No.220655

真・恋姫†無双‐天遣伝‐ 第一回同人恋姫祭り

初めましての方は初めまして。
素面ライダーと申します。
TINAMIにて「真・恋姫†無双-天遣伝-」という小説を連載しています。
強い一刀を中心に、オリジナルの恋姫を数多く登場させてた作品で、今まで見た事のなかった武将も恋姫となっている作品となっています。
ストーリーは先の読めない、をモットーとしていますので、『こんな恋姫見た事ない!』をお求めの方は是非どうぞ!

続きを表示

2011-06-04 17:21:31 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:10009   閲覧ユーザー数:8295

 

 

・Caution!!・

 

この作品は、真・恋姫†無双の二次創作小説です。

 

オリジナルキャラにオリジナル設定が大量に出てくる上、ネタやパロディも多分に含む予定です。

 

また、投稿者本人が余り恋姫をやりこんでいない事もあり、原作崩壊や、キャラ崩壊を引き起こしている可能性があります。

 

ですので、そういった事が許容できない方々は、大変申し訳ございませんが、ブラウザのバックボタンを押して戻って下さい。

 

それでは、初めます。

 

 

 

 

 

夏。

 

一言で言うならば、幾らかの利は在るだろう。

時に素晴らしい響きにも聞こえるだろう。

特に学生ならば、それが顕著だ。

 

夏休み。

夏祭り。

海。

プール。

花火。

 

そう言った言葉を聞くだけでも、心が弾んだ事が無いだろうか?

少なくとも一度はある。

俺はある。

 

北郷一刀は、そう頷いた。

 

 

「けど、現実はそう甘くも無し、と」

 

“ミ゛ーンミ゛ーンミ゛ーン・・・・・・!!!”

 

「あ、あぢぃ・・・」

 

「死ぬ、死んでまう・・・死んだら化けて出ちゃる・・・・・・」

 

「いっそそうしたらどうだ?

背筋が冷えて気持ち良いかもしれないぞ?」

 

「ナイスアイディアやかずピー!!」

 

「よし及川今すぐそこの窓から飛び降りろ!」

 

「・・・止めろお前等。

ったく、頭がいい具合に煮えてやがるな。

もう夕方だってのにこの暑さだってのは、確かに嫌にもなるが」

 

 

すぐ近くで急に頭がイカレたとしか思えない様な行動を起こそうとし、一刀が止める友人二名。

早坂章仁と及川祐。

北郷一刀にとっての親友である。

 

夏休みに入っても、学生寮に留まる三人であった。

 

 

 

真・恋姫†無双

―天遣伝―

IF現代編企画用番外編「お祭りは夏以外にもやるけど何故か夏祭りは特別に聞こえる不思議!!」

 

 

 

「んっんっんっ・・・ぷはーっ!! 甦るわー!」

 

「本当にな」

 

「お前等遊びに来たのかたかりに来たのかどっちだ?」

 

「「えーっと、両方?」」

 

「・・・ほんっと、友達想いな奴等だこと」

 

「「正直すまんかった」」

 

 

ハァ、と一度大きく溜息を吐く。

心労が少し増した気がする。

 

 

「せやけど、かずピー何でエアコン付けへんの?

俺らみたく電力使い過ぎてブレーカーが落ちた、とかやないみたいやし」

 

 

部屋の端の扇風機を独占しつつ、及川が聞いて来た。

て、おいこら、独占すんな。

独占禁止法違反だぞ。

それ動かしてんのだってロハじゃないんだっつーの。

 

 

「確かに、俺も不思議に思ってた。

だってお前、恋人達から誘われてるだろうし、里帰りもしてないじゃん」

 

 

今度は早坂が扇子で自分を扇ぎながら聞いて来た。

ってそれもちょっと待て!

その扇子はこないだ華琳から貰ったばかりの奴じゃねぇか!?

 

 

「返せ馬鹿!」

 

「キュレム!?」

 

「突き刺さる様な右ストレート!?

肌色の閃光とかしまらへんで!?」

 

 

うるせぇよ。

それとも何だ?

真っ赤なグローブでも填めてりゃ良かったか?

扇子は取り戻したんで、早坂には代わりの団扇をプレゼントする。

偽善者だな、俺。

 

 

「さ、サンキュ・・・・・・いたた」

 

「割と本気ですまんかった」

 

 

アチャー、鼻血まで出てら。

スマン早坂。

この埋め合わせは必ずすっから。

 

 

「しかし、かずピーはセルフ節電状況やし。

・・・外に出掛けるか?」

 

「いいなそれ、何処行く?」

 

「近所の神社で夏祭りやってるらしいけど」

 

「行くか?」

 

「異議なしや」

 

「俺も」

 

「満場一致、と。

んじゃ、さっさと行くか」

 

「「異議なし」」

 

 

トントン拍子で話が進む。

ホントこいつ等といると、物事や行事のスケジュール管理には困らない。

何気に感謝してるんだよな。

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった・・・?」

 

「アキちゃん、諦めぇや・・・かずピーがおる時点で幾分か想像ついとったろ」

 

「確かにそうか」

 

 

二人が呆れた様に視線を向けた先。

そこには、葵と蓮華に左右からサンドイッチされた一刀がいた。

 

『忠犬』と名高い葵に、『新妻』の異名を取る蓮華。

見た目も器量もハイスペックな二人は、校外でも名を知られていた。

だが。

 

 

「ねぇ一刀、『当然』私と一緒に行くよね?」

 

「へぇ、そう。

私よりも彼女を取るの・・・?」

 

「・・・・・・」(滝の様な汗)

 

 

今の状況は、やはり。

 

 

「全然羨ましくないな」

 

「あぁ、ホンマや。

心の底から代わりとうないって思えるで」

 

 

うんうん、と二人して頷く。

あの二人がヤンデレ気質だとは知っていたが、同類が揃うと何時もより三倍増しで恐ろしい。

赤くて三倍なのか、そーなのかー。

 

一刀が弱った様に、二人に対し「助けてくれ」とアイコンタクトによる助けを求めて来る。

故に、二人はありったけの友情を籠めてこう返した。

 

『ム・リ・だ♪』

 

『薄情者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!』

 

絶望したかのように頭を抱える。

いや、実際絶望しているのだろう。

 

 

「「・・・・・・一刀?」」

 

「ひぃいいいいいいいいっ!?」

 

 

一刀が背筋を恐怖で震わせている傍ら、早坂と及川は遠い目でそっぽを向いた。

 

 

「なぁアキちゃん、俺割と本気で彼女探してみるわ」

 

「俺もそうしよっかな」

 

「アキちゃんは本気出せば結構色々と手が届きそうなのがチラホラ・・・」

 

「あ、あきちゃん!」

 

「お兄ちゃん!」

 

「噂をすれば影やな」

 

 

視線を向ければ、早坂の妹の羽未と、幼馴染の芹沢結衣佳がいた。

二人とも浴衣を着ている。

で、及川は気付いた。

二人が向かおうとしていた方角は・・・成程。

 

 

「あー、その」

 

「ええんやって、ここいらで別行動で構わへんで。

・・・・・・妹と幼馴染にいいとこ見せたれ」

 

「さ、サンキュー、及川」

 

 

男を見せる及川であった。

なのに何故彼女が出来ない?

きっと天の意思的な何かが邪魔しているのだろう。

例えば筆の意思とかな!

 

 

「じゃーなー」

 

「ああ、またな」

 

 

早坂を加えて三人組になった三人を見送り、及川は一刀の方を向いた。

 

 

「って何でやねんっ!!?」

 

 

何故かアスファルトにうつ伏せで倒れ伏す一刀と、そんな一刀に半泣きで縋り付く葵と蓮華を見れば、関西人でなくともビシッとしたキレの良い突っ込みを入れたくもなるだろう。

 

一刀が復活するまで、約二十分経った事を此処に記しておく。

 

 

 

 

 

所変わり此処は祭りの会場である神社。

その一角に、人が集まっていた。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

“ジャジャジャジャジャジャジャッ!!”

 

『おおーーーっ!!!』

 

「シッシッシッシッシッ! はいっ!

焼きそば追加お待ち!!」

 

『ワッ―――!!!』

 

 

歓声が上がっていた。

その中心にいるのは、蒼髪の美男子。

名は張魯、字は公祺、真名を健流(タケル)と言う。

外史では五斗米道(ゴットヴェイドー)の一番弟子にして、五斗米道(ごとべいどう)の開祖兼長であった男だ。

そんな男は現在、聖フランチェスカ学園の校舎に併設された喫茶店『黎明館』で、派遣された調理師兼栄養士をやっている筈なのだが、今では半ば黎明館の長扱いされている。

どうしてこうなった、と頭を抱えたのも一度や二度では無かった。

 

話が逸れたので戻す。

 

張魯が修行の一環で構えたこの屋台、唯の屋台ではなかった。

いや、本人曰く【唯の屋台】なのだが。

だって調理の全てが素手で行われるとか、誰だって見たくなるだろう。

大道芸としても見られるし。

おまけに凄まじく美味いともなれば、人気が出るのもやむなしだ。

と言う理由から、現在屋台は大繁盛中と言う訳である。

それに、売れる理由はそれだけではなく。

 

 

「いかん、キャベツが切れる」

 

「材料の追加、買って来ました、健流さん」

 

「おぉ、助かった!

すまんな千砂、折角の休みなのに」

 

「いいえ、健流さんのお手伝いならお休みを返上する価値有り、ですよ。

それじゃ、売り込みに行って来ますね」

 

 

綺麗な看板娘が宣伝しているともなれば、仕方ない。

 

見る人の大抵は、彼女が彼に対して好意を抱いていると気付く。

が、生憎。

 

 

「うむ、千砂はやはりいい奴だな」

 

 

彼はそういった事に関しては全くのド素人。

初心とかそれ以前、それ未満の問題だ。

黎明館の名物美人:那岐沢千砂、哀れであった。

 

祭りの喧騒もそれなりに加速を見せている。

それを追う様に張魯の手も加速する。

最早手の軌道が目で追えない程だ。

 

店員は張魯と千砂の二人だけだが、圧倒的な作業の速さで何とか持たせている。

それでも盛況な現状では、やはり人手が足りない。

そしてそんな時程、世界は御都合にも人を寄越す。

 

 

「あー、えっと、手伝うぞ?」

 

「公孫姉妹! 助かった!」

 

「流石お姉ちゃん! 困っている人を見たら即助けるんですね!」

 

 

揃いの浴衣に身を包んだ公孫姉妹、白蓮と黒蓮が手伝いを買って出たのである。

黒蓮は相変わらず白蓮のヨイショなので、白蓮は思わず背中がむず痒くなった。

 

 

「よーし、燃えて来た!! やぁーってやるぜっ!!!」

 

「熱っ!?」

 

 

比喩で無く、メラメラと張魯の背後から立ち昇る炎。

かと言って火事ではない。

火事なら今頃大惨事だ。

 

全身が薄らと金色の粒子モドキで包まれているのは見間違いか。

 

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

『ワッ!!』

 

「す、凄い、お姉ちゃん! 張魯さんが分身してるよ!」

 

「うわぁ・・・」

 

「これが、料理だけに専念した健流さん・・・カッコいい・・・・・・“ポッ”」

 

「えっ!? そこ赤くなる所なのか!?」

 

 

白蓮のツッコミが追い付かない。

何処まで行っても不憫道からは抜け出せない。

乙です。

 

 

「不憫って言うなぁーーー!!!!」

 

 

何も聞こえない。

 

 

 

 

 

今、一刀達。

既に夏祭り会場である近所の神社へと到着済み。

 

 

「で、熱暴走かいな」

 

「すまん、まさか倒れる程とは思わなかった」

 

「い、いえ、私達こそごめんなさい」

 

「・・・・・・(ショボーン)」

 

「いや、気にするなってば」

 

 

さっきから一刀に平謝りするばかりの蓮華に、情けなさと申し訳なさから一言も発せず俯きっ放しの葵。

逆に一刀の方が申し訳なくなってしまうのだが、それでも律義な二人は落ち込むのを止めようとしない。

参ったな、と一刀が自分の後頭部をポリポリと引っ掻く。

で、見付けた。

 

 

「なぁ、あれやってみないか?」

 

「えっ?」

 

「・・・え~っと、射的、ですか?」

 

 

気分転換代わりに指差しただけだったが、意外といい線を行ってるのではないかと思った。

 

 

「成程、景品を撃ち落とすのかしら?

・・・・・・面白そうね」

 

「弓矢で、でしょうか」

 

「いやいやいや、そないな物騒なモンは使わへんて。

俺が手本見せたるさかい、見とれや。

おっちゃーん! 一人前よろしゅう!」

 

「毎度ありー!!」

 

 

的屋のおっさんに声を掛け、及川にコルク銃が渡された。

二人はそれに興味津津と言った感じである。

一刀は、及川に感謝を抱きつつ、苦笑しながら其方を見ていた。

 

 

「む、そこにいるのは一刀殿ではござらぬか?」

 

「あ、不動先輩」

 

 

背後からかけられた声に振り向けば、そこにいたのは不動如耶。

何時もの様に、金魚の糞が如くくっ付いている後輩はいないようだ。

 

 

「真宮の奴がいませんね」

 

「あぁ、彼女ならば、里帰り中だと聞いておりますぞ」

 

「・・・・・・どんだけ渋ったんだろうなぁ」

 

 

一刀は正直、真宮璃々香が苦手だ。

まるで桂花と音々音のツンの部分のみを抽出して配合したかのような不動至上主義者で、故に扱い辛い相手だ。

何時も、不動と男子生徒が椅子を並べているだけで椅子アタックしかけてくるわ、雑談をしているだけで真横から罵声を撒き散らしながら間に入るわだし。

因みに全部、一刀が実体験した内容だったりする。

まぁ、早坂に比べればよっぽどマシだろうが。

 

 

「その、一刀殿?」

 

「ん、何すか、不動先輩」

 

 

ちょっと呆れた様に苦笑する如耶を見る。

手には、携帯電話を持っていた。

 

 

「実は、一刀殿を捜している御仁が「あ、いたいた! 何やってんのよあんた!!」・・・噂をすれば影でござるな」

 

「げっ、詠・・・」

 

「『げっ』って何よ!? どうして部屋にいないのよ。

おかげで捜し回らなきゃいけなかったじゃないの」

 

 

浴衣に身を包み、紅潮した顔で一刀に詰め寄るのは詠。

その後ろには、似た様な浴衣を着る月もいた。

 

 

「えっ、捜してくれてたのか?」

 

「あ゛! い、今の無しっ!」

 

「そうですよ。

詠ちゃん、部屋に一刀さんがいないって、大慌てで捜してましたから」

 

「ちょ、月!?」

 

「どうやら私はお邪魔虫の様ですな、ではこれにて」

 

「あ、どうも」

 

 

フッと含み笑いを漏らして、如耶はその場を立ち去った。

男前な女性だよな、と一刀が思っていたのは余談である。

 

 

 

 

 

「ああもう、いらない恥かいたわ!」

 

「怒るなって。

あれは明らかに自爆だろ」

 

「うぐぅ・・・」

 

 

指摘され、真っ赤になって俯く。

最悪な日はまだ来ていない筈だが。

 

 

「まぁいいさ、かき氷でも食うか? 奢るよ」

 

「いいのですか?」

 

「いいの、俺がそうしたいんだから」

 

「ふふっ、それでは頂きます」

 

 

ニコリと笑う月に片手を上げて答え、一刀はかき氷屋の屋台へと駆ける。

そして、その屋台に見知った顔がいるのを見て仰天した。

 

 

「・・・・・・お前、何やってんだ?」

 

「おや、北郷さん」

 

 

円であった。

しかもはっぴ姿が異常な程様になっていた。

美人は何を着ても似合うという事だろうか。

手慣れた様子で氷をガリガリ削っている。

 

 

「いえ、『あちら』でやった祭りが未だに忘れらなくて。

他にも、店側で参加している者は結構いますよ」

 

「おい、マジか」

 

「ええ、星はメンマ屋とやらを開いておりますし」

 

 

聞いて頭が痛くなる。

これでは、あの大地で昔やった事の巻き直しの様だ。

しかしここで頭を抱えても、自体が好転する訳でもない。

諦め、一刀は激流に身を任せる事にした。

 

 

「かき氷三つくれ」

 

「お味は?」

 

「イチゴとメロンとレモン」

 

「畏まりました」

 

 

優雅に一礼し、ササッと作業に取り掛かる。

その間、一刀は向こうで待つ月と詠に目を向ける。

二人とも中々自覚してくれないが、極上の美少女。

ちょっかいを出されたら、と思うと堪らない。

見ると、どうやら無事の様だ。

少しホッとする。

 

 

「あの御二人が心配ですか?」

 

「そりゃまぁな、恋人だし」

 

 

臆面も無く言い切る。

そこには強い自信があった。

 

 

「現世では、一人の男が複数の女子を娶るのは、禁じられているそうです。

それに、社会的にも嫌われるでしょう」

 

「そんな事はミミタコだよ、それでも俺は貫き通す。

誰にどう言われ様が、俺はこの生き方を曲げたりはしない」

 

 

やはり、臆する事無く強く言い切る。

円は、そんな一刀に優しく微笑んだ。

 

 

「皆均等に愛する、それはとても難しい事です。

けれど北郷さんはやってのけている。

それはとても凄い事なんです。

皆から後ろ指を指され様が、やり抜くというのは」

 

「ありがとな、円。

そう言って貰えると気が楽になる」

 

「いえ、まったく仔細ありません」

 

 

三つ綺麗に盛られたかき氷を受け取り、一刀は二人の元へ戻った。

 

 

「・・・そろそろ私の番が来る頃なんですけどね、そういう所だけは未だ鈍いままですか」

 

 

背後でそう溜息を零す円がいた事には気付かず。

 

 

 

 

 

「シィアッ!!」

 

“スパーン!”

 

「また倒れたわね」

 

「彼是十七つ目ですか、店主が半泣きですね」

 

「そろそろガチ泣きに変わりそうやけどな・・・・・・」

 

「ふむ、中々興が乗って来たな。

店主、追加だ!」

 

「・・・何やってんだお前等?」

 

「おぉ、かずピー・・・って、見ない内にラヴァーズが合流しとるっ!?」

 

 

月と詠を侍らせた一刀が、レモンのかき氷片手に立っていた。

その向こうで、今も射的屋のおっちゃんが苦悶の悲鳴を上げている。

見れば、コルク銃片手に嬉しそうに腕を振り被る、カジュアルルックな華雄の姿が。

 

 

「そぉらっ!!」

 

“ドォン!!”

 

「ギャース!?」

 

「うわぁ・・・」

 

 

そのままコルク銃を投石機が如く振り抜き、コルクを撃ち出していた。

華雄の異常腕力によって過剰に加えられた遠心力が、コルクに凄まじいエネルギーを伝えうんたらかんたら・・・で、とにかく物凄い勢いで景品に命中しては台から叩き落としていっている。

よーく見てみると、七段構えの台座一杯に並んでいた筈の景品の既に六割強が消えていた。

そしてそれに対応する様に華雄の傍にある大量の景品。

コルクの量もたっぷり残っている。

これはいかんと、一刀は助け船を出した。

 

 

「華雄、それ位にしておいてやれよ」

 

「む、一刀か、しかし漸く面白くなって来た所なのだが」

 

「弱い者いじめは、強者の所業として相応しいのか?」

 

「むむむ・・・確かに」

 

 

一刀の説得が利いたらしく、華雄はその場にコルク銃を置いて下がった。

店主が安堵の深い溜息を吐いたのは、言うまでも無い。

 

 

「しかし、調子に乗って取り過ぎてしまった。

持ち帰るのにはそれ程では無いが、持ったまま祭りと言うのは難儀だな」

 

「そうだな・・・俺が持って行こうか?」

 

「却下だ、お前には月様と詠を楽しませるという至上の役割がある。

となると・・・ふむ」

 

「「えっ?」」

 

 

華雄がチラリと見たのは、蓮華と葵。

猛烈に嫌な予感が迫って来た二人だった。

 

 

「お前等、手伝え」

 

「やっぱりですか、ですが断ります!」

 

「私もよ!」

 

「何、案ずるな、今すぐこれを置きに戻り、即戻って来れば花火の時分には間に合うさ」

 

「は、離しなさい!」

 

「後生ですから! 後生ですからー!」

 

「ははは、聞く耳持たん。

ではな、一刀、二人を頼む」

 

「お、おいちょっと!?」

 

 

一刀の制止も聞かず、華雄は二人を連れ去ってしまった。

残された三人は、暫し唖然としていた。

・・・三人?

 

 

「ってあれ? 及川は何処行った!?」

 

“Pirrrrrr”

 

「メール? 及川から?」

 

『及川祐はクールに去るで! P.S.リア充腹上死しろや!!』

 

「あ、あいつは・・・」

 

 

割と洒落になっていない。

特に腹上死辺り。

少し途方に暮れていると、右腕を月に、左腕を詠に取られた。

二人とも顔が赤い。

 

内心一刀は華雄と及川に感謝した。

せめて、今夜位は安らかに。

だって普段は騒がし過ぎるし。

そうして、三人は祭りの内を歩き出した。

 

 

 

 

 

―――更に夜が深まった頃

 

あれから、やはり何度も大騒ぎの種に捕まりかかった。

メンマ屋のメンマ教徒達に月と詠が洗脳されかかったり。

張魯の焼きそば屋に並ぶ人達の列に阻まれてはぐれかけたり。

性質の悪い不良達に絡まれて危うく傷害事件を起こしかけたり。

そして何よりも、一刀と一夜を供にしようと襲い来るフリーダム達が厄介だった。

特に祭りの熱気に中てられた檪花と穏と雪蓮。

危うく捕まってそのままアッー!な展開もありえた。

だが、それも良識ある仲間の大活躍によって何とか切り抜けた。

そして今。

 

 

「此処だ、此処が穴場の特等席なんだよ」

 

「はぁ~、これは確かに気付けません・・・」

 

「ふぅん、成程ね」

 

 

神社から少し離れた公園の雑木林の中。

近くには清らかな小川が流れていて、蛍さえも飛んでいる。

そんな中、木々の隙間から空が大きく見える様になっている場所で、三人は腰を下ろした。

 

 

「此処はな、昔母さんに教えて貰った場所なんだ」

 

「お母様に、ですか?」

 

「あぁ」

 

 

嬉しそうに語る一刀の姿に、詠の心が少しばかりチクリとする。

 

 

「(馬鹿馬鹿しい、実の母親の事を話してるだけでしょ)」

 

 

そう自分自身に言い聞かせ、一刀の言葉を待つ。

一刀は少しはにかんで、続けた。

 

 

「思えば、俺って全部母さんか爺ちゃんに教えられた事ばかりなんだよな。

今思い返してみると、武は爺ちゃんに。

日常生活の能力は母さんに叩き込まれたんだし。

母さんと爺ちゃんがいなかったら、俺はこうしてお前達と一緒に此処にいられなかったかもしれない。

俺は、それが堪らなく嬉しいんだ」

 

 

フッと漏らした微笑に、月と詠の心臓が飛び上がった。

一刀に心底やられてしまっている二人にとっては、一刀のその表情は反則過ぎた。

熱くなる顔を止められない。

気付かれているとは言っても、恥ずかしい物は恥ずかしいのだ。

 

 

“ドォン、ドォン・・・!”

 

 

都合良く上がり始めてくれた花火の御蔭でばれずに済んだが。

 

 

「綺麗・・・・・・」

 

「こんなに凄い物、初めて見ます・・・」

 

「これも日本の文化だもんな。

長い時を経て磨き上げられて来た火薬の技術が、こんなに綺麗な花火を産んだんだ」

 

 

そういう一刀の横顔は、何処となく寂しげであった。

 

 

「皮肉なものよね。

火薬の所為で人が沢山死ぬかと思えば、こうして見て楽しむ物にもなるって」

 

「だから、使い方を間違えてはいけないんだよね?」

 

「そうね、とどのつまりそれが全てよ」

 

 

一刀の胸の内を理解した二人のさりげないフォローが入る。

 

実は、一刀は非常に気に病んでいた。

外史では、例え戦争の後であっても如何にか判り合えたという事実に対し、現代に戻ってみての実際のギャップに絶望していたのだ。

「あの陳寿」が語った言葉が全て真実であると眼前に叩き付けられてしまったかの様で、膝を屈しかけた程に。

立ち上がれたのは、偏に一緒にやって来られた仲間達の御蔭だった。

 

 

「ありがとな、二人とも」

 

「ふんっ、今更ね」

 

「私達こそ、『御主人様』には感謝しなければならない側です」

 

「それでも言わせて貰いたいんだ。

ありがとう、本当に感謝している」

 

 

深く頭を下げる。

皆は一刀に礼を言って来たが、実際に救われたと感じていたのは一刀の側だった。

ほんの少しでも選択を誤っていれば、こうして二人は愚か皆と一緒にいられる今は無かっただろう。

故に、感謝する。

 

頭を下げ続ける一刀の両脇に温もりを感じる。

頭を上げて見れば、二人がそっと寄り添ってくれていた。

詠は顔を真っ赤にしつつ。

月は柔和に微笑んで。

 

堪らない。

一刀は再度今の幸せを噛み締め、花火を見上げた。

 

公園内に漂う夏の夜の静けさと、蛍の光が三人を静かに見守っていた。

 

 

 

 

番外編:了

 

 

 

 

 

後書きの様なもの

 

加速しない!

つまり遅い!

 

そんな気分で、企画に間に合う様に書いたIF現代編の番外です。

・・・誰かから刺されそうな内容になっちまった。

主に華蘭スキーな方々から。

 

よし、考えない事にしよう。

 

コメ返し

 

 

・2828様:まさかの一発ロン!? 思ったよりもメジャーだったのか!?

 

・流浪人様:恐らくはDIEジェストになると思われ。

 

・黒乃真白様:馬一門は色々と自重しません、一番ネタがこんなに早く看破されるとは意外だったんじゃよ。

 

・M2様:中〇一番です。

 

・闇羽様:空鍋は葵のパーソナルアクション化する予定w

 

・村主7様:美羽はいい子! でも、麗羽はそういう憐れみを掛けられるのを一番嫌がるタイプなので・・・

 

・悠なるかな様:結末は次回に。

 

・砂のお城様:えっ!? 一刀君にそんな概念在りませんぜ? 強いて言うなら全員正妻!!

 

・ロンロン様:ゲェーッ!? ヤバイ、素で大勘違い。 即直しします、御指摘有難うございました! 華蘭は・・・ノーコメント。

 

・はりまえ様:何かしらのコマ送りになると思います。 誤字指摘ありがとうございました、直しました。

 

・poyy様:でも目の前に連合がいるので・・・

 

・F97様:大喧嘩と言うよりも、後々までジリジリ長引く女の戦いに・・・・・・

 

・アロンアルファ様:らめぇ! もげたら恋姫が終わる!

 

・性露丸ティマイ鳥様:休がGJ連発し過ぎると、『アッー!!!』ENDに直結するという地雷仕様w 華蘭は本編で大活躍予定! 乞うご期待!

 

・無双様:もいだら、恋姫達にボッコにされちまう・・・

 

・readman様:る〇剣主人公の語った人斬りの業みたいなモンです。 未来永劫自己断罪の意識に苛まれ続けます。

 

 

次回は本編にする予定。

ISも筆が進んだら随時載せる事にします。

そしてSirius様に書いて頂けた華蘭のキャラ図が最高でした!

ではまた次回!

 

 

 


 
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