No.209225

真・恋姫†無双 ~とある風力使いの物語~4話

シロクマさん

今日は大学の入学式…何やってんだ、自分。
もちろん小説書いてるぜ。もう寝るぜ。

遅刻したらしゃれにならない。
友達に殺される…ことはないがやっぱダメだろう。

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2011-04-01 03:18:39 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:1835   閲覧ユーザー数:1650

信じたくない事態が起こっている。

 

 

いや、分かってたよ。

 

 

 

出会う人皆が日本語使ってるなんておかしいと思った。

 

でも小型の翻訳機でも隠しこんでいるのかもしれないとやり過ごす事にしたんだよ。

 

 

時代錯誤な武器も変だと思った。

 

剣とかいつの時代だよって思ったさ。

 

 

でも神裂や建宮みたいな例外もいるしってかなり無理やりに自分を納得させたんだよ。

 

 

 

この女の子の名前を聞いたときには嫌な予感が一気に押し寄せてきた。

 

でも有名人の同姓同名もよくある話だよなって言い訳したけど、もうこの時には半ば観念した。

 

 

 

「…つまり。ここは中国でもなく荊州という土地で、霊帝…じゃない、劉宏が君臨する漢王朝が支配している時代で、さっきの賊は黄巾党と呼ばれる集団で、君の名は鳳士元、と。そういうことか?」

 

 

 

投げやりに状況把握をした後、思わず手を顔に当て力なく頭を横に振った。

 

 

「…えっと…それで間違いないです。で、でも帝を呼び捨てにするのは恐れ多いでしゅっ…あわわわわわ」

 

「とりえず落ち着け。取って食ったりしないから。な?」

 

 

 

信じたくない。

 

 

 

俺はてっきり海外に飛ばされたと思っていたんだ。

実際にそうだったけど、まさか時代まで飛ばされているなんて。

 

 

しかもこの子性別がおかしい。女の子だぞ。鳳統なのに。

 

そしてなぜ日本語が通じるんだ、ありえない。

 

 

 

 

 

…つーか、これどうやって帰れっていうんだ。

 

無理じゃん。絶対無理じゃん。

 

 

 

「いや…落ち着くのは俺の方、だな」

 

 

ああ、もう。

どうすればいい?

 

何なんだこの世界は。夢でも見ているのか?

これじゃまるで。

 

 

 

(異世界じゃねーか…。)

 

 

科学的じゃない、と論破するにも他にこの状況を説明できるものは無い。

 

この自称鳳統が嘘をついている、という可能性があるにせよ、そんな事をするメリットも思い浮かばない。

 

 

(異世界に送るのが第六位の能力?そんな事が…ありえるのか?能力が秘匿されているのはあまりにも突拍子も無いから?統括理事が独占してその力を利用するため?…訳が分からん)

 

 

「え、えと、改めて、あの、た、たしゅけてくだしゃってありがとうございましゅた!」

 

すぐ傍でペタンと座り込みお礼を言う鳳統の存在に苦笑する。

 

 

…とりあえず噛むのをなんとかしてくれないだろうか。

 

何でこんな子供に緊張されてるんだよ、俺。

 

 

そんなに怖いか?と一人ごちるも、こんな小さい女の子が高校生ほどの男に話しかけるというのはなかなか勇気がいるのかもしれない、と納得する事にする。

 

むしろ白井や御坂みたいに態度がでかい方がおかしいのだ、うん。

 

 

「いや、良いんだけどさ。鳳…えっと、士元。聞きたい事があるんだけど」

 

 

危うく諱(いみな)ごと名前を呼びそうになって言いとどまった。

 

 

小説やマンガでは気軽に呼ばれている名前だが確かこの時代、名を呼んでいいのは親や主君だけだったはず。それ以外の者が気軽に呼べば、それは相手を極めて侮辱した事となる。

 

字をというものが作られたのは諱を呼ばないようにするため…だったか。

 

古典の教諭が授業の空いた時間で教えてくれた豆知識だ。

 

 

科学の町である学園都市では国語は他の教科に比べ軽視されていたために、こういった雑談は多かった。

 

まさかこんな所で役に立つとは思わなかったが。ありがとう、先生。

 

 

 

(というかいい加減落ち着けよ、俺!)

 

 

いくら状況に混乱しているからといっても、いい加減注意散漫なこの頭をどうにかしなければ。

 

 

第六位相手の会話に意識を掛けすぎてこんな所に送られた。

 

周りに賊が近づいている事にも気が付かなかった。

 

先ほども皇帝を霊帝、と諡号(しごう)、つまり死後に送られる名前を口にした。

 

らしくもない。

馬鹿か俺は。いつからこんな無能に成り下がった。

 

 

――もうあんなヘマはしない。

 

ここが後漢時代だっていうなら、誰でも死と隣り合わせなのが普通の世の中だ。

 

この時代の治安の悪さは、不良が出てくるというレベルじゃないのだから。

 

 

 

「聞きたい、こと…何でしょうか…?」

 

「お前…その木箱の中にずっと入ってたのか?」

 

右手で蓋の開いた空の箱を指差す。

 

 

「…はい。盗賊さんたちに見つかっちゃったら、私なんかじゃ命の保障もありませんでしたから。荷台が奪われた昨日のお昼からずっとここに…」

 

普通はこんな小さい木箱に人が入っているとは誰も思いやしない。だからこそ見つからなかったのだろう。

 

 

それにしてもエコノミー症候群とかの心配は大丈夫なのか。それ以前に体が凝り固まってるんじゃ…?

しかし本人はピンピンしているように見える、不思議だ。

 

 

「その騒動で朱里ちゃんとも離れちゃったし…うぅ、朱里ちゃぁーん…」

 

 

その朱里ちゃんとやらはこの子の保護者かお友達だろうか。

幼名らしき響きの名に、恐らくは友達なのだろうと目星をつける。

 

 

「…その子と合流する手立ては何か無いのか?どっか向かっている目的地とかがあるんだろ?」

 

「ぐすっ。そ、そうでしゅ。幽州に降り立った天の御使いの噂を聞いて、それで、えと、その方の下へ向かおうと…」

 

「天の、御使い?」

 

うん?思わず首をひねる。

 

漢王朝で言う天とは帝と同義じゃなかっただろうか。

 

 

始皇帝が初めてその位を名乗る以前の王朝までは、王が統治していた。

 

皇帝とは絶対的な存在であり、全ての人民は皇帝の命令に従わなければならず、勝手な行動は許されない。

 

大義名分は全て皇帝が持ち合わせるものであり、土地も人民もその財産も皇帝の所有物。

 

 

今じゃ到底考えられない権力だが、それがこの時代の皇帝というものだ。

 

 

(そんな帝と同義ともいえる天の、それも御使いって…どんだけ自意識過剰な名前付けてんだ)

 

それは王朝の権力で公開処刑でもされかねない暴挙だ。

 

誰に名付けられたかは知らないが、本人もまぁよく名乗ったものだ。

 

 

 

「ご存じないですか…?今大陸中に出回っている噂なんですけど…」

 

おずおずと自信無さげにこちらを見上げる鳳統。

 

その表情はなんだか知らないこっちが悪いような気持ちにさせられる。

 

 

「悪い。あー…こっちに来たばかりでそういう噂に疎いんだよな、俺。他にもいろいろ教えてくれないか?町に着くのも一晩かかるらしいし…暇つぶしの話し相手になってくれよ。あぁ、その天の御使いの話も聞きたいな」

 

「は、はいっ!」

 

今までの会話の中でも一番の笑顔に、俺もまたフッと頬が緩んだ。

 

 

俺達の間にあった他人行儀な空気はいつしか和やかな物へと置き変わり、夜が来るまで二人で語りつくしたのだった。

 

 

 

 

辺りに所狭しと置かれている荷物を端へと追いやり、寝床を確保する。

 

賊が居たためこれまで安眠できていなかったであろう鳳統は、既に眠りについていた。

スースーと寝息を立てて眠る姿はまんま子供だ。

 

 

しかし子供と侮るなかれ。

話を進めていく内に彼女は大人顔負けの知識を有している事が分かった。

 

そこはやはり伏龍鳳雛、と諸葛亮と共に並び称されるだけの事はあるというものだ。

 

 

というか、子供ではないらしい。

 

 

士元という字を授かっている時点で既に成人していると気が付くべきだったのだが…驚いた俺の顔を控えめに、それでも不満げに見つめていた姿は今思い出しても微笑ましいものだった。

 

 

 

 

 

ゴロンと寝転がり目を閉じると睡魔が序々に訪れてくる。

 

ぼやける意識の中、今後の目的を繰り返し認識させる。

 

 

 

こんな訳も分からない土地で死ぬわけにはいかない。

 

生きてく気にもなれない。

 

 

学園都市には育ててくれた恩がある。

 

友人がいる。

 

戦友がいる。

 

守りたい奴がいる。

 

嫌いな奴もいるが、それ以上に好きな奴もいる。

 

 

そんな場所に、帰りたいと思わない理由がない。

 

 

「手がかりは天の御使い、か」

 

鳳統との会話で分かった事。

 

 

天の御使い、北郷一刀。

 

 

天を称するこの男が何者かは分からない。

 

ただの旗頭として利用されている馬鹿かもしれない。

 

それこそ天に二物も三物も与えられた超人かもしれない。

 

 

幽州というと、公孫賛が治める土地。

 

そこに身を寄せているとなると、劉備と行動を共にしている可能性が高い。

 

 

(まぁ、日本人は劉備好きだもんなぁ…。)

 

 

日本で正史よりよほど知られている三国志演義なんて、劉備とその周りの人間を主役に立てた話だ。

 

徳の人、義の人と知られる劉玄徳。

 

こんな時代では異色とも言える理想を掲げるその姿は、日本の価値観や美徳に通じるものがあるから。

 

その心意気に感化でもされたのだろうか。

 

 

俺なら…誰を選ぶだろう。

 

当麻なら…あのヒーロー様なら、迷わず蜀を選ぶ気がする。

良くも悪くも、真っ直ぐな奴だから。

 

 

なら、俺は――――?

 

 

 

【あとがき】

 

前回はコメントたくさん頂きました、ありがとうございます。

 

 

 

蜀ルートより袁ルートのほうが人気なことにビックリです。

 

袁術か、そんなに袁術がいいのか!

 

 

自分的には袁ルート=袁紹だったのですが皆さんは=袁術なんですね…確かに素直なとこは可愛い。

 

でも孫作さん怖いです。

 

呉の人たちをを何とかしないと美羽んとこは痛いです。

 

 

孫策「仲間に引き入れる?…何言ってるのかしら?」ザクッ

 

 

こんなエンドしか思いつかないです。

 

おい、ハッピーなエンドはどこへ行った…!

 

 

 

 

袁紹ルートは改良麗羽で行こうかと考えていました。

 

 

 

 

「正直に言う。麗羽、お前は指導者には向いてない。お前はどちらかといえば人に使われることで能力を十二分に発揮することのできる類の人間だ。…でも、周りはお前の魅力や家柄故に指導者としての立場を望む。…難儀だな、ホント」

 

 

「この私に正面から指導者に向いていないだなんて、失礼な事をおっしゃいますわね!…まぁでも、それが本当だとして、何か問題でもありまして?」

 

 

「はぁ?だから――」

 

「あーら、修司さんともあろう方がこんな事も分からないだなんて、情けないですわねぇ。…簡単なことですわ」

 

 

 

「足りないその統率力と知力はあなたが補えばそれで済む話ではありませんの。・・・でもあなただけではもの足りませんわね・・・まあ田豊さんや逢紀さんにも任せれば良いでしょう。そこをまとめるのは修司さんにお願いしますわ」

 

 

「ふっ…ははははは!…あー、そっか…なるほどな。――良いよ。麗羽、お前に天下をくれてやる。圧政敷いたら許さねーぞ?」

 

 

「民を想うのは為政者の務めですわ。言われずとも・・・いえ、あなたに出会う前でしたら歯牙にも欠けなかったかもしれませんが・・・今の私に、そんな言葉は不要でしてよ?」

 

 

 

 

ここまで妄想した。

 

 

だが続きそうにはなさそうだ。

 

 

袁紹ルートになると曹操さんが…あの、あんなに強い覇王の曹操さんが…

 

 

かなり早い時期でフェードアウトしてしまいそうである意味怖い!

 

曹操とは最後でぶつかりたいって気持ちが強いですね。なぜか。

 

 

蜀ルートで行きたいです。

 

 

まぁシロクマの進行速度じゃまだそういう段階に入る事すら時間がかかりそうですが…

 

 

雛里視点の話も書きたい。

 

 

もはや義兄妹にしたい。

 

 

雛里可愛いよ雛里。


 
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