No.240149

佐天「レベル5シミュレーター?」

SSSさん

佐天さんが高位能力者を体験する話。
自己評価★★★☆☆

2011-07-28 16:07:01 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:2039   閲覧ユーザー数:1987

初春「佐天さん。今日の身体検査の結果はどうでしたか?」

 

佐天「身体検査? レベル0に決まってるじゃん。いい加減この日は憂鬱なんだよね~」

 

初春「そのうち佐天さんにも能力が付きますって。がんばってください!」

 

佐天「そう言われてもね……。そういう初春は変化あった?」

 

初春「いいえ。相変わらずですよ。先生に前回とまったく同じこと言われました。」

 

佐天「そっかぁ~……。あ~あ、なんかおもしろいことないかな~?」

 

初春「そうですねえ……。最近噂になってる『レベル5シミュレーター』ってゲーム知ってます?」

 

佐天「レベル5シミュレーター? レベル5の体験でもできるっていうの?」

 

初春「どうもそうらしいんですよね。この近くのゲームセンターにも最近入ったらしいんですよ」

 

佐天「へえー。どんなもんだか見に行ってみる? 今日風紀委員の仕事はないんでしょ?」

 

初春「ひさびさのお休みなんですよね~。せっかくですから、二人で行ってみましょうか」

 

佐天「よーし、レッツゴー!!」

 

 

―ゲームセンター―

初春「えーと、ここにあるらしいんですけど」

 

佐天「あ! あれじゃない? あのでっかいプリクラみたいな機械のやつ!」

 

初春「レベル5シミュレーター……、どうやら本物っぽいですね~」

 

佐天「えーと、なになに? あなたの能力がレベル5になるとどうなるか試してみませんか? だってさ!」

 

初春「自分の能力で試せるなんてスゴイゲームですよね、佐天さん」

 

佐天「『チュートリアル』、『体験モード』と『バトルモード』があるんだね。どれも一回五分で二〇〇円か~」

 

初春「ものは試しですし、やってみませんか?」

 

佐天「賛成~!」

 

初春「えーと、モードはどちらにします?」

 

佐天「バトルモードも気になるけど、まずはチュートリアルからって書いてあるし、それからかな?」

 

初春「そうですね。あ、これ、一回に二人までできるみたいですから一緒に入りましょう!」

 

佐天「そ、そんなに慌てないでよ、初春~」

 

 

―筐体内部―

初春「このヘルメットをつけるみたいですね」

 

佐天「それ前見えんの?」

 

初春「お金先に入れないと見えませんね。後で出すんで、私の分も入れてもらえますか?」

 

佐天「オッケー」チャリンチャリン

 

初春「あ、始まりましたよー」

 

佐天「どれどれ?」

 

 

 

~ようこそ! レベル5シミュレーターへ!~

モードを選択してね!

→ チュートリアル

  体験モード

  バトルモード

 

 

 

佐天「えーと、チュートリアルと」

 

初春「どんな感じなんでしょうか」

 

 

木山『やあ、私がこれからキミたちをレベル5の世界へと案内するよ』

 

 

佐天「これって……」

 

初春「木山先生ですね。なんかテンション高いです」

 

 

木山『それじゃあ、早速だが目をつぶってくれるかな? 五つ私が数えるまで絶対に目を開けちゃダメだよ?』

 

 

佐天「はいはい」

 

初春「催眠暗示の類いなんでしょうか?」

 

 

木山『一、二、三、四、五……。はい、目を開けてくれたまえ。これでキミはもうレベル5だ』

 

 

初春「だいぶあっさりレベル5になれましたね。佐天さん、実感あります?」

 

佐天「いや、それよりもさっき聞いたことがある音が聞こえたような……」

 

 

木山『さて、レベル5になったのはいいが、まだ能力の使い方が分からないかもしれない。そこで、次はキミの能力をどう使うか教えてあげよう』

 

 

初春「親切設計です」

 

佐天「レベル0でも大丈夫なのかな?」

 

 

木山『このチュートリアルでは、少し力むだけで、能力が発動するようになっている。試してみたまえ』

 

 

佐天・初春「「うーん」」

 

初春「あ! 私は手から炎がでました!」

 

佐天「こっちは風が少しでたかも!」

 

 

木山『能力は発動したけど、これがレベル5なのかって? そんなことはない。まだ力の使い方がわかってないだけさ。今度は、今発動させた能力を、もっと強く念じてみるんだ。そうすれば、もっと強い力が現れるだろう』

 

 

初春「手から炎を出すイメージですかね? えーっと……」

 

佐天「そーれ、螺旋丸!」ギュン

 

初春「ちょ、佐天さん! そんなのでスカートめくらないでください! あとその風のせいで、私の炎が消えてしまいます!」

 

 

木山『さて、これで、チュートリアルは終了だ。ああ、それとこのゲームは一日一回以上やらないように気をつけたまえ。まだ実験中の試作機なので、多少危険があるのでね。ではまた次の機会に会おう』

 

 

~ゲームを終了します~

 

 

 

佐天「結構スゴイゲームだったね!」

 

初春「私は、佐天さんのせいであんまり体験できませんでしたよー」

 

佐天「気にしない、気にしない! ほら、今気分いいから、クレープおごっちゃうよ~ん」

 

初春「ほ、本当ですか!! じゃあ早速行きましょう!」

 

佐天「あそこの公園のでいいよね~」

 

初春「もう待ちきれません!!」

 

 

―公園―

アリガトウゴザイマシター

初春「それにしても、木山先生があのゲームを開発したんですかね?」パク

 

佐天「ん? そりゃ、少なくとも開発チームの一員でしょ? あのゲームのガイドまでやってたんだしさ」パク

 

初春「じゃあ、木山先生のところにいって、あのゲームの話聞いてみませんか?」パク

 

佐天「え? 今から? 急に行って大丈夫かな~?」パク

 

初春「ダメだったら、引き返せばいいじゃないですか! 私は、次に休めるのはいつかわからないんです!」パク

 

佐天「わかった、わかったから。なんか今日の初春テンション高くない?」パク

 

初春「むしろ、佐天さんが低すぎるんですよ! あのゲームおもしろそうじゃないですか!」

 

佐天「まあ、確かにおもしろかったかな。未だにバトルモードが気になってるんだよね~」パク

 

初春「ですよね! さあ、行きましょう!」

 

佐天「え、ちょっと待ってってば! まだ食べ終わってないって!」

 

 

―研究所―

佐天「こんにちはー!」

 

初春「おじゃましまーす」

 

木山「おや? キミたちはあのときの……」

 

佐天「お久しぶりです!」

 

初春「今お時間大丈夫でしょうか?」

 

木山「ああ、構わないよ。先ほどひと段落したところなんだ」

 

初春「あの……『レベル5シミュレーター』について聞きたいんですけど」

 

木山「あれをプレイしてくれたのかい? うれしいね、何でも聞いてくれ」

 

初春「あのゲームどうやって能力を判定してるんですか? AIみたいな感じはしませんでしたけど」

 

木山「ああ、あれはだね……」チラ

 

佐天「え? 私になにか?」

 

 

 

木山「いや、実はあれは『レベルアッパー』の改造品なんだよ」

 

 

 

佐天・初春「「ええ!!?」」

 

木山「あの機械から、バンクに接続してね。似たような能力者の演算方法を代用、筐体の補助演算装置を利用し、自分の頭で処理しているんだ」

 

佐天「『レベルアッパー』って危なくないんですか!?」

 

木山「プレイしたなら分かると思うが、一回五分で、一日一回の設定がしてあるのはそのためなんだ。終了時に解除の音楽がかかるんだが、まだ安全といえなくてね。統括理事会から実験を行ってくれ、と頼まれていなければ破棄されていたものさ」

 

初春「統括理事会から……ですか?」

 

木山「ああ。あの『レベルアッパー』事件のあと、アレを使用した人のレベルが上がったという事例の報告がきてね。どうも上位の演算能力を使用したことにより、一部の人間が『自分だけの現実』を確立できたらしいんだ」

 

佐天「つまり、扱える能力をレベル5にまで上げれば、もっと効果があるかもしれないってことですか?」

 

木山「そうだよ。だから、あのゲームでレベル5の力を出すには、そこそこの練習が必要なのさ」

 

初春「そうだったんですか」

 

木山「ふふっ、納得してもらえたかな?」

 

佐天「それにしても、あのゲームの木山先生はちょっとテンション高くなかったですか?」

 

木山「恥ずかしながらあの手のことはやったことがなくてね。見様見真似でやってみたんだが」

 

初春「なるほど~。あのゲームはどのくらいサンプルを取るんですか?」

 

木山「しばらくは取っているつもりさ。また気が向いたら遊んでくれたまえ」

 

佐天「モチロンですよ!」

 

木山「ん? そろそろ次の仕事が始まる時間だ。悪いが―――」

 

初春「はい。今日はありがとうございましたー」

 

佐天「ましたー」

 

木山「フフッ。またいつでも遊びに来たまえ」

 

 

―帰り道―

佐天「レベルアッパーかぁ~」

 

初春「そうだったんですねえ」

 

佐天「あれも悪いことばかりじゃなかったんだねえ~。あのゲームに通いつめれば私のレベルも上がるかな?」

 

初春「一日一回、五分ですけど、家で勉強してるよりは能力向上につながる気がしますよね」

 

佐天「いっそのこと、学校の授業であれを取り入れてくれればいいのに~」

 

初春「もしかしたら、そのためにデータを取ってるのかもしれませんよ~」

 

佐天「あ、そっか。まだ安全ってわけじゃないんだったね」

 

初春「そうですよ~。佐天さんが忘れないでください!」

 

佐天「ゴメン、ゴメン~。……ん? あれを御坂さんが使ったらどうなるのかな?」

 

初春「う~ん、そうですねえ……。バンクにある計算式より、よっぽどいいのを使ってるでしょうから、大して効果はないんじゃないですかね?」

 

佐天「それもそうか~。あ、でも、御坂さんと自分の能力で対戦とかできたら楽しそうじゃない?」

 

初春「確かにおもしろそうですね~。でも五分じゃさすがに決着つかないと思いますよ」

 

佐天「それでもいいんだよ、初春」

 

初春「佐天さん?」

 

佐天「たとえゲームでもさ、そんなスゴイ人と『能力』で同格に戦えるなんてさ。夢があると思わない?」

 

初春「フフッ。そうですね」

 

佐天「明日は、初春、風紀委員あるんでしょ?」

 

初春「そうなんですよね~」

 

佐天「じゃあ、早速御坂さん誘って、あのゲームやりに行ってみようかな!」

 

初春「ずいぶんあのゲーム気に入ったみたいですね~」

 

佐天「そりゃ学園都市で、レベル5になれるっていうゲームが気にならない人なんていないでしょ」

 

初春「レベル5の方は夢中にはならないと思いますよ」

 

佐天「初春はまたそんな揚げ足とるんだから~。あ! もうこんなところか。また明日ね~」

 

初春「はい、佐天さん。また明日」

 

 

 

初春と別れた後、一人佐天は空を見上げながら帰っていた。

 

 

佐天(レベルアッパーにはいい思い出もあんまりないけど……。能力が使えたあの瞬間、たしかに世界は変わって見えたんだ――)

 

 

佐天(――別にレベル5になんてなれなくてもいい。せめて能力を『自分で』使えるようになりたい)

 

 

あのゲームはその近道になるんじゃないか、そう少女は思った。

 

 

―学校―

佐天「おはよー。初春」

 

初春「おはようございます。佐天さ……ん?」

 

佐天「ん? どうかしたの?」

 

初春「ど、どうしたんですか、その頭? なんかスゴイことになってますよ」

 

佐天「いやー、昨日徹夜で能力使えないか試してたらさー、朝になっちゃったんだよね……」

 

初春「さすがにそれはやりすぎですよ。睡眠はきちんと取らないとダメですよ」

 

佐天「ははは。わかったわかった」

 

初春「もう、佐天さんはー」

 

佐天「あ、そうだ」ゴソ

 

初春「どうしかしたんですか?」

 

佐天「御坂さん誘って、昨日のゲームやりに行く約束しておこうかと思ってね」ピピピ

 

初春「御坂さんを、ですか? レベル5の御坂さんが楽しめますかね~?」

 

佐天「だから、そんなサンプルも木山先生ならほしいでしょ?」

 

初春「そういわれてみればそうかもしれませんね」

 

佐天「おっ! もう返ってきたよ」

 

初春「どうでしたか?」

 

佐天「ちょ~っと待ってね。 んー、OKだってさー」

 

初春「よかったですね~。それじゃあ放課後は楽しんできてください」

 

佐天「初春の分まで楽しんでくるよ!」

 

初春「あはは、お願いします」

 

 

―――

佐天「今日の授業も終わりっ!」

 

初春「それじゃ佐天さん、私は風紀委員ですので。また明日~」

 

佐天「じゃあねー」

 

佐天(じゃあ、待ち合わせ場所に行くとしますか)

 

 

―――

―ゲーセン前―

御坂「ごめーん。待ったー?」

 

佐天「いえ、それほど待ってませんよ」

 

御坂「今日は、黒子も初春さんも風紀委員なのよねー」

 

佐天「そうなんですよ。それで御坂さんに連絡したわけなんです」

 

御坂「で、おもしろいゲームがあるって聞いたんだけど。本当なの?」

 

佐天「ええ!! なんと、あの『木山先生』が開発したゲームですよ!!」

 

御坂「え!? 大丈夫なのそれ?」

 

佐天「御坂さんも結構ひどいですねー。あそこのゲームセンターにあるんで行きましょう」

 

御坂「そ、そんなに引っ張らないでってば!」

 

 

―ゲームセンター―

佐天「じゃじゃーん。あれがそのゲームです!」

 

御坂「レベル5シミュレーター?」

 

佐天「そうです! なんと私みたいなレベル0でもレベルがぐーんと上がっちゃうんです!」

 

御坂「だ、大丈夫なの、それ?」

 

佐天(あんまり大きい声じゃいえないんですけど、レベルアッパーの改造品みたいなんですよ)

 

御坂(ええー!! そんなのゲーセンに入れてて大丈夫いいの!?)

 

佐天(ですから、時間を短く設定して実験中らしいんです)

 

御坂「な、なるほどね」

 

佐天「あ、今日は先客がいますねー。一回五分ですから、ちょっと待ちましょうか」

 

御坂「私でも楽しめるのかしら?」

 

佐天「あははははっ。昨日、木山先生のところに話し聞きにに行ってから、何回もその話題になりましたよ」

 

御坂「初春さんと?」

 

佐天「はい! 御坂さんを誘ったのは、木山先生に協力する意味でもどうかなーという意味もありまして」

 

御坂「正直、レベルアッパーを使うのはちょっと怖いわね」

 

佐天「昨日やってみたんですけど、そんなに違和感はなかったですよ」

 

御坂「それなら大丈夫かな?」

 

佐天「あ、前の人が終わったみたいですね」

 

御坂「よーし! 覚悟を決めてみるか!」

 

佐天「いや、そこまで気合入れなくても……」

 

 

―筐体内部―

御坂「このヘルメットみたいのつけるの?」

 

佐天「そうです」

 

御坂「えーっとお金入れてっと」チャリンチャリン

 

佐天「モードが3つあるんですけど、どれにしましょうか?」

 

御坂「昨日はどれやったの?」

 

佐天「昨日は初めてだったんで、チュートリアルを。能力の使い方みたいな感じでしたね」

 

御坂「じゃあ、今日はこの体験モードにしてみましょうか」

 

佐天「オッケーです」

 

 

~ようこそ! レベル5シミュレーターへ!~

モードを選択してね!

  チュートリアル

→ 体験モード

  バトルモード

 

 

木山『ようこそ、レベル5シミュレーターへ! このモードではレベル5を体験することができるよ』

 

 

御坂「ちょ、ここに木山先生がでてくるのは予想外だったわ」

 

佐天「ですよね~」

 

 

木山『このモードは、チュートリアルなどで自分の能力の使い方をある程度分かってる人でないと楽しめないから気をつけたまえ』

 

 

御坂「なら、オッケーね」

 

佐天「なにが起こるのかな?」

 

 

木山『では、目を閉じてもらえるかな? 五つ数えるまで絶対に開けちゃダメだよ?』

 

 

御坂「これ言われると開けたくなるのよね」

 

佐天「すごくわかります」

 

 

木山『一、二、三、四、五……。はい、目を開けてごらん。レベル5の世界にようこそ』

 

 

御坂「ずいぶんあっさりなれるのね」

 

佐天「やっぱりそう思いますか」

 

 

木山『この体験モードでは、学園都市を散策できるようになっている』

 

 

佐天「散策だけ?」

 

御坂「まあ、こんなもんじゃない?」

 

 

木山『それでは楽しんできてくれたまえ』

 

 

御坂「んー、私の方は特に変化ないわね。佐天さんはどう?」ビリッ

 

佐天「昨日は螺旋丸使えたんですけど、今日は!」ゴッ

 

御坂「んー、空気砲ってところかしら? レベルだと3くらいかな?」

 

佐天「おっかしーなー。昨日はレベル4クラスの威力だったのにー」

 

御坂「チュートリアルは能力出しやすくしてるのかもしれないわね」

 

佐天「んー。ちょっと、もやっと残りますねー。竜巻ぐらい起こしてみたかったんですけど」

 

御坂「レベル5でも竜巻は……いやでも、一方通――」

 

佐天「どうかしたんですか?」

 

御坂「ええっ!? な、なんでもない!! うん」

 

佐天「そうですかー?」

 

 

~ゲームを終了します~

 

 

 

佐天「何が悪かったんでしょうかね?」

 

御坂「能力使うにはやっぱり『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』が重要だから、その辺かなぁ?」

 

佐天「ってことは、私がまだ自分のことを理解できてないってことになるんですかね?」

 

御坂「もしかしたらだけど、佐天さんの能力は風を操ることじゃないのかもしれないよ?」

 

佐天「え?」

 

御坂「あ! 例えばの話よ? 実は、本来の能力の余波で風が生まれてるだけ、とかね」

 

佐天「それはどうでしょうか~?」

 

 

 

そのころ

―風紀委員活動第一七七支部―

初春「あー、今日も平和ですね~」

 

白井「初春、そう思うのでしたら、この書類手伝ってくれてもいいではありませんの?」

 

初春「だめですよー。せっかく白井さんのために、貯めておいたんですからー」

 

白井「もとはといえば、あなたが残したものではなくて?」

 

初春「いえいえ、引き受けるって言ってくれたのは白井さんじゃないですか」

 

白井「グググ……。お姉様とせっかくデートできるチャンスでしたのに……」

 

初春「だから、私も居てあげてるじゃないですかー」

 

白井「なんでわざわざ居るのに、みてるだけですの?」

 

初春「それは白井さんの辛そうなところをみて、応援するためです」

 

白井「まったくあなたは――」

 

初春「ん? 白井さん、すみません。私も仕事のようです」

 

白井「それはよかったですわね~。今度はなんですの?」

 

初春「ハッキングです」

 

 

―――

初春(このごろハッキングが多いですね。これで何件目でしょうか? この動きは……相手は能力を使っているわけではなさそうですね)

 

白井「調子はどうですの?」

 

初春「あ、もう終わりますよーっと」カチ

 

白井「相変わらず、こういうことだけはすごいですわね」

 

初春「これくらいしかできないんですけどね~」

 

白井「何かコツでもありますの?」

 

初春「そうですね~。私の場合は、相手を『花』としてですね、モニターの動きからその花を一つ一つ想像して作り上げていってるんですよ」

 

白井「意味がわかりませんの」

 

初春「そうですか?」

 

白井「はぁ……。もういいですの」

 

初春「では、私の仕事は終わったんで帰りますね~」

 

白井「ちょ、初春!!」

 

 

―――

―帰り道―

佐天「『自分だけの現実』か~。前に初春は、思い込みっていってたんですけど、そういうものなんですか?」

 

御坂「大体そんな感じよ? あんまり小難しく考えても逆効果だし」

 

佐天「そうなんですかー」

 

御坂「どっちにしろさ、一気に能力が強くなる、なんてことはほとんどないのよ。日々の積み重ねだったりが大事なの。……って何言ってんだろ私」

 

佐天「いえ、なんとなくわかりますよ」

 

佐天(やっぱりこの人はスゴイよね。年も一つしか違わないのにさ)

 

佐天「よーし、私も頑張りますよ!」

 

御坂「ん? そう、その意気よ!」

 

佐天「明日から!」

 

御坂(だ、大丈夫かしら?)

 

佐天「やだなー。そこは今日からだろ! って突っ込んでくれないとー」

 

御坂「え!? 振りだったの!?」

 

佐天「当たり前じゃないですかー。ここのところの私は一味違うんですから! あ、でも今日はやっぱ無理かも……」

 

御坂「ど、どうかしたの?」

 

佐天「実は、昨日から寝てないんでした」

 

 

―学校―

佐天「おはよー、初春! ちゃんとパンツはいてるか~?」

 

初春「はいてますよ、佐天さん。だからスカートはめくらなくても結構です」

 

佐天「そんなこと言わずにさ~。ほら、私と初春との仲じゃな~い!」

 

初春「それでもダメです!」

 

佐天「ちぇーっ」

 

初春「そういえば、昨日はどうでした?」

 

佐天「あ、御坂さんとの話?」

 

初春「そうですよ~。結構気にしてたんですから」

 

佐天「それがね~。ちょっとイマイチだったんだよね」

 

初春「どういうことですか?」

 

 

―――

佐天「―――ってことがあったんだよ」

 

初春「そうだったんですかー。今度は四人で行ってみたいですねえ」

 

佐天「初春、今日の放課後はどうなの?」

 

初春「それがまだ昨日の分が残ってまして……」

 

佐天「それじゃあ、仕方ない」

 

初春「すみません」

 

佐天「初春が謝ることでもないでしょー」

 

 

―――

佐天「今日も特に変化なしっと。初春はこれから風紀委員なんだっけ? 頑張るね~」

 

初春「ほとんど白井さんまかせですけどね」

 

佐天「白井さんも大変だね~。その他にも現場回ってるんでしょ?」

 

初春「本当によく頑張りますよね~」アハハ

 

佐天「おいおい」

 

ガラッ

 

教師「初春、初春飾利はまだいるか?」

 

初春「はい。なんでしょうか?」

 

教師「職員室隣の応接室に客が来てる。すぐ行きなさい」

 

初春「え? 私にですか?」

 

佐天「なんかやらかしたの~? ダメだよ~、初春」

 

初春「なにもしてませんよ! その、多分ですけど……」

 

佐天「ふ~ん。じゃあ、私先に帰ってるねー。さすがに三日連続で行くのもお小遣いの方がねえ」

 

初春「そうですね。じゃあ、また明日」

 

 

その日の夜

―――

佐天「さーて、夕飯も食べたし、日々の努力とやらを始めますか~」

 

プルルルル

 

佐天「ん? 初春から? はい、もしもし?」

 

初春『あ、佐天さんですか?』

 

佐天「どうかしたの? なんか元気ないけど?」

 

初春『あ、いえ、元気がないわけじゃないんです! その……どこかで会ってお話できませんか?』

 

佐天「いいよー。場所は一七七支部にでもする?」

 

初春『そうしてもらえると助かります』

 

 

―――

―風紀委員活動第一七七支部―

佐天「こんばんわーって、初春だけ?」

 

初春「その、ですね。実は相談したいことがありまして」

 

佐天「相談?」

 

初春「はい。佐天さんが帰った後、こんなことがあったんです」

 

 

『回想』

―応接室―

コンコン

初春「失礼します」

 

木山「来たね。待ってたよ」

 

初春「あれ? お客って木山先生ですか?」

 

木山「そうなんだ。実はキミにお願いしたいことがあってね。それでここまで来たんだ」

 

初春「私に、ですか?」

 

木山「ああ、キミに実験に協力してほしいんだ」

 

初春「え?」

 

木山「あの『レベル5シミュレーター』が破棄されなかった理由は、おととい二人で聞いただろう?」

 

初春「より上位の能力を体感することで、レベルが上がった人がいたから、でしたっけ?」

 

木山「そう。そして、そこでは言わなかったが、もう一つ理由があるんだ」

 

初春「はい?」

 

 

 

木山「高レベルになることによって、優れた能力を発揮できる者を探すというものなんだよ」

 

 

 

初春「そ、そうだったんですか?」

 

木山「『能力追跡』のような、普段才能を発揮できない能力者が、レベルが低いものの中にもいるかもしれない、ということらしいんだが」

 

初春「も、もしかして、私はすごい能力を!?」

 

木山「いや、キミは普通の発火能力者(パイロキネシスト)の系統だったよ」

 

初春「そ、そうですか……」

 

初春「では、実験の協力というのは?」

 

 

 

木山「キミには『レベル5シミュレーター』の最新機のテストプレイヤーになって欲しいんだ」

 

 

 

初春「えええ!? なんで私なんですか!?」

 

木山「実は、以前うちの職員の一人が、あるところにハッキングをしてね」

 

初春「え? ハッキングですか……? それは犯罪ですよ?」

 

木山「はは、あっさりと捕まっていたよ」

 

初春「当たり前です!」

 

木山「風紀委員に、すごい腕のハッカーがいて、その人物の知識と技術を詰め込んで作ったセキュリティは破られたことがない、という噂があるらしいんだ」

 

初春(ここ最近ハッキングが多かったのはそのせいですか……)

 

木山「捕まった職員は、それを確かめようと挑んであっけなく敗北。そのハッキング先というのが――」

 

初春「私のいる支部、というわけですか?」

 

木山「その通り。その支部の名簿の中で、こういう知識が一番あるのはキミだったというわけさ」

 

初春「それでしたら、たしかに私だと思いますが……」

 

木山「キミはレベル1だろう? その件などを見るに、レベルに見合わない計算式がキミの中では組み立てられていると考えたらしいんだよ」

 

初春「つまり……?」

 

 

 

木山「キミが『自分だけの現実』を開花させられれば、短期間で上位の能力者になれるかもしれないんだ」

 

 

 

初春「えええ!?」

 

木山「さきほど説明した『潜在的に優れた能力を持つ者』を探すにも、まだまだ『レベル5シミュレーター』の知名度は低くてね」

 

初春「……それで、能力が急激に上がった、という事例を看板にしたいわけですか?」

 

木山「キミ以上の適任者がいないようでね。私の知り合いでもあるし、どうかと思ってきたわけなのだが」

 

初春「そのテストプレイは危なくないんですか……?」

 

木山「危なくない……と言いたいところだが、正直なところどの程度危険か分からないんだよ」

 

初春「…………」

 

木山「無理にとは言わない。私は以前、教え子たちを巻き込んでしまっているからね。その気があったら、また研究室に来てくれたまえ」

 

初春「はい……」

 

 

―――

初春「――というわけなんです……」

 

佐天(初春が高レベルの能力者に?)

 

 

初春「佐天さんはどう思いますか?」

 

 

佐天「え?」

 

初春「佐天さんは、こんな話を持ちかけられたらどうしますか?」

 

佐天「えーと……」

 

初春「私、どうしたらいいかわからなくて……」

 

佐天「…………ダメだよ? 初春。そういうことは、他の人に聞くもんじゃないんじゃない?」

 

初春「え?」

 

佐天「それはあくまで自分の能力に関する問題なんだよ? そりゃとっても危ないっていうなら止めるけどさ~」

 

初春「そうでしょうか?」

 

佐天「そうそう! 自分で決めた道を進まなきゃ!」

 

初春「そうですよね。帰ってもうちょっと考えてみます」

 

佐天「どっちの道をとるにしてもさ、私は初春を応援するから!」

 

初春「ありがとうございます、佐天さん」

 

 

―――

佐天(ちょっと、投げやりな反応だったかな~……。昨日、御坂さんのあんな話聞いたばっかりだったし……)

 

 

佐天(どっちにしても、私みたいな凡人はコツコツやるしかないもよね!!)

 

 

 

―学校―

佐天「初春、おはよー」

 

初春「あ、佐天さん。おはようございます」

 

佐天「昨日話してたやつどうするか決めたの?」

 

初春「それが、まだ決めてないんですよ。今日の放課後に木山先生にもっと詳しい話を聞きに行くつもりです」

 

佐天「あれ? 風紀委員の方は?」

 

初春「固法先輩と白井さんに話したら、今日は休んで大丈夫だって言われました」

 

佐天「そりゃ、初春の昇進がかかってるもんね~」

 

初春「それで、なんですけど」

 

佐天「ん?」

 

初春「よかったら、佐天さんも一緒に来てくれませんか?」

 

佐天「え? な、なんで?」

 

初春「その、ちょっと心細いんです。いきなりレベルが上がるかもしれない、なんて言われてしまって……」

 

佐天(初春……)

 

佐天「よーし、わかった。じゃあついて行ってあげる!」

 

初春「佐天さん……」

 

佐天「その変わり、今度初春のおごりでパフェね!」

 

初春「ありがとうございま――って、おごり……ですか?」

 

佐天「いつものファミレスのデラックスパフェで、手を打ってあげよう!」

 

初春「うー、仕方ありません! そのくらいなんともないです!!」

 

佐天「じゃあ、ストロベリーサンデーも追加ね!」

 

初春「え!?」

 

佐天「よーし、そうと決まったら放課後気合入れていくよー、初春!」

 

初春「ちょ、佐天さん! ストロベリーサンデーは勘弁してください!」

 

佐天「ダメダメ~。ほ~ら、今日のパンツはいちご柄かな~?」バサッ

 

初春「ちょ、さ、佐天さん! やめてください!」

 

 

放課後

―――

初春「それじゃ、佐天さん。お願いします」

 

佐天「ん? 木山先生のところ行くんでしょ? そんなにカチカチにならなくてもいいんじゃない?」

 

初春「そ、それもそうですよね~」

 

佐天「それに、まだ高レベルになれると決まったわけじゃないんだよ~」

 

初春「う、そうでした。今日一日ムダに緊張し過ぎちゃいましたよ~」

 

佐天「ま、初春らしいけどね~」

 

 

―研究所―

初春「おじゃましまーす」

 

佐天「木山先生います?」

 

木山「お、来てくれたのかい? まあ、かけてくれたまえ」

 

初春「では、失礼して……」

 

木山「そっちのキミも彼女から話を聞いたのかい?」

 

佐天「もしかして聞いちゃまずいことでした?」

 

木山「フフッ。そんなことはないよ」

 

佐天「驚かせないでくださいよ~」

 

木山「すまないね。それで、返事を聞かせてくれるのかい?」

 

初春「そのことなんですが」

 

木山「ん?」

 

初春「もう少し詳しい話を聞かせてもらえませんか?」

 

木山「構わないよ。キミの不安も分かるからね」

 

木山「それで、何を聞きたいかね?」

 

初春「最新機ということですが……」

 

木山「ああ。実はキミに話を持っていったのはいいんだが、まだ完成していなくてね」

 

佐天「完成してないんですか?」

 

木山「ああ、どうもバランス調整がうまくいってないんだ」

 

初春「バランス調整……?」

 

木山「新型の『レベル5シミュレーター』には、補助AIをのせることにしてね」

 

佐天「AIって学園都市でも完全なものはできてましたっけ?」

 

木山「いや、そういうものではなく、あくまでプレイヤーの思考を読んで、実行するだけの補助装置だと思ってくれればいい」

 

初春「その補助AIでなにをするんですか?」

 

木山「ゲーム内部で行った能力使用の経験を、その補助AIで頭に植えつけるのさ」

 

佐天「植えつける?」

 

木山「表現がよくなかったかな? 学習装置(テスタメント)のように頭に書き込むものではなく、『強く印象付ける』というのが正しいかな」

 

初春「能力を使った経験を強く印象付ける……」

 

木山「『自分だけの現実』は、思い込みみたいなものだからね。できると強く思えるようにする手伝いをするのさ」

 

佐天「思い込み……」

 

木山「プレイヤーの思考を読み取って、能力に関するアドバイスを表示したり、動きに違和感がないように、無意識に行っていることの補助もしてくれる」

 

初春「え? 今のシミュレーターでも、違和感はそんなにありませんでしたよ?」

 

木山「能力は繊細だからね。その微妙な違和感を取り去るのも、研究課題の一つとして挙げているのさ」

 

佐天「バランス調整がうまくいかないっていうのは……」

 

木山「それが、印象付けが強くなりすぎたり、AIがプレイヤーの思考を読めなかったりしてね」

 

初春「だ、大丈夫なんですか?」

 

木山「昨日はおどかすようなことを言ったが、それほど危険はないと思うよ」

 

佐天「その新型はいつごろ完成する予定なんですか?」

 

木山「本体は完成しているんだ。あとは補助AIの調整だけなんだが、まだ二、三日かかるかもしれない」

 

初春「そうですか」

 

木山「それで、キミはどうする? 時間はまだあるし、完成してからでも―――」

 

 

 

初春「…………いいえ、やらせてください」

 

 

 

佐天「初春!?」

 

木山「いいのかい?」

 

初春「はい。佐天さんと昨日話してなければ、まだ迷っていたと思います。ですけど決めたんです」

 

佐天(初春……)

 

木山「そうかい。では完成したら連絡するよ」

 

初春「はい、よろしくお願いします!」

 

木山「ああ。それから、一応規則になっているのでこっちにサインだけしてくれるかな?」

 

初春「え~と、『実験受諾書』ですか? 分かりました」サラサラ

 

木山「それじゃあ、これから頼むよ。新型が完成したら、携帯に連絡を入れるからね」

 

佐天「じゃあ、帰ろうか、初春」

 

初春「はい! 佐天さん」

 

木山「そうだ、待ちたまえ。形式的には実験になっているからね。協力者には、報酬がでるんだ。この額が、実験後に振り込まれる」ピラ

 

初春「え? これ結構な額なんじゃ?」

 

佐天「いち、じゅう、ひゃく、せん……。ええっ!?」

 

木山「それでは、気をつけて帰りたまえ」

 

初春・佐天「「は、はい……」」

 

 

―帰り道―

佐天「いや~、すごいね~」

 

初春「中学生にこんなに出していいんでしょうか?」

 

佐天「う~ん。でもよく考えたら、御坂さんたちはこれ以上の額を奨学金でもらってるわけなんでしょ?」

 

初春「さすがお嬢さまですね……」

 

佐天「あ、初春。パフェの件だけど、さらに追加してもいいんじゃない!?」

 

初春「はいっ! 今日は本当に感謝してます! 早速これから行きましょうか?」

 

佐天「お、いいね~。レッツゴー!!」

 

 

―ファミレス―

佐天「うーっぷ。もう食べられないかも」

 

初春「ジャンボパフェ、ストロベリーサンデー、チョコデラックスにバニラスペシャル……。食べすぎですよ?」

 

佐天「ひさびさにリミッター解除したからね~」

 

初春「フフフッ。それにしても、今日は本当にありがとうございました」

 

佐天「そんな大層なことしたかな~? 後ろについていっただけじゃん?」

 

初春「い~え、私にとっては、とてもありがたかったんです」

 

佐天「それって、昨日の話のこと?」

 

初春「もちろんそれもありますけどね」

 

佐天「そうかな?」

 

初春「はい! 自分で決めろって言ってくれたり、どっちでも応援してくれるなんて少しくさいセリフでしたけど」

 

佐天「そ、そうかな? 言ってるときは意識してなかったけど、ちょっと恥ずかしいかも」///

 

佐天「さーて、じゃあそろそろ帰ろっか、初春」

 

初春「そうですね。もうこんな時間ですしね」

 

佐天「明日は休みの日だけど、風紀委員はあるの?」

 

初春「明日はお休みですね~。久しぶりに四人で遊びに行きましょうか?」

 

佐天「いいね~。じゃあ連絡は初春にまかせてもいいかな?」

 

初春「はい。ではまたメールしますね~」

 

佐天「じゃね~」

 

 

―――

佐天(自分では投げやり気味に言った言葉でも、初春があんなに強く受けとめてくれてたなんて思わなかったな~)

 

 

佐天(でも、言ったからには全力で応援してあげないとね)

 

 

佐天(でも……、初春が高レベルになっても、私はそのままでいられるかな……?)

 

 

 

―セブンスミスト―

初春「――というわけなんですよ」

 

御坂「へえ~。すごいじゃない」

 

白井「あまり期待しすぎないほうがいいんじゃないですの?」

 

佐天「素直に祝ってあげましょうよ~、白井さん」

 

初春「まだ、レベルが上がると決まったわけでもないですし、白井さんの言う通りですよ~」

 

初春「それで、今日はあとどこ回ってみますか?」

 

佐天「白井さんが、まだあのゲーム体験してないですよね? 一回はやってみません?」

 

白井「そうですわね~……。まあ、一度くらいなら」

 

御坂「じゃあ決まりね。行きましょうか」

 

 

―ゲームセンター―

御坂「二人ずつしかできないけど、誰と誰で入る?」

 

初春「白井さんと……」

 

佐天「じゃあ私!」

 

白井「わかりましたわ。じゃあ入りますわよー」

 

御坂「あ、おとといは気が付かなかったけど、外からもモニターできるみたいね」

 

初春「え? あ、これ画面だったんですか~」

 

御坂「ちょっと気づきにくいかもね」

 

初春「中で設定するみたいですけどわかりますか~?」

 

白井『えーと、これでどうですの~?』

 

御坂「あ、写ったわ。オッケー」

 

 

―筐体内部―

白井「それではヘルメットを付けて、と」

 

佐天「前回は体験モードにしたんですけど、散策だけだったので、今日はバトルモードにしてみませんか?」

 

白井「おまかせしますの」

 

 

~ようこそ! レベル5シミュレーターへ!~

モードを選択してね!

   チュートリアル

   体験モード

→ バトルモード

 

 

佐天「あれ? バトルモードはいろいろ種類があるみたいですね」

 

白井「え~と、『シングル』、『VS』、『ダブルス』と『オンライン』ですの? 四つもありますのね」

 

佐天「どれにしましょうか?」

 

白井「『VS』か『ダブルス』あたりがいいのではなくて?」

 

佐天「『オンライン』も二人でできるみたいですから、そっちにしてみませんか~?」

 

白井「いいですわよ」

 

 

木山『やあ。オンラインバトルモードにするのかい? まずは、対戦相手に表示されるニックネームを決めてくれたまえ』

 

 

白井「この方は、相変わらずですのね」

 

佐天「相変わらず、ちょっとテンション高めですけどね」

 

白井「ニックネームは、何にしましょうか……」

 

佐天「六文字以内ですか。そうですね、私は……」

 

白井「白黒、でいいですわね」

 

佐天「私は、SATENっと」

 

 

木山『では、対戦相手を見つけるまで少々待ってくれたまえ』

 

 

SATEN「どのくらい時間かかるんでしょうか?」

 

白黒「他にプレイしてる方次第ではありませんの?」

 

 

木山『……対戦相手が見つかったよ。では、目をつぶって(中略)これで、レベル5だ。では、対戦フィールドに案内しよう』

 

 

SATEN「対戦フィールドは図書館みたいなイメージですねー」

 

白黒「あら? あれが相手の方ですの? なにやらデフォルメされたキャラクターのようですが……」

 

 

婚后☆光子「オーッホッホッホッホッホ」

 

 

一夜「その、よろしくお願いします」

 

 

白黒「こ、婚后光子……」

 

SATEN「もう一人は湾内さんでしょうか?」

 

婚后☆光子「あら、白井さんではありませんの?」

 

一夜「そちらの方は、お久しぶりですわ」

 

SATEN「久しぶりですね~」

 

SATEN「でも、どうしてここに?」

 

一夜「婚后さんと遊びにきましたら、面白そうなものがありましたので」

 

白黒「なるほど。……あなたでもゲーセンなどに行くのですわね」

 

婚后☆光子「あら? 意外かしら? 庶民の遊具も嗜んでいましてよ?」

 

SATEN「そ、そうですか」

 

 

木山『では対戦を始めるよ? 制限時間は三分だ。存分に楽しんでくれたまえ』

 

 

レディーファイト カーン

 

 

白黒「え!? いきなりですの!?」

 

婚后☆光子「白井さん、よそ見はだめでしてよ!」ビュン

 

白黒(手に触れていないのに、能力を発動していますの!?)シュン

 

一夜「避けられてしまいましたわ」

 

SATEN「今度はこっちが!」ゴッ

 

一夜「えいっ!」ギュルギュル

 

白黒「水で防御しましたの? 私は……」シュン

 

婚后☆光子「あら、危ない。そちらも手を触れずとも、能力が発動してるではありませんの」

 

白黒「どこぞのテレポーターみたいでちょっとアレですけど、結構使い勝手は良さそうですの」

 

SATEN「まだまだ行きますよ~」

 

―――

――

~ゲームを終了します~

 

 

―――

御坂「おつかれー」

 

白井「なかなか面白いですわね。あの婚后光子に一泡吹かせてやりましたの」

 

初春「あはは。白井さんも結構ダメージ受けてましたけどね」

 

佐天「なんとか生き残るので精一杯だったよー」

 

初春「佐天さんもお疲れ様でした」

 

佐天「初春と御坂さんもやります?」

 

御坂「んー、どうしよう?」

 

初春「そうですねえー」

 

ピリリリ

 

佐天「ん? 初春、ケータイ」

 

初春「そうみたいですね。えーと、木山先生からです」

 

初春『はい、もしもし……』

 

佐天「昨日の今日でもう完成したんですかね~?」

 

白井「そうかもしれませんわね」

 

御坂「何話してるんだろ?」

 

―――

 

初春「おまたせしましたー」

 

佐天「なんだったの? 完成したって?」

 

初春「まだちょっと分かりません。今から来れないかーって聞かれました」

 

御坂「ちょうどいいし、みんなで行ってみよっか?」

 

白井「そうですわね。多分、問題ないでしょう」

 

佐天「じゃあ、すぐに行ってみましょー!」

 

 

―研究所―

御坂「こんにちはー」

 

白井「お久しぶりですの」

 

佐天「またきましたー」

 

初春「ははは……」

 

木山「おや、四人で来たのかい」

 

佐天「ちょうど、四人で遊んでいましたので!」

 

木山「ああ、それでか。みんなに来てもらえて嬉しいよ。早速だが、ちょっとついてきてくれるかな?」

 

初春「え? ここで話をするわけじゃないんですか?」

 

木山「ああ、まだ実物を見せていなかっただろう? 下のフロアにあるんだよ」

 

初春「わかりました」

 

 

―研究所 地下フロア―

木山「これが、新型の『レベル5シミュレーター』、『LUS-02』だ」

 

白井「まあ、随分と大きいのですわね」

 

木山「まだ、α版だからね。小型化はまだ先さ」

 

御坂「『LUS-02』が名前ですか?」

 

木山「ああ、『Level Up Simulator』というのが正式名称なんだ。だが、『レベル5シミュレーター』の方が喰いつきが良さそうでね」

 

佐天「たしかに」

 

初春「うわー、スゴイですね~。病院でみるCTの機械みたいです」

 

木山「今日中には調整が完了しそうなんだ。早速明日からテストプレイを始めたいのだが、予定は大丈夫かね?」

 

御坂「え? そんなにすぐ始めるんですか?」

 

木山「ああ、上が早くしろとうるさくてね。こちらとしては、もう少しじっくりとやりたいのだが」

 

初春「時間はどのくらいかかるんでしょうか?」

 

木山「午前中に始めれば、お昼ちょっとには終わるだろう。学校の方には、こちらから連絡しておくよ」

 

初春「あ、はい。わかりました」

 

佐天「ああ、そうだ。そういえば、今日バトルモードをやってみたんですけど」

 

木山「おや? まだやってなかったのかい? てっきり、キミたちなら一番最初にそれをやると思っていたのだけれど」

 

御坂「はははは……」

 

佐天「それで、『オンライン』をやったんですけど、なんで相手はデフォルメされてたんですか?」

 

木山「相手から見れば、キミたちもデフォルメされて見えているんだよ」

 

白井「そうでしたの?」

 

木山「ああ。リアルにしてもよかったのだが、生身の人間を攻撃できるようにするのはちょっとね」

 

佐天「う、確かに……」

 

白井「それもそうですわね」

 

初春「ううう、血がドバドバ出てくるのを想像しちゃいましたよ……」

 

御坂「結構グロテスクな想像するわね……」

 

研究員「所長」

 

木山「ん? どうした?」

 

研究員「この数値でいかがでしょうか?」

 

木山「まだ、少し高いな……。あとコンマ1下げるようにしてくれ」

 

研究員「わかりました」

 

御坂「へえ~。所長だったんですね」

 

木山「お恥ずかしながらね。レベルアッパーに一番詳しいのは私だから、さ」

 

佐天「何人くらいでやってるんですか?」

 

木山「ここの研究員は十人くらいだよ。本体の製造は外注しているから大人数はいらないんだ」

 

初春「えーと、それでテストプレイは何回くらいやる予定なんですか?」

 

木山「おっと話がそれてしまったね。テストプレイの回数は一回目の結果次第になる。まだ、なんとも言えないんだ」

 

白井「初春の成果次第ですわね」

 

御坂「がんばってね、初春さん」

 

初春「キンチョウしてきました……」

 

木山「フフッ。硬くならないでも大丈夫だよ。キミには失敗しても損はないだろう?」

 

初春「そ、そうですよね」

 

佐天(でも、成功すれば一気に高レベル、か)

 

木山「それじゃあ、明日学校に行く時間と同じくらいにここに顔を出してくれればいい」

 

初春「わ、わかりました」

 

佐天「じゃあ、明日は初春学校休みか~」

 

木山「実験が早めに終われば、午後は学校に行けるだろうさ」

 

初春「では、明日はよろしくお願いします!」

 

木山「いや、それはこっちのセリフなのだが……」

 

佐天「じゃあ、おじゃましましたー」

 

御坂「さようなら~」

 

白井「失礼しますの」

 

木山「ああ、また来たまえ」

 

 

―帰り道―

佐天「いよいよ、明日か~」

 

初春「今日は眠れないかもしれません!!」

 

御坂「緊張し過ぎだってば~」

 

白井「そうですわよ、初春」

 

初春「そ、そうですよね」

 

佐天「結局ここのところずっと緊張しっぱなしなんじゃないの~?」

 

初春「ううう、そうなんですよ」

 

御坂「緊張のし過ぎもよくないわよ」

 

白井「早めに休んだほうがよさそうですわね」

 

初春「それじゃ、みなさん、また明日~」

 

白井「支部でまってますので、終わりましたら顔くらいみせてくださいな」

 

佐天「学校に来れたらくるんだよ~」

 

御坂「明日は頑張ってね~」

 

初春「は~い。それではー」

 

 

―――

佐天(いよいよ明日が一回目のテストプレイか~)

 

佐天(成功したらあたしにも使わせてもらえるかな? 初春だけじゃずるいもんね~)

 

 

―学校―

佐天(今ごろやってるころかな~)

 

佐天(終わったら、学校来る前にメールくらいしてくれるかな?)

 

 

―――

佐天(う~ん。結局今日は学校に来なかったな~)

 

佐天(長引いてるのかな? 風紀委員の方に行ってみよっと)

 

 

―――

―風紀委員活動第一七七支部―

佐天「こんにちはー、初春きましたー?」

 

固法「あら、いらっしゃい。初春さんならまだ来てないわよ」

 

佐天「まだ、終わらないのかな~。午前中で終わるって言ってたのに~」

 

固法「フフッ。すぐに二回目のテストを始めたんじゃないの?」

 

佐天「あんまり長時間はできないと思うんですけどね」

 

 

―――

御坂「こんにちは~」

 

白井「初春はきましたの?」

 

佐天「いえ、それがまだ……」

 

御坂「何かあったのかしら?」

 

固法「そんなに気になるなら、見に行けばいいじゃない」

 

御坂「それもそうですよね」

 

佐天「そうですね。そうしましょうか~」

 

固法「あ、白井さんはダメよ。風紀委員なんだからね。それに、行き違いになったら困るでしょ?」

 

白井「う、そうですわね。……ではお二人におまかせしますわ」

 

佐天「りょーかいです!」

 

 

―研究室―

佐天「おじゃましまーす」

 

御坂「って誰もいないじゃない……」

 

佐天「シミュレーターの方でしょうかね? 下行ってみましょうか」

 

 

―研究室 地下フロア―

ガヤガヤ

 

佐天「お、木山せんせー!」

 

御坂「ん? なんか雰囲気がおかしくない……?」

 

佐天「そういえばそうですねー」

 

木山「!! キミたちいいところにきた!」

 

御坂「どうかしたんですか?」

 

木山「それが実は―――」

 

 

『回想』

木山「よく来てくれたね。じゃあ早速説明することにしよう」

 

初春「はい」

 

木山「今日は初めての有人テストだから、軽めにテストして終わりにしようと思う」

 

初春「わかりました」

 

木山「見ての通り、旧型のヘルメットタイプではなく、カプセルタイプのものになっている。そこに横になってもらえるかな」

 

初春「ここですか?」

 

木山「ああ、それで、そこの青いボタンを押してくれ。それで外からもモニターできるようになる」

 

初春「はい」ポチ

 

木山「モニターの方はどうだ?」

 

研究員「オッケーです」

 

木山「では起動したら、体験モードを選択してくれ。そこで代理演算機能などは起動せずに、五分程度能力を使ってもらって休憩を取る」

 

初春「代理演算機能って、レベルアッパーのことですよね? 起動しないんですか?」

 

木山「ああ。まだ、補助AIの動作確認などの軽めのテストだからね」

 

初春「あ、そうでしたね」

 

木山「では、カプセルを閉じるよ。頑張ってくれたまえ」

 

初春「はい」ガチャ カチッ

 

研究員「では、所長。起動します」

 

木山「ああ、頼む」

 

ウィィィィィィィン

 

木山「どうかな?」

 

初春『はい、今のところ特に問題はありません』

 

木山「では、さきほど言った通り、体験モードで能力を試してみてくれたまえ」

 

初春『わかりましたー。体験モード……っと』ピ

 

初春(『レベル5シュミレーター』はネットに繋いでいるようですが、情報の流出とか大丈夫なんですかね? セキュリティはどうなっているんでしょうか? う~ん。そうですね、私だったら……)

 

キュィィィィィィィン

 

研究員「ん? あれ?」

 

木山「どうした?」

 

研究員「それが、モニターが消えてしまいました」

 

木山「なに?」

 

木山「初春くん。聞こえるかね? モニターのボタンを押して欲しい」

 

初春『…………』

 

木山「…………? 様子がおかしい。テストを終了させろ!」

 

研究員「できません!」

 

木山「なぜだ! 強制終了プログラムがあるだろう!?」

 

研究員「それが……強制終了プログラムにプロテクトがかかっています!」

 

木山「なんだって……?」

 

 

―――

木山「ということがあって、原因を調べたのだが、どうやら補助AIが誤作動を起こしているようなんだ」

 

御坂「誤作動……?」

 

木山「補助AIは元々、プレイヤーの思考を読み取って、能力に関するアドバイスを表示したり、無意識に行っていることの補助もしてくれるのだが――」

 

佐天「え?」

 

 

木山「――それが、彼女の思考を読み取って、次々と防壁セキュリティのプログラムを作り始めてしまっている」

 

 

御坂「それってつまり……」

 

木山「おかげで強制終了プログラムが起動できない」

 

佐天「それって、初春はまだあの中にいるってことですか!?」

 

木山「そうなる……」

 

佐天「だ、大丈夫なんですよね!?」

 

木山「今のところ命に別状はないが、長時間の使用を前提としていないから、生命維持装置などがついていないんだ」

 

佐天「そんな……じゃあ、初春は……」

 

御坂「ど、どのくらいは大丈夫なの?」

 

木山「もって、二日か三日だろう……」

 

御坂「……強制的に電源を落とすのは?」

 

木山「できなくはない」

 

佐天「だったら!」

 

木山「だが、今彼女は『LUS-02』と一体化しているんだ。無理に電源を落としたり、カプセルを開けたりすると、脳にどんな影響が出るか分からない……」

 

御坂「パソコンの電源を引っこ抜くようなもの、ってこと?」

 

木山「ああ。それに、統括理事会からも、手段がないなら放っておけ、と言われてしまった」

 

佐天「そんな!? 統括理事会が? なんで!?」

 

木山「あの機械はバンクからデータを取り入れているんだ。そちらのセキュリティレベルが今日の午前中から格段に上がり続けているそうなんだよ」

 

御坂「バンクの……?」

 

木山「おそらくこの子のせいだろう。理事会が放っておくのも、正式なパスを持っている者は、問題なく通過できているからだろうね……」

 

佐天「そ、そんな……」

 

御坂「…………ここに、あのマシンに接続できる端末はあるかしら?」

 

佐天「御坂さん……?」

 

御坂「要するに、そのセキュリティを破って、強制終了プログラムを起動すればいいんでしょ?」

 

木山「あ、ああ。その通りだが……」

 

御坂「なら、私の出番じゃない」

 

 

―――

木山「この端末が、一番スペックが高い」

 

御坂「そ。ありがと」カタカタ

 

木山「強制終了プログラムを起動する以外にも、補助AIプログラム自体を破壊することでも止めることができると思う」

 

御坂「破壊しちゃっていいのね。わかったわ」

 

木山「それから、気をつけたまえ。一度侵入を許した方法は、失敗しても、次からは使えないと思ってくれ」

 

御坂「初春さんと一発勝負ってワケね……」

 

佐天「がんばってください……」

 

御坂「まかせておいて。初春さんは助け出してみせる」

 

木山「並みのレベルのセキュリティではない。用心してくれ」

 

御坂「わかったわ」

 

御坂「行くわよ……」

 

木山「頼む……」

 

佐天「………ッ」

 

カタカタ ビリッ

 

御坂「…………」

 

 

―『LUS-02』―

初春(ここは、どこでしょう……?)

 

初春(私は何をしていたんでしたっけ?)

 

ピピピピ

 

初春(ん? 私のセキュリティに侵入者ですか。いいでしょう、相手になります! 能力者のようですが、手加減はしません!!)

 

 

―研究所 地下フロア―

御坂「ぐっ! 急に、処理スピードが増した!?」ビリッ

 

佐天「だ、大丈夫ですか?」

 

木山「今の彼女は、補助AIによって、思っただけでプログラムが作成できる……」

 

御坂「ッ! このっ!」バリッ

 

御坂(くっ! 能力を使っても、処理が追いつかない! 初春さんはこんなに凄かったの!?)

 

佐天「ど、どうですか?」

 

御坂「…………ダメだったみたい。失敗したわ」

 

木山「どうすれば、いいんだ……」

 

佐天「初春……」

 

御坂(これでダメとなると……)

 

御坂「外からの侵入では、すでに防壁が組まれてしまってるんですよね……?」

 

木山「ん……? そうだが」

 

御坂「それじゃあ……、バンク側から侵入はできないんですか?」

 

木山「…………そうか、バンクからならシステムの内部と判断されて、セキュリティがまだ少ないかもしれない……」

 

御坂「でも、気づかれたら、一瞬でここからのセキュリティと同じ対応を取らてしまうわね……」

 

佐天「……なんとか私にも戦える方法があれば」ボソ

 

木山「戦う? …………そうか」

 

御坂「なにか方法があるの!?」

 

木山「ああ。旧型の『レベル5シミュレーター』、『LUS-01』を使うんだ」

 

佐天「え? あれを使って……ですか?」

 

木山「あれのバトルモードを使えば、同機種系統である『LUS-02』への介入ができるかもしれない」

 

御坂「ほ、本当!?」

 

木山「御坂くんでダメだったんだ。もう通常のハッキングによる方法では、彼女を救うのはおそらく不可能だ。だが、これなら……」

 

御坂「それにはどうすればいいのかしら?」

 

木山「まず、こちらで『LUS-01』のバトルモードを調整しなければならない」

 

佐天「調整……ですか?」

 

木山「ああ、対人間から対マシンモードにするんだ」

 

御坂「対マシン?」

 

木山「セキュリティやウイルスなどのプログラムを仮想敵として戦闘を行えるようにするのさ」

 

佐天「つまり……」

 

木山「そう。そのモードでプレイヤーが『LUS-02』に侵入し、セキュリティを突破。最終的に補助AIを破壊することになる」

 

佐天「でも、その対マシンモードはいつできるんでしょうか……?」

 

木山「安心したまえ。モード変更は、すぐにでもできる。だが、オンラインで実行にするための調整には、少し時間がかかるというだけだ」

 

御坂「なるほどね」

 

木山「明日正午までには、なんとしてもその調整を完了させる」

 

佐天「そ、そうだ! 何台も使って、大人数で攻撃とかはできないんでしょうか!! それができれば――」

 

木山「いいや、それは止めておいた方がいい。バトルモードは回線を圧迫してしまう。大人数になればなる程、個人の動きは制限されてしまう」

 

佐天「でも、じゃあ二人だけで初春を……」

 

木山「この方法の問題は、それだけじゃない。忘れているかもしれないが、まだ『レベル5シミュレーター』はまだ安全じゃないんだよ」

 

佐天「そういえば……」

 

木山「可動制限時間の枠を外しても、タイムリミットはせいぜい十分から十五分だろう」

 

佐天「十五分……」

 

御坂「二人で十五分以内にセキュリティを破って、補助AIを破壊……。厳しいわね……」

 

佐天(初春……)

 

御坂「どちらにしろ、仕掛けるのは明日になるんでしょ? なら、そのバトルモードの練習とかはできないのかしら?」

 

木山「もちろんできる。ついてきたまえ。――ああ、その前に、研究員たちに指示を出してくるよ」

 

佐天「あ、はい……」

 

 

―研究所 1F―

木山「ここだ」

 

佐天「突入は御坂さんと白井さんですよね……。頑張ってください」

 

御坂「え?」

 

佐天「だって、なんの取り得もないレベル0の私が行くよりも、成功の確率だって……」

 

木山「まだ、決め付けるのは早いんじゃないかい? キミがレベル0だからと言って、何の取り得もないという訳ではないじゃないだろう?」

 

佐天「え?」

 

木山「能力は『思い込み』みたいなものだと言ったね?」

 

佐天「はい……」

 

木山「もしかしたら、キミが初春くんを助けたいという気持ちが、何かの力になるかもしれない」

 

佐天「そんなことって……」

 

木山「これから使うのは『レベル5シミュレーター』だ。そういった気持ちも、この中では強さになり得るのさ」

 

佐天(私が、初春を……)

 

佐天「…………そうですよね。やる前から諦めてたら、助けられるものも、助けられなくなってしまいますよね」

 

木山「そういうことだ。救出はキミたちにかかっているんだ……。では中に入ってくれたまえ」

 

御坂「わかりました」

 

佐天「頑張ります」

 

 

―筐体内部―

木山『手動で起動する』

 

御坂「はい」

 

佐天「わかりました」

 

木山『では、いくぞ……』

 

 

LUS-01『システムを起動します。バトルモード開始五秒前』

 

 

御坂「いくわよ」

 

佐天「…………」

 

 

LUS-01『バトルモード開始します』

 

 

御坂「って、あれ? なにもいないんだけど?」

 

佐天「もしかして失敗ですか?」

 

木山『いいや、まだプログラムを入れていないだけだ。今、入れる』

 

ワラワラ

 

御坂「あれかしら?」

 

佐天「マンガの病原菌のウイルスみたいですね」

 

御坂「いかにも、って感じじゃない」

 

木山『一定の動きをするようにしてある。能力を試してみてくれたまえ』

 

御坂「そーれっ!」ビリッ

 

佐天「えいっ!」ゴッ

 

木山『ん?』

 

御坂「あ、倒したわ」

 

佐天「能力が当たれば、倒せるみたいですね」

 

木山『佐天くん。キミは何度かこのマシンで遊んでくれたんだったね』

 

佐天「え、そ、そうですけど……?」

 

木山『それにしては、少々出力が低すぎる』

 

佐天「……やっぱり私なんかじゃ」

 

御坂「佐天さん……」

 

 

木山『キミは空気を圧縮する能力だろう? その程度の圧縮弾ではあまり威力がでない』

 

 

佐天「えっ!?」

 

木山『ん? だから、その程度の圧縮弾では――』

 

佐天「その前!!」

 

木山『キミは空気を圧縮する能力なんだろう?』

 

佐天「そ、そうなんですか!?」

 

木山『自分の能力を知らなかったのかい? このゲームでは、様々な環境データも採取しているからね。どんな能力かはある程度わかる』

 

御坂「佐天さん。今度はイメージをしっかりもって、能力を発動させるのよ」

 

佐天「イメージをしっかりもって……」

 

佐天(圧縮……圧縮……)

 

佐天「えいっ!」ギュオ

 

御坂「空気の塊を手のひらの上に集中できたわね? そしたら敵に向かって――」

 

佐天「撃つ!」ゴッ

 

ドドドドドド

 

木山『ふむ。自覚的になったことで威力がだいぶ上昇したようだね』

 

佐天「やった……」

 

御坂「あとは、いろいろな使い方をマスターできれば、もっと戦えるわよ」

 

佐天「いろいろな使い方?」

 

御坂「私なんかは、電気を飛ばす以外にも、磁力を使って砂鉄の剣を作ったりしてるの」

 

佐天「どんな使い方がありますかね?」

 

御坂「それは分からないわ。自分で見つけてみないと」

 

佐天(空気を圧縮……)

 

佐天「ははは。もうちょっと遠くで圧縮できれば、敵ごと圧縮できそうなんですけどね」

 

御坂「それは、もっと自在に使えるようになってからね」

 

木山『逆はできるのかね?』

 

佐天「逆?」

 

木山『そう。圧縮した空気を元に戻す』

 

佐天(圧縮した空気を……)ギュ

 

佐天(元に戻す……)パン

 

御坂「え!? 今のちっちゃいのでその威力?」

 

木山『うむ、どうやらその使い方の方が良さそうだね。圧縮されている空気が一瞬で元の体積に戻っている』

 

佐天「じゃあ、もっと広い範囲で圧縮してみます」

 

御坂「やってみて」

 

佐天「圧縮……」ギュオオ

 

御坂「ここで、元に戻さないでね?」

 

佐天「あ、わかりました」

 

佐天(これを撃つ!)

 

佐天「そして解放!」

 

パシン!!

 

御坂「うわ、爆発みたいな威力ね」

 

木山『ふむ。連射能力はなさそうだが、威力は一品だね』

 

佐天「そ、そうですか?」

 

木山『そろそろ時間だ。終了する』

 

 

LUS-01『プログラムを終了します』

 

 

佐天(私の……初春を助けるための能力……)

 

木山「これで、白井くんには悪いが、ほぼキミと御坂くんの二人で決まりだろう」

 

佐天「え?」

 

御坂「決まり?」

 

木山「ああ。研究室に戻ろう。そこで説明する」

 

 

―研究室―

木山「では、説明する。まあ、電子戦で御坂くんを外す理由はないだろう」

 

佐天「それは、そうですけど」

 

木山「キミをメンバーにするのにも理由がある」

 

佐天「理由……ですか?」

 

木山「先ほどは、ウイルスで練習してもらったが、セキュリティプログラムは、あの中では行く手を阻む『壁』として表示される」

 

佐天「それって……」

 

御坂「……ある程度強い火力で壁を壊す必要があるのね」

 

佐天「白井さんのテレポートなら――」

 

木山「まだ、理由はあるんだ。おそらく初春くんは、補助AIには相当強力な防御プログラムを作成している」

 

御坂「……あのゲームの中にコインのようなものはなかったから、私の超電磁砲は使えない」

 

佐天「ということは、私がその補助AIを破壊するんですか?」

 

木山「そう言うことになる。それにテレポートはあそこでは相性が悪い……」

 

御坂「相性が?」

 

木山「ああ。おそらく、このバトルモードを使った方法ならば、『LUS-02』のファイアーウォールまでは、一気に行けるだろう」

 

御坂「そこまで一気にいけるのね」

 

木山「問題はそこからだ。ファイアーウォールを突破すると、大量のウイルスと防壁が行く手を阻んでくる」

 

佐天「ど、どうしてウイルスまで?」

 

御坂「初春さんは、ウイルスで侵入者を撃退するような、攻撃型の防衛システムを築いてるみたいなの」

 

木山「その通り。敵が多くなればなるほど、制限時間の付いているこちらが不利になってしまう」

 

佐天「な、なるほど。……あれ? でも、制限時間があるんだったら、ますます白井さんのテレポートの方がいいんじゃないんですか?」

 

木山「先ほど言った相性の悪さというのは、白井くんがウイルス同士を飛ばしても、それらが合体してしまう可能性がある、ということなんだ」

 

佐天「ウイルス同士が合体するって……」

 

木山「新種のウイルスが完成する可能性がある。数は減るが、敵が強力になるだろう」

 

御坂「そんなことがあるんですか?」

 

木山「あのバトルモードは完成はしているが、サンプルがまだまだ少ないんだ。だが、それが起こる可能性は高い。それに、御坂くんのコインがあの中にはないように、他に飛ばせるようなものが何もない」

 

佐天「攻撃手段がないんですね?」

 

木山「そういうことだ。それでは、補助AIを壊すことはできないだろう」

 

御坂「それで、佐天さんと私ってことになるのね」

 

木山「理解できてもらえたかな? これ以上の質問もなさそうだし、私は作業に戻るとしよう。キミたちは一度帰って休んでくれ」

 

御坂「はい」

 

佐天「わかりました。ではまた明日……」

 

佐天(初春……)

 

 

―――

―風紀委員活動第一七七支部―

白井「そうでしたの……」

 

固法「初春さんが……」

 

佐天「はい。でも、きっと助けてみせます!」

 

固法「ええ、頼んだわ」

 

白井「何もできないのは、歯がゆいですの……」

 

佐天(分かりますよ、白井さん……。私がいつもそうでしたから……)

 

 

―――

佐天(明日はきっと助けてみせる! 今度は私が助けてあげる番だよ、初春)

 

 

 

―研究所 地下フロア―

木山「や、やあ」

 

白井「いつもにも増してすごいクマですわね……」

 

佐天「完成したんですか?」

 

木山「ああ、完璧だ」

 

御坂「それじゃ早速準備しましょう」

 

佐天「はい」

 

 

―研究所 1F―

木山「では、作戦を説明する」

 

御坂「はい」

 

木山「オンラインバトルモードで最初にプレイヤーが出現する地点は、バンクの中の仮想バトルフィールドとなる」

 

白井「あの図書館みたいのはバンクのイメージ映像でしたのね」

 

木山「出た場所から真っ直ぐ進むと、奥に『LUS-02』に繋がる扉が見えてくるはずだ」

 

御坂「そこでは初春さんの相手をすることになるの?」

 

木山「いや、あの機械には強制的に繋ぐので、バンクの中では、戦闘は行われない」

 

佐天「それからどうするんですか?」

 

木山「扉を抜けると、『LUS-02』内部に侵入できる」

 

御坂「そこからファイアーウォールまで一直線ね」

 

木山「そのファイアーウォールは御坂くんに突破してもらう」

 

佐天「御坂さんに?」

 

木山「あそこは、おそらく相当強固にプロテクトされているからね。そこまでなら、バンクを通じれば解析できる」

 

御坂「なるほど。解析結果があれば、能力を使って、ファイアーウォールは破れそうね」

 

木山「ファイアーウォールを突破すると、様々なセキュリティと警戒ウイルスがあるだろう」

 

佐天「それらを突破して……」

 

木山「中央にあるだろう補助AIを破壊する。おそらく補助AIはファイアーウォールほど強度は高くない」

 

御坂「制限時間は?」

 

木山「十五分だ。それ以上は意識が昏倒してしまって戦えなくなる」

 

佐天「わかりました」

 

白井「私はサポートに回りますわ」

 

御坂「頼むわよ」

 

 

―筐体内部―

木山『準備はいいかね?』

 

御坂「はい」

 

佐天「…………」

 

御坂「佐天さん?」

 

佐天「は、はい! 大丈夫です!」

 

木山『緊張するのも仕方ないが、頑張ってくれ……』

 

白井『では起動準備に入りますの』

 

 

LUS-01『システムを起動します。オンラインバトルモード開始五秒前』

 

 

佐天「フーッ」

 

御坂「佐天さん、落ち着いてね」

 

佐天「わかってます」

 

 

 

LUS-01『バトルモード開始します』

 

 

 

[newpage]

―バンク内バトルフィールド 制限時間十五分―

御坂「よし! 行くわよ!」

 

白井『お二人とも頼みますの』

 

佐天「はい!」

 

タタタタ

 

御坂「あれが、初春さんのところに繋がる扉ね!」

 

木山『そこの扉は破壊しても大丈夫だ』

 

佐天「吹き飛ばします! えいっ!!」パーン

 

 

 

―『LUS-02』内部 制限時間十四分―

御坂「よし! 侵入成功!」

 

佐天「あそこに見えるのが、ファイアーウォールですね!」

 

御坂「その辺に浮いてるのには触らないようにね! トラップ型のウイルスだから!」

 

佐天「了解です!」

 

白井『ファイアーウォールの解析が終わりました。お姉様にお送りしますわ』

 

御坂「わかった。急いで!」

 

佐天「もう少しで着いちゃいますよ!」

 

御坂「あー、このトラップ邪魔!」

 

佐天「攻撃しないでくださいよ?」

 

 

 

―『LUS-02』ファイアーウォール前 制限時間十二分―

木山『解析情報を送った。突破を急いでくれ』

 

御坂「わかってます!」ビビビ

 

佐天(私の仕事はここから……)

 

 

―――

御坂「……よし! 開いた! この先は敵を蹴散らしながら進むわよ!」

 

佐天「はい!」

 

 

 

―――

―『LUS-02』中心部―

ピピピピ

初春『今度は、こんなところから侵入者ですか……』

 

初春『確かに、ここが一番防御が薄かったかもしれませんね』

 

初春『ですけれど、この程度で怯んでいるようでは、治安なんて守れません!』

 

 

 

―――

―『LUS-02』ファイアーウォール内部 制限時間八分―

木山『気をつけたまえ。そちらに何か向かっているようだ!』

 

佐天「うわっ! いきなりスゴイ数のウイルスが!」

 

御坂「初春さんに気付かれたわ! 一気に突破するわよ!」

 

佐天「はいっ!」

 

白井『佐天さん、後方からきてますの!』

 

御坂「そっちは私に任せて! 佐天さんは、前の壁を!」

 

佐天「わかりました! えーい!」パーン

 

御坂「くそー。前には壁、後ろからはウイルス! ちょっときついかも!」

 

佐天「すみません急ぎます!」

 

白井『あと六分ですの!』

 

佐天(待ってて、初春!)

 

 

 

―『LUS-02』中心部付近 制限時間五分―

御坂「このあたりから、ますます数が多くなってるわね!」

 

佐天「初春に近づいてる証拠です! 一気に行きます! それっ!!」パーン

 

ドドドドドドド

 

御坂「よし! 今のうちに進むわよ!」

 

佐天「はい!」

 

 

 

―『LUS-02』中心部 制限時間三分―

佐天「あ、あれって……?」

 

木山『前方に何か見えてきただろう? その物体が補助AIだ。破壊してくれ!』

 

佐天「あの植物の塊がですか!?」

 

御坂「あれが、初春さんの思考を形にしたものなんでしょ! 悪いけど、私は守りで精一杯だわ! 佐天さんお願い!!」

 

白井『急いでください!! もう時間がありませんの!!』

 

佐天「いきます!!」

 

佐天(これで初春をっ!!)

 

佐天「いっけええええええええ!!!」

 

 

パァーン!!

 

 

木山『やったか!?』

 

 

 

―『LUS-02』中心部 制限時間二分―

佐天「え……? そ、そんな……。あれで無傷なんて……」

 

木山『そ、そんな……あの威力に耐えられるほどの強度をもっているというのか!?』

 

佐天(……や、やっぱり私じゃ無理なの?)

 

御坂「まだよ……」

 

佐天「御坂さん……?」

 

御坂「佐天さん!! ここで諦めたらダメよ!!」

 

佐天「え?」

 

御坂「佐天さんの初春さんを助けたい気持ちが力になるの!! 忘れたわけじゃないんでしょ!?」

 

白井『そうですのよ! あなたが初春を救うのでしょう!?』

 

木山『もうキミにしかできないんだ!! 頼む!!』

 

佐天(そうだ……。初春……、私は……)

 

 

 

初春『佐天さんが忘れないでください!』

 

 

初春『佐天さんは、こんな話を持ちかけられたらどうしますか?』

 

 

初春『佐天さんと昨日話してなければ、まだ迷っていたと思います。ですけど決めたんです』

 

 

初春『私にとっては、とてもありがたかったんです』

 

 

 

佐天(――できる。―――できる! ―――できる!! 私が初春を助ける!!!)

 

佐天「初春は絶対に助けます!!」

 

 

 

―『LUS-02』中心部 制限時間一分―

 

佐天(圧縮、圧縮、圧縮、圧縮、圧縮、圧縮、圧縮、圧縮、圧縮、圧縮っっっっ!!!)

 

御坂(え!? この反応。もしかして――)

 

 

御坂「プ、プラズマ!?」

 

 

御坂(一方通行の計算式を利用してるっていうの!?)

 

佐天「い――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐天「いい加減起きろ!! 初春のバカ――――――――――――ッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LUS-01『可動限界です。バトルモードを強制終了します』

 

 

 

―研究所 1F―

佐天「初春は!? 間に合ったんですか!?」

 

御坂「初春さんのことろへ行きましょう!」

 

白井「ですの!」

 

木山「ああ!」

 

 

―研究所 地下フロア―

木山「どうだ!?」

 

研究員「せ、成功です! 今意識を取り戻します!」

 

佐天「初春!!」

 

初春「あれ? 佐天さん? それに御坂さんと白井さんまで? なんでここにいるんですか?」

 

佐天「う、ういはる~。よかったー、よかったよ~」グス

 

初春「ちょ、さ、佐天さん一体どうしたっていうんですか!?」

 

御坂「何はともあれ」

 

白井「一件落着ですの」

 

 

―――

木山「――――ということが起こっていたんだ」

 

初春「そ、そんな大変なことが……。みなさんありがとうございました」

 

木山「大変なことに巻き込んでしまったね。本当にすまなかった」

 

初春「いえ、大丈夫です。こうやって助けてもらえたんですし」

 

佐天「本当によかった……」

 

初春「佐天さん……。本当にありがとうございます」

 

佐天「前、私が倒れたときは、助けてくれたでしょ? そのお返しだよ」

 

初春「そんなあの時は大したこと……」

 

御坂「な~に言ってるの! あのときは大活躍だったじゃない!」

 

白井「そうですわよ? 今回の佐天さんもすごかったですけれども」

 

初春「白井さんに御坂さんまでー」

 

佐天「そうそう! 初春はすごかったって、私はそれ見てないから分からないけどね!」

 

初春「うーっ、私は佐天さんの活躍が見たかったです……」

 

 

 

木山「フフッ。見るかね?」

 

 

 

御坂・白井・佐天・初春 「「「「え?」」」」

 

 

 

木山「報告用に録画してあったんだ。今後の研究に生かせるかと思ってね」

 

御坂「い、いつのまに……」

 

白井「その辺のぬかりはないですわね……」

 

初春「じゃあ、じゃあ早速見てみましょう!」

 

佐天「ちょ、やめて―――!!」

 

 

―――

 

佐天『いい加減起きろ!! 初春のバカ――――――――――――ッ!!!!』

 

 

御坂「うんうん。いいセリフよね~」

 

白井「魂の叫びですの」

 

佐天「ううう、恥ずかしい……」

 

木山「いやいや、すばらしいよ。キミもそう思うだろ?」

 

初春「はい!! それで、あの、佐天さん……」

 

佐天「ん、なーにー?」

 

 

 

初春「……おはようございます」

 

 

 

佐天「うん! おはよう、初春」

 

 

『後日談』

初春「佐天さん。今日の身体検査(システムスキャン)の結果はどうでしたか?」

 

佐天「ふっふっふー。ついに私も能力者~!! 今回はかなりよかったんだよね~」

 

初春「おめでとうございます!! 今日はお祝いですね!」

 

佐天「いやいや~。そういう初春は?」

 

初春「ううう。私の方は変化なしでした」

 

佐天「じゃあ、今度は私の方がレベルは上か~」

 

初春「ええ!? 佐天さんいきなりレベル2ですか!?」

 

佐天「驚いた? 私もかなりびっくりしたんだけどね~」

 

初春「やっぱり『レベル5シミュレーター』のおかげでしょうか?」

 

佐天「初春を助けたときに、かなり経験値稼いだからね~」

 

初春「そういえば、『レベル5シミュレーター』の新型が完成したみたいですよ?」

 

佐天「うえ。今度は大丈夫なの?」

 

初春「なんでも、補助AIはやめて、長時間可動できるようにしたそうです」

 

佐天「大丈夫かな~?」

 

初春「既に理事会からも、認可がでたみたいですよ?」

 

佐天「マジで!?」

 

初春「それで、PRのためのCMを作った、とか木山先生が言ってましたけど」

 

佐天「あの人が作ったの? どんなCMなんだか……」

 

初春「今日ネットでも配信するって言ってましたから、一七七支部で見ましょうか」

 

佐天「そうだね~。ちょっとだけ気になるしね」

 

 

―風紀委員活動第一七七支部―

佐天「こんにちはー」

 

固法「あら? いらっしゃい。御坂さんたちはもう来てるわよ」

 

初春「あ、ちょうどよかったです」

 

御坂「私たちに用事?」

 

白井「なにかありましたの?」

 

初春「実は、新型の『レベル5シミュレーター』のCMを作ったそうなんです」

 

白井「CMですの?」

 

初春「はい。え~と、このサイトみたいですね」

 

御坂「どれどれ?」

 

佐天「あ、私、きな粉練乳もらいますね~」

 

初春「じゃあ、再生しますよ~」

 

CM『レベル5シミュレーター』

 

CM『それは、あなたの夢を現実にする』

 

CM『ここで諦めたら終わりよ!!』

 

佐天「ブッ!!」

 

CM『絶対に助けます!!』

 

御坂「これって……」

 

 

CM『いい加減起きろ!! バカ――――――――――――ッ!!!!』ピカー

 

 

CM『こんな世界がキミを待っている』

 

CM『レベル5シミュレーター』

 

佐天「ぐぐぐぐぐ」

 

御坂「ま、まあよかったじゃない!」

 

白井「そうですのよ。かっこいいじゃありませんの」

 

初春「これが、学園都市中に流されるんですか……」

 

佐天「うがー!! 行くよ! 初春!」

 

初春「え? どこにですか!?」

 

佐天「木山先生の所に決まってんじゃん! 一言いってやらないと!」ダッ

 

初春「ちょ、ちょっと待ってくださいよ~」

 

佐天「ほらほら、早く~」

 

 

佐天(でも―――こんな毎日が続くなら、このくらいは許してあげようかな!)

 

 

 


 
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