No.253312

邂逅

秋野さん

かつてセオドールと名付けられた少年とルビカンテの出逢い。

2011-08-01 19:22:52 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:560   閲覧ユーザー数:542

息を切らせて森の中を駆ける。

これなら勝てると踏んで、強めの魔法を連発したのはまずかった。

魔物は甲高い声で仲間を呼び、矢のようにこちらの小さい影を追ってくる。

 

走りながら後ろを振り返った。

……まだ、距離はある。

どこかで呼吸さえ整えられれば、勝てるかもしれない。

そう頭では思いながらも、まだ幼さの残る体は限界が近いようで

体中が脈打ち、口も鼻も空気を求めてあえぐ事しかできない。

 

「……っ!」

一息大きく息を吸おうとしたとき、大きな根に足下を奪われた。

 

そのまま走った勢いで前のめりに何回か転がる。

勝利を確信したのか、仲間を呼ぶのとは違う声で、魔物が何かを叫んだ。

 

その、刹那。

 

何もない筈の地面から炎が吹き上がり、群れごと魔物を焼き払った。

紅いマントが目の前で揺れる。

 

――命拾いしたな、小僧。

小さな魔導師は立ち上がると、その男を見上げた。


 
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