No.209378

ツン!恋姫夢想 とある外史のツンツン演義 ~第三話~

狭乃 狼さん

ツン√、第三話です。

北朝伝に関する言い訳は、あとがきのほうにしてあります。

というわけで、石は投げないようにしてくださいね?w

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2011-04-01 21:23:33 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:21364   閲覧ユーザー数:16126

 

 

 

 

 

 

                       「ツン!恋姫夢想 とある外史のツンツン演義」

 

 

 

 

                       「第三話 鈴の音はツンへの道標と知るのこと」

 

 

 

 

 

 

 私が三人と出会ったのは、荊州にある新野という街でのことだった。

 

 そのころの私は、自分のすべきことに、はっきりとした道筋を見つけられないでいた。古い付き合いの仲間たちからは、ともに江賊となって悪徳商人の船を襲い、その財を、苦しむ人々に配って回る-いわゆる義賊になろうと、そう持ちかけられていた。

 

 正直、私はその時、その考えに賛同してはいた。

 

 その日の食べ物にも事欠く生活を送る、そんな人々が多くいる今の世で、自分だけ良ければそれでいいと、弱い者を食い物にして稼いでいるそいつらが、私はどうにも許せなかったからだ。

 

 しかし。

 

 いかな大義名分があろうとも、一度賊に身をやつせば、そう簡単には日のあたる場所に戻ることはできなくなるだろう。

 

 私一人ならば、そんなことは大して気にするほどのことではない。どうせ、身寄りなんて一人も居ないのだ。だが、仲間たちは違う。彼らには、家族が居るのだ。彼らを温かく迎えてくれる、帰るべき家があるのだ。……根無し草の私とは違って、だ。

 

 だから私は、彼らへの返事を保留し続けていた。何かきっかけがほしかった。彼らを諭し、日のあたる場所で、彼らに生活してもらうための、その方便を。

 

 

 そして、見つけた。そのきっかけを。その方便を。

 

 私は思わず駆け出していた。

 

 そのきっかけが、二人の女と茶を飲んでいるその場所に。

 

 ……はっきり言って、思考がどうかしていたとしか言いようがない。

 

 だから、こんなことを叫んだのだ。……思い切り、初対面の人間に。

 

  

 

 「お前!私の婿になれ!!」

 

 『…………はいい~~~~っっっっ?!』

 

 私と卓を挟んだ向かい側に座るその三人が、突然現れた私の告白を聞き、そんな驚愕の声を上げた。

 

 「……って!何を突然やってきて馬鹿なことを叫んでるのよ、あんた!頭に何か湧いてんじゃないの?!」

 

 「というか貴様いったい何者だ!?名を名乗ることもなく、いきなりそんなことを叫ぶなど!」

 

 その男を挟んで座る二人の女が、私にそう言って食って掛かってくる。……まあ、当たり前といえばあまりにも当たり前なのだが。このときの私は、正直どうかしていたのだと思う。

 

 ……現在、あまりにも突然すぎる事態に、大きく口をあけてぽかんとしているその男が。……その、つまり、あ、あまりにも、私の理想の、男性像をしていたからだ!

 

 ……はっきりって、一目惚れだった。

 

 もう、完全に我を忘れるほどに。

 

 「……え、えっ……と。……とりあえず、座って自己紹介だけ、してもらえない……かな?」

 

 呆気に取られていた男が、かろうじてといった感じで、それだけ私に語りかけてきた。……とても、耳に心地のいいその声で。おかげで?私もどうにか我を取り戻し、三人に頭を下げて無礼をわびた。

 

 「……ったく。ほんとにあんたは、女が相手だと……そのうち、後ろから刺されても知らないわよ?」

 

 「まったくもってその通りだな。ふん!この節操なしが」

 

 「……いや、二人とも?俺は別に何もしてないんですけど……」

 

 『……何か間違ってるとでも?』

 

 「……いえ。おっしゃるとおりです。はい」

 

 女二人に睨み付けられ、思い切り縮こまる男。……さっきの一目惚れは、私の気のせいだったかもしれんな……。

 

 

 

 まあ、そのあたりのやり取りはともかく。

 

 落ち着きを取り戻した私は、努めて冷静を振舞い、三人に自己紹介をして聞かせた。

 

 「……本当に、突然すまなかった。……私は、姓を甘、名を寧、字を興覇という。……お主たちも、良ければ名を教えてはくれまいだろうか?」

 

 「……まあ、名乗らせた以上、それに答えないのは礼にかけるし。……私は荀彧。字は文若よ」

 

 「……魏延。字は文長だ」

 

 猫の耳のようなものがついた外套をかぶった娘が、荀彧という名で。黒髪の一部を白(?)に染めた娘が、魏延という名だそうだ。そして、その間に座っている、白く光って見える服を着た男が、最後にその名を名乗った。

 

 「俺は北郷一刀、です。北郷が姓で、一刀が名になります。字はありません。……よろしく、甘寧さん(にっこり)」

 

 「(ハウッ!!///)」

 

 まるで心臓に矢が突き刺さったかのようだった。……北郷の笑顔は……なんて、破壊力、なんだ……!!

 

 だが、そこで先ほどのような二の轍を踏む甘興覇ではない。……正直、今にも破裂しそうなぐらい、激しく脈打つ心臓を無理やり押さえつけ、あくまでも、表面上は冷静を装うことが出来た。

 

 「……(じと~~~)」

 

 ……いや、まあ。確かに冷静さを装ったはずなんだが、荀彧がなぜか、そんな私をジト目で睨み続けていた。……もしや、こいつも北郷を?だから、私が自分と”同類”なのに、感づいた……のか?

 

 その荀彧から視線を逸らすかのように、私は魏延の方をちらりと見やった。……どうやら、今のところ彼女からは、そんな感じは見受けられる様子はない。だが時折、横目で何気にちらちらと、北郷の方を気にしていることがある。……どうやら、こやつは自覚無しの予備軍のようだ。注意だけはしておくことにしよう。

 

 ……それにしても、この北郷という男。どうやら相当、女を惹きつける何かがあるようだ。それが証拠に、道行く女たちも、何気に彼のほうを気にするそぶりを見せている。……これは、相当心してかからねば。……なにせ、この私の、は、初恋、なんだから///

 

 

 

 「それで?結局何の用だったわけ?まさか、さっきのが本当に、用事だったとは言わないでしょうね?」

 

 ……ほとんど全力でそうだったんだが、それは秘密にしておくことにした。今後のことも考えると、北郷には興味がなさそうな風を演じていたほうが、何かと都合がよさそうだと。私の直感がそう告げていた。……今更な気はまあ、まったくしないわけではないが。

 

 「あ、ああ。いや実はだな、その……わ、私の昔の仲間たちがな、江賊に、その身をやつそうとしていてな」

 

 「……江賊に?」

 

 「そうだ。長江をその主な活動地にして、義賊を気取るつもりで本人たちはいるのだ。悪党商人やら、質の悪い役人やらだけを襲って、その収穫を貧しい民たちに配ることを目的にな」

 

 半分苦し紛れの言い訳に、私は現在の悩みを三人に打ち明けた。……なんとなくだが、この三人なら、北郷ならなにか、彼らを思いとどまらせる手段を、私に提供してくれそうな、そんな気がしたからだ。

 

 「で?お前はそれを、思いとどまらせたいっていうのか?」

 

 「ああ。そのための方策は、実はすでに頭にあるのだが、それをするためには、どうしても協力者が必要なのだ。……その協力者になりそうな者を探しながら歩いていたとき、私の目に北郷、お前が映ったのだ」

 

 「……俺?」

 

 「ああ。……なんだか、とてもお人よしそうなのがいると思ってな。こいつなら、私に無条件で協力してくれるのではないかとな」

 

 これも半分くらいは本当だった。あいつらを止めるための手立ては、とっくの昔に思いついてはいた。だが、私一人ではどうにもならないことがあった。あいつらを信用させうるに足る、とびきりの協力者、いや、”伴侶役”が必要だったのだ。

 

 「お人よし……。なあ、荀彧さん?俺ってさ、会ったことも無い人にまでそう思われるほど、情けない顔してんのかな……?」

 

 「……いまさら何わかりきったこと言ってんの?」

 

 「そうだな。北郷のお人好しは、その軟弱な顔を見ればすぐにわかるというものだ」

 

 「……そうでございますか……」

 

 ……すこしだけ、北郷が気の毒な気になってきたな。それはまあ、ともかくとしてだ。私は三人に、私の計画を話して聞かせた。

 

 「……へ~え。……んで?こいつにその伴侶役をやらせようってわけ?(ヒクヒク)」

 

 「……いいじゃないか、荀彧さん。人助けになるんなら、断る理由なんてこっちには無いよ。甘寧さん。その役、喜んで引き受けさせてもらいますよ」

 

 「わ!私は反対だぞ!そんな、そんな神聖なことを、いくら人助けのためだからといって」

 

 口の端をヒクつかせ、こめかみに青筋を立てつつも、荀彧はさも冷静の様に振舞い。魏延はそれとは反対に、力いっぱい反対意見を口にした。……まあ、気持ちは分からんでもないがな。

 

 「別にいいではないか、二人とも。これは所詮、”お芝居”なんだ。……それとも何か?二人には、これをそこまで否定する、何がしかのはっきりした理由でもあると?」

 

 『う。……そ、それは』

 

 その一言を最後に、二人とも完全に押し黙ってしまった。……ふ。勝ったな。

 

 そして、計画実行の日が訪れた。

 

 

 がらーん、がらーん、と。

 

 その荘厳な鐘の音が、その会場につつましく響き渡る。

 

 正直言って、こういう風になるとは、私としても、まったくの予想外だった。あの後北郷が、

 

 「どうせお芝居なんだし、ちょっと趣向を凝らしてみようか」

 

 といって、街の衣装屋の親父と、そして鍛冶屋の親父とを交えて、何事かを相談しあっていた。そして、そのお芝居の当日。衣装として渡された”それ”に、私の目は釘付けになった。さらに、それを着付けた私を見た、荀彧と魏延も。……完全に、夢見る乙女の顔になって。

 

 一世一代の大芝居。その幕が上がった。

 

 たーんたーた、たーん♪たーんたーた、たーん♪

 

 ……北郷が言うには、彼の生まれである天の国で、この”式”を行う時には、必ずこの曲を流すのだそうである。

 

 そして、いまだ納得のいっていなさそうな顔をし、たきしーどとかいう、これもこの式の際には必ず着なければいけないという、その衣装を着た魏延に付き添われ、白く、清楚な、その衣装を着た私が、少し前で待つ北郷の下に、ゆっくりと歩いていく。ちなみに、その北郷の背後には、荀彧がむすっとした顔つきで立っている。……あっちもどうやら、いまだに納得していないようである。

 

 そう。

 

 今行われているのは、結婚式だ。それも、北郷が提案しての、天の国の様式に則って。

 

 「派手にやったほうが、嘘だとばれずにすむかもしれないだろ?」

 

 という彼の論理だったのだが。……正直、すさまじくこっ恥ずかしい///……なんで私が照れるんだって?それはもちろん、真っ白いたきしーどを着た北郷が新郎で、うぇでぃんぐどれすとかいう花嫁衣装を着ているのが、この私だからだ。

 

 つまるところ。

 

 私が立てた計略というのは、私が嘘の結婚式を披露して見せ、仲間たちに、妻や子供のこと、家族のことを、もう一度思い出してもらう、というものだ。

 

 この私ですら、こんな身近な幸せを望んでいるということを。そしてそれこそが、みなの本当の幸せなのだと。賊などに身をやつして、そんな大事なものを失ってほしくないということを、みなに伝えるのが、この策の狙いなのだ。……まあ、ちょっとした役得になったのは、うれしい誤算ではあったが。

 

 そして、その思惑通り、家族に囲まれた仲間たちは、どうやらその考えを改めてくれたようで。

 

 「賊なんかになって、あんな幸せそうな姉御を、悲しませちゃいけない」

 

 そういって、江賊になる道を捨ててくれた。

 

 ――-良かった。

 

 これで、私のここでの役目は終わったな。後は無事、この嘘の結婚式を、終わらせるだけである。私はそんな思いにふけりつつ、北郷の隣へとその足を進め、その隣に並んだ。そして、周囲に聞こえない様、小声で北郷に話しかけた。

 

 「……ありがとう、北郷。こんな、馬鹿げたことに付き合ってくれて」

 

 「はは。こんな馬鹿なら、いつでも大歓迎ですよ。……それに、いいものを見させてもらってますしね」

 

 「?……いいもの?」

 

 「ええ。……とっても、綺麗ですよ、甘寧さん」

 

 ぼっ!!///……一瞬で沸騰した私だった。

 

 「ばっ!馬鹿なことをいうな!そ、そんな嘘で、人をからかうんじゃない!」

 

 わ、私が綺麗だなんて、そ、そんなわけがあるはず無いじゃあないか!?

 

 

 

 「嘘なんかじゃあないんですけど。……さ、それじゃあ、式を終わらせましょうか?……あと最後の一芝居だけ、ね?」

 

 「あ、ああ」

 

 そうだな。後は最後のお芝居をするだけだ。……む?あとは何をすれば良いんだったか?

 

 「……じゃ、さっさと始めるわよ?汝と汝は……以下略」

 

 『おい!?』

  

 以下略って何だ!以下略って!手抜きにもほどがあるだろう!?

 

 「るっさいわねー。こんな面倒なこと、さっさと終わらせたいのよこっちは。ほら、誓いの……をしなさいよ」

 

 「……誓いの……なんだった?」

 

 本気で覚えてなかった。……このどれすとやらに袖を通した瞬間、何でか頭の中の段取りが、全部吹き飛んでしまっていた。

 

 「あのねえ。……そ、その、誓いの、く、くく、くち、くちづけ!でしょうが!」

 

 「……あ」

 

 そーだったそーだった。誓いの口付けだったな。……え?

 

 「……言っとくけど、本当にしたら駄目なんだからね?!”ふり”だけよ、”ふり”だけ!わかった?!」

 

 小声でそんなことを注意してくる荀彧。そ、そうだな。”ふり”だけ、だものな!

 

 「ほ、北郷?……その、や、やさしく、な?」 

 

 「……分かってる。触れないように、それっぽく……っと?!」

 

 私に、口付けるフリをしようとした北郷が、何かに躓いた。

 

 「~~~~~~!??!?!?!?!」

 

 「な、ななななな、ななああああ!!」

 

 ……やわらかい、北郷の、その唇が、私の、”それ”に、触れた(正確にはぶつかった)。

 

 「うわわ!ご、ごめん!い、今のはけしてわざとじゃなくて……!!」

 

 もう、正直何も、私の頭には浮かんでなかった。あったのは、恥ずかしさという、ただひとつの感情。体が、勝手に動いていた。

 

 「……北郷……貴ッッッッ様あああああ!!よくも、よくも私の、”初めて”をおおおお!!」

 

 「い、今のは事故だああ!!不可抗力だあああああ!!てか、ごめんなさああああい!!」

 

 「問答無用ーーー!!おとなしく”責任”を取れーーー!!」

 

 チリーン、と。

 

 私の鈴音が、綺麗に響いた。

 

 宙に舞う、私が持っていた、その花束(ぶーけ)とともに。

 

 「……あのどれす、今度は私が着てみたいなあ……。ちゃんと、本物の結婚式で///」

 

 「……なんで、あの二人の口付けを見ただけで、こんなに胸が苦しいんだ?……まさか、私は……」

 

 小声でつぶやく二人の声が、私と北郷に聞き取れるはずも無く。街中へと飛び出した北郷を追い、私もその場から駆け出した。

 

 捕まえて、絶対責任を取らせてやる。

 

 この鈴音から逃げられるものなど、決していやしないのだから。

 

 そして、いつか本物の式を挙げさせてやる。

 

 ……この甘興覇から、逃げられると思うなよ、北郷一刀?ふふふ。

 

                                   ~続く~ 

 

 

 あとがき

 

 

 すいません。

 

 

 北朝伝と交互に投稿とか言っておきながら、

 

 結局こっちが早くなってしまいました。

 

 言い訳を一応すると。

 

 

 官渡の戦いが、どうにもしっくりこないんです。

 

 普通に考えたら、一刀たちの圧勝なんですが、

 

 それじゃあ盛り上がりに欠けるので、もう少しひねってみようかと。

 

 

 なので、とりあえず出来上がっていたこっちを、今回は先に投稿です。

 

 じゃ、そういうことで、次の北朝伝はしばらくお待ちくださいね?

 

 あっといわせる展開になるよう、しっかりたっぷり練りまくりますので。

 

 

 ではみなさま、今回はこれにて。

 

 再見!ですwww


 
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