No.237513

真・恋姫†無双~恋と共に~ #53

一郎太さん

ゼリーちゃんウザすぎるwww
という訳で本編を進めていきます。
番外編での一刀君のキャラは本編には出て来ないので悪しからず。
ではどぞ。

2011-07-28 03:03:06 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:13821   閲覧ユーザー数:9596

 

 

#53

 

大陸各地を回って長安へとやって来た一刀は、月と再会していた。その再会劇に関してひと騒動あったのだが、それはまた別の機会に書くとして。

 

「それにしてもお久しぶりですね、一刀さん」

「あぁ。少し街を見させてもらったけど、上手くやってるじゃないか」

「当り前じゃない。月が治めてるんだから」

 

一刀の言葉にふんと鼻を鳴らして答えたのは詠。董卓軍の筆頭軍師である賈駆である。

 

「おやおや、詠ちゃんはおにーさんに会えたというのに、相変わらずのツン子ちゃんですねー」

「うるさいわよ、風」

「恋殿、お久しぶりなのです!」

「ん…ねねも元気そう」

「勿論なのです」

 

風が茶化して詠ががなり、恋とねねは再会を喜んでいた。

 

「そういえば華雄は?」

「華雄さんでしたら兵の調練に行ってますよ」

「昨日の今日なのに、元気なことだ」

 

この場にいない華雄とも前日の時点で再会している。殴られた頬が鈍い痛みを主張していた。様々な会話がされるなか、香はひとり取り残される。そんな様子を見かねたのか、詠が声をかけた。

 

「それにしても、アンタも相当な変わり者よね」

「へっ?………えぇと、私ですか?」

「そうよ。一刀に引き抜かれただけじゃなくて、一緒に旅してまわってるなんて。武の方は華雄から聞いてるけど、それにしても無茶するわよね」

「えぇと、その、あはは………」

 

おそらくはかつての修行の事を指しているのだろう。香自身もあの辛い時間を思い出して苦笑する。

 

「こらこら詠ちゃん。いくらおにーさんと一緒にいるのが羨ましいからって、あまり香ちゃんを苛めちゃダメですよー。なんたって、香ちゃんはおにーさんの第三夫人なのですから」

「違うわよ!………って、一刀?アンタまた妾を増やしたの?」

「俺に言われてもなぁ………」

 

風と共にジト目で睨む詠に、一刀は明後日の方向に視線を送りながら話題を変える。

 

「そういえば、伯和は?」

「劉協様でしたら、いまは自室にいらっしゃいますよ。案内をお呼びしましょうか?」

「あぁ。ありがとう、月」

「いえいえ」

 

月に礼を言い、一刀は扉へと向かう。

 

「こら、逃げるなぁ!」

「またな」

 

詠の叫びに背中で返事をし、一刀は部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

香とねねが自己紹介をし、恋を交えて会話をするのを横目に、風と月、詠は3人で真面目な表情を作っていた。

 

「………それで?」

「それでとは?」

 

問い詰めるような詠の視線に、風はとぼけながら応える。

 

「風、アンタはボクを莫迦にしてるの?ボクだって一刀の狙いくらいわかってるわ。伊達に風や香より付き合いが長いわけじゃないんだから」

「ふふ、詠ちゃんったら張り合っちゃって」

「そ、そんなんじゃないわよ!」

 

微笑む月に詠が顔を真っ赤にして言い訳するが、月も慣れたもので、微笑みで流すと風に向き直る。

 

「今後のこと、ですよね?」

「おやおや、月ちゃんにも見抜かれてるとは、おにーさんもまだまだですねー………ま、それはいいとして。風もおにーさんに直接聞いたわけではありませんが、どうやらそんな事を考えているようです」

「やっぱり、か……」

 

肝心な点をぼかして応える風だったが、誰も気にした様子はない。詠が頬杖を突きながら溜息を吐く。

 

「気に入りませんか?」

「そういう訳じゃないわよ。でも……そうね、例えば30年先を考えただけでも不安が出て来るわね」

「詠ちゃん、どういう事?」

 

詠の代わりに、風が口を開いた。

 

「月ちゃんは、今の大陸の情勢をどう見ますか?」

「情勢ですか?……報告によれば、諸侯の皆さんは連合解散以来善政を敷いていると聞きますが………」

「それが問題なのよ」

「でもそれって、いい事じゃないの?」

「いまは、って事。考えてもみて、月。いまは各地に優秀な為政者が数多くいる。でもそれがずっと続くと思う?」

「それは………」

「ボク達の代はいいでしょうね。でもその次の代は?またその次の代は?いま大陸にいるくらいの優秀な人間が同じ数だけ生まれると思う?」

「そういう事です。曹操さんに孫策さん、彼女たちは本人もさることながら、その下には優秀な家臣がたくさんいます。袁紹さんのところは見てないからわかりませんが、袁術ちゃんですらいまや日々勉強を頑張っている最中です。同じ袁家としての誇りが袁紹さんを駆り立てているのではないでしょうか。実際、反董卓連合の際も、袁紹さん率いる中央軍は少しずつ状況を改善している雰囲気がありました」

 

茶で喉を潤してから、風は再び話し出す。

 

「北方には袁紹さんと共に公孫賛さんもいます。北の異民族対策として、彼女の白馬義従ほど適した集団はいないでしょう。また劉備さんもいまだ勢力は小さいながら、その下には智武ともに傑出した人たちが揃ってます。劉備さんはいわば、人たらしの天才でしょうね」

「上が優秀であればあるほど、下は上が作り上げた状況に甘んじてしまう。そしてそれを固持しようと躍起になる。それは月もわかってるでしょう?」

「……そだね」

 

詠の言葉に、月はかつて洛陽に、そして長安に跋扈していた宦官を思い出す。今でこそ改善されてはいるが、彼らの状況はいま詠が言った通りだ。

 

「だからこそ、まったく新しいものを創る必要があるの。100年、200年…それこそ1000年続くような、揺るぎないものをね」

 

その辺りは、現在中央に一番近い場所にいる詠と月が誰よりも理解している。だからこそ詠は難しい顔をし、溜息を吐いてしまうのだ。

 

「ま、いまの国家基盤を維持したまま存続させる方法もない事はないんですがねー」

「………?」

 

含みを持たせた風の言葉に、月は首を傾げる。そんな親友に、詠は興味もないとばかりにひと息に口に出した。

 

「―――帝の婚姻よ」

 

 

 

 

 

 

一人で使用するには広すぎるほどの空間に、少女はいた。これまた巨大な机に座り、何やら書を読み、書き写している。どうやら勉強中のようだった。そんな彼女は、筆を止める事なく口を開く。

 

「なんじゃ。朕は勉強中ぞ。用があるならば後にせよ」

「そっか。だったら後にするよ」

 

しかし、返ってくる声に、ぱっと嬉しそうな顔を上げる。

 

「一刀兄様!全然問題ないぞ!もう休憩に入るところじゃ」

「はいはい」

 

そんな義妹の様子に、一刀は苦笑しながらもその机に近づいていく。少女―――空は立ち上がり、たたたっと駆け寄って一刀に飛びついた。

 

「ようやっと来たか。遅いのじゃ!」

「ごめんごめん。天井の修理に時間がかかってね」

「そうかそうか。昨日は災難じゃったな」

「ホントだよ…ったく」

 

抱き着いてきた少女を抱き締め返して頭を撫でながら、一刀は少女がいた机へと向かい、その上に彼女を座らせた。

 

「頑張ってるみたいじゃないか。兄として鼻が高いぞ」

「うむうむ」

 

頭を撫でる手はそのままに、空は空いている方の義兄の手を自身の頬に添える。

 

「兄様じゃ、兄様じゃー」

「甘えん坊だな、相変わらず」

「ふん、いまはただの義兄妹じゃからな。気にするでない」

「はいはい」

 

しばらくの間、2人はじゃれ合う。その姿は本当の兄妹のようだった。

 

 

 

 

 

 

「………へぅ」

 

親友の言葉を聞き、月が発した言葉はいつもの困惑の口癖だった。そこに風が追い打ちをかける。

 

「それもただの婚儀では駄目なのです。どこぞの名家の子息なんかではなく、それこそこれまでの歴史を覆すほどの相手でなければ、これまでの漢王朝以上のものを創る事はできません」

「でもそれってかなり難しいんじゃないかな?」

「ボク達の近くには、うってつけの人物がいるじゃない」

 

問いかける月に、詠は目を合わせずに応える。

 

「もしかして………」

「『天の御遣い』っていう、これ以上ない人物がいるって事よ」

 

わいわい騒いでいるねね達のいる空間とは対照的に、3人が座る卓に沈黙が落ちる。溜息を吐いたのは誰だったか。しかし、最初に口を開いたのは月だった。

 

「それって、難しいよね」

「そうね。一刀は劉協様を妹のように思ってるし、劉協様ご自身も一刀を兄と慕っている。何より、恋がいるしね」

「そですねー。おにーさんが帝と婚儀を結べば、あの曹操さんですら納得するでしょう。でも、おにーさんですからね」

「えぇ。一刀のなかにはそんな発想自体が存在しないわ」

「じゃぁ、やっぱり………」

「そう。この辺りで手を打たなければならない。多くの勢力の長が若く精力的で、そしていずれの人物も『それ』を成し得るという今しかないの」

 

再び沈黙が落ちる。今度こそ、その静寂が破られることはなかった。

 

 

 

 

 

 

空の私室では、相変わらず一刀と空の会話は続いていた。そしてようやく落ち着いたのか、空はほぅと一息吐くと、途中侍女に用意させた茶を口に運んだ。一刀も倣ってそれを呑む。さすが宮中と言える味だった。

少しのあいだ無言の時間が続き、空が口火を切った。

 

「……兄様」

「ん?」

「兄様がここに来たのは、その………聞きたい事があるからじゃろう?」

「………バレてたか」

「当り前じゃ。私は一刀兄様の妹じゃからな………」

 

胸を張って答える姿も、どことなく虚勢のように見える。

 

「でも、それは空が決める事だ。前にも言ったと思うけど、空が決めた事なら俺はそれを尊重するよ。しっかりと悩み抜いた上での決断ならな」

「………ありがとう、兄上」

 

少女の左頬に、1本の光る流れが出来た。その意味を知る者は、彼女以外には1人しかいない。

 

「(200年、か。それだけの歴史を背負わせるにはこの背中は小さ過ぎる………)」

 

それでも、一刀は少女を抱き締める事はしない。例え義妹であっても、彼女が決めた事にはそれだけの意味があり、それは彼女自身が背負うべき事だったからだ。だから、一刀は抱き締める事はしない。その代わり、一刀はそっと跪く。

 

「………兄様?」

 

涙を流しながら両の膝頭を握りしめていた少女の手をそっと取る。

 

「………偉大なる天子に、心からの敬意を込めて」

 

一刀は、その右手の甲にそっと口づけを落とした。

 

 

 

 

 

 

ひと月後、大陸中を激震が走る。

 

 

 

 

 

 

――――――陳留。

 

 

「………華琳様?」

 

長安から届いた竹簡を渡され、目を通して固まる華琳に荀彧が声をかける。よく見れば、主の肩が小刻みに震えていた。

 

「桂花、稟………」

「はい」

「なんでしょう?」

 

軍師2人に呼びかけた華琳は、ばっと竹簡から顔を上げ、命を出す。

 

「今すぐ緊急の軍議を行うわ。即刻全員を集めなさい!」

 

 

 

 

――――――南皮。

 

 

「おーーっほっほっほっほ!」

「なぁ、斗詩。麗羽様どうしたんだ?」

「………さぁ?都から書簡が届いたらしいけど」

 

先ほどからずっと高笑いを続ける袁紹に、副審2人は首を傾げる。そんな様子を気にしたこともなくさらに数分間笑い続け、彼女はようやく2人に視線を向けた。

 

「顔良さん、文醜さん!ついに……ついに私の時代が来ましたわ!」

 

 

 

 

――――――幽州。

 

 

「………………………………」

「伯珪様?」

 

長安からの書簡に目を通してから、固まり続ける主に、家臣の一人が声をかける。それでも彼女の眼は竹簡に注がれていた。

 

 

 

 

――――――長沙。

 

 

「どうした策殿、呑まんのか?」

「………」

 

城の中庭で祭と酒盛りをしていた雪蓮に、一つの書簡が侍女から渡された。彼女は杯片手にそれを開き、じっと目を通す。祭の問いかけにも答えずに、何度もそれを読み返す。

 

「………祭」

「なんじゃ?」

「ついに、我らの悲願を叶える時よ………」

 

身体が熱くなるのを感じる。今でこそ袁術とはそこそこに良い関係を結んではいるが、じっと耐え忍んできた彼女の口元には、獰猛な笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

――――――西涼。

 

「姉様ぁ!長安から何か届いたよーっ」

「長安?月からの手紙か?」

「なんか違うっぽいよ?」

 

翠は従妹から竹簡を手渡され、それを開き目を通す。

 

「★■※@▼●∀っ!?」

 

そして奇声を発していた。

 

 

 

 

――――――徐州。

 

 

「朱里ちゃぁん、雛里ちゃぁああんっ!!」

「桃香様っ!?」

 

慌てた様子で駆け寄ってくる主の姿に、軍師の2人の少女は驚きを露わにする。彼女がテンパっているのは毎度のことだが、今回はどうもいつも以上のテンパり具合だった。

 

「これ、これ見てっ!」

「………長安から、ですか?」

「そうなの!大変な事になっちゃったよぉ……」

 

主に急かされて、諸葛亮と鳳統は竹簡を開く。そしてその文言を目にした。

 

「………あわ、あわわゎぁ」

「はわわ!雛里ちゃん!?」

 

魔女帽子を被った少女は卒倒した。

 

 

 

 

 

 

長安から各地の諸侯へと送られた文は玉璽の印で封をされ、以下のような言葉から始まっていた。曰く――――――。

 

 

『ひと月後より、禅譲の儀を執り行う』

 

 

歴史が変わる瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

という訳で久しぶりの本編でした。

 

一刀君はカッコつけすぎだと思う。

 

そしてTINAMIのデザイン変わり過ぎワロタ

 

ではまた次回お会いしましょう。

 

 

バイバイ。

 

 

 


 
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