No.222004

真・恋姫無双 改変・呉√3

ジャイロさん

真・恋姫の二次創作です

主人公は北郷一刀のまま、能力は原作準拠です
オリキャラは数人出てきます

2011-06-11 13:56:57 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2122   閲覧ユーザー数:1814

「あ~、もう朝か」

窓から差す光が朝の訪れを教えてくれる。時計を見ても七時を指していた。

 

様々な偶然が重なり、ここ孫家で天の御使いとして生きていくことになって一夜が明けた。

昨日はあの後、蓮華と蒼里さんからここでの暮らし方を簡単に聞かされお開きとなり、俺は空き部屋へと案内されそこですぐに眠りについた。

 

「それにしても、こんなことになっても快眠できるだなんて、俺って案外図太かったんだな」

 

そんな自己評価は頭の隅に追いやり、朝食をとりに行くため身支度をする。

朝食は一日の基だからね。これから何をさせられるのか分からないんだ。

食える時に食っておこう。

 

手早く身支度を終え、部屋を後にする。

たしか食堂に行けばいいんだったよな~。

昨日の説明ではご飯は食堂に行けばもらえるそうだ。まあ、蓮華や蒼里さんは忙しいので直接持ってきてもらう方が多いそうだが。

 

「ええっと、ここを右だったかな?」

 

うろ覚えの頭を朝からフル回転させながら食堂を目指す。

どうやら記憶は正しかったらしく、すぐに見覚えのある廊下にでた。

 

「お、確かあそこだったよな」

 

目当ての場所が目に映り、小走りになる。

そして、正に食堂に入ろうとした時、出ようとしていた女性と鉢合わせてしまった。

 

「うおっ!?」

 

「っ、貴様は…!」

 

何とか踏みとどまりぶつかることだけは回避。

そして女性の方を見やるが、その姿は記憶にはない。

女性の方は俺のことを一瞥だけすると、そのまま行ってしまった。

 

う~ん、誰だったんだろ?

帯刀していたから武官なんだろうけど……

もしかして、また有名な武将だったりするんだろうか?

その可能性は大いに有り得るな。

今日までのことで悟ったことは、ここでは今までの常識というものは通用しないということだ。

事ある毎に驚いてちゃ身がもたないからな。

 

と、ここで本来の目的を思い出す。

俺は女性の事は後回しにし、とりあえずは朝食を食べるのであった。

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでしたー」

昨日も思ったけど、こっちの食事って俺からしたら薄味なんだよね

けど、その分素材の味が十分引き出されて、おいしいからいいんだけど。

 

さて、これからどうしようかな。

部屋に戻ってもう一眠りするか?

そう思い、来た道を引き返してく。

 

そして、程なくして自室にたどり着いたが、とても一眠りするような気分ではなかった。

何故なら、戻ってくるまでに少ないながらもここで働く人達の姿を見たからである。

一つ一つの部屋を綺麗に掃除していく給仕の人、何枚もの竹簡を運び政に携わっているであろう人、鎧を着こみ平和を守る人……

 

見慣れていないからであろうか、そういった人たちの姿は目から離れなかった。

だからこそ、彼らの事を考えてしまう。

彼らは生きるためにここで働いているのだ。働くことで給金を得、それを生活の糧としている。

その点、俺はどうだ?自分の部屋を貰えただけでなく、食事まで面倒をみてもらっている。

もちろん、無償でだ。

 

いや、無償ではない。俺の代わりにそういった人達が納めた税が使われているのだろう。

 

そう考えると、とても寝られなかった。

 

気付けば何かに突き動かされるように部屋を飛び出していた。

そして、一直線に蒼里さんの部屋へと向かう。

昨日、何かあったら蒼里さんに聞くことになっていたからだ。

 

 

「はぁ、はぁ……着いた…」

全力疾走のために乱れきった呼吸を何とか整え、扉を二、三回ノックする。

 

「誰ですか~?」

 

返ってきたのは昨日からお世話になっている声だ。

 

「一刀だけど、時間あるかな?」

 

「一刀君?どうぞ入ってください」

 

入室が許されたので扉を開く。

蒼里さんはというと、筆を片手に机上の書類と睨めっこしていた。

 

「どうかしましたか?」

 

俺が入ってきたことに気付くと、筆を硯に置き俺の方に顔を上げた。

 

「いや、何か俺にでも出来る仕事ってないかな?」

 

「仕事ですか……誰かに何か言われましたか?」

 

「いいや、俺の意思。皆働いてるのに俺だけゴロゴロしてるってのも違うかなって。それに、ここの生活費ってやっぱり税から出てるんでしょ?それなら、それに見合うだけの働きはしたいからさ。ダメかな?」

 

蒼里さんはちょっと驚き、そして嬉しそうに微笑んだ。

 

「一刀君のこと少し見直しました。はい、その通りここの生活費は民から納めてもらった税から出ています。ですから、私達はそれに報いる義務があると言えますね。一刀君の言うことは尤なことです」

 

そう言うと蒼里さんは机の上にあった書類から適当に三、四枚選び抜き、その内の一枚を俺に手渡す。

 

「そんなに難しい案件ではないはずです。何でもいいので意見を出して下さい」

 

まずは俺の能力を見るということか。

書類を受け取り、それを眺める。

記念すべき俺の初仕事だ。気合入れてやらないと。

 

だが、俺はすぐにあることに気付き、その気合はすぐに萎んでしまった。

ああ…蒼里さんの笑顔が今だけは心苦しい。

だが、ここは正直に言うしかないだろう。

 

「あ~、その…、すいません、読めないんですけど…」

 

「えっ!?」

 

何かの聞き間違い?という顔を向けてきたが、俺は肩を落としながら首を横に振ることでそれが真実であることを伝える。

蒼里さんの笑顔がどんどん曇っていった。

 

「あ~、そうだったんですか…てっきり読めるものだと思ってすみませんでした……」

 

「いや、俺もてっきり読めるものだとばかり……」

 

気まずい沈黙が場を支配する。

 

「そ、それでしたら私が暇な時に教えますよ。文が読めないと色々困りますしね。それに一刀君の天の知識はこういうことでこそ発揮されるものだと思いますし」

 

「ありがとうございます‥‥」

 

俺はただ頭を下げるしか出来なかった。

蒼里さんの優しさが心に染みる。これは早く字を読めるようにならないと。

 

「さて、そうしたらどうしましょうか?私の仕事はこっちが専門なもので」

 

そう言って机の書類を見やる。

どうやら蒼里さんの仕事は字が読めることが前提のようだ。

字が読めない今の俺では手伝えることなど無いだろう。

では、他の事となると……

 

どうやら蒼里さんは一歩先に答えを出したようだ。

 

「そうなると、私ではなく思春ちゃんのとこに行った方がいいですね」

 

思春ちゃん?聞いたことのない名前だな。たぶん真名だろう。

 

「一刀君付いて来てください」

 

蒼里さんは席から立ち上がると俺を連れ立って部屋を後にした。

 

そして着いた先は練兵場であり、そこには既に先客がいた。

 

「思春ちゃーん!」

 

蒼里さんが名前を呼びながら、彼女に近づいていく。

 

「蒼里か」

 

彼女の方も俺達に気付き、こちらを振り返りその姿を露わにした。

 

 

「あっ」

 

思わず声が出てしまった。

女性は今朝、食堂ですれ違った人だったからだ。

 

「あれ、知ってたんですか?」

 

「いや、今朝たまたま食堂ですれ違ってね」

 

「そうでしたか。では、改めて紹介しますね。こちらは甘寧ちゃん、ここの軍を取り仕切っています」

 

紹介を受けた甘寧さんは目を細め、俺を見定めるように見ている。

威圧感が半端ないんですけど…

だが、委縮してるわけにもいかない。おそらく、これから彼女にお世話になるのだろうから。

威圧感に負けず、俺も甘寧さんから目を背けない。

 

「ほぅ」

 

ん、甘寧さんが何か言った気がしたけど、気のせいかな?

 

 

「思春ちゃん、こちらは昨日から天の御使いとしてここで保護することになった北郷一刀君」

 

「知っている。蓮華様から話は聞いていたからな」

 

「そうでしたか、だったら話しが早いですね。思春ちゃん、悪いんですけど一刀君も訓練に参加させてもらえませんか?」

 

どうやら、蒼里さんは俺を軍の訓練に参加させたいようだ。

まあ、頭が使えないんじゃ体を動かすしかないよな。

 

「…構わないが、加減はせんぞ?」

 

甘寧さんは俺の方を見てきた。さっきと同じように目を細めながら。

それは、半端な覚悟なら引き返すなら今のうちだと語っているようだった。

 

ここが分かれ道なのだろう。

ここで引き返せば俺は安寧を得られる。ただし、大切な何かを失う。そんな気がした。

逆に、進めば俺は身を激流に投じることになる。俺はこの後に起こることをある程度は予測しており、そんな中で軍に参加することの意味は理解していた。

 

様々な思惑が頭の中を交叉していく。

そして、俺は結論を出した。

 

 

「ああ。覚悟はできたよ」

 

甘寧さんの目を見て、俺の選択を伝える。

俺は激流に身を投じることにした。

ここで逃げては今後も何かと理由をつけては逃げてしまう、そう思ったからだ。

その先に待っているのは『天の御使い』としての無為な日々だろう。

それが嫌で蒼里さんを訪ねたのだ。となると、答えなど最初から決まっていたようなものだ。

 

「良い目だ。では、付いて来い!まずはその格好をどうにかしろ!」

 

「ああ!」

 

俺は甘寧さんの後ろに付いて行く。

それが、俺のこの世界での第一歩だ。

 

「思春ちゃーん、殺してしまってはだめですよー!」

 

……後ろから不穏な声が聞こえた気がしたが、気にしない

 

 

 

その後、俺はその言葉が嘘ではなかったことを知ることとなる。

地獄って生きたままでも行けるんだな……

 

 

 

バシャン!!

 

突然、水を掛けられ俺の意識は無理矢理覚醒させられた。

 

「あれ、俺どうしたんだっけ?」

 

周りを見ると俺と同じように何人もの兵士が倒れていた。

そして、思い出す。地獄とも言える訓練を。

 

「起きたか?」

 

不意に声を掛けられ、俺はそちらを見上げる。

そこには地獄を見せた張本人、甘寧さんが水が入っていたであろう桶を持って立っていた。

 

「おかげさまで。ところどころ記憶が曖昧だけどね」

 

「そうか。だが、初めての訓練で最後まで着いてこれたことは評価しよう。お前は終了とともに倒れただけだ」

 

「あ、俺最後までやれたんだ……」

逃げずに最後までやり遂げられたことは素直にうれしい。

 

それにしても、

 

「甘寧さんは疲れた様子が全然ないね。一緒に訓練したはずなのに」

 

そう、同じメニューをこなしたはずの甘寧さんは涼しい顔でそこに立っている。

あれで疲れないなんて……。化け物か?この人は。

 

「お前たちとは鍛え方が違うからな。それと、」

 

そこで甘寧さんは言葉を区切ると背を向けてしまった。

何かあったのかな?

 

 

 

「……思春だ」

 

「えっ」

 

それって、確か甘寧さんの真名じゃなかったっけ。

つまり、

 

「真名を許してくれるってこと?」

 

「ああ、蓮華様も許しているようだし、今日一日でお前が信頼に足る者だと判断した。並大抵の覚悟では今日の訓練はやり遂げられるものではないからな。だが、蓮華様を裏切るような真似をするなよ。したら、分かっているだろうな?」

 

そう言って鈴の音を鳴らしてくる。

 

「そんなことはしないよ。蓮華には拾ってもらった恩もあるし、真名を預かっている以上その信頼には答えたいしね。思春にも同じことが言えるよ」

 

「そうあり続けて欲しいものだな」

そして、思春は再びこちらを振り返った。

 

「改めて名乗ろう。我が名は甘寧、字は興覇。真名は思春。共に蓮華様の下にいる者として信用させてもらうぞ、北郷一刀」

 

「ああ。よろしく、思春」

 

言葉と共に右手を差し出す。

俺の意図を察してくれたのか、思春も右手を出し、しっかりと握手をするのであった。

 

これが俺と思春の出会い。

この後、俺は彼女と幾多の戦場を共にすることとなる。

 

 

 

「ところでさ、もう少し訓練ゆるくならない?」

 

「……どうやら、まだ馬鹿なことを言える元気はあるようだな」

 

 

 

翌日、俺はベットから立ち上がることが出来なかった。

 

 

こんにちは、ジャイロです

 

思春登場。これで今、蓮華の下にいるのは全員です

 

次回くらいからボチボチ黄巾の乱の兆しが見えてくる予定

 

 

 

 


 
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