No.224412

鳳凰一双舞い上がるまで 雛里√ 11話

TAPEtさん

真・恋姫無双の雛里√です。
雛里ちゃんが嫌いな方及び韓国人のダサい文章を見ることが我慢ならないという方は戻るを押してください。
それでも我慢して読んで頂けるなら嬉しいです。
コメントは外史の作り手たちの心の安らぎ場です。

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2011-06-23 22:42:52 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:3792   閲覧ユーザー数:3239

雛里SIDE

 

「水鏡先生がおっしゃることはわかります。……しかし、いくらなんでも街を襲った賊たちを何の条件も無しで受け入れることは、街の人たちを代表する我々の立場としては引き受けるわけにはなりません」

「長老の方々がそうおっしゃることも最もですが、私は私の生徒たちを信用します。そして、鳳士元はそのうちでも私が最も目を付けていた娘の一人。そんな彼女が賊の群れに入って直接その目で見て、判断したことです。彼女の話からすれば彼らの考えに邪な考えがあるとは思えません」

「そうはおっしゃいますが……」

 

先生と長老さんたちのこういった話がジリジリと続いています。

問題は、いくら倉ちゃんのところの人たちが賊として働く気がないとしても、既に一度襲撃されたことがある上に、荊州の風土上、こう冒険的な話を取り入れようとする動きはあまりありません。

危険を抱える理由がないわけです。

もちろん、以前に一刀さんに言ったように、水鏡先生の知名度や、私たちに街の人たちがした真似などを武器にすると、長老さんたちも引き受けざるを得なくすることはできます。

だけどそれは、水鏡女学院のやり方ではありませんし、そうやって半強制的に話を進ませたところで、私たちが望んでいた裴元紹さんたちと街の人たちの完全な融合は遠いです。

 

「………<<もじもじ>>」

 

ここはなんとかして、倉ちゃんの人たちと組むことが街に「利」になることを示さなければ……

 

「………<<もじもじ>><<ぐいぐい>>」

「あわ?」

 

ほっと後で袖を引っ張られたと思ったら、横に座っていた倉ちゃんがなんだか我慢している顔で私の方を見ています。

 

「(どうしたの?)」

「………」

「(…厠?)」

「……<<ゴクッ>>」

 

あ…まぁ、整理現象ですし、仕方ありません。

 

「あの、少し失礼して宜しいでしょうか」

 

部屋のみなさんに断ってから、倉ちゃんを連れて一度外に出ました。

 

 

一刀SIDE

 

 

タッ

 

よし、これでいい

 

「さて」

「?」

 

雛里たちが外に出たと同時に、俺は水鏡先生の後の席から椅子を前にだして水鏡先生と同じ列で長老たちを前にした。

 

「北郷さん?」

「先生、ここは私に任せてもらえるでしょうか」

「構いませんが…何故突然…」

「大体整いましたので……」

「?」

 

俺は目を先生の顔から長老たちの方に移した。

 

「なんでしょうかね」

「あなたは確か、盗賊の襲撃があった時代表で盗賊のところに向かった……確か天の御使いとか言う…」

「はい、まぁ、なんとでも呼び方は構いませんがね」

 

いかにも固そうな顔をしているが、こう言った人間たちは皆同じだ。

口では遠回りで拒否ってるが、要は得しないし面倒だから嫌だって言うんだ。

これだから頭固い老人どもは…だが、こういう連中こそ『金』の計算には頭が早い。

 

「長老さん、彼らが賊の群れだということは差し置いてです。彼らと商売をすることが街にどれだけの富を与えてくれるか考えてみましょう」

「富、とは?」

「自分はこの街辺りを見た限りでは、街に来る食糧は大体のものが中原から来ていますが、街の野菜を取り扱う人たちの話によると、ここ最近重なる洪水や旱によって荊州にまで来る物量も少なさそうですね」

「それでも、街を養うには十分なものです」

「はぁ…わかってませんね。それはこの街に限った話です」

「……?」

 

あぁ…頭かってーな。

 

「この街だけ物流が良い理由がわかりますか?それはここに水鏡塾があるからなのです。水鏡塾は常に多くの生徒たちが居る上に、知名度が高く他の商業を従事する者たちにとってはどうしてもここと取り引きがしたくてしょうがありません。何故なら、水鏡先生が頼む薬剤や食糧を扱うことによって、彼らの名を広く知らせることができるからです。だからいくら物量が足りなくてもなんとかしてここにだけは物流が通るように商売をしているのです」

「確かに、中原から態々ここにまで品を届けてくれている人たちも多いですわね。遠くは河北や西の巴蜀からでも必要なものがあるとすれば、少し時間はかかるとしても難なく手に入れることができます」

「それには商業をしている商人たちの事情があるわけです。だけど、要点はそこじゃありません」

 

本当の問題はここから。

 

「さっきも言ったように、現在荊州は物流が足りない中、ここだけがこれぐらい商業が発達しています。荊州でこれぐらいに動いているのは現在荊州首府の襄陽ぐらいでしょう。まだ気づきませんか?物量さえあればここを荊州商業の要衝地に育てることができるのです。絶対的な利点を今まで生かせないままだったのはそれほどの物量を流すことができなかったからです。だけど、これぐらいの物量があるとすれば、他の商人たちのここに今以上の投資をする価値があると見るでしょう。そうすればこの街を中心で荊州の商業が回ります。街が一気に発展するのです」

「「「…………」」」

 

 

 

雛里SIDE

 

ありのままに今起こったことを話します。

私は倉ちゃんを連れてちょっと厠にいってきただけなのですが、いつの間にか長老さんたちに商売を許可されてました。

な、何が言っているのか自分でもわかりません。

 

「一体どうやって……」

「まぁ……昔から人は金に動くからねー」

「はい?」

「…あまり「利」の傾いた誘いだった気はしますが、今回ばかりは仕方がありませんね」

 

水鏡先生もなんか苦笑しながら一刀さんを見ていました。

話を通したのは一刀さんらしいです。

 

「仕方ありません。あのままだとあんな老人たちを説得することなんて相当無理です。長期的に見る目がないなら、短期的な利を見させて引っ張り出すしかありません」

「……ですが、いつまでもそう言ったことが通用するわけではありません。それだけだとあなたが望んでいた山賊の人たちと街の人たちの共存は平面的な関係でとどまるしかありません」

「まぁ…後のことは時間が解決してくれるはずです。今はまず通した穴を広げるために動くべきだと思いますが…」

「…一刀さん」

「?」

 

今まであまり考えてありませんでした。

というか、文字も読めないし、失礼ながらそう言ったことには向いてないかと思ってました。

 

「……その事は俺のことをすごく失礼な風に思っていた目だな」

「あわわ!?そ、そんなことありませんよ?」

「ほんと?」

「………ちょっとだけ……脳筋な人だと思ってました」

「……ぐすん」

 

一刀さんがぐすんてしました!?

 

「ご、ごめんなさい、一刀さん!」

「良いんだ。どうせ、このせかいじゃ俺は文字の読み書きもできない阿呆さ」

「勉強すれば直ぐにできますから…ほら!倉ちゃんもこれから読み書きとか習うのですから、一緖に勉強しましょう、ね?ね?」

「…え?あたしも?」

 

何故か驚く倉ちゃんのことはさておいて、でも、一刀さんほんと以外に賢かったんですね。

そういえば、以前初めて街に出た時にも、店の人に時計売る時にすごく協商してましたし……

 

「俺の世界では…皆普通18歳までは勉強するからな」

「皆って、国の人たち皆ですか?庶民も?」

「はい、全部です。お金がない人たちでも、国で支援してくれますしね」

「それは……とても素晴らしい国ですわね」

 

水鏡先生は一刀さんの話を聞いて関心した顔で興味深く言いました。

 

水鏡先生はいつも民の皆が学問ができるような荊州が作りたいと仰ってました。

いくら学識者が多いことで名高い荊州でも皆が勉強できるわけではありません。

できるのは豊かな家の娘たちや、私や元直ちゃんみたいに運良く水鏡先生みたいな方に拾われ、勉強されるかです。

朱里ちゃんの場合は前者に近いですけど…でも、現在諸葛家の堂主は今は孫策軍にいる諸葛瑾こと百合お姉ちゃんですから、あまり家の得を見てるとかはありませんけど。

 

でも、たしかにいいですよね。

生まれた人たち皆が平等な学問を身に付けることができるなんて、素晴らしい世界だと思います。

 

「……これでも学校では首席だったんだけどな…まぁ、あまりそんな風に見えないのも分かるけど」

「え!?」

「……そこまで驚かなくても……OTL」

「ああーー、いえ、今のは以外だったとかそういう意味合いで驚いたわけではなく、…いやー、一刀さんってすごいですよね。剣術も出来る上に学問にも心得があるなんて、まさに良い君主の模範ですよ」

 

その後、落ち込んだ一刀さんを塾まで連れて帰るに結構な時間がかかりました。

 

 

水鏡塾にもどってきました。

たった一日居なかっただけなのに…何故かとても遠く感じてしまいます。(大体8話分)

あ、そういえば、朱里ちゃん、私のことすごく心配しているでしょうね。

 

「…ここが…鳳統ちゃんたちの家?」

「そうだよ。これからは倉ちゃんもここで住むの」

「…………」

 

倉ちゃんは少し寂しい顔をしました。

やはり、裴元紹さんや今まで過ごして来た人たちと離れることが嫌なのでしょう。

でも仕方がありません。倉ちゃんもこうなるって分かる上で決めてくれたことですし、耐えて頂く他ありません。

 

「それじゃあ、入りましょうか。塾の皆に倉のこと紹介しなければいけませんしね」

「…!他にも居るの?」

「何言ってるの、倉ちゃん。私たち以外にも中には他の生徒たちもたくさん居るよ」

「……どれぐらい」

「えっと…今なら、大体50人ぐらいかな」

「………よかった、少ない」

 

少ないんだ。まあ、あそこはほぼ千人だったし。

 

「それでは……」

 

ギギギー―ー

 

水鏡先生が扉を開ける時、倉ちゃんは私の側にくっついてちょっと怖そうにしていました。

いつもの私が朱里ちゃんにしていたようなことをされていて、ちょっとお姉ちゃんみたいな感じが…

 

むにゅーん

 

「……倉ちゃん、離れてくれない?」

「え?」

 

後、背も私より高いのに後に隠れるのってどうなの?

 

「!」

 

扉を開けた途端、そこには朱里ちゃんと元直ちゃんが立っていました。

 

「キャハ、おかえりなさいー。ね?カナの言った通りでしょ?」

「…雛里ちゃん?」

「…朱里ちゃん」

「雛里ちゃーん!!」

 

朱里ちゃんと目があった瞬間、朱里ちゃんは私に抱きついて来ました。

 

「雛里ちゃん、大丈夫でよかった…私…私…!」

「あわわ…ごめん、朱里ちゃん、心配させちゃって…」

「キャハ、まったくですよ。孔明ちゃんたら鳳統ちゃんが賊に攫われたって聞いてその場に気絶しちゃったのですよ」

「あわわ…」

 

そうだったんだ…

実は、私が自分の足で行ったのに……。

 

「大丈夫だった?そこで何か酷いことされたりなんて……」

「大丈夫だよ、朱里ちゃん。朱里ちゃんに思うようなそういう人たちじゃないの」

「え、どういうこと?」

「朱里ちゃん、詳しいことは中で話しましょう。取り敢えず今は皆疲れているでしょうから質問は後に回しましょう」

「あ、……はい……」

 

水鏡先生がそう言うと、朱里ちゃんは私から離れてくれました。

正直、今ちょっと疲れています。

朱里ちゃんに思うようなことはありませんでしたけど、他のことは色々ありましたから……。

 

「………っ」

「……」

 

ふと、朱里ちゃんは視野に一刀さんを入れるとすごい剣幕で一刀さんを睨みつきました。

一刀さんはそんな朱里ちゃんから目を逸らして地面を向きます。

 

「…取り敢えず、話しは後です。皆に聞きたいことやらあるでしょうけれど、こうして立って話すのもなんですし、ゆっくりくつろぎながら話し合いをしましょう」

「……わかりました」

 

そう言った朱里ちゃんは私の手を掴んで先に急ぎました。

やっぱり、朱里ちゃんは一刀さんのせいで私があんな目にあったのだと思っているのでしょうか。

 

 

一刀SIDE

 

雛里が危険な目にあったのは俺のせいだった。

それは否定することができない事実。

だから、俺はそんな意味合いの目で睨みつく孔明をまっすぐに見ることができなかった。

 

「…取り敢えず、話しは後です。皆に聞きたいことやらあるでしょうけれど、こうして立って話すのもなんですし、ゆっくりくつろぎながら話し合いをしましょう」

「……わかりました」

 

そう言った孔明は、雛里の手を掴んで、先に中に入ってしまった。

 

「キャハ、一刀さん、完全に孔明ちゃんの中で嫌な人で固定されてしまったのですよ」

 

そういう奏の久しぶり聞く声が少しイラッとくるものがあったが、それでも俺のせいだと言うのは変わりはなかった。

 

「北郷さん、あまり自分を責めない方がいいですよ。朱里もいずれはわかってくれるはずです。朱里は雛里のことを大事にしているから、彼女のことがどうしても心配になるのです。だけど、彼女の意志を否定してまで恨みを抱くほど朱里は迂闊な娘ではありません」

 

水鏡先生がそんな風に俺を慰めたが、別に孔明に嫌われていることなんてどうでも良かった。

人に嫌われることには慣れていたからだ。

というか、俺は人に好かれることより嫌われることに慣れていた。

ここに来ては雛里や奏、それに倉、裴元紹など、自分に好意を持つ人たちを沢山であったが、結局俺は人に好かれるような性質ではないようだ。

 

「……一刀…元気出す」

「あ……ふっ」

 

倉にまでそう慰められたら、何故か自分のこんな姿が笑えて、笑みを見せながら倉の頭を撫でた。

 

「ありがとう」

「…………………別に///////」

「うん?」

「キャハハ、一刀さん、早速二股かけているのですか。いけないのですよ。そんな雛里を傷つけるようなことすると孔明ちゃんが一刀さんころされちゃうのですよ」

「なっ!おい、お前な…!」

 

お前はそうやってなんでもかんでもそっち方面で絡めようとするな。

 

「キャハ!ねーねー、カナは徐元直って言うんですよ。あなたは誰ですか?」

「……あたし…倉……倉って呼んで」

「倉ですか?…面白い名前ですね」

「……鳳統ちゃんが付けてくれた」

「キャハ?」

 

裴元紹のところであったことを詳しく知っているのは、実際にそこに居た俺と雛里と倉だけだから、他の人たちがこの状況を見ると色々と訳がわからないだろう」

 

「まぁ…取り敢えず、入るとしよう。中でゆっくりと今まであった話しとか聞きたいだろうしね」

「キャハ!はい、主にカナは鳳統ちゃんと一刀さんの間にあった甘い話聞きたいのですよ」

「まだ言うか<<グリグリ>>」

「いたーーっ!暴力反対ですよー(涙)」

 

あまりにも酷い言われようだったのでさすがに制裁した。

 

 

 

そして、水鏡先生の私室に集まった俺と雛里と倉は、水鏡先生と孔明と奏に今まであったことを詳しく説明した。

水鏡先生には途中から既に話していた部分もあったが、結局彼女たちにも俺たちの考えと今後どうするかについて聞いてもらうことはできた。

 

「キャハー、鳳統ちゃんが、奏たちよりも先に大人の階段へ上がっちゃったのですよ」

「あわわ……そ、そんなことは…」

 

奏に言われて雛里は帽子を深くかぶった。

 

「私は反対です!街の長老さんたちもあまりにも安易すぎるんです」

 

と、話しが大体済んだところで、案の定、孔明は俺たちがしたことに異議と唱えた。

理由は簡単明快だ。危険が多すぎるわけだ。

賊たちの引き取りだけでもハードル高いというのに、今回になっては雛里と俺はその関係をこれからしばらく維持させるために働かなければならない。

 

さっき奏が雛里に言ったのはこの点だ。これは実践ごとだった。

そして、雛里のことを誰よりも心配していると言える、孔明にとって……

 

「<<ギロリ>>」

「………」

 

俺が災いの種のように見受けられるのもまた仕方のないことだった。

 

「キャハハー、孔明ちゃん、そんな怖い目で一刀さんを見たところでしょうがないよ」

「……朱里ちゃん」

 

ふと雛里が真剣な声をだしていたので、俺は思わず隣の彼女の方を向いた。

 

「今回私があんなことに会ったのは私自身が選んだ道だったよ。盗賊について行ったのも私が決めたことだったし、そこでその人たちを助けたいと思ったのも私自身の気持ちだった。だから、朱里ちゃんが私の意思を尊重してくれるのだったら、これ以上一刀さんを責めないで欲しいの」

「…ッ!」

 

一番の友にそんなことを聞かれた孔明は、かなづちで打たれたように呆然とした顔になった。

そしてうつむいた顔の下で軽く唇を噛み締めながら、

 

「雛里ちゃんはほんとにそれで良いの?」

 

と小さく呟いた。

 

「…朱里ちゃん……」

「………」

 

この話にばかりは、俺が加わったところでいい話なんてなかった。

だけど、

 

「孔明」

「…」

 

孔明が俺に対して抱えている不信感。

正直、いつもの俺なら人が俺を信じないなら自分だってその人に触れないという性格をしていた。

なぜならそうした方が、人との触れ合いを少なくすることができたからだ。

だけど、どうしても孔明に言いたいことがあった。

 

「孔明に対して俺がこう言うのも厚かましいと思うかもしれないが…それでも俺は約束は必ず守る人間だ。……これ以上雛里が危険に晒されることがないだろうとは言わない。ただ、雛里が危険な時に必ず俺が側に居るということは約束できる。それで危険から彼女を必ず守る。だからしばらく雛里のことを俺に任せてくれないか」

「………」

「一刀さん」

 

孔明は俺のことをまだ睨み付いていた。

自分でも厚かましい言い方しているとは分かっている。

だけど、これが俺という人間が言える言葉の精一杯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………うわぁ……」

「え?」

 

そのあっけない声に俺もちょっと呆気取られた。

 

「なんですか、その『娘をください』寸前ネタは」

「!?」

「カナちゃん!?」

「元直ちゃん!/////////」

 

三人三色の反応。

 

「キャハ、だってほんとそうだったじゃないですか。これじゃあ寡婦の一人娘を娶っていくお婿さんですよ」

「奏…お前は性懲りも無くまたそんなことを……『ポキっ』」

「キャハ、こわーい、孔明ちゃん助けて」

 

孔明の後に隠れる真似をする奏だったが、その孔明の奏に対しての目つきもあまりよかったとは言えない。

 

「……ぽっ」

「……?」

 

一方こっち側には、紛れもなく赤面した顔の雛里と、何の話をしているのかまったく追いついていない倉がこっちを見ていた。

 

「…一刀」

「な、何だ?」

「………賑やか」

「そ、そうか?」

「……皆友たち」

「そう見える?」

「……違う?」

「多分……うん……あぁ……」

 

なんと言えばいいのかさっぱりだった。

 

「さて、私の場での話はこれぐらいで結構かしら」

 

と、水鏡先生が整理に入ってくれた。

正直奏がはっちゃける前に入って来て欲しかった。

 

「朱里、あなたが心配することは分からなくもないけど、既にここまで来た以上は、雛里の意思通りにしてあげた方がいいでしょう。私も両側の協商については仲裁に入るつもりですからそこについては安心して欲しいです」

「……はい、わかりました」

「そして元直、倉の部屋と他に必要なものを当ててください。暫く彼女のことはあなたに任せます」

「キャハ?……カナがやっちゃっていいんですか?カナは孔明ちゃん以外の人に優しくするのは苦手なのですよ」

「そこは頑張ってください。後、彼女に文字の練習などを教えてあげてください」

「キャハ、承知したのですよ。それじゃ倉ちゃん、よろしくなのですよ」

「……よろしく」

 

倉と奏の間に挨拶したところで、この話はある程度一段落落ち着いて来た。

その後、俺と雛里は裴元紹たちの為に街人たちを説得する作業に写った。

二週間ぐらい後、水鏡先生の仲裁で裴元紹と彼の群れの代表と何人かと街人たちの間の協商が行われる。

結果からして言うと、裴元紹たちの願い通りに、街の八百屋を専門とする人たちとの商売が可能となり、街から制限的に裴元紹たちの群れから選ばれた何人のみを街に出入りさせることを許可することになった。

そこまで行くには決して易しい道ではなかったが、元々街から評判があった水鏡先生や、以前の抗戦の時の俺と雛里のことを知っていた人たちの噂もあって、なんとかここまで来られたと言える。

 

最初は雛里から逃げようと塾を出たことが始めだった事件が、いつの間にかここに帰ってきて、さらに雛里といっしょに行動せざるを得なくする原因となったことに、いささか違和感を覚えなくもなかった。

だけど、せざるをえなかったと言っても、決して以前のような彼女から離れようと足掻くようなことはなかった。

それでも、雛里と俺の関係と言うのは少し奇妙なところがあった。

奏のからかいがその後も何度かあったが、それでも雛里は、あの時俺が言った言葉にそれ以上かまって来ることがなかった。

単にそのまま忘れてしまっただけなのか。それともそれもまた単なる事故として受けられて見過ごしたのかは分からなかったけど、後々になって考えると、そこで自分から彼女にさらに問い詰めなかったことは、俺たちの関係をさらに曖昧なものにしてしまっていた。

 

・・・

 

・・

 

 

 

 

 

 

 


 
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