No.211347

真・恋姫†無双 あなたと共に 12(序章)

highstaさん

いつも私の作品を読んでいただいている皆さん、ありがとうございます!

今回は魏の娘は一人も出てきません。
魏アフターのはずなのに・・・

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2011-04-12 16:34:04 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:14594   閲覧ユーザー数:9820

~祭り3日目・夜~ ~呉・宿舎~

 

「・・・お呼びですか、姉様」

 

春蘭の優勝で終わった天下一品武道大会が行われた日の夜のこと・・・

 

呉の屋敷の広間に3人と1人の女性が向かい合っていた

 

「あら、早かったわね?」

 

「来てほしいと言伝を頼んだのは姉様ではないですか・・・」

 

「もう~相変わらず真面目ね蓮華は♪」

 

陽気な調子で、3人の真ん中にいた雪蓮が肩をすくめる

 

「はぁ~・・・雪蓮・・・早く用件を言え・・・」

 

「はいは~い、分かってるってば」

 

隣でため息をつく冥琳にヒラヒラと手を振りながら答える

 

「蓮華」

 

「何ですか?」

 

「あなた、一刀とはもう話した?」

 

「・・・・・・」

 

雪蓮の質問にわずかながら、表情がこわばる

 

「・・・・・・まだみたいね」

 

「・・・・・・はい」

 

責める訳でもない、いつもの調子で語りかける・・・

 

「・・・蓮華」

 

「・・・はい」

 

「洛陽にいる間に仲良くとは言わないけど、一度くらい話しておきなさい」

 

「・・・・・・」

 

一瞬、目元が厳しくなる

 

「別に私たちのように”真名を預けろ”なんて言わないわ」

 

「・・・はい」

 

「でもね、蓮華?あなたが一刀と話すことは、きっと無駄にはならないわ」

 

雪蓮の言葉に肩がピクッと反応する

 

「どうかしら?」

 

「・・・・・・」

 

蓮華の様子を見かねて、雪蓮を挟んで冥琳とは逆隣りにいた祭が口を開く

 

「権殿は、北郷がお嫌いか?」

 

「・・・そういうわけではないが・・・・・・」

 

その答えに満足したのか祭が頷いた

 

「じゃろうな。権殿は噂などに頼らず、人の善し悪しは自分で接して判断するからのぉ」

 

祭にそこまで言われ、蓮華は一度ため息をついてから

 

「・・・・・・分かりました」

 

そう・・・答えた

 

 

「雪蓮、いったいどういうつもりだ?」

 

「あら、何のこと?」

 

蓮華が広間から出て行った後、まず口を開いたのは冥琳だった

 

「わざわざ、あんなことは言わなくても良かったのではないか?」

 

「・・・そうね」

 

「・・・・・・」

 

冥琳の言葉に雪蓮と祭が頷く・・・

 

「・・・でもね」

 

その顔は”姉”ではなく”王”としての表情で

 

「とてもじゃないけど・・・今の蓮華には次の呉の王は任せられないもの」

 

「・・・ふむ」

 

冥琳も何か考え込むように・・・

 

「今まであの娘には言ってきたけど・・・・・・もう私たちの言葉じゃ迷ってばかり・・・・・・」

 

「・・・そうじゃの・・・・・・王としての器や資質は確かに持ってはいるのじゃが・・・」

 

「そうですね・・・それも、雪蓮以上に」

 

「ぶぅ~何よそれ~?」

 

冥琳の挑発的な言葉に、少しだけいじける雪蓮・・・

 

しかし、

 

すぐに笑顔を浮かべる

 

「まっ、本当のことなんだけど」

 

そう言って、カラカラと笑い出した

 

「しかし・・・北郷と蓮華様が何を話すか楽しみではあるな」

 

「確かにの」

 

そう言って、祭もカッカッカと笑い出す

 

「まっ、一刀なら大丈夫でしょ♪」

 

雪蓮もいつもの調子で答える

 

「ほぉ・・・この短い間に随分と北郷を信用しているのだな?」

 

「ん~冥琳ってば、や・き・も・ち?」

 

「はぁ~・・・・・・雪蓮」

 

「もう~冗談だってば、冗談♪」

 

雪蓮のおふざけに疲れたように冥琳が息を吐いた

 

「でもね、『信用してる』っていうよりは『信じさせられる』って感じなのよね~」

 

「・・・・・・ふむ」

 

雪蓮が言わんとしていることが分かり、冥琳も納得したような表情を浮かべる

 

「祭は実際に戦って分かったと思うけど」

 

「ふむ、そうじゃの」

 

逆側にいた祭も頷く

 

「一刀を慕っている民や華琳たち・・・そして、その想いに応えようとする一刀」

 

一刀が帰ってきてからの洛陽の民の姿を思い浮かべ、雪蓮の表情には温かみが増す

 

「・・・信じてみたいって思うでしょ♪」

 

雪蓮は楽しそうな表情を浮かべ、横にいた二人もその様子を見て笑顔を浮かばせる

 

「まぁ、しかし雪蓮の言いたいことも分かるが・・・蓮華様は手ごわいぞ?」

 

「それでも大丈夫でしょ♪」

 

ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた冥琳に、雪蓮が軽い調子で答える

 

「だって一刀は」

 

相変わらず調子は軽いが、雪蓮は自信たっぷりに答える

 

 

 

 

 

「あの覇王”曹孟徳”を変えたんだから♪」

 

 

「・・・蓮華様」

 

雪蓮たちがいた部屋を出た蓮華が廊下を歩いていると後ろから声が掛かる

 

「・・・思春か」

 

蓮華が振り向くと、そこには一礼した思春の姿が目に入った・・・

 

「雪蓮様は何の御用だったのですか?」

 

「・・・大したことではない」

 

「・・・・・・」

 

大したことではない、と言いつつも、思春には覇気のない蓮華が気に掛かる

 

「・・・・・・はぁ」

 

そんな思春の様子に気づいたのか、蓮華が一度息を吐いた・・・

 

「北郷一刀と話してこい、と言われたの」

 

「・・・北郷・・・・・・あの天の御遣いですか?」

 

「・・・えぇ」

 

「なぜそのような・・・」

 

「さぁ?・・・姉様の考えてることは分からないわ」

 

蓮華にとっても突然のことで、ほとんど事態が飲み込めていなかった・・・

 

ほとんど命令のように感じた・・・

 

しかし・・・

 

実際には雪蓮は命令ではなく、あくまで”提案”だった・・・

 

それを命令とも勘違いしているのは自分・・・

 

なぜなら・・・

 

「私も・・・北郷一刀とは一度は話さなければと思っていた・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

思春は黙ったまま、蓮華の言葉を聞く・・・

「あの者については分からないことが、あまりにも多すぎる・・・」

 

「・・・はい」

 

そう言って少しの間、頭を悩ませたが・・・

 

「いや・・・・・・」

 

すぐに考えることをやめた・・・

 

こんなことは自分らしくない・・・

 

自分自身で確かめれば済む問題だ・・・

 

「思春」

 

「はっ」

 

傍らにいた思春に呼びかける

 

「・・・明日、北郷一刀に会いに行く。共を頼む」

 

「はっ!!」

 

思春の凛とした声が響く・・・

 

その思春の様子を見て・・・

 

蓮華は空を見上げながら・・・

 

決意を・・・

 

口にする・・・

 

 

 

 

「私は孫家の娘・・・」

 

 

----------孫家の誇りと共に・・・

 

 

「世間では北郷一刀は英雄扱い・・・・・・」

 

 

----------その碧眼から放たれる眼差しに力を込め・・・

 

 

「だが・・・そんなことは関係ない・・・」

 

 

----------王族である自分は・・・

 

 

「重要なのは・・・」

 

 

----------やるべきことをする・・・

 

 

「我ら呉にとって・・・どのような存在であるかだ!」

 

 

 

 

「ッ!!はっ!!」

 

思春は身震いがした・・・

 

蓮華の王族としての誇りに心さえも震えた・・・

 

「(やはり、蓮華様は雪蓮様の跡継ぎにふさわしい・・・)」

 

改めて、自分が忠を尽くすべき存在に尊敬の念を抱いた・・・

 

「(・・・北郷一刀)」

 

だからこそ・・・

 

もし・・・天の御遣いが・・・

 

呉にとって・・・

 

雪蓮にとって・・・

 

そして何よりも・・・

 

蓮華にとって邪魔な存在ならば・・・

 

「(・・・この命を賭してでも・・・)」

 

全力で・・・

 

排除してみせる・・・

 

 

 

 

~蜀・宿舎~

 

同じ頃・・・蜀の宿舎の中庭では・・・・・・

 

「はっ!ふっ!はぁーーっ!!」

 

まるで、踊るように青龍偃月刀の素振りをする愛紗の姿があった・・・

 

「ふっ!はっ!「愛紗」・・!?・・・っと」

 

突然の聞きなれた声に反応して体を落ち着かせる

 

「んっ?・・・星か?」

 

「あぁ・・・武道大会は今日だったというのに、もう鍛錬とは・・・精が出るな?」

 

「・・・それは嫌味か、星?」

 

「ふっ、まさか」

 

両者とも一回戦敗退という納得のいかない結果に終わってしまったので少なからず気にしているようだ・・・

 

「・・・武道大会が、あのような結果だったからな。・・・・・・桃香さまに合わせる顔がない」

 

「んくっ・・・・・・ふむ、なるほどな」

 

酒を呑みながら、いつもの調子で答える星

 

「星、お前は悔しくないのか?」

 

「無論、悔しいに決まってる」

 

そう答えるものの、星の表情からは悔しさが見て取れない

 

「・・・だが、それ以上に・・・」

 

笑顔を浮かべたまま・・・

 

「今年は、久しぶりに魏の者の”強さ”を見ることが出来た・・・そして、実際に戦うことも」

 

「それは・・・確かに・・・・・・」

 

春蘭、霞の戦いを思い出しながら、愛紗は悔しさを滲ませながら答える

 

「・・・あれこそ、我らが戦争中に味わった魏の”強さ”だ」

 

「そう・・・だな。あれが我らと春蘭たちとの本当の実力差なのかもしれんな」

 

愛紗の答えに満足したのか、星は笑顔でクイッと酒を煽る

「・・・まぁ、その原因になった方も素晴らしかったがな・・・・・・」

 

「・・・そうだな。それは素直に納得できる」

 

春蘭や霞が昔のような・・・いや、昔以上の”強さ”を取り戻した原因・・・

 

北郷一刀・・・

 

「あれで、たった3年前まで一般兵程度だったとは・・・にわかには信じられんな」

 

「・・・あぁ」

 

一瞬、場が静寂に支配されるが・・・

 

「・・・星」

 

「んっ?」

 

愛紗がそれを打ち破った

 

「確か・・・北郷殿に真名を預けていたようだったが・・・」

 

「?それがどうかしたか?お主も預けたのではないのか?」

 

愛紗らしくない歯切れの悪い言い方に引っかかりながらも聞き返す

 

「・・・いや、私はまだ・・・」

 

「・・・ほぉ」

 

まるで面白い玩具を見つけたような表情を浮かべる星・・・

 

「あんなに露骨な態度で・・・まさか預けてなかったとは・・・」

 

「うっ・・・」

 

一刀と初めて話した時の自分の様子を思い返して、自己嫌悪に陥りそうになる・・・

 

「ふむ・・・ならば、北郷殿に何か問題でもあったのか?」

 

「い、いや・・・問題という程のものではないが・・・」

 

歯切れは悪いものの、なんとか言葉を続ける

 

「素晴らしい方だというのは・・・戦争が終わり、洛陽の様子を見れば一目瞭然だったからな」

 

「・・・・・・ふむ、確かにな」

戦争が終わったばかりの当時・・・・・・

 

洛陽に来る前・・・初めは愛紗も”天の御遣い”が具体的にどのような人物かは分からなかった

 

むしろ・・・なぜ自分たち”蜀”の元に来てくれなかったのかと、怒りを覚える程だった・・・

 

しかし・・・

 

いざ洛陽を訪れた時・・・民たちの肩を落としきった様子を見て、驚きを隠せなかった・・・

 

大国”魏”の中心とはとても思えかった・・・

 

そして・・・何よりもその原因が・・・

 

洛陽の警備隊長をしていた”北郷一刀”の消失にあることを知り・・・

 

愛紗の中の一刀に対する怒りなど失くなった・・・

 

 

 

彼がどれだけ洛陽を・・・

 

魏を・・・

 

その民を・・・

 

愛していたか・・・

 

そして・・・

 

愛されていたかを知ったから・・・

 

 

「民たちにあのような表情をさせる北郷殿は素晴らしい人物だと思った・・・」

 

「・・・」

 

星も黙って、先を促す

 

「そして、実際に話してみて・・・北郷殿の”想い”の一片を知り・・・今まで抱いていたその考えは確信に変わった」

 

「んっ?ならば問題などないではないか?」

 

その星の問いに静かに首を振る

 

「素晴らしい人物だというのは分かったが・・・」

 

一度、息をつく・・・

 

「・・・あの方の底がまったく分からん」

 

「・・・ほぉ」

 

再び、星の表情に笑みが浮かぶ

 

「それが怖いのか?」

 

意地悪そうな質問を星がぶつける

 

「・・・・・・怖い?・・・・・・そう・・・なのかもしれないな」

 

わずかながら納得したような表情を見せる愛紗・・・

 

「・・・あの方は」

 

再び、今日の武道大会を思い出しながら・・・

 

「無自覚かもしれないが・・・・・・そこに存在しているだけで・・・周りに影響を与える力を持っている」

 

「・・・ふむ、確かに。それが北郷殿の最大の武器なのかもしれんな・・・」

 

“あぁ”と短く答え、続ける・・・

 

「それが・・・怖いのかもしれない」

 

「・・・・・・」

 

「自分も真名を許し、北郷殿と親しくなれば変わるかもしれない・・・それが良い方か悪い方か・・・・・・分からん」

 

「・・・・・・」

 

そこまで言い切ると、場には静寂が訪れる・・・

 

 

 

 

どれほど経っただろうか・・・

 

 

 

 

「・・・ならば」

 

「・・・?」

 

長い静寂を打ち破ったのは星・・・

 

「無理に預けることもないだろう?・・・真名とはそういうものではないのか?」

 

「・・・んっ」

 

愛紗は少し戸惑いながら・・・

 

「本気で信じられるように、お主自身で見極めれば良いではないか。まったく・・・関雲長らくないぞ」

 

「!そ、そうか・・・・・・うん・・・・・・そうだな」

 

いつもの自分を取り戻すかの様に、目をつぶり、一度深呼吸をする・・・

 

「他人は他人・・・自分は自分・・・・・・弱気になる必要などないではないか、愛紗」

 

自分に強く言い聞かせる

 

「幸い、まだしばらくは洛陽に留まるからな。その間にでも、もう一度話してみればいいさ・・・」

 

「あぁ、そうだな」

 

星の言葉にも力強く答える・・・

 

「ふっ、それにしても・・・」

 

「ん?なんだ?」

 

星の笑顔が意地の悪いものへと変わる・・・

 

「北郷殿について語る愛紗は、まるで恋する乙女のようだったぞ」

 

「なっ!?せ、星ッ!!」

 

青龍偃月刀を持ち詰め寄ってきた愛紗をサッと避け、愛紗に背を向け室内に戻ろうとする星・・・

 

「こ、こら!待て、星!!」

 

「はっはっはっ、まぁそうカリカリするな愛紗」

 

「くぅ~~~」

 

恥ずかしさと悔しさで愛紗の顔が赤くなる

 

「・・・おぉ、そうだ。からっかってしまったお詫びに教えてやろう」

 

「・・・何をだ・・・」

 

少し拗ねたような表情で星を見る・・・

 

「私が北郷殿に真名を預けた理由だ」

 

「!!」

 

しっかりと反応する愛紗

 

そして、そんな愛紗の様子を見ながら星も語りだす

 

「お主とはまったく逆だ」

 

「・・・何?」

 

楽しそうな表情のまま、星は続ける

 

「お主が言った北郷殿が周りに与える影響・・・私はそれを面白いと感じた」

 

「・・・・・・」

 

「もしかしたら、北郷殿と接していれば私も変わってしまうかもしれない・・・」

 

言葉もどこか弾んでいる

 

「だが・・・」

 

「・・・うん?」

 

「それもまた一興!面白いではないか?」

 

「!?」

 

星の語る理由を聞いて一瞬驚いたが・・・

 

「お前らしいな・・・」

 

呆れたような・・・納得したような表情で答えた・・・・・・

 

 

「・・・・・・」

 

星がいなくなった後も愛紗は中庭にいた・・・

 

「・・・・・・はぁ」

 

息を吐く・・・

 

「・・・北郷一刀殿・・・・・・か」

 

考えるのは”天の御遣い”と呼ばれる不思議な男・・・

 

「・・・私はあなたを信じたい」

 

決して届かないだろう声・・・

 

「・・・だから」

 

空に向かい呟く・・・

 

「・・・私はあなたを知りたい」

 

まるで告白のような想い・・・

 

「・・・すぅーーー」

 

大きく息を吸う・・・

 

「・・・よしっ!!」

 

そして、気合の入った声と共に・・・

 

今日の敗北を・・・

 

今までの迷いを・・・

 

吹き飛ばすように・・・

 

「はっ!!」

 

美しい黒髪が・・・

 

踊り続ける・・・

 

 

 

 

 

 

 

----------星空の下・・・

 

 

 

 

 

----------ある者たちは・・・

 

 

 

 

 

----------自分たちの誇りを守るために・・・

 

 

 

 

 

----------ある者は・・・

 

 

 

 

 

----------他の誰でもない自分自身のために・・・

 

 

 

 

 

----------想いを巡らせる・・・

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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