「暑いね~ご主人様」
「暑いな~桃香」
風の吹かない政務室を離れ、俺と桃香は中庭の木陰に避難していた。
「うにゃあ~暑いのだ、お兄ちゃん」
中庭では既に鈴々と恋が木陰で涼んでおり、そこに俺と桃香はお邪魔した。
ちなみに、鈴々は"たれぱ○だ"ならぬ"たれ鈴々"状態だった。
「……ご主人様、暑い」
恋はこの暑い中セキトを抱えている。
「セキトを抱えなければ良いんじゃないかな」
「……名案」
そう言うと恋はセキトを自分の横に下ろしてあげた。
幾分涼しくなったのか、恋もセキトも先程の難しい顔が和らいだ。
……アレ、いつのまにセキトの顔色が分かるようになったんだろう俺。
「ねえねえ、ご主人様。天の国の知識で涼しく出来ない?」
「涼しくねぇ……」
氷は……ダメだ。
この間の猛暑で使ってしまった。かき氷、美味かったなぁ。
水浴びはまだダメだ、水着が出来ていない。
水着の無い水浴びなど認めるか!!
いや、下着姿で水浴びってのも……でへへへへ
「ねえーってばー」
「おお!!すまん、自分の世界にトリップしていた」
「とりっぷ?」
桃香は首を傾げている。
思わず英語を使ってしまった、反省反省。
そうすると、何があるかなぁ~
ウンウン唸りながら考えていると閃いた。
「そうだ!!アレだ!!」
「アレって、キャ!?」
俺は立ち上がり走り出す。
桃香が驚いて声を上げたが、暑さに負けたのか追う事をしなかった。
全力疾走に近い速度で倉庫の前まで来た。
勢いそのままに倉庫の扉を開け、中を物色し始める。
「どこにしまったかな~」
鍛冶屋のオッサンと一緒に、天の国の道具をいくつか再現した。
確か、その時に珍しくちゃんと出来た物をこの中にしまったと思ったんだが。
いくつかの箱を開け、ガサゴソと中を弄ると目当ての物が出てきた。
「お、あったあった!!」
これがあれば多少は涼しくなるはずだ!!
うおおっ!!と雄叫びを上げながら来た道を同じ速度で戻った。
「おまたせ桃香!!」
「キャ!? もうご主人様~って凄い汗だよ!?」
桃香が驚きながら心配そうに言った。
ふふふ、せっかくコレを試すチャンスだ。汗など気にしていられるか!!
「さぁ桃香!! コレを吊るすと涼しくなる!!」
「コレって、ご主人様が作った風鈴?っていう物だっけ」
そう!!俺が持ってきたのはTHE夏の風物詩・風鈴だ!!
これを吊るして音色を聞けば涼しくなる事ウケ合いだ!!
「うにゃあ本当に涼しくなるのお兄ちゃん」
鈴々は半信半疑という顔で聞いてきた、さっきと同じくたれながら。
その横で恋は寝ている。
というか、よくこんな暑くて寝れるな恋。
「まぁ聞いてみろ鈴々!!」
木の適当なところに風鈴を吊るす。
吊るしてすぐにチリーンチリーンと小気味良い音を鳴らす。
「わっ、綺麗な音だね」
「だろう? 天の国では耳で涼を取るんだ」
桃香は風鈴を気に入ってくれたみたいだ。
苦労して硝子と格闘したかいがあった!!
「全然涼しくならないのだ!!」
「まぁまぁ、とりあえず音を聞きながら木陰で休んでみなって」
鈴々は不満そうだが、きっとすぐに風鈴の良さに気がつく筈だ!!
「う~ん、何となく涼しくなってきたみたいなのだ」
「だろだろ?」
鈴々敗れたり!!
風鈴は素晴しい物だ!!
にしてもおかしいな、風鈴ってこんなに頭に響く音だっけ?
恋が2人いるぞ、これは食費が大変だ。
あれ、今度は桃香が4人に増えた?
と言う事は、おっぱいが8個!?
やばくねやばくね!?
「あはははは、おっぱいパラダイスや~」
「ご主人様フラフラしてるってご主人様!?」
俺はおっぱいに囲まれる幻想を見ながら、そして桃香の必死な声を聞きながら意識を手放した。
「暑さに当てられましたな、主殿」
「ははは、油断した」
気が付いたら寝台の上だった。
どうやら熱中症になったみたいだ。
倒れた俺を恋と鈴々が運んでくれたそうだ。
窓から見える空は既に星が見えた。
「桃香様も鈴々も慌てふためいて大変だったんですよ? もちろん、この私も」
「星にも心配かけたな」
寝台の近くには星がいた。
どうも起きるまで、交代でみんなが近くにいてくれたようだ。
「他のみんなは?」
「各々が出来る事をしております。朱里や雛里などは文献を漁っておりますよ」
星は顔の前に手をやりクツクツと笑った。
みんなに心配かけたなぁ。
「さて、受け答えも出来るようですし私はこれでお暇しましょう」
「ありがとうな、星」
「お大事に」とだけ返事をして部屋から出て行く。
入れ替わりで愛紗が入ってきた。
「ご主人様、お加減は?」
「まだ少し頭が痛いけど大丈夫」
愛紗は心配そうに顔色を見て、額に手を当ててくる。
「少し熱がありますね」
「これぐらいなら寝てれば治るよ」
それでも心配そうにしているが「本当に大丈夫だよ」と言うと、やっと表情が和らいだ。
「心配したんですよ、ご主人様が倒れられたと聞きまして。
それに倉庫はまるで賊が入ったみたいに荒らされてると報告ありましたし」
「倉庫?」
倉庫って、俺か?俺なのか!?
ああ、そういえば片付けとかしてないな。扉も開けっ放しで来ちゃったもんなぁ。
「……何かご存知で?」
愛紗の目が鋭くなる。
「間違いなく俺です、ハイ……」
手を上げ正直に白状する。
「……ふぅ、今回は正直に仰ってくださったので小言を言うつもりはありません」
おお、ありがたい。
「ですが!!」
愛紗の声が少し大きくなり両目で真っ直ぐ見てくる。
思わずビクッてなった。
「その、あの、風鈴の音を一緒に聞かせてください……」
手を身体の前でモジモジさせながら、消え入りそうな声で愛紗は言った。
「ああ、良いよ。一緒に聞こう」
そう言うと愛紗の顔がパァーと明るくなり「はい!!」と元気良く返事をした。
「じゃあ、夜も遅いから部屋に帰って休んで?」
「分かりました。お大事に」
愛紗は嬉しそうに礼をして部屋から出て行った。
早く治さないとなぁ。他の娘達にも心配かけただろうし。
そんな事を思いながら、眠りについた。
後日、愛紗と一緒に風鈴の音を楽しんだ。
だが、それを聞きつけたみんなが押し寄せ結局全員で楽しむ事となったのであった。
後書き
お祭りと言う事で拙い作品ながら勝手に参加させて頂きました。
こういう形態で書くのは初めてです。
ちゃんとした作品になってましたかね?
最後に自分の作品を紹介します。
恋姫†無双~御使いを支える巨人~
主人公は一刀の義兄である陸豪仁義。一刀と共に戦国乱世を生き抜く作品となっております。
いわゆるオリ主なので受け入れられない人には、とことん受け入れられない作品となっております。
読んで頂く場合はご注意を。
ではでは、いつか本編で。
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どうも、飛び入りで参加させてもらいます。
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