No.212501

きっと夢中にさせるから

浅田璃眞さん

10年後の雲雀さんとイーピンのお話です。

2011-04-19 23:32:27 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1515   閲覧ユーザー数:1510

 

校庭の桜の木。

 

見るとあの人を思い出して、しばらくの間、時を忘れてしまう。

 

 

「イーピン!」

「…っ!…なぁんだ、ランボ」

「なぁんだじゃないでしょ」

 

 

全く、とため息をつきながら私を睨むのは幼なじみのランボ。

 

彼は私が桜を見る度に何を考えているのかは全てお見通し。

変なところで勘が鋭くて、参る。

 

 

「あ、そういえば沢田氏がね」

「沢田さん?」

「うん、雲雀さんがイーピンを呼んでるって。雲雀さんの部屋に行くように伝えてって」

「…雲雀さんが?」

「雲雀さんが」

 

 

雲雀さんから呼び出しなんて滅多にあることじゃない。むしろ私が会いたいときには会ってくれないのに。

 

あの人は少し我が儘だ。子供の私よりよっぽど。でも、そこも含めて私は彼が好きなのだ。

 

 

ランボと共にアジトに行き、風紀財団の管轄との分かれ道で分かれる。

 

 

「…遅かったね、どこで油を売ってたの」

「あ、え、ごめんなさい!これでも真っすぐ帰ってきたんですけど…!」

「まあいいや、おいで」

 

 

言いたいことだけ言って、雲雀さんはすたすたと自室へ向かって歩きだしてしまう。その後ろを私は少し距離を開けながら歩く。

 

 

「君さ」

「はい?」

「今いくつだっけ」

 

 

唐突な質問に首を傾げると、雲雀さんは「聞いてる?」と少しいらついたような声色で私にもう一度尋ねた。

 

 

「あ…えと…15歳ですが…」

「そう…あと1年だね」

「何がです?」

「君、足し算も出来ないの?」

「足し算くらいは出来ます!」

 

私の必死の反論が聞こえているのかいないのか、彼はなお歩みを進めて、自室の襖に手をかける。

 

 

「女性は16歳、男性は18歳で結婚ができるでしょ」

「…っ!けっ、けっこん?!」

「いいかい、僕は10年待ったんだよ」

「えっと…っ」

 

 

私の髪を撫でると、雲雀さんは耳元で優しくこう囁いたのでした。

 

 

 

 

『きっと夢中にさせるから』

(それは、私のセリフです)

 

 


 
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