No.210816

Loss Of Memory③

紅やまさん

記憶喪失の主人公が彼女と一緒に
記憶を取り戻す奮闘物語です!!

2011-04-09 14:46:24 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:289   閲覧ユーザー数:288

【…して】

どこからか声がする。

【どうして…】

(誰…?)

周りは真っ暗で、

動こうとしても動けなくて。

闇の中で嘆く人が居る。

【私じゃないの…っ】

(この声、ナギサ…じゃない)

【どうして私じゃないの?】

女性の声はどんどん大きくなって、

【私を選んでくれないなら…

私のものにならないなら…】

(俺に向かって言っているのか?)

【あなたなんて…あなたなんて!!

このまま…記憶を失くしたまま…】

女性は振り向き、

【死んでしまえばいいのよ!!!】

そう言い放ち、闇に消えていった。

(なんだ、それ。)

何も覚えていない、なにも思いだせない自分に腹が立つ。

(くそっ!ぜってぇ思いだす!!)

と思った瞬間。

ハッ

「あ…あれ?」

周りは暗闇ではなく、普段の病室だった。

(夢だったのか…

それにしても、あの女性は…)

考え込んでいると、

ガチャッ

『あっやっと起きたんだね!!』

彼女がやってきた。

「やっとって…俺はどのくらい寝て?」

そう聞くと彼女は、

『えっと…3日…』

「3日!?」

(確か俺は、あの写真を見て、頭が痛くて、

そして、あの看護婦が…

そうだ!あの看護婦!!)

「あっあのさ、」

『なに?』

「あの看護婦…俺の知り合い?」

『えっ…』

(俺の知り合いなら彼女も知っているはず…)

彼女はアルバムを取り出し、

『ほら、これ。』

個人写真のページを見せてきた。

「神埼…サナエ?」

『そう。サナエは看護師になるのが夢で、見事叶えた子なの』

「…なあ、この神埼は俺とどういう関係だった?」

『えっ…』

突然の質問に彼女は戸惑ってしまっている。

(ストレートすぎたか?)

「教えてくれ。どんなにマイナスなことでもかまわない。

俺は、全てを思いだしたいんだ!!

なぁ、知っているんだろ?」

『…わかった。教えるよ。』

彼女はアルバムを見ながら話し始めた。

『サナエはあんまり明るいほうじゃなかった。

周りの人を軽蔑した目で見て、

人の言う事をあまり聞かない子だったから、

みんなからも好かれてなくてね。

でも、サトルは違った。』

(俺?)

『サトルは、まあサナエとは正反対で、

誰とでも仲良くできる子で、サナエとも平等に接してた。

それが、サナエにとっては自分はサトルにとって特別なんだ!!

って思いこんじゃったんだと思う。

サナエはサトルの事が好きになって、思いきって告白した。

でも、その時にはサトルはもうあたしと付き合ってたから。

当然フッたわけ。そしたら彼女は、逆切れしちゃってね、

【なんで私じゃないんだ!!私のものになってよ!!】

って言って、学校にもこなくなっちゃって。

それでも卒業式にはちゃんと出てね、サトルに手紙を渡して、

そこでお別れ。もう会うことはないと思ってたけど、

偶然にもここで再会したってわけ。』

(わけがわからないな…)

「その手紙ってなんて?」

『えっ…と、手紙には

【どうして私を選んでくれなかったの?一生許さない。一生恨んでやる。】

って』

「なっ…」

(なんてやつだ…でも、あの時笑ってたのはそのせいか…)

『全部話したけど、本当によかったの?

病院変えようか?』

彼女が心配そうに俺の顔をのぞく。

「いや、大丈夫。話してくれてありがとうな」

俺は笑顔で答える。彼女も微笑む。

(まずはちゃんと記憶を取り戻そう。そして、

神埼のことも、ちゃんと決着をつけよう…)

そう心に決め、その日を過ごす。

 


 
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