No.240990

上条「救われぬ者に救いの手を」後編

SSSさん

後編です。

2011-07-28 19:45:54 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:4961   閲覧ユーザー数:4890

イン「あれ? とうま、そんあところで何を―――」

 

上条「イ、インデックス?」

 

五和「か、上条さんの下にいるのは……女の人ですか?」

 

神裂「その声は五和!?」

 

五和「女教皇様!?」

 

上条(この状況は非常にマズイ。なんと説明すれば……)

 

イン「……………かおりと何してるのかな、とうま」

 

上条「え、えーっとですね」アセアセ

 

神裂「こ、これは……」

 

イン「分かってるんだよ。また、いつものなんだよね?」ニコリ

 

上条「『また』っていうところにツッコミたいが、理解してくれたならそれで……」

 

イン「理解するのと、納得するのは違うんだよ!!」グワ

 

上条「や、やめろ! 噛み付くのは―――」

 

イン「問答無用!!」ガブリ

 

上条「ぎゃああああああああっ!!」

 

五和「な、なぜ女教皇様がここにいらっしゃるんですか?」

 

神裂「あなたこそ、なぜこの子と?」

 

上条「そ、そうだよ! なんでインデックスがここにいるんだ!?」

 

イン「帰ってきただけで、その言い方は酷いかも!」

 

上条「ってことは、何か手がかりが掴めたのか?」

 

イン「手がかり……? なんのこと?」

 

上条「神裂が正体不明の術式を受けたから、その調査に行ったんだろ?」

 

五和「しょ、正体不明の術式……ですか?」

 

神裂「ええ。聖人としての力が失われてしまって」

 

五和「ええっ!?」

 

イン「かおりの受けた術式は調べる必要ないよ?」

 

上条「えっ?」

 

神裂「あ、あの……それでは、あなたは今までどちらに?」

 

イン「イギリスを旅行してきたんだよ」

 

上条「りょ、旅行!?」

 

五和「私は帰路の護衛として同行しました」

 

上条(なんだか話が良く分からなくなってきた)

 

神裂「も、もしや……」

 

イン「もとはるがとうまに説明するって言ってたんだけど」

 

 

上条「つ、土御門ォォォォォォ!!!」

 

 

土御門「呼んだかにゃー?」ガチャ

 

上条「お、お前なぁ……」ピクピク

 

神裂「こ、これは一体どういう……」

 

土御門「今から説明してやるぜい」

 

上条「納得のいく説明をしてもらえるんだろうな?」

 

土御門「そう怒るなよ、カミやん。いままでのぜーんぶウソってだけの話なんだから」

 

神裂「う、嘘?」

 

上条「土御門、ウソって何が?」

 

土御門「ねーちんが聖人の力を失ったこととか、魔術師に狙われてるってことかかにゃー」

 

上条・神裂「え?」

 

土御門「別にねーちんは聖人としての力を失ってないし、魔術師にも狙われてないんだぜい」

 

神裂「し、しかし、実際に……」

 

イン「かおりはすぐに力は取り戻せるんだよ」

 

上条「インデックスはこの術式を知ってるのか!?」

 

イン「うん。だって、調整したのは私なんだもん」

 

神裂「ええっ!?」

 

イン「こんな風にするとは聞いてなかったんだけどね」ジロ

 

土御門「にゃはははー」

 

五和「ど、どういうことですか?」

 

上条「いや、俺にもわからん」

 

土御門「分かりやすいように、順を追って説明してやるにゃー」

 

五和「あ、はい」

 

土御門「まず、禁書目録と共同して、天草式の『聖人崩し』を改良したのが、まず最初」

 

上条「聖人崩し?」

 

五和「ええと、簡単に言えば、聖人の特徴を失わせる術式ですね」

 

上条(偶像の理論とかいうのを乱すって言ってたやつか)

 

神裂「い、いつの間にそんなものを……」

 

五和「女教皇様がいなくなってから、色々と研究したんです」ハハハ

 

イン「改良したのは、持続時間の延長と、発動のタイミングの遅延の2つ。代わりに事前の準備にすごく時間がかかるようになっちゃったけど」

 

神裂「そ、それでは―――」

 

土御門「そう。ねーちんが喰らったのは、ただの起動術式だったんだぜい」

 

上条「うん、分からん」

 

土御門「要するに、リモコン爆弾をセットしておいて、後からスイッチを入れたってことだにゃー」

 

上条「リモコン爆弾って……敵が長い間近くにいたのに、気が付かなかったのか?」

 

神裂「いえ、その術式を放ったのは、敵ではなく……」

 

五和「教皇代理……ですか?」

 

土御門「ピンポーン。大正解だにゃー!」

 

上条「た、建宮!?」

 

土御門「天草式が散り散りになってるって、ねーちんに話したのも、建宮斎字ですたい」

 

神裂「お、おのれ、建宮斎字……」

 

土御門「そこまで下準備ができたら、そこからは俺の手回しだったんだぜい」

 

五和「どういう意味ですか?」

 

土御門「ここから先はちょっと回想で説明するにゃー」

 

――――

一日目 上条が帰宅する前

イン「うーん。ヒマかもー」

 

土御門「ちーっす。お邪魔するぜい」ガチャ

 

イン「はーい。あれ? もとはる? とうまならまだ帰ってきてないよ?」

 

土御門「今日は、カミやんに用事じゃないぜい」

 

イン「ってことは私?」

 

土御門「そうだ。もうすぐねーちんが来るから、例の術式が成功したかどうか見て欲しいんだにゃー」

 

イン「例のって、『聖人崩し』のことかな?」

 

土御門「ああ。力が出せないみたいだから多分成功してるとは思うが、カミやんの右手が効果があるかどうかがまだ怪しいからな」

 

イン「分かったんだよ」

 

土御門「そしたら、報酬のイギリス旅行を楽しんでくるといいにゃー」

 

イン「とうまは行かないの?」

 

土御門「カミやんは補習があるからにゃー。説明しておくから、楽しんでくるといいぜい」

 

イン「うん! で、誰が連れて行ってくれるのかな?」

 

土御門「ねーちんにステイルが同行してくる。ステイルと同行してもらうぜい。ただ……」チラ

 

イン「ん?」

 

土御門「時間が思ったより遅れている。確認したらすぐ出発になっちまうだろうにゃー」

 

イン「分かったんだよ」

 

~~~~

イン「まだかなー」

 

<ぴんぽーん

 

土御門「きたきた。はいはーいっと」ガチャ

 

神裂「あ、土御門ですか。あの子は―――」

 

土御門「奥にいるぜい。説明はしてあるから、見てもらうといい」

 

神裂「分かりました」

 

ステイル「やあ、土御門。僕はどうすればいいかな」

 

土御門「確認が終わったら、インデックスを連れてイギリスに引き返してもらうことになると思う」

 

ステイル「了解した」

 

神裂(やはり、この場での解決は厳しいですか……)

 

土御門「嬉しそうだにゃー」

 

ステイル「そ、そんなことはないよ?」

 

神裂「こちらはそれどころではないというのに……」

 

イン「いらっしゃい、かおり、ステイル」

 

ステイル「お邪魔してるよ。もっとも、僕はすぐ引き返すけどね」

 

神裂「お邪魔しています。それで、どうでしょうか?」

 

イン「…………うん。身体の構造が歪められてるんだよ。これじゃ偶像崇拝の恩恵は受けられないかも」

 

土御門「やっぱりかにゃー」

 

イン「魔術の痕跡も残ってないし、完璧なんだよ」

 

神裂「そ、そうですか……」

 

ステイル「それじゃ、行こうか」

 

イン「うん! じゃあ、またね。かおり」

 

神裂「え? あ、はい」

 

土御門「ステイル、しっかり頼むにゃー」

 

ステイル「言われなくとも」バタン

 

神裂「あの……彼らは一体どこへ?」

 

土御門「あれ~? ステイルのやつはねーちんに説明してなかったのか?」

 

神裂「説明ですか?」

 

土御門「この場で解決できる可能性が低いのは分かってただろ? 元々、現場に行って情報を収集する予定だったんですたい」

 

神裂「ああ、それで……」

 

土御門「まったく。ねーちんがぼやぼやしてるから、こんな面倒くさいことになったんだにゃー」

 

神裂「面目ない……」

 

土御門「それじゃ、準備を……」カチャカチャ

 

神裂「それで、あなたは何をしてるんですか?」

 

土御門「これか? 部屋に結界を張ってるんですたい」

 

神裂「結界ですか?」

 

土御門「カミやんの右手も厳しいだろうからな。そうなったら、ねーちんにはしばらくここに匿ってもらうことになるぜい」

 

神裂「ええっ!?」

 

土御門「この結界は、防音の効果がある。部屋自体を儀式場化するから魔力もいらない」

 

神裂「そ、それより匿ってもらうというのは―――」

 

―――

 

土御門「ってことが、カミやんの来る前にあったんですたい」

 

上条「」

 

上条「それにしちゃ、随分危ないイタズラだな」

 

土御門「危険なんて全然なかったぜい」

 

上条「何言ってるんだよ! 神裂がスキルアウトに襲われたじゃねえか!」

 

五和「そ、そうなんですか?」

 

神裂「は、はい。そこを当麻に助けていただいて……」

 

イン「とうまは相変わらずかも」

 

五和(下の名前で呼ぶ関係に!?)

 

土御門「あー、あれも余興だぜい」

 

上条「は?」

 

土御門「実は、あいつらは俺の所属してるグループのパシリだったんだにゃー」

 

神裂「なんっ!?」

 

土御門「名演技だったから、バイト代も弾んでやんだんだぜい」

 

上条「つ、土御門……」

 

五和「も、もしかして、女教皇様はここで寝泊りを?」

 

神裂「そ、そうです」

 

土御門「おかげで、カミやんといい関係になれたんだよにゃー?」ニヤニヤ

 

神裂「ううっ……」///

 

イン「とうま?」ギロ

 

上条「な、なんでこっち睨むんだよ!? 手は出してないぞ!」

 

土御門「いやー、禁書目録が今日帰ってくるのすっかり忘れてたぜい」

 

上条「オイ……」

 

土御門「もうちょっと楽しめそうだったのににゃー」

 

上条「しかし、結界なんて張ってたのか」

 

イン「この結界なら、外からの音も内からの音も完全に遮断されるね。でも……」

 

神裂「でも、なんでしょうか?」

 

イン「良く分からない部分があるんだよ。天井の4隅に違和感があるかも」

 

上条「4隅って……。オイ、土御門」

 

土御門「なんだ、カミやん」

 

上条「良く見るとカメラ見たいのがあるんですが」

 

五和「か、カメラって……」

 

土御門「良く気づいたにゃー。背景に同化するメタルギア的な試作機なんだぜい?」

 

上条「な、なんでそんなもんが!!」

 

土御門「学園都市は監視カメラが多いからにゃー。景観を壊さないように導入しようと―――」

 

上条「そういう意味じゃねえ!! なんで家に監視カメラなんて仕込んでるんだよ!!」

 

土御門「そんなの決まってるじゃないか」

 

神裂「お聞きしましょう」プルプル

 

土御門「面白そうだったから」

 

上条「土御門ォォォ!!」

 

土御門「だから、カミやんとねーちんがイチャイチャしてたのも知ってるんだぜい」

 

イン・五和「!?」

 

上条「お、落ち着け、インデックス!」

 

イン「覚悟はいいかな、とうま?」

 

上条「できてないから!」

 

イン「カミクダク!!」ゴシャァ

 

上条「ぎゃあああああああああっ!! 2回目ェェェ!?」ゴロゴロ

 

五和「教皇代理まで加担してたんですね……」ブツブツ

 

土御門「さっき、五和が来てると知ってもの凄い勢いで逃げたぜい」

 

五和「!! へえ、学園都市に来てたんですか……」ユラ

 

神裂「い、五和?」

 

五和「少し用事を思い出しましたので、行ってきますね」

 

神裂「あ、はい」

 

土御門(この子も意外に怖いにゃー)

 

五和「フフフ。逃げ切れると思ってるんでしょうかね」バタン

 

神裂「そ、それで、力を取り戻すにはどうすればいいんですか!」

 

土御門「はっはっは。そう簡単に教えると思って―――」

 

イン「魔術を使うか、術士、つまりさいじが解呪すればすぐなんだよ」

 

神裂「なるほど。これで土御門と建宮斎字にオシオキができますね」

 

土御門「ちょ、ちょっと待て、ねーちん!」

 

神裂「遺言をお聞きしましょう」

 

土御門「まだ、聖人の力を解放するべきじゃない」

 

上条「それはどういうことだ?」

 

神裂「時間稼ぎのつもりでしたら、お生憎ですが……」

 

土御門「今回のドッキリは、ねーちんの休暇ってことで最大主教から許可をもらってる」

 

神裂「勝手に人の休暇を……」

 

上条「それが何か関係あるのか?」

 

 

土御門「ああ。ねーちんに聖人の力が戻ったら休暇は終了だ」

 

 

神裂「え?」

 

土御門「それまではこの学園都市で過ごせる」

 

イン「効果の持続時間は10日前後だから、魔術を使わなければ、あと2~3日は普通の人なんだよ」

 

神裂「2~3日……」

 

土御門「その間はカミやんとイチャイチャできるにゃー」

 

神裂「つ、土御門!!」///

 

土御門「それで、ねーちんはどうするかにゃー?」

 

上条「神裂……」

 

土御門「選択肢は2つ。1つは、力を取り戻してイギリスに戻る。2つ目は、そのまま2~3日休暇を続ける」

 

神裂「そんなの決まってます!」

 

土御門「ま、そうだろうにゃー」

 

神裂「ううっ……」///

 

イン「私はどうすればいいのかな?」

 

土御門「禁書目録は、2~3日の間、五和と過ごしてもらう」

 

イン「はぁ……。そうなると思ったんだよ」

 

上条「あ、あれ? 意外に素直に言うこと聞くんだな」

 

土御門「だにゃー。てっきり、カミやんがアン○ンマンみたいに顔が欠けると思ったのに残念だぜい」

 

上条「おい……」

 

イン「私はここで駄々をこねるほど無粋じゃないんだよ!」プンプン

 

神裂「すみません……」

 

イン「謝ることじゃないんだよ? 2~3日だけなんだもん」

 

神裂「……はい」

 

上条(なんで神裂が謝ったんだろ?)

 

土御門「禁書目録は大人だにゃー。それじゃ五和を探しに行くぜい」

 

イン「うん! かおり、ゆっくりしていってね」

 

神裂「ありがとうございます」ペコ

 

 

―――

 

神裂「行ってしまいましたね」

 

上条「ったく土御門のやつは……」

 

神裂(また2人きり。緊張してきました……)

 

上条「神裂」

 

神裂「は、はいっ!」

 

上条「どうかしたのか?」

 

神裂「い、いえ! 別になんでも!」

 

上条「そうか?」

 

神裂「はい! お気になさらず!」

 

上条「なら、まず、カメラ取り外そうぜ」

 

神裂「あ、そうですね」

 

~~~

 

上条「5つも取り付けてやがったのか……」

 

神裂「始めから気づいていればよかったのですが……」

 

上条「気にすんなって。むしろ、土御門のイタズラでよかったじゃねえか」

 

神裂「え? あ、そ、そうですね」

 

上条「命の心配もなさそうだし」

 

神裂「あなたとこんな関係になれましたし……」/// ボソ

 

上条「う……」///

 

神裂「あ、その……」

 

上条「ええと……」

 

神裂「………………」

 

上条「………………」

 

神裂(また、沈黙の状態になってしまいました。き、気まずい……)

 

上条「……ははは」

 

神裂「どうしました?」

 

上条「いや、前はもっと自然に会話できてたような気がするのにな、と思ってさ」

 

神裂「そ、そうですね。今は、少し緊張してしまってますが」

 

上条「だったら、もっと楽にしてくれよ」

 

神裂「そ、そうは言われましても」ギクシャク

 

上条「まだ慣れてないから仕方ないのかね」

 

神裂「そんなこと言ってる割に、あなたは平気そうですよね」

 

上条「そ、そんなことないぞ! 今だって、すごく緊張してますし!」

 

神裂「そうみたいですね」

 

上条「もう2、3日しかいられないってのに、このままギクシャクして終わったらもったいない気がするんだよな」

 

神裂「それには同感ですが、こればかりはすぐに慣れるようなものでは……」

 

上条「そうだよなぁ……」

 

神裂「うーん……」

 

上条「何かいい案あるか?」

 

神裂「いえ、特には……」

 

上条「そうなると……そうだな。もう開き直るくらいしかないか」

 

神裂「開き直る……ですか?」

 

上条「う……。つまり、必要以上にくっついてれば、そのうち慣れるんじゃないだろうかとかそういう……」

 

神裂「そ、それはそうかもしれませんが」

 

上条「他にいい方法があればいいんだけどさ」

 

神裂「いえ、その……」

 

上条「その?」

 

神裂「いい案なんじゃないかと思います」ボソボソ

 

上条「そ、そうかな?」

 

 

神裂「ただ、そんなことを考えただけでドキドキするのに、実際にやられて耐えられるのかな、と……」

 

 

上条「ぐはっ!」

 

上条(そのセリフはクリティカルですよ……)

 

神裂「ど、どうかしましたか?」

 

上条「いや、神裂はかわいいなぁと思ってさ」

 

神裂「か、かわっ!?」

 

上条(うろたえてるのもいい……。狙ってるわけじゃないよな?)

 

神裂「それで、くっつくというのはどうやって?」

 

上条「え? ど、どうしようか……」

 

神裂「そこは考えてなかったのですね」

 

上条「し、仕方ないだろ! いっぱいいっぱいなんだから!」

 

神裂「そ、それでは……」

 

上条「お、何だ?」

 

神裂「さきほどの続きを……」

 

上条「続き?」

 

上条(続きって何だ? 何かしてたっけ? ええと……)

 

上条「って続き!? だ、抱きしめるってやつか!?」

 

神裂「ダメでしょうか?」

 

上条「いやいやいやいや、ダメじゃない! ダメじゃないけどさ!」

 

上条(それはそれでレベルが高いですよ! かといってここで引き下がる訳には)

 

上条「ええと……」

 

神裂「ど、どうぞ」

 

上条(ぐっ!? お、男は度胸!)

 

上条「こ、こうか?」ギュッ

 

神裂「ふぁ……」

 

上条(や、柔らかい! それにいい匂い! 身長差がちょっとばっか気になるけど!)

 

神裂(温かい……。それに力強い抱擁です)

 

上条「か、神裂さん?」

 

神裂「なんでしょうか?」ホワホワ

 

上条「これでよろしいでせうか?」

 

神裂「いえ、まだです……」ギュッ

 

上条「!?」

 

上条(神裂も腕を!? や、やばい。クラクラしてきた)ドキドキ

 

神裂「当麻の心臓の音が聞こえます」ドキドキ

 

上条「俺も聞こえるぞ。神裂の心臓の音」

 

神裂「ふふっ。どっちの方が早いでしょうかね?」

 

上条「さ、さあ? 同じくらいじゃないか?」

 

神裂「きっと私の方が早いと思いますよ」

 

上条「そうかな?」

 

神裂「もっと良く聞いてください」ギュッ

 

上条「うぁ……」

 

上条(もう、どっちの音だか分からなくなってきた……)

 

上条「そ、そろそろいいかな?」

 

神裂「ダメです」

 

上条「さいですか……」

 

上条(急に神裂が落ち着いてきてる!? こ、これが年上の余裕ってやつか!!)

 

神裂(もう、頭の中がぐるぐる回ってしまって良く分かりません。……今、何をしてたんでしたっけ?)

 

神裂「ふぁっ……」

 

上条「ぬぉぉぉ……」ゾクゾク

 

上条(耳元に吐息がッ!! すごく色っぽい!! そして、上条さんはいろいろとマズイ!!)

 

上条「か、神裂。離れてくれ!」グイ

 

神裂「嫌です」ギュ

 

上条「さっきから胸が!!」

 

神裂「構いません」

 

上条(だぁーっ!! どうすればいいんでしょうかーッ!!)

 

神裂「当麻……」ボソ

 

上条「は、はいっ!」

 

上条(耳元での囁きボイスの破壊力はものすごい! り、理性が……)

 

 

 

神裂「もっと……、もっと当麻の音を聞かせて下さい」ギュッ

 

 

 

上条(し、死ぬ!)

 

上条「こ、これで良く聞こえるか?」ギュッ

 

神裂「はい」

 

上条(こんなに力入れて大丈夫か?)

 

上条「痛くない?」

 

神裂「大丈夫です」ホワホワ

 

上条(顔が見えないから表情が見えない……。本当に無理してないだろうな?)

 

上条「…………………」ドキドキ

 

神裂「…………………」ドキドキ

 

上条(すごく汗かいてきた。つーか体が熱い)

 

上条「神裂。暑くない?」

 

神裂「はい。問題ありません」

 

上条「そうか」

 

神裂「当麻こそ大丈夫ですか?」

 

上条「え?」

 

神裂「少しフラフラしてるようですが」

 

上条「あ、ああ。頭に血が行き過ぎて」

 

神裂「それでは少し横になりましょうか」

 

上条「そ、そうだな」ホッ

 

上条(よ、よし。一旦離れて、落ち着こう……)

 

神裂「えい」グイッ

 

上条「え?」ドサッ

 

上条(そのままベットに押し倒されただとォォォ!?)

 

上条「か、神裂さん?」

 

神裂「はい?」

 

上条「離れてはいただけないのでせうか?」

 

神裂「それはダメです」ギュー

 

上条(これじゃ状況が悪化しただけなんじゃ!?)

 

神裂「まったく。当麻は私と離れたいのですか?」

 

上条「そ、そうじゃないけどさ!」

 

上条(この神裂は酔ってるのか!? さっきからおかしいぞ!!)

 

上条「ええっと……、神裂の顔が見たいなーとか?」

 

神裂「はい? 顔ですか?」スッ

 

上条「うぉっ!? すげえ真っ赤!!」

 

神裂「そうですか? 自分では良く分かりませんが」

 

上条(これは熱で暴走してるのか? 風邪とかじゃないよな?)

 

上条「とりあえず神裂は寝とけ」グイ

 

神裂「そうやって離れようという気ですね? そうはいきません」ガシッ

 

上条(ああ、もう! うれしいんだけどさ!)

 

神裂「それに、当麻も顔赤いじゃないですか」

 

上条「そりゃそうだろ! こんだけくっつかれてりゃ!」

 

神裂「でしたら、大人しく2人で横になってればいいじゃないですか」

 

上条「そうじゃなくてさ!」

 

神裂「いいんです」ギュッ

 

上条「そういう訳にも……」

 

神裂「そうですね……。でしたら、言うこと1つ聞いてくれたら離してあげます」

 

上条「本当か?」

 

神裂「はい」ニコ

 

上条(笑顔が近いっ!!)

 

上条「そ、それで何をすれば!」

 

神裂「簡単です。私を満足させてください」

 

上条「はいっ!? これで、まだ満足してないんですか!?」

 

神裂「まだ足りません」

 

上条「ひ、ヒントは?」

 

神裂「ありません。自力で頑張ってください」

 

上条(ど、どうしろって言うんだよ!)

 

上条「ええと……」

 

神裂「ギブアップですか?」

 

上条(考えろ! 神裂が満足しそうなものを……)

 

上条「神裂!」

 

神裂「はい?」

 

チュッ

 

神裂「!?」

 

上条「こ、これでどうだ……?」

 

神裂「」

 

上条「か、神裂……?」

 

神裂「ふぁ……」ドサ

 

上条「ええっ!? 神裂!?」グイ

 

上条(力が入ってない!? だ、大丈夫か!?)

 

神裂「すぅ……、すぅ……」

 

上条「あ。な、なんだ……。気絶しただけか」

 

上条(今のうちに離れよう……)

 

神裂「んぅっ……」zzz

 

上条「起き……てないな」

 

上条(しかし、ちょっとやりすぎた……というかやられすぎたな。こんな調子で残り2、3日もつか?)ポリポリ

 

神裂「すぅ……、すぅ……」

 

上条「でも、まあそういうのも悪くないか。……神裂と一緒だし」

 

共同生活8日目 早朝

 

上条「ふぁ……」

 

上条(ん? また大分早い時間に目が覚めたなぁ……)

 

上条「神裂はまだ起きてないか」

 

神裂「……」

 

上条(昨日の神裂は熱で暴走してたんだよな。うん。きっとそうに違いない)

 

上条「風邪引いたって訳じゃないよな?」ピト

 

神裂「……」ピクッ

 

上条「ん? やっぱり熱あるか?」

 

神裂「zzz」

 

上条「いや、気のせいだな」

 

神裂「……」ホッ

 

上条「……」

 

上条「しかし、こうやって改めて神裂見ると美人だよな」

 

神裂「!?」

 

上条「顔だけじゃなくてスタイルもいいし、その辺のモデルなんか比べ物にならないだろ」

 

神裂「///」

 

上条「そんな外見なのに中身は意外と初心っぽくてかわいいしな」

 

神裂(お、起きるタイミングを失ってしまいました)

 

上条「正直、上条さんにはもったいないくらいですよ」

 

神裂(そ、そんなことはありません! むしろ私の方が……)モジモジ

 

上条「家事も気配りもできるし」ウンウン

 

神裂(ぜ、全身がむずがゆい……)///

 

上条「それに……」チラ

 

神裂(ううう、まだあるんですか? う、うれしいですけれど)///

 

 

上条「寝たフリなんかしちゃって、こっそり聞いてるところなんかもかわいいしな」

 

 

神裂「う。気づいていたんですか?」

 

上条「そりゃまあ、あんだけモジモジしたり、顔真っ赤にしたりしてたら分かるって」ハハハ

 

神裂「そ、そうですか」シュン

 

上条「ん?」

 

神裂「からかっていただけなのですか?」

 

上条「い、いや……その……」

 

神裂(当麻があんなこと言うのは何かおかしいとは思いましたが―――)

 

 

上条「反応を見て楽しんでたのは謝るけど、口にした言葉は本当のことだけだから!」

 

 

神裂「―――ッ!」/// ボン

 

上条「あ」

 

神裂「そ、それはつまり……」

 

上条「ははは……。ウソはついてないけどさ」

 

神裂「///」

 

上条「そ、それはそうと、良く眠れたか?」

 

神裂「えっ!?」

 

神裂(そ、そういえば昨日……)

 

上条(ああっ!! し、しまったっ!? また墓穴を掘っちまった!?)

 

神裂「お、おかげさまで」///

 

上条「それはよかった」///

 

神裂「……」

 

上条「……」

 

神裂「い、いえ! あれは違うんです!」///

 

上条「な、なんだよ急に?」ビクッ

 

神裂「昨日のアレは、熱に浮かされておかしくなっていただけですから!」///

 

上条「な、なんだ。やっぱりそうだったのか」

 

神裂「……え? やっぱり?」

 

上条「明らかに様子がおかしかったから、そんなことなんじゃないかと思ってたんですよ」

 

神裂「そ、その通りですが……」

 

神裂(あっさり納得されるのも腑に落ちません)

 

上条「特に風邪引いてる訳でもなさそうだし、安心したよ」

 

神裂「し、しかし……」

 

上条「ん?」

 

 

神裂「すごく気持ちよかったのは本当です」///

 

 

上条「んなっ!?」///

 

神裂「そ、それに、こうやって少し緊張も解けてきた気がしますし!」

 

上条「そりゃそうかもしれないけどさ!」

 

上条(またあんなことされたら、冷静に対処できる自信がありませんよ!?)

 

神裂「で、ですから」

 

上条「う、うん」

 

神裂「また少しずつスキンシップを取るのもいいと思います」

 

上条「そ、それも……そうなのか?」

 

神裂「そうなんです」///

 

上条「でも、昨日のはレベル高すぎたからもうちょっと軽くな」ハハハ

 

神裂「そ、それもそうですね」

 

上条「じゃあ、そうだな……」

 

 

神裂「その前に……ゆ、『勇気』を分けてもらえませんか?」///

 

 

上条「ええっ!?」

 

上条(この流れでそれはレベル高くありませんかね!?)

 

神裂「だ、ダメでしょうか?」///

 

上条「だ、ダメじゃありません!」

 

上条(神裂さん的には、『キス<ハグ』なんでしょうかーっ!?)

 

神裂「そ、それでは……お、お願いします」ドキドキ

 

上条「うっ。い、いくぞ?」ドキドキ

 

神裂「ど、どうぞ」

 

上条(すごく緊張する……)

 

 

神裂「んっ……」チュッ

 

 

上条「……これでいいか?」

 

神裂「はい」ポーッ

 

上条「―――ッ!!」サッ

 

上条(ぐぉぉぉっ! 高校生男子に、その顔は破壊力が高すぎますって!!)

 

神裂「どうかしましたか?」ホワホワ

 

上条「なんでもないです!」///

 

神裂「顔赤いですよ?」///

 

上条「いやいやいや! 神裂ほどじゃないと思うぞ!」

 

神裂「え?」ハッ

 

上条「気づいてなかったのか……」

 

神裂「す、すみません。またボーっとしてしまったみたいで」

 

上条「気にすんなって。すごくかわいいかったし」///

 

神裂「か、かわいい……ですか?」///

 

上条「正直、グラッときました」

 

神裂「そ、そうですか」///

 

上条「なんかこういうの照れるな」

 

神裂「そうですね」///

 

上条「俺は神裂のそういう顔も好きだけどな」

 

神裂「えっ?」

 

上条「だって、すごくいい顔してるからさ」

 

神裂「そ、そうではなく……」

 

上条「ん?」

 

神裂「今、初めて私のことを、その……『好き』と……」///

 

上条「―――ッ!!」

 

上条(今日の神裂さんの反応はイチイチ反則級だぞ、チクショォォォ!!)

 

神裂「一昨日は、結局誤魔化されてしまいましたし」

 

上条「そ、そういえばそうだったな」

 

神裂「で、ですので、もう一度言ってもらえると嬉しいというかなんというか……」モゴモゴ

 

上条「そういうことなら……ゴホン」

 

神裂「と、当麻?」

 

 

 

上条「好きだぞ、神裂」

 

 

 

神裂「―――!」キュン

 

上条「か、神裂さん?」

 

神裂「は、はいっ!」

 

上条「大丈夫でせうか?」

 

神裂「だ、大丈夫です!」

 

上条「それならいいんですが……」

 

神裂「あ、あの!」

 

上条「な、なんだ?」

 

 

 

神裂「わ、私も大好きです!」///

 

 

 

上条「」

 

上条(じ、直に言われるのがこんなにヤバイとはーっ!! く、くそぅ。すごくかわいいじゃないか……)

 

上条「直接言われるのは初めてだったよな」

 

神裂「そ、そうですね」モジモジ

 

上条「なんていうか……すげーうれしいかも」

 

神裂「私もです」///

 

上条「そりゃ良かった」ハハハ

 

神裂「そ、そういえば、そろそろ学校へ行く時間ではないですか?」

 

上条「え? 一緒にいられる時間少ないし、今日は休もうと思ってたんだけど……」

 

神裂「いえ! それはいけません! いつも通りの生活を心がけてくださらないと!」

 

上条「んー、でもさ」

 

神裂「お気持ちはうれしいですが、これからずっと会えなくなる訳ではありませんし!」

 

上条「そりゃそうだけど」

 

神裂「そのせいで留年されてしまっては、私もどうしていいか分からなくなってしまいます」シュン

 

上条「う……」

 

神裂「それに、その分明日構ってもらいますから」ニコ

 

上条「あ、明日は土曜か」

 

神裂「はい。ですから、今日は我慢します」

 

上条「そうか。神裂がそう言うなら、学校に行くとするよ」

 

神裂「そうしてください」ホッ

 

上条「?」

 

―学校―

上条(なんで、神裂はホッとしてたんだろ? 緊張しっぱなしだったとか?)

 

土御門「今日は学校来るとは思わなかったですたい」

 

上条「土御門、テメェ……」

 

土御門「おおっと。カミやんに怒られる謂れはないと思うんだけどにゃー?」

 

上条「何ぃ?」

 

土御門「俺は恋のキューピッドってやつですよ? ねーちんがカミやんのことを気にしてるって言うから手助けしてやっただけですたい」

 

上条「そ、それはそうかもしれねーけどさ……」

 

土御門「それとも何か~? カミやんはねーちんじゃ満足できないって言うんですかい?」

 

上条「バッ!? そ、そんな訳ないだろ!!」

 

土御門「だったら、怒る理由なんてないよな? 全員幸せでハッピーエンドだにゃー」

 

上条「そうは言うけどよ……。あのスキルアウトなんかはマジでやりすぎなんじゃねえのか?」

 

土御門「あー……。ほら、そこは演出ということで」

 

上条「納得できるかっ!!」

 

土御門「まあまあ。あれがあったから一気に距離が近づいたんじゃないのかにゃー?」

 

上条「それは……」

 

土御門「それにカミやん。こんな大声で話してたら、クラスの連中が……」

 

上条「あ」

 

青ピ「ブ・チ・コ・ロ・シ・カ・ク・テ・イやね」

 

上条「ふ、不幸だーっ!!」

 

青ピ「どこがやねん、チクショウ!!」バキィ

 

上条「あべし」

 

~~~

 

上条「く、くそ。授業中だけが俺の安息の時間ってのはどうなんですかーっ!」ダダダ

 

クラス男子A「死ね、上条!」ブン

 

上条「っぶねえ!!」サッ

 

青ピ「カミやんもなかなかタフやね。昼休みになるまでに片が付かんとは思わんかったわ」

 

上条「この程度で死ねるんだったら、今まで生きてねえよ!」

 

土御門(そのセリフはちょっと笑えないにゃー……)

 

小萌「コラーッ! 何を騒いでるんですか!」

 

上条「あっ! 小萌先生! 助けて!」サッ

 

小萌「ええっ!?」

 

クラス男子B「おのれ、上条。小萌先生を人質にするとは卑怯な」

 

小萌「いいから静かにするです! もうそろそろ5限の授業が始まるんですから!」

 

クラス男子C「チッ! 続きはまた後でだ、上条……」ギリギリ

 

クラス男子D「生きて学校を出られると思うなよ?」

 

上条(こ、怖ええ……)

 

土御門「ねーちんの写真を連中に見せてから、殺気がマジもんになってるぜい」

 

上条「余計なことしやがって……」

 

小萌「それはそうと、上条ちゃん」

 

上条「あ、はい。なんですか?」

 

小萌「どうして、結果がどうなったかの報告には来てくれなかったんです?」

 

上条「あ」

 

小萌「てっきり、昨日のうちに来てくれると思ってたんですけど……」

 

上条「す、すみません! 今日の放課後にでも!」

 

小萌「まあ、いいですケドねー」

 

上条「ははは……」

 

~~~

 

姫神「上条くんに彼女……」ブツブツ

 

吹寄「姫神さん? 大丈夫?」

 

姫神「大丈夫、問題ない」

 

吹寄「そう? ちょっと顔色悪い気がするけど」

 

姫神「平気」

 

吹寄「ならいいけど……」

 

姫神「吹寄さんこそ大丈夫?」

 

吹寄「え? 私はなんともないわよ?」

 

姫神「ちょっと声が上ずってるかも」

 

吹寄「う」

 

姫神「今日は。一緒に遊びに行こうか」

 

吹寄「……ま、たまにはね」

 

放課後

―職員室―

上条「やったよ……。俺生きてるよ……」ヨロヨロ

 

小萌「ど、どうしたんです? そんなにボロボロになっちゃって」

 

上条「ちょっといろいろありまして……」

 

小萌「あんまりはしゃぎすぎちゃダメですからね~?」

 

上条「それは周りの連中に言ってください」

 

小萌「元凶は上条ちゃんじゃないんです? 何が理由だったんですか?」

 

上条「ああ、そうだ。小萌先生のアドバイスのお陰でうまくいったことを報告に来たんでした」

 

小萌「……原因はそれです?」

 

上条「らしいです」

 

小萌「まだまだ若いですねー」

 

上条(小萌先生の外見で言われたくはないなー……)

 

小萌「ともかく、うまくいったなら、特別に今週の補習はなしにしてあげます」

 

上条「え?」

 

小萌「どうせ、そっちが気になっちゃって勉強にも身が入らないと思いますです」

 

上条「う、それは……」

 

小萌「それに学生なんですから、節度あるお付き合いをしないとダメですよ?」

 

上条「も、モチロン分かってますって~」

 

小萌「本当ですか~?」ジト

 

上条「や、やだな~」ハハハ

 

小萌「それじゃあ、気を付けて帰ってくださいね。上条ちゃん」

 

上条「はい。ありがとうございました」

 

~~~

 

上条(節度あるって言われてもなぁ。このごろは神裂が妙にスキンシップを取ってくるし、俺の理性はどこまで持つだろうか……)

 

上条(そ、それに明日は一日中2人っきり……)

 

上条「……」

 

上条(い、いかん! あんまり考えないようにしよう!)

 

上条(落ち着け……落ち着け……。よし!)

 

上条「ただいまー」

 

 

神裂「お、おかえりなさいませ。ご主人様」///

 

 

上条「……………………は?」

 

神裂「ど、どうかしましたか?」モジモジ

 

上条「いやいや、これはこっちのセリフなんですけど!?」

 

上条(すごいオッパイでフトモモでエロいメイドさん!!?)

 

神裂「な、何かおかしいでしょうか?」ワタワタ

 

上条「おかしいところしかないだろ! な、なぜに堕天使エロメイド!?」

 

神裂「先日、押入れで発見したもので……。こういうのが好きなのかと」///

 

上条「嫌いじゃないですよ? いや、むしろ好きですけれども!」

 

神裂「そ、そうですか」パァ

 

上条「うっ……」

 

上条(こんな攻撃もくらって俺の理性は持つのでしょうかーっ!?)グラグラ

 

神裂「と、とりあえず上がってはどうでしょうか?」///

 

上条「そ、そうだな!」

 

上条(しかし……)チラ

 

神裂「?」

 

上条(ヤバイ、ヤバイとは思っていたが、ここまでヤバイ服だとは思ってなかったぜ……)

 

神裂「どうかしましたか?」モジモジ

 

上条「なんでもありませんのことよ!?」

 

神裂「そうですか?」

 

上条「イエス! 上条さんは至って平常運転です!」

 

神裂「それならいいのですが」

 

上条(な、なんとか誤魔化せたか)

 

神裂「…………」///

 

上条「…………」ジー

 

上条(それにしても、すごいおっぱいだな。おっぱいすごい)

 

神裂「…………」///

 

上条「…………」ジー

 

上条(半分くらい飛び出してるんじゃないか? スカートも短いし……)

 

神裂「あ、あの! そんなに見つめられると……」///

 

上条「はっ!? す、すまん!!」サッ

 

神裂「い、いえ……」

 

上条「…………」

 

神裂「…………」

 

上条(ど、どうすれば……)オロオロ

 

神裂「あ。そ、そうでした」

 

上条「ん?」

 

神裂「今の私はメイドです!」///

 

上条「そ、そうだな。どこから見てもメイドさんだな」

 

神裂「で、ですから、して欲しいことがありましたら、なんでもお申し付けくださいっ!」///

 

上条「ええっ!?」

 

上条(なんでも!? なんでもって言ったのか!?)

 

神裂「できるだけ頑張りますので!」

 

上条「ええっと……」

 

神裂「なんでしょうか?」///

 

上条「ど、どうして、急にそんなことを?」

 

神裂「それは、その……」

 

上条「?」

 

神裂「この服が入っていた箱の底に、こ、こんなものが……」///

 

上条「ん?」

 

『メイド in ヘブン』(※R-18)

 

上条「ベゴブゥッ!?」

 

上条(つ、土御門ォォォ!!)

 

上条「そ、それはだな!」アセアセ

 

神裂「いえ! 分かってます! あなたも年頃の男性ですから!」

 

上条「そうじゃなくて!」

 

上条(このままでは、上条さんまでメイドさんバンザイの人間にされてしまう! 間違いではありませんけど!)

 

神裂「で、ですから、なんでも申し付けてください!」

 

上条「な、なん……だと……?」

 

上条(その本を中身を見たんだろ? それで尚且つ『なんでも』だと……?)ゴクリ

 

神裂「か、覚悟はできています」///

 

上条「―――ッ!!」

 

上条(おおおおおおお、落ち着け! 落ち着くんだ、上条当麻! これは罠に違いない!)

 

神裂「…………」/// モジモジ

 

上条(なんかもう罠でもいい気がしてきた……)

 

上条「そ、それじゃあ……」///

 

神裂「は、はいっ!」ビクッ

 

小萌『学生なんですから、節度あるお付き合いをしないとダメですよ?』

 

上条(あ……)

 

 

 

上条「ゆ、夕飯でも作ってもらおうかな」

 

 

 

神裂「……はい? 夕食……ですか?」

 

上条「おう。ちょっと腹減っちまってさ」

 

神裂「そ、そうですか。では、すぐ準備しましょう」

 

上条「ああ、頼む」

 

神裂「少々お待ちください」スッ

 

上条「…………ふぅ」

 

上条(危ねえええええっ!! 危うく大人の階段を登ってしまうところでしたよ!!)

 

上条「でも、少し勿体無かったかも」

 

神裂「何かいいましたか?」

 

上条「いえっ! 何にも!」

 

神裂「? そうですか」

 

上条「そ、それより、夕食は何にするんだ?!」

 

神裂「ええと、カレイの煮付けにでもしようと思っているのですが」

 

上条(メイドさんの格好で、魚の煮物ってのもシュールな気がする)

 

神裂「別のものにしましょうか?」

 

上条「いや、大丈夫! ちょうど魚食べたいなーって思ってたし!」

 

神裂「そうですか。それなら良かったです」ニコ

 

上条(しかし、覚悟って一体なんの覚悟だったんだろうか……。いや、あんまり考えるのはやめよう)

 

~~~

 

上条(よし。少しずつ落ち着いてきたぞ……)

 

神裂「準備ができましたよ、当麻」

 

上条「あ、サンキュー。うまそうだ」

 

神裂「ありがとうございます」

 

上条「配膳くらいは手伝えばよかったな?」

 

神裂「いいえ。今日はそう言うわけにも行きません」

 

上条「なにもそこまで徹底してなくてもいいんじゃないか?」

 

神裂「いいんです。やりたくてやっていることですから」

 

上条「そ、そうか」

 

上条(健気に尽くしてくれるっていうのもポイント高いです! しかも、エロいメイド服とかもう!)

 

上条「ってあれ? 箸がないんだけど?」

 

神裂「そ、それはですね……」///

 

上条「うん?」

 

神裂「こうするためです!」

 

上条「はい?」

 

 

神裂「あ、あ~ん♪」/// スッ

 

 

上条(な、なんだと!?)

 

 

神裂「ど、どうぞ」

 

上条(何が起こっているんだ? メイドさんに『あ~ん』をしてもらっているだと!?)

 

神裂「と、当麻?」

 

上条「あ、すまん。ちょっと意識が飛んでた」

 

神裂「大丈夫ですか?」

 

上条「大丈夫だ。多分」

 

神裂「で、では続きを」

 

上条(くっ。この羞恥プレイを続けるっていうのか?)

 

神裂「あ、あ~ん♪」///

 

上条(ぐぅっ!? 神裂のおっぱいが寄せられて大変なことにっ!!)

 

上条「あ~ん?」/// パク

 

上条(やばい。うまいんだろうけど、味が分からない)

 

神裂「ど、どうですか?」

 

上条「ああ、うまいよ」ニコ

 

神裂「そうですか」ホッ

 

上条(ええい! もう吹っ切れるぞ! それにこのままやられっぱなしで終わるってのも良くない!)

 

上条「やってもらってばっかりってのも悪いよな!」

 

神裂「いえ、そんなことは―――」

 

上条「だから、今度は上条さんが食べさせてあげますよ」

 

神裂「え?」

 

神裂「それはどういう……」

 

神裂(当麻の目が妙に据わってる気がします)

 

上条「だから、今度は上条さんが『あーん』を神裂にしてあげるって話だよ」

 

神裂「ええっ!?」///

 

上条「嫌なのか?」

 

神裂「そんなことありません! ですけど……」

 

上条「ですけど?」

 

神裂「してもらうのは恥ずかしいというかなんというか」ゴニョゴニョ

 

上条「こっちだって恥ずかしかったんだぞ」

 

神裂「う……。分かりました」

 

上条「よろしい」

 

神裂「そ、それではお願いします」///

 

上条「お、おう!」ゴクリ

 

上条(と、勢いでここまで来たのはいいんだけど、すごく恥ずかしいな、これ!!)

 

上条「あ、あーん」/// スッ

 

神裂「あむ」パク

 

上条「どうだ?」

 

 

神裂「と、当麻の味がしておいしいです」///

 

 

上条「!?」

 

上条(それってどういう意味ですかーっ!?)

 

上条「お、俺の味?」

 

神裂「ええと、その……。当麻と同じお箸でしたので……」

 

上条(間接キッスって話ですか!? ち、チクショウ! なんだこのかわいさは!?)

 

上条「ぐぐぐ……」///

 

上条(くぅぅぅっ。落ち着けっ! 今更、間接キスくらいで動揺するんじゃない! これは神裂の罠だっ!)

 

神裂「そんなに顔を真っ赤にしないでください!! こっちだって恥ずかしいんですから!!」カァァ

 

上条「そ、そうか。すまん」

 

神裂「い、今のは忘れてください」モジモジ

 

上条「そういう訳にも……」

 

神裂「ううう……」///

 

上条「だって、かわいかったしさ」

 

神裂「―――ッ!!」/// ボン

 

上条「忘れるにはもったいないかわいさでしたよ」

 

神裂「と―――」

 

上条「ん?」

 

 

神裂「とうまのいじわる」ボソ

 

 

上条「ガハッ!!」

 

上条(くそっ! これ狙ってる訳じゃないんだよな? 上条さんの精神はもう壊れそうですよ!)

 

~~~

 

上条「ごちそうさまでした」///

 

神裂「ごちそうさまでした」ポー

 

上条(や、やっと夕飯が終わった……。顔がすごく熱くなってる気がするぞ)

 

神裂「それでは次は……」

 

上条「ちょ! ちょっと待ったーっ!」

 

神裂「はい、なんでしょうか?」

 

上条「いつまで、これ続くんでせうか?」

 

神裂「ええと、とりあえず就寝するまでは続けようかと」

 

上条「なん……だと……?」

 

上条(この天国の拷問みたいな時間がまだ数時間続くっていうのか? 上条さんの限界はもう突破してるっていうのに!?)

 

神裂「ご迷惑でしょうか?」シュン

 

上条「そんなことないぞ!」アセアセ

 

神裂「本当ですか?」

 

上条「ああ! 夕飯だってすごくうまかったし!」

 

神裂「それは良かったです」ホッ

 

上条(こういうところが上条さんのダメなところなんでしょうかね?)

 

神裂「そ、それでは、次は……」スッ

 

上条(何か取り出した?)

 

上条「って、それは……」

 

 

神裂「はい。耳掻きです」///

 

 

上条(耳掻き? それをこの服装のまま? それなんてプレイ?)

 

神裂「そ、その……。以前、病室でそんなことを言っていましたよね?」 ※7巻参照

 

上条「はっ!?」

 

神裂「それで、こういうのがお望みなのではないかと思いまして……」///

 

上条「いや、あれを言ったのは土御門ですから! もちろん、上条さんもこういうの好きですけれども!!」

 

神裂「で、では、どうぞ」///

 

上条「ま、マジで?」

 

神裂「決心が揺らぐ前にお願いします!」カァァ

 

上条「はいっ! スミマセン!」トサ

 

上条(うゎ……。スカート一枚だからフトモモの温かさが……。うん、これ以上考えたらマズイ)

 

神裂「それでは、始めます」

 

上条「お、お願いします」

 

神裂「で、では……」スッ

 

上条(すごく緊張してるみたいだけど大丈夫か? すごく不安なんですけど)

 

神裂「………………」

 

上条(お? 意外と大丈夫そうだな。手馴れてはいなさそうだけど、そこまで不器用じゃないみたいだ)

 

上条「うまいもんだな、神裂」

 

神裂「静かに!」

 

上条「え?」

 

神裂「て、手元が狂ってしまいます」

 

上条「スミマセン……」

 

~~~

 

神裂「ふぅ……。やっと片方終わりました」

 

上条(すごい集中してたな。おかげであんまり甘い空気じゃなかったような気がしますけれど)

 

神裂「それでは、反対側をしますので、こちらを向いてもらえますか?」

 

上条「はいはいっと」クルッ

 

神裂「ありがとうございます」

 

上条「っな!?」

 

神裂「? どうかしましたか?」

 

上条「なんでもないです! はい!」

 

上条(し、視界の片隅に巨大建造物が2つ!!)

 

神裂「動かないでくださいね」プルン

 

上条(こいつ動くぞ!?)

 

神裂「行きます」スッ

 

上条(さっきは気にしていなかったが、もしやこれは、おっぱいとふとももにサンドされた状態なのかっ!?)

 

神裂「……………………」

 

上条「そうか。天国ってここにあったのか」

 

神裂「はい? いきなりどうしたんですか?」

 

上条「いや、なんでも……」ガリッ

 

神裂「……あ」

 

上条「ってええええええええ!!!」

 

上条(こ、これで良かったんだっ! なぜなら、ここままでは上条さんが正気を保っていられなかったからぁぁぁ!!)ジタバタ

 

神裂「す、すみません!」アワアワ

 

上条「だ、ダイジョウブデス」

 

神裂「良く見せてください! 傷になっていたりしたら大変ですから」グイ

 

上条「ぬぉっ!?」ムニュン

 

上条(ほっぺたに柔らかい感触がぁ!?)

 

神裂「どうやら傷にはなっていないようですね」ホッ

 

上条「ソ、ソウデスカ」カチコチ

 

神裂「先ほどから妙なカタコト言葉ですが、本当に大丈夫ですか?」ムニュムニュ

 

上条「ええと、その……」

 

神裂「?」

 

上条「さっきから、その……。胸が……」

 

神裂「………………」

 

神裂「!?」バッ

 

神裂「は、早く行ってください!」///

 

上条「ご、ごめんなさいっ!!」

 

神裂「まったく、当麻は……」

 

上条「いやいや! そんな服装なんだから、もうちょっと意識してるもんだろ、普通!」

 

神裂「そ、それはそうかもしれませんけど」

 

上条「まあ、俺も黙ってたのは悪かったけどさ」

 

神裂「そうですよ」

 

上条「………………」

 

神裂「………………」

 

上条(く、空気が……)

 

神裂「そ、それで」

 

上条「ん?」

 

神裂「気持ちよかったですか?」

 

上条「それはもう」

 

神裂「う……」///

 

上条「あ」

 

上条(しまった! はっきりいいすぎたか?!)

 

 

神裂「とうまのえっち」///

 

 

上条「」

 

神裂「当麻?」

 

上条「神裂」

 

神裂「は、はい!」

 

上条「ちょっと俺、今から風呂入ってくるから」

 

神裂「え? あ、はい。ごゆっくり」

 

~~~

 

上条「ふぅ……」

 

神裂「あ、上がりましたか。だいぶ長湯でしたね」

 

上条「ああ。気にしないでくれ。なかなか疲れが取れなくてな」

 

上条(落ち着こうとして、なかなか落ち着けなかっただけなんですけどね……)

 

神裂「そういうことでしたら、マッサージでもしましょうか?」

 

上条「マッサージ?」

 

神裂「ええ。ここに横になってください」ポンポン

 

上条(やっと落ち着いたと思ったら、またイベントですかーっ!? いや、すごくうれしいんですけど!!)

 

神裂「さあ、遠慮なさらずに」

 

上条「ええと、それでは」ドサ

 

神裂「マッサージをするのは初めてですので、いろいろと指摘していただけると助かります」

 

上条「素人のマッサージなんて大差ないんじゃないか?」

 

神裂「そうなのですか?」

 

上条「良くは分からないけどな」

 

神裂「それで、どの辺でしょうか?」

 

上条「んー……。肩の辺りとか?」

 

上条(今更デマカセとはいえない……)

 

神裂「分かりました。それでは、お任せください」

 

上条「じゃあ、頼むよ」

 

神裂「っしょっと」グリグリ

 

上条(お。結構、気持ちいいな)

 

神裂「んふっ……、ふぅっ……」グリグリ

 

上条「…………」

 

神裂「はぁっ……、んぅっ……」グリグリ

 

上条(なんだかすごく色っぽく聞こえるのは気のせいでしょうか?)

 

神裂「気持ちいいですかっ?」グリグリ

 

上条「え? ああ! もちろんですよ!」

 

神裂「では、もっと頑張りますね!」グニグニ

 

上条(気持ちいい……。気持ちいいが、さっきから神裂にばっかり主導権を握られてるのがモヤモヤする)

 

神裂「っしょ……、っく……」グリグリ

 

上条(あれ? 待てよ? もし、今、聖人の力が戻ったら……)

 

上条「か、神裂さん!」

 

神裂「はい? なんでしょうか?」

 

上条「マッサージはそのくらいで大丈夫です!」

 

神裂「あ、分かりました」スッ

 

上条(危ない……。最悪の事態は避けられたぞ……)

 

神裂「それでは……」

 

上条「神裂も風呂入っちゃえよ! 今日はもう寝ようぜ?!」

 

神裂「それもそうですね。明日は一日ありますし」

 

上条「そうでした」

 

~~~

 

上条「しかし、この調子で明日一日もつのか……?」

 

上条(結局、神裂に色々やられて、上条さんは内なる戦いに身を投じなければならなくなるような気がする……)

 

上条「そ、それじゃダメだ! 年上の人が相手とはいえ、女の子なんだから、男の俺がリードしてやらないと」

 

上条「し、しかし、このままでは主導権が……」ブツブツ

 

上条(今からでも、立場を逆転できる手段はないものか……)

 

上条(いや、待てよ? 一方的にされるがままになってるけど、今日はまだ、メイドとご主人って立ち位置だよな?)

 

上条(ということは……)

 

上条「今なら、まだ逆転は可能……」

 

神裂「何のですか?」

 

上条「」ビクッ

 

上条「あ、神裂。上がったのか」

 

神裂「はい。いいお湯でした」

 

上条「そうか」

 

上条(何かするなら今か?)

 

上条「ゴホン。神裂」

 

神裂「はい。なんでしょうか?」

 

上条「えーと、今日一日メイドさんとしていろいろしてくれたよな?」

 

神裂「え? はい。そうですけど?」

 

上条「それじゃあ、ご褒美をあげないといけないよな」

 

神裂「はい?」

 

上条「まあ、つまりお礼だよ。お礼」

 

神裂「い、いえ! そんなつもりで、色々していた訳では……」

 

上条「ええと、その……」

 

神裂「?」

 

上条「お礼に『勇気』を分けてあげようかなーと」/// ポリポリ

 

神裂「―――ッ!! と、当麻!!」///

 

上条「いいかな?」

 

神裂「そのようなご褒美でしたら、謹んでお受けします」///

 

上条「ええと……では」

 

神裂「んっ」チュ

 

神裂(びっくりしましたが、これはうれしいですね)ホワホワ

 

上条(神裂のやつ油断してるよな?)

 

上条「んっ」クチュ

 

神裂「んんっ!?」

 

神裂(し、舌が!?)

 

神裂「んむっ、んぁっ、くちゅっ、ちゅくっ、れろっ、ぴちゅっ」

 

上条「ぷぁ…。……満足してもらえたかな?」///

 

神裂「は、はいっ……」///

 

上条「それじゃ、おやすみっ!」///

 

神裂「お、おやすみなさい。当麻」///

 

共同生活9日目

 

上条「今日はデートをします」

 

神裂「はい?」

 

上条「デートだよ。デート」

 

上条(昨日、あれから色々考えた結果、一日中家に2人きりってのは無謀だという結論に至った訳ですよ)

 

神裂「デートですか?」

 

上条「ああ。天気もいいし、外歩いて回ろうぜ」

 

神裂「それもそうですね。何かプランでもあるんですか?」

 

上条「いや、特には。ただ、神裂とならただぶらぶら歩いても楽しいかなーと思って」

 

神裂「そ、そうですか?」///

 

上条「もちろん。それとも、何かしたいことある?」

 

神裂「当麻と一緒でしたら、なんでも構いません」

 

上条「そ、そうか」///

 

神裂「は、はい」///

 

上条「それじゃあ、早速出かけようぜ。時間は限られてるんだし」

 

神裂「あ。その……いろいろと準備をしたいので、どこかで待ち合わせにしてもらってもいいですか?」

 

上条「え? 別にいいけど」

 

神裂「そうですね……。では、10時に駅前ではいかがでしょうか?」

 

上条「ん、分かった。10時に駅前な。じゃあ先に行ってるぞ」ガチャ

 

神裂「はい。それではまた後ほど」

 

バタン

 

上条(って10時? まだ2時間近くあるじゃん……)

 

―駅前―

上条(コンビニなんかで立ち読みして時間潰したけど、神裂は何をそんなに手間取ってるんだろうか?)

 

ざわ・・ ざわ・・

 

神裂「お、お待たせしました」

 

上条「お、やっと来……た?」

 

神裂「お、おかしくないでしょうか?」

 

上条(そ、それは神裂が来て2日目に買ってた女の子っぽい服!!)

 

神裂「やはり、おかしいですか?」シュン

 

上条「そ、そんなことないぞ! すごく似合ってる! ちょっと見とれてただけです! はい!」

 

神裂「そ、そうですか。ありがとうございます」///

 

上条(しかし、その服は妙に胸元が強調されてる気がする。あと、心なしかスカートの丈も短い)ジー

 

上条「ん? その手さげ袋はなんだ?」

 

神裂「これですか? ふふっ。まだ秘密です」

 

上条(それの準備に時間がかかったのかな? まあ、そのうちなんだか分かるだろ)

 

神裂「それではどこから行きましょうか」

 

上条「それなんだけどさ……」

 

神裂「はい?」

 

上条「その服似合ってるんだけど、靴がブーツってのがどうもな」

 

神裂「あ。そういわれて見れば、そうかもしれません」

 

上条「ってことで、合いそうな靴でも見に行こうか」

 

神裂「はい」ニコ

 

―セブンスミスト―

上条「と、まあ、服をここで買ったから、靴もここでそろえるのがいいんじゃないかと」

 

神裂「しかし、このような服には、どのような靴が合うのでしょうか?」

 

上条「んー……。俺も分かんないし、とりあえず色々見てみようぜ」

 

神裂「それもそうですね」

 

~~~

 

神裂「…………」ジー

 

上条「どう? 気に入ったのあった?」

 

神裂「い、いえ。特には」

 

上条「まったく?」

 

神裂「その……当麻が選んでもらえませんか?」

 

上条「俺が選んじゃっていいのか? あんまりセンスには自信ないんですけど」

 

神裂「構いません。当麻に選んでいただいたものなら気に入るはずですから」

 

上条「うーん、そうだな……。やっぱり、ヒールとか?」

 

神裂「え?」ビクッ

 

上条「ど、どうした?」

 

神裂「あ、ヒールは、その……ちょっと……」

 

上条「何か理由でもあるのか?」

 

神裂「い、いえ……」ゴニョゴニョ

 

上条「?」

 

上条「似合うと思うんだけどな」

 

神裂「ええと、その……」

 

上条(あんまり聞いちゃいけないことなのかな? 前に嫌な思いをしたとか)

 

神裂「わ、私のようなものにヒールはちょっと……」

 

上条「は? どういう意味?」

 

上条(そりゃ戦闘には向かないかもしれないけど、今日はそんなこと起こらないだろうし……)

 

神裂「わ、私の身長がですね……」ゴニョゴニョ

 

上条「あー」

 

上条(そうか。神裂は170後半はあるもんな。ヒール履いたら180超えるかもしれない)

 

神裂「ううう……」

 

上条(でも、ブーツも大差なくね? 気にし過ぎな気もするけど)

 

上条「特に気にしなくていいんじゃないのか?」

 

神裂「え?」

 

上条「どうせだったら、神裂に似合うもの履いたほうが俺もうれしいし」

 

神裂「あぅ」///

 

上条「どうする?」

 

神裂「で、では、当麻にお任せします」チラチラ

 

上条「ははっ。神裂さんは素直じゃないなー」

 

神裂「そ、そんなんじゃありません!」///

 

上条「よし。これなんかどうだ?」

 

上条(一応、そんなに踵が高くないものを選びましたよ)

 

神裂「あ、いいかもしれません」

 

上条「お、そうか?」

 

神裂「はい。かわいいです」ニコ

 

上条「そうか! よし、それじゃ会計を……。あれ、サイフはどこ行ったかな?」ゴソゴソ

 

神裂「あの……何をしているんですか?」

 

上条「これ上条さんがプレゼントして差し上げますのことよ」

 

神裂「ええっ!? い、いえ、それは……」

 

上条「飯作ってもらってるお礼だと思ってさ。神裂はもうちょっと上条さんに甘えてもいいんですよ?」

 

神裂「そうですか? すでに相当甘えている気もしますが……」

 

上条「遠慮するなよ」

 

神裂「そ、それではお言葉に甘えさせていただきます」ペコリ

 

上条「おう」

 

店員「いらっしゃいませー。彼女さんへのプレゼントですか?」

 

上条「あ、はい」

 

神裂「///」

 

店員「仲がお宜しいですねー。こちら6300円になります」

 

上条「え?」

 

上条(なん……だと……?)

 

上条(け、結構するんだな。値札を見てませんでしたよ?)ダラダラ

 

神裂「当麻?」

 

上条(っといけない! ここで、神裂を不安な顔にさせるわけには!)

 

上条「な、なんでもないぞ!」

 

上条(ここのところ食費が抑えられてたし、それを思えば……) つ万札

 

店員「1万円からお預かりします。こちらお包みいたしましょうか?」

 

上条「あ、いえ。すぐ履くんで」

 

店員「分かりました。こちらお釣りとお品物になります」

 

上条「どうも。ほい、神裂」

 

神裂「あ、ありがとうございます!」///

 

上条(神裂のこの顔を見られただけでも、プレゼントした甲斐があったな)

 

上条「よし、行こうか」

 

店員「あ、お客様」

 

上条「ん?」

 

店員「現在、当店10周年記念の福引を行っております。お帰りの際には、ぜひお立ち寄りください」

 

上条「へー。そんなのやってたのか」

 

店員「2000円のお買い上げごとに1回抽選ができます。正面入り口にて行っておりますので、よろしければ」

 

上条「ふーん。じゃあ、帰りに寄ってみるか」

 

神裂「そうですね」

 

店員「ありがとうございましたー」

 

上条「っと、もうお昼か。昼飯はどうする?」

 

神裂「あ、それなのですが」

 

上条「ん?」

 

神裂「実は、作ってきました」

 

上条「え?」

 

神裂「用意に少し時間がかかってしまいましたが」

 

上条(今朝、待ち合わせにしたのはそれが理由だったのか。わざわざ手作りのお弁当を……)

 

上条「ってことは、その手提げ袋は……」

 

神裂「は、はい。ご想像の通りです」モジモジ

 

上条「うぉぉぉ。マジですか!?」

 

神裂「喜んでいただけると、私もうれしいです」///

 

上条(こういうのなんか青春っぽいよなー。上条さんが実際に体験できるとは思いませんでしたよ……)

 

神裂「そういうことなのですが、どこか食べられる場所に心当たりはありますか?」

 

上条「んーと……。ここの屋上にテラスがあるみたいだから、そこで食べよう」

 

神裂「はい。分かりました」

 

上条「神裂の料理はうまいから楽しみだな」

 

神裂「ふふっ。靴を履き替えてから行きますので、場所を取っておいてもらえますか?」

 

上条「了解」

 

神裂「それでは、また後ほど」

 

―セブンスミスト 屋上―

上条「んーっ。いい天気だなー」

 

上条(これから寒くなるなんて信じられないような陽気だ)

 

神裂「お待たせしました」カツ

 

上条「お、やっぱり、ブーツよりそっち方が似合うな」

 

神裂「あ、ありがとうございます」///

 

上条「それじゃ、飯にしようぜ」

 

神裂「あ、はい。今用意しますね」ガサゴソ

 

上条「へえ。今日はオニギリか」

 

神裂「具は梅干と鮭の2種類ありますけど、どちらにしますか?」

 

上条「いくつあんの?」

 

神裂「ええと、それぞれ4つずつあります」

 

上条「それじゃ、2つずつにしよう」

 

神裂「分かりました。どうぞ」スッ

 

上条「サンキュー」

 

上条(意外に小さいオニギリだし、4つくらいは楽勝、楽勝)

 

神裂「それにしても、いい天気ですね」

 

上条「そうだなー」

 

上条(うーん。こういうゆるい空気もいいもんだなー。ここのところ緊張しっぱなしだったし)

 

~~~

 

上条「ごちそうさんでした」

 

神裂「はい」ニコ

 

上条「ふぁ……。満腹になったら、眠くなってきた」

 

神裂「それでは、もう少し休んでいきますか?」

 

上条「だなー」

 

神裂「そうですね……。ええと……」キョロキョロ

 

上条「ん? 何か探し物か?」

 

神裂「あ! あちらのベンチに移動しませんか?」

 

上条「ベンチ? ああ、あれか。別にいいぞ」

 

神裂「では、行きましょうか」

 

上条「おう」

 

~~~

 

上条(しかし、屋上は人が少ないもんだな。休日の昼間だってのに)ドス

 

神裂「………………」トス

 

上条(ここ最近の慌しさが嘘のようだ…・・・)

 

上条「ふぁ……」

 

神裂「ご、ゴホン。眠そうですね?」

 

上条「まあ、少しな」

 

神裂「で、では、どうぞ」トントン

 

上条「え?」

 

上条(フトモモを指差して……。って、こんなところで膝枕!?)

 

上条「ええと……」

 

神裂「///」

 

上条(そ、そうか! そのためにベンチに移動したのか!)

 

上条「で、では、失礼しまして」ポス ///

 

神裂「は、はい」

 

上条(温かい……。それにいい匂いもする……)

 

神裂「ど、どうでしょうか?」

 

上条「ああ。良く眠れそうですよ」

 

上条(緊張さえしてなければですけどね)

 

神裂「そうですか」ニコ

 

上条「ははは。でも、ちょっと恥ずかしいな」///

 

神裂「そ、そうですね」///

 

上条「じゃあ、適当な時間になったら起こしてくれ」

 

神裂「はい。分かりました」

 

上条(はたして寝れるだろうか?)

 

神裂「オヤスミなさい。当麻」

 

~~~

 

神裂「―――い。そうですか。分かりました」

 

上条「んっ……。神裂?」

 

神裂「おや、起きてしまわれましたか」

 

上条「誰かと電話してたのか?」

 

神裂「ええ。土御門と」

 

上条「土御門?」

 

神裂「はい。実は、さきほど力が戻りまして……」

 

上条「え?」

 

上条(ってことは、神裂と一緒にいられるのは―――)

 

神裂「明日のお昼の便でロンドンに戻ることになりました」

 

上条「そうか」

 

神裂「はい……」

 

上条「……それなら、今日の残りは楽しまなくちゃな」

 

神裂「そうですね……。そうしましょう」

 

上条(次に会えるのがいつになるか分からないもんな)

 

神裂「それで、これからどうしますか?」

 

上条「今何時?」

 

神裂「現在は……4時ちょっとですね」

 

上条「ええっ!? 俺、3時間近く寝てたのか!?」

 

上条(あんなに緊張してたくせに、ぐっすり寝すぎじゃないですか!?)

 

神裂「それはもうスヤスヤと」

 

上条「あー、悪いな。そんなにヒマにさせちまって」

 

神裂「いえ。当麻の寝顔がかわいかったですから、そんなにヒマという訳でもありませんでしたよ?」クスクス

 

上条「う……」///

 

上条(こう面と向かって言われると、すごく恥ずかしい)

 

上条「そ、それはそうと、これからどうする?」

 

神裂「もう少し見て回りますか?」

 

上条「んー……。それもいいけど、時間もあんまりないし、夕飯の算段でも立てておこうぜ」

 

神裂「それもそうですね」

 

上条「とりあえず買出しだな。あ、それとも、どこかで食べてく?」

 

神裂「お任せします」

 

上条「そうだなぁ……」

 

神裂「ブラブラしながら考えましょうか」

 

上条「おう」

 

―セブンスミスト 正面入り口―

カランカラーン 2トウオオアタリー

神裂「おや? 何かやっていますね」

 

上条「そうみたいだな」

 

上条(そういえば福引やってるんだったっけ?)

 

神裂「福引のようですね」

 

上条「だな。さっき買い物したから、3回できるな」

 

神裂「頑張ってくださいね」

 

上条「え? 上条さんがやるんですか!?」

 

神裂「当麻がやらなければ、だれがやるんですか?」

 

上条「自慢じゃありませんが、上条さんは当たる自信がこれっぽっちもありませんよ?」

 

神裂「それでもいいではありませんか」

 

上条「い、いや! せめて神裂さんも1回お願いします! 上条さんよりは期待できますし!」

 

神裂「はぁ……。まあ、いいですけれど」

 

上条「そうと決まれば、さっさと引こうぜ」グイ

 

神裂「は、はい」

 

上条(ええと……。残念賞はポケットティッシュか)

 

神裂(特等は学園都市制の電気自動車ですか)

 

店員「いらっしゃいませー。レシートを拝見させていただきますねー」

 

上条「あ、はい」

 

店員「それでは、この中から3枚引いてくださーい」

 

上条「そ、それでは……」ゴソゴソ

 

神裂(1等、2等が商品券で……、3等は食事券ですか)

 

上条「よ、よし。この2枚に決めたぞ……」

 

店員「それでは、確認させていただきます」

 

上条「はい」

 

上条(結果は見えてますけどね……)

 

店員「こちら2枚とも6等になります」

 

上条「え?」

 

上条(ハズレじゃないだと!? 6等……6等ってなんだ?)

 

店員「ええと、飴玉3つになります」

 

上条「ええっ!? ハズレの方がマシじゃないですか!?」

 

神裂「ははは……」

 

店員「小さいお子様向けの賞品ですので……」

 

上条「ふ、不幸だ……」

 

店員「そ、それでは、あと1枚引いてもらえますか?」

 

上条「神裂さんお願いします……」orz

 

神裂「あ、当麻」

 

上条「なんでしょうか……?」

 

神裂「落ち込んでいるところ悪いのですが、手を繋いでもらえますか?」

 

上条「はい?」

 

上条(手を繋ぐ? そんなことしたら、神裂まで残念な結果に……)

 

神裂「お願いします」

 

上条「まあ、神裂がそう言うなら……」ガシ

 

神裂「ありがとうございます」ニコ

 

上条(何を考えてるんだか……)

 

神裂「では」ガサゴソ

 

店員「ありがとうございます。こちらでよろしいでしょうか?」

 

神裂「はい」

 

店員「ええと……。お、おめでとうございます! 3等です!」カランカラーン

 

上条「え?」

 

神裂「ふむ。ちょうど狙ったところですか」

 

上条(くっ。神裂の幸運は上条さんの幻想殺しでも打ち消せないっていうのか? ずるい……)

 

上条「それで、3等ってのは……」

 

店員「こちら、賞品の『お食事券』になります」

 

神裂「ありがとうございます」

 

上条「お食事券!?」

 

神裂「これで、夕食の心配はなくなりましたね」

 

上条「そ、それはそうかもしれないけど、こういうのって狙って出せるのか?」

 

神裂「普段は特等くらいしか当たらないんですけれどね」

 

上条「なん……だと……?」

 

上条(そんなうらやましスキルまで付いてるというのか……)

 

神裂「お恥ずかしい話ですが……」ハハハ

 

上条「どこが恥ずかしいんだよ……」

 

神裂「おや?」

 

上条「どうした?」

 

神裂「有効期限が来週からのようです」

 

上条「ははは……。変なオチがついたな」

 

神裂「そうですね。残念ですが」

 

上条「ま、そんなもんだろ。行こうぜ、神裂」

 

神裂「あ、はい」

 

店員「ありがとうございましたー。またのご来店お待ちしております」

 

 

神裂「当麻」

 

上条「ん? どうした?」

 

神裂「夕飯はどうしましょうか?」

 

上条「あー。それなんだけどさ」

 

神裂「はい」

 

上条「次、いつ神裂の手料理食べられるか分からないから、うちで食べないか?」

 

神裂「いいのですか?」

 

上条「何が?」

 

神裂「その……私の手料理などで……」

 

上条「当たり前だろ? むしろ、神裂さんの手料理の方が外食よりも何倍もいいですよ」

 

神裂「そ、そうですか?」

 

上条「まあ、神裂の手間を考えれば、外食の方が楽なんだろうけどな」

 

神裂「い、いえ! 当麻に食べていただけるなら、手間など惜しくはありません!」

 

上条「そ、そっか」///

 

神裂「は、はい」///

 

上条「なんつーか……うれしいな」

 

神裂「私もです。当麻」

 

上条「それじゃ、買出ししていこうぜ」

 

神裂「はい。そうですね」

 

~~~

上条「………………」

 

神裂「………………」

 

上条(ううう。もう、あんまり時間ないってのに、会話が……)

 

神裂「………………」

 

上条(よ、よし! ここは、俺から話を振って……)

 

 

上条「神裂」神裂「当麻」

 

 

上条「!?」

神裂「!!」

 

上条「な、なんだ? 先に言っていいぞ」

 

神裂「いえ! 当麻こそ先にどうぞ!」

 

上条「ええと、じゃあ」

 

神裂「は、はい。なんでしょうか?」

 

上条「手でも繋ぐか」

 

神裂「そ、そうですね! そうしましょう」ギュッ

 

上条「う」///

 

上条(い、今更手を繋ぐくらいでテンパるってのもおかしいよな。平静を保たないと……)ドキドキ

 

上条「そ、それで、そっちはなんの話だ?」

 

神裂「ええとですね……」

 

上条「ん?」

 

神裂「そ、そろそろ、私のことも、その……名前で……」

 

上条「え?」

 

神裂「で、ですから『火織』と呼んでくれてもいいのではないでしょうか?」

 

上条「あ」

 

上条(そういえば、名前で呼んだことなかったな。けど、そんなに気にすることか?)

 

神裂「呼びにくければ、『神裂』でも構いませんが……」

 

上条「ん、別に構わないぞ。『火織』」

 

神裂「あ……」///

 

上条「どうかしたか?」

 

神裂「なんでもありません!」

 

上条「そうか? 今、一瞬すごく顔が赤くならなかった?」

 

神裂「そ、そんなことありませんよ?」

 

上条「火織」

 

神裂「―――ッ!!」カァァ

 

上条「ほら、やっぱりー」

 

神裂「と、当麻のいじわる!」ギューッ

 

上条「ぎゃぁぁああっ!? て、手がー!!」

 

 

 

―上条の部屋―

 

 

上条(さて、腹もいっぱいになったし、どうするかな……)

 

 

夕食後、上条は残り少ない時間をいかに有効活用するかを考えていた。

ちなみに、夕食は肉じゃが。最後の晩餐のメニューとしてはいかがなものか、と思う人もいるかもしれないが、神裂の作る料理では珍しい肉料理でもある。

ここ9日間で、魚が6割。煮物が5割。その他諸々といった具合だ。(魚と煮物が一緒に出てくる時もあった)

 

 

上条(おいしいから、魚ばかりでも全然いいけど、やっぱり学生としてはお肉が食べたい訳なんです)

 

 

何せ、牛丼の並み盛りは“おやつ”と公言するほどの食い盛りなのだ。

まあ、インデックスがいるときには、そのおやつにすらありつけないという事実があるのだが。

 

 

上条「いやいや、そんなことよりも、これからどうするかを考えないと」

 

神裂「どうかしましたか?」

 

 

口に出ていたらしい。洗い物をしていた神裂が反応する。

視線はこちらに向けてくるが、手を止めている様子はない。家事スキルが高いことがここからも窺える。

 

 

上条「もう明日には帰っちゃうんだし、最後に何か思い出を作れないかなと思ってさ」

 

 

自分だったら、絶対に皿を割るだろうなーと思いつつ、上条はさらりと答えた。

現在の時刻は午後7時。明日のお昼と言っていたから、残り時間は15時間程度しかない。

睡眠不足のまま神裂を帰す訳にもいかないので、実質的には今から寝るまで、つまり5~6時間で思い出を作ろうと考えている訳だ。

ああ、エロいことはしないよ? 多分。

 

 

神裂「思い出ですか……」

 

 

手を止めずに神裂は「う~ん」とかわいい声を出した。

そんななんでもない仕草にもドキッとしてしまう上条当麻(高1)であった。

 

 

上条(あれを……。いや、でもな……)

 

 

今までの行動を見てみると、手を繋いだまま寝たり、抱き枕にされたり、メイドプレイをさせたりと結構ハードなことをしてきている。

モチロン、健全な高校生男子にとって、それ以上のことを想像するのは容易い。

しかし、それを超えることをして、狼にならないとも限らない。それに、もし断られたらダメージが大きすぎる。

 

 

神裂「別に、当麻と一緒でしたら、特別なことはしなくてもいいと思いますけど」

 

上条「そうは言ってもさー、神ざ……火織」

 

神裂「///」

 

 

名前を呼ぶくらいで、いちいちこんな顔をしてくれるなら、名前を連呼してあげるのも悪くないかなーという思想が上条の脳裏によぎるが、それではまだインパクトが弱い。

……というか、メイドプレイのインパクトが少し強すぎる。その上、それ以上の何かをしようとすると非常にマズイことになる。お互いに。

神裂はオーバーヒートすると、何をしてくるか分からないので、常に上条が注意をしていなければならないのだ。

教習所で助手席に座る教官ってこんな気分なんだろうか? とも考えたが、助手席にもアクセルが付いていることに気が付いて苦笑する。

 

 

上条「とりあえず、風呂に入ってくる」

 

神裂「あ、はい。ごゆっくり」

 

 

ゆっくり湯にでもつかりながら考えれば何か思いつくだろ、と席を立つ。

実際、これが良いほうに転がった。脱衣所でズボンを脱ぐときに、ポケットの中に何か入っているのに気が付いたのだ。

 

 

上条(ん? なんだこれ?)

 

 

最初は携帯でも取り忘れたかとも思ったが、もっと小さい。しかも、1つだけではないようだ。

そして、中身を確認するため手を入れた瞬間、上条当麻に電流が走った。

 

風呂から上がると、神裂はテレビを見ていた。

結局、掃除機の使い方は覚えられなかったが、テレビの使い方は理解できてもらえた。テレビくらいはないと家に居ても暇なのだろう。

まだ、風呂から上がってきた上条には気づいていないようである。

 

 

上条「火織」

 

神裂「おや? もう上がったんですか? 今日はまた随分と早いですね」

 

 

声をかけると、神裂にそう反応された。確かに、ここ数日、30分とか1時間近く風呂に入っていた。こう思われても仕方がないかもしれない。

精神鍛錬をする場所といったら、1人になれる風呂場か、トイレしかないのだ。1人じゃないとできないしね。

いや、今はそんな話はいい。ポケットに入っていた例のブツを使うために、今日は10分で上がった訳だし。

 

 

上条「それより、火織も1つどうだ? ポケットに入ってたんだけど」

 

神裂「あ、それって……」

 

 

ポケットに入っていたのは、『アメ』だった。今日、出かけた際に福引で当てたものである。

手のひらの上には、イチゴ、レモン、グレープといった学園都市では珍しいオーソドックスな種類が計6つ並んでいる。

 

 

神裂「そうですね。お1つ頂きましょう」

 

 

なんの警戒心もなく、上条の言葉に素直に言葉に頷く神裂。

これで何をしようとしているのか、彼女はまだ気が付いていない。

 

 

上条「じゃあ、何味がいい?」

 

神裂「ええと……。では、イチゴを」

 

 

スッと、アメを取ろうと神裂は手を伸ばすが、上条はひらりとその手を避ける。

 

 

神裂「あ、あの……当麻?」

 

上条「ダメ、ダメ。普通にあげたんじゃつまらないだろ?」

 

 

つまりはそういうこと。

 

 

神裂「そ、それはどういう意味ですか?」

 

 

神裂がそう尋ねてくるのも尤もだろう。客観的に見れば、小学生のいじわるのようにしか見えない。

上条には、女の子をイジメて楽しむような趣味はない。多少しか。

 

 

上条「こいつで思い出を作ろうかと思うんだけど」

 

神裂「アメで、ですか?」

 

上条「ああ」

 

 

アメで思い出を作るなどといわれても、神裂にはピンとこない。

 

 

神裂「一体、何をするつもりなんですか?」

 

上条「こうするんだよ」

 

 

そう言って、上条はイチゴ味の飴を包み紙から取り出すと、ポイと自分の口の中に放り込む。

 

 

神裂「え? んんっ!?」

 

 

そして、そのまま神裂に唇を重ねた。

 

完全に不意打ちを喰らったのは神裂だ。聖人の力を取り戻しているというのに、まったく反応できなかった。

何が起こったのかを把握するのに2秒ほどかかった。これほどまで見事に何もできなかったのは、神裂の人生で初といえるだろう。

一方、不意打ちを成功させた上条にも、予想していなかったハプニングがあった。

 

押し倒してしまったのである。

 

あまりにも、神裂が無抵抗だったので、2人して倒れ込んでしまったのだ。

オマケに、頭を打ってはマズイと反射的に右手を差し込んだのだが、そのせいで熱烈なキスをしているようにしか見えない。

その上、とっさに手をつこうと伸ばした左手が、神裂の胸を鷲づかみにしているのは事故だろう。

 

 

上条「―――って、ゴメンなさいっ!!」

 

 

条件反射で、即土下座。

神裂の上から飛び退いて、土下座に移行するまでに1秒もかかっていない。

まさに熟練された職人(プロ)の業だ。

ただ、こんなことをしても、危険を回避できたケースは非常に稀な訳だが。

 

 

神裂「か、顔を上げてください」

 

 

しかし、今回はその稀なケースに該当されたようだ。いまだ倒れたままの神裂がそう声をかけた。

声に怒気はなく、その顔ははっきりと分かるほど真っ赤になっている。

 

 

神裂「お、驚きはしましたが、嫌という訳ではありませんでしたから」

 

上条「え? そ、そうか。ならいいんだけど」

 

 

どうやら、不意打ちをしたことに対して謝っていると思われているようである。

おっぱいの方は気にしていないのだろうか?

 

 

上条「…………」

 

神裂「…………」

 

 

気まずい沈黙が流れる。早まったことをしてしまったのではないか、と上条は今更ながら思う。どう考えても手遅れ意外の何ものでもないが。

そんな中、先に沈黙を破ったのは神裂だった。

 

 

神裂「当麻!」

 

上条「お、おう! なんだ?」

 

 

どう話しかけたものかと思案していた上条が、ビクッと反応する。

神裂の目が妙に据わっている気がする。怒っていないような気がしたのは気のせいだったのか?

 

 

神裂「―――か?」

 

 

……?

確かに聞こえたはずなのに、頭の中で靄がかかったようになってしまった。

どうやら、まだ頭が混乱しているのだろう。

 

 

上条「か、火織さん?」

 

 

確認の意味を込めて、倒れたままこちらを向いている神裂に聞き返す。

やはり、今のは聞き間違い―――

 

 

神裂「で、ですから、もう1つアメをいただけないでしょうか?」

 

上条「え、えっと……」

 

神裂「///」

 

 

つまり、そういうことらしい。

神様はまだ上条のことを見捨てていた訳ではなかったらしい。

 

 

【上条side】

 

上条「そ、それじゃ、何味がいい?」

 

 

鼓動が早くなってきた。

さきほどは、心の準備をする時間があったので、そこまでドキドキはしなかったんだ。

いや、見栄を張りました。ゴメンなさい。すごくドキドキしました。

でも、今回はそれ以上なんですよ。だって、火織がそのままの体勢なものだから、必然的に上からのしかかる形になる訳で。

 

 

神裂「で、では、レモン味で」

 

上条(あれ? そういえば、さっきの飴はどこにいった?)

 

 

確か、押し倒した瞬間、ゴクリという音が神裂の喉元から聞こえたような気がする。

あれは、唾を飲み込んだ音ではなく、飴玉を飲み込んでしまった音だったのか?

どこにもないなら、きっとそうなのだろう。悪いことをしたな、と思いつつ、アメを手に取った。

 

 

上条「そ、それじゃいきますよ?」

 

神裂「は、はい!」

 

 

緊張した面持ちで、再びアメを口の中に放り込む。

その瞬間、口の中に甘酸っぱい味が広がった。

 

 

上条(それでは……)

 

 

ゆっくりと顔を近づけていくと、火織は恐る恐る目を閉じた。

そこに自分の唇を重ねるまでに、そう時間はかからなかった。

 

 

【神裂side】

 

神裂「んっ……」

 

 

当麻から飴玉を受け取る時に、思わずそんな声が口から漏れてしまった。

心臓は相変わらず、ドキドキと一定のリズムを刻んでいる。

 

 

神裂(甘いですね……)

 

 

イチゴ味のアメは舐める暇もなく飲み込んでしまったので、実質的にはこれが1つ目。

甘酸っぱいレモンの味が口の中に広がっていく。

 

 

神裂「?」

 

 

それにしても、当麻は離れる様子を中々見せない。

離れて欲しい訳ではないが、ずっとこのままだと、また暴走してしまうかもしれない。

彼もわかっているはずだし、そろそろ離れてくれるかな? と思ったとき、ニュルンと彼の舌が口の中をかき回してきた。

 

 

神裂「んぅっ!?」

 

 

正直なところ、これにはかなり驚いてしまった。

いきなり舌が入ってきたこともそうだが、口の中を舌で擦られたときにゾクゾクとしたものが背中に走ったのだ。

これは気持ちいい。頭の中が白くなっていく気がする。

 

 

神裂「んっ、くちゅっ、んむっ」

 

 

未だに、彼の舌は私の口の中で動いている。

どうやら、当麻はアメを舐めようとしているみたいだ。

 

 

【上条side】

それはもうすごかった。

昨日、勢いもあって、ディープキスをした訳だが、これはそんなレベルではなかった。

なんというか、溶ける。

舌と舌で1つのアメを溶かしていくのと同じくらいのスピードで、自分の頭が溶けて行くのを感じていた。

 

 

神裂「はむっ、ちゅっ、れるっ」

 

 

そんな溶解のスピードに拍車をかけるのが、この火織の喘ぎ声にも似た声だ。

こんなの高校生男子に耐えられるレベルじゃないだろ?

オマケに、アメを舐めているせいで、唾液が出る。出る。

それが、下にいる神裂の口の中に流れていくものだから、たまったものではない。重力って偉大だよ。

 

 

神裂「んくっ、ちゅぱっ、こくっ」

 

 

飲まれてる。そう思うだけで、こう……込み上げてくるモノがあった。

この感覚分かってもらえるかな?

……ちなみに、アメはすぐに溶けてなくなったが、俺たちはしばらくそうしていた。

できれば離れたくはなかったので、ちゅっ、ちゅっと口周りを舐めあった。お陰で、口周りがベタベタする。まあ、不快な感じはしないが。

 

 

上条「どうだった?」

 

 

少ししてから口を離すと、最初にそう聞いてみた。

火織の顔を見れば一目瞭然なのだが、ここは敢えて口にしてもらおう。だって、その方がおもしろいだろうし。

 

 

神裂「…………足りません」

 

 

ん? あれ? なんか予想外の返答がきたんですけど。

 

 

【神裂side】

 

 

神裂「足りません」

 

 

そう言ってからの行動は、まさに電光石火。聖人パワーを使って、逆に当麻を押し倒す。

「ちょ」とか「待って」とか言っていた気もするが、無視。

 

 

神裂「次は私の番です」

 

上条「はい?」

 

 

そう言い切るや否や、その辺に落ちていたアメを1つ取ると、すばやく口に放り込み、当麻にプレゼントした。

この間、わずか1秒。聖人の力の無駄遣いといわれても仕方ない。

 

 

上条「んごっ!?」

 

 

あはっ。もの凄く驚いた顔をしている当麻がかわいい。

もしかしたら、まだ何が起こっているのか分かっていないのかもしれない。そこに、遠慮なく舌を絡ませ、唾液を流し込んでいく。

すると、頭の中がだんだんと白くなっていき、それと連動して、気持ち良さも増して行く。

 

 

神裂(当麻っ。当麻っ。当麻ぁ)

 

 

もうそれしか考えられない。

頭がさらに白んでいくのを感じた。

 

 

【上条side】

 

簡単に言えば、火織が暴走した。

 

 

上条「さすがにこれはひどい……」

 

 

気が付くと、6つもあったはずのアメはなくなっていて、自分の上には気絶した火織が覆いかぶさっていた。

火織に押し倒されてからの記憶が曖昧なのがちょっぴり怖い。着衣に乱れがないのが救いだろうか?

いや、その内何か対策を打たないと、こっちが押し倒される。そんな危機感しかない。

 

 

上条「まあ、強烈な思い出はできたな」

 

 

苦笑しながら、そんなことを呟く。実際、カルピス原液の5倍くらいの濃度はあった気がする。

とにかく、あまり上出来とは言えないまでも、そんな濃密な時間を過ごせたことに悔いはない。

火織の暴走さえなければ、とも思わなくもないが。

 

 

上条(っと。今、何時だ?)

 

 

現在時刻は、午前1時。

 

 

上条(残り時間は約10時間か)

 

 

―――2人の別れの時は近い。

 

 

最終日に続く

 


 
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