね……、生徒会で涼しい高原にでも避暑がてら遊びに行けたら楽しいかもね」

「アリス、それ名案!! ねぇ、アリスそう言う合宿ってどうだろう」

 優曇華院は映姫に夏休みの合宿を提案するが、アリスから返ってきた答えは期待とは反する物であった。

「あのね。何処にそんな予算があるというのよ。確かにそんな合宿できればいいとは思うけど……」

「だよねぇ、やっぱり無理か……」

 優曇華院とアリス、二人とも揃ってため息をついた。

 生徒会室でそんなやりとりが行われていたのを四季映姫は部屋の外で、職員室へと向かう途中に聞いていた。

「なるほど……、合宿ですか。確かに出来ればいいですね」

 小さくそう呟きながら廊下を歩いていき、映姫は職員室へと入っていき用事を済ませたのだった。

「失礼しました」

 それからしばらくして職員室での用事を済ませると映姫は挨拶をして職員室を出てきた

 十六夜咲夜は職員室の前の廊下でずっと寄りかかりながら、そんな映姫が出てくるのを待っていた。

 職員室を挨拶をしながら出てきた映姫の姿を認めると、咲夜は身体を起こしてゆっくりと近づいていった。

「生徒会長、ちょっと良いかしら?」

「あなたは……咲夜さんでしたね?何の用かしら?」

「大した事ではないですよ。先日の文化祭の一件でお嬢様があなたに話があるとのことで、私はその事を伝えに来ただけです」

「私に話を?」

「ええ、お嬢様なりに何かしら、想う所があった様で、私はその様に伝える様に言われて参りました」

 どこかこちらの事を見透かしているような小さな笑みを浮かべる咲夜の言葉に映姫は警戒したが、わざわざ断る理由もなかった為にその申し出を受ける事にした。

「判りました、行きましょう。どのような用事か少し気にもなりますしね」

「そうですか、そう言って貰えると助かりますわ。ではこちらへ」

 咲夜はやんわりとした笑みを浮かべると歩き始め映姫もそれに続いたのだった。

 

 §§§§§§§§§§§§§§§§

 

「良く来たわね、映姫」

 咲夜に案内されてやって来た映姫に尊大な姿勢でレミリアが挨拶をする。

 その不遜な挨拶に、映姫はため息混じりの乾いた笑みで返した。

「相変わらずですね、あなたは……」

 映姫の言葉にレミリアは何故か勝ち誇った笑みを浮かべる。

「それで、今日はどのような用件なのでしょうか?あなたが私の事を呼び出した事に私は不安しか覚えないのですが」

 不安げに映姫に聞かれたレミリアは、ぱたぱたと手を振って堅くなるなとジェスチャーをしながら答える。

「まぁまぁ、別に悪さしようっていうのではないのよ。だからそんなに堅くならないで」

 口元に悪戯っぽい笑みを浮かべながらレミリアは言葉を続ける。

「先日の文化祭で迷惑を掛けてしまったお詫びに、我がスカーレット家が生徒会の人達を別荘に招待しようと思ってね」

「別荘、ですか?」

 唐突に出てきた言葉に訝しげに映姫が聞き返す。

「ええ、そうよ。何かおかしいかしら?ささやかなお詫びのつもりなのだけど」

「…………」

 黙ってレミリアの事を見つめる映姫にレミリアは構わず話し続ける。

「そんなに疑わしそうな目で見ないでくれる?生徒会の人達に骨休めして貰おうと思っただけよ」

 しばらくレミリアの言葉を計りかねていた映姫だったが、先程生徒会室であった会話の事を思い出した。

「避暑……、出来るのならばいいですね。丁度良い合宿にもなりそうですし」

 ぽつりと映姫の口から出たその小さな呟きをレミリアは聞き逃さなかった。

「避暑?良いじゃない。私の別荘は涼しい高原にあるのよ。涼みに行くのにはもってこいよ」

 その言葉にピクンと映姫の眉が反応する。

「何を……、企んでいるのですか?」

「何をって、企んでなんていないわよ。いい加減私の事を信じなさいよ」

 レミリアのその怒った顔を見て映姫は流石に悪い気になり困った表情を浮かべた。

 その困った顔を見たレミリアはここぞとばかりに視線を伏せてそのまま手を当ててみせる。

 その行動に映姫は困って頭を掻いてこう言った。

「わかりました、折角ですしレミリアさんの厚意は受け取らせて頂きたいのですが、他の仲間にも聞いてみないといけませんので今は保留ということで良いでしょうか?」

 映姫のその言葉で今までの表情から一転、レミリアは笑みを浮かべた。

「ええ、構わないわよ。それじゃあ良い返事が来るのを待っているわね」

「では話はこれだけのようですから、私は失礼します」

 そう言って映姫は踵を返した。

 部屋を出ながら、何故か不安な気持ちを映姫は抑える事が出来なかった。

『何か、こう乗せられた気がしないでもないわね……。でもああ言った以上皆にはからない訳にはいかないわよね』

 映姫は心の中でそう呟きながら廊下を歩いていった。

 その去っていった映姫の姿を見ながら咲夜は教室へと入る。

「お嬢様うまくいったようですね」

 部屋の中で口元に笑みを浮かべるレミリアを見て咲夜がほっと胸をなで下ろす。

「ええ、まだ明確な答えが得られた訳ではないけど、多分あの様子なら……」

 レミリアは嬉しそうに咲夜にそう言った。

「それでは私はこれから映姫達が来ると言うこと前提で、かねてから決めていた通り彼女達に今回の事を伝えて参ります」

 咲夜はそう言って、レミリアに小さく一礼すると教室を後にしたのだった。

 廊下に出た咲夜は、どこから行くか思案する。

「やはり、魔理沙から行くのが妥当かしらね、こういうのは……」

 呟いて小さく頷くとゆっくり廊下を歩き始めた。

 

 §§§§§§§§§§§§§§§§

 

「魔理沙いるかしら?」

 教室の扉をガラッと開けて、中にいるだろう霧雨魔理沙に声を掛けた。

「私ならここだよ。一体何の用だ?」

 予想もしていなかった咲夜の登場に魔理沙は訝しげな声を上げる。

「あら?天子さんもいたのね、コレは好都合」

 魔理沙と一緒にいる事が多いパチュリー・ノーレッジだけではなく、珍しく比那名居天子が一緒にいた事に咲夜は驚きの声を上げる。

「なによ、私がいちゃまずいっていうの?」

 咲夜の言葉に、先程までパチュリーと話していた天子が咲夜にくってかかる。

「別にそう言う訳ではありませんよ。むしろ一緒の方が私としても手間が省けて助かります」

 咲夜の言葉にパチュリーが耳聡く聞き返す。

「その様子だと、何かたくらみ事でもあるのかしら?」

 その言葉に咲夜は笑みを浮かべて返す。

「そうね、たくらみ事と言えばたくらみ事かもしれないわ」

 魔理沙はその『たくらみ事』という言葉にピクンと反応し、その瞳を輝かせる。

「なんか面白そうな事でもありそうだな。良ければ私にも話を聞かせてくれないか?」

 魔理沙がそう言ったのを聞いて、天子も慌てて声を上げる。

「わ、私もそうじゃないかと思ったのよ。だからさっさと何の用件だったのか話しなさい」

 何故か尊大な命令口調になった天子に対し咲夜は思わず小さくため息をついた。

「あなた達にまどろっこしい話をしても意味がないわね。率直に聞く事にするわ。あなた達、高原の別荘に行ってみたくない?」

「「「………ハァ?」」」

 唐突に聞かれた内容の意図が計りきれずに思わず聞かれた三人は間抜けな声を上げたのだった。

「ああ、余りにストレートすぎたわね」

「ストレートというか、本質を突きすぎてて、何も伝わらないパターンよ、それ」

 呆れてパチュリーが咲夜の言葉を補足する。

「そうだそうだ、主語も何もなく、いきなりそれだけ言われてもわからないぜ」

 パチュリーに続いて魔理沙がそう言ったのを聞いて、顔にこそ出してはいなかったがひょっとして自分だけ判らなかったのではないかとドキドキしていた天子も内心ほっとしながら声を上げる。

「そ、そうよ、それだけじゃ何も判らないわよ。ちゃんと説明しなさいよ、ちゃんとっ!!」

 天子はそう勢い込んだ。

 やれやれと魔理沙と天子の事を見た咲夜は説明を始める。

「判りました、実は先程レミリアお嬢様と映姫さんでこのような話がありまして」

 そう切り出して、先程の映姫とレミリアの話し合いであった事だけを説明した。

「なるほどな、つまりその生徒会の面々を誘った別荘に私達も一緒に誘ってくれるって事か」

「そう言う事です」

「面白そうじゃない。何より避暑地で涼しく過ごせるというのは気に入ったわ」

 天子がまず最初にその誘いに興味を示した。

「ええ、かなり景色も良いところですので、気に入って貰えると思いますよ」

 かなりその気になっている天子に咲夜が更に言葉を掛ける。

「話は判ったわ」

「じゃあパチュリーさんも来て貰えますか?」

「判ったけど、何で私達に声を掛けるのかが判らないわ。ねぇ、魔理沙?」

「だな。何で私達に声を掛けたのか、その説明は貰いたいな」

 魔理沙とパチュリーに追求されて、両手を上げて咲夜は説明を始めた。

「別にそんな難しい事ではないですよ。生徒会の書記のアリスさんは魔理沙さんとパチュリーさんと幼馴染みで仲が良いのでしたよね?だからお二人を誘わないと申し訳ないと思ったのですよ」

 咲夜のその話を脇で聞いていた天子が服を引っ張って注意を惹いた。

「その二人を誘った理由はわかったわ。じゃあ私の事は何で誘ったの?」

 その天子の質問に咲夜はにっこりと笑みを浮かべて答える。

「それはですね、何となく、ですよ」

「な、何となく……」

「ええ、何となく、です」

 そのまるでおまけであるか様な言われ方に流石の天子もショックを受ける。

『流石に一緒に行けば何か騒動を起こしそうだからとは言えないですよね』

 咲夜は内心そんな事を考えながら、うなだれる天子の事を見た。

「それじゃ用件も伝えた事ですし、私はこれで失礼するわ。どうするか、考えておいてね」

 椅子から咲夜は立ち上がると三人に手を振って教室から出て行った。

 咲夜が教室から出て行くのを見送った三人は思わず顔を見合わせた。

「それで、魔理沙と……、天子はどうするの?」

 パチュリーは、途中若干言葉を濁らせながら二人に聞いた。

「どうって……、天子はどうするんだ?」

 ようやく先程の落ち込みから回復したらしい天子に魔理沙は聞いた。

「そうね……、おまけって辺りは気に入らないけど、面白そうだから私は行けるなら行ってみるつもりよ」

「なるほどな。私も行ってみたいと思ってた所だ」

 魔理沙と天子は示し合わせたような笑みを揃って浮かべる。

 二人のその笑みを見てパチュリーはやれやれとため息をついた。

「行くのは良いけど、さっきの話ちゃんと聞いてた?生徒会の面々が行くならって事なの判ってる?」

「ああ、それなら大丈夫だぜ。もし行かないようなら行くように仕向ければ良いだけじゃないか」

 パチュリーの心配など意にも介さず、にかっと魔理沙は笑みを浮かべてそう言った。

「そう言えばあなた達の事だもの、そうなるのは至極当たり前ね」

 少し考えれば判る事に思い至らなかった事にパチュリーは自分でも驚いた。

「そういう事だ」

「そういう事よ」

 魔理沙と天子は異口同音にそう言ったのだった。

 

To be continued…

 

 
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