No.206103

真・恋姫無双 夜の王 第46話

yuukiさん

真恋姫無双夜の王。天の一日と涼州の近況。

2011-03-11 17:56:17 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:8046   閲覧ユーザー数:5707

この作品の一刀は、性格、武力ともに原作とは異なっています。

 

また、一部キャラを否定する場面もございます。

 

ご理解をお願いいたします。

 

まだまだ誤字、脱字や分かりにくい表現などもあると思いますが、

 

こんな自分の作品でも楽しんでいただけたら幸いです。

 

 

 

 「あ!一刀おにいちゃん~~」

 

桃香達が使者として去ってからから数日。

気分を変えて外での政務に励んでいたら、そんな声が聞こえてきた。

 

飛び込んでくる者の大体の目星は付く。

というか、”一刀お兄ちゃん”なんて呼ぶ奴はこの城には一人しか居ない。

 

 

しかし、俺の予想は外れた。

 

振り返ってすぐに目に入ったのは、紫色では無く、桃色の髪だった。

 

俺は、その子を受け止めた。

 

  ドンッ

 

小蓮「へへ、一刀おにいちゃん♪」

 

一刀「、、、どうしたんだ、シャオ?お兄ちゃんなんて呼んで」

 

小蓮「うん、やっぱりマンネリ化しちゃ駄目だと思って。一刀だっていつも同じ伽じゃ飽きちゃうでしょ?」

 

唇に指を当てて艶っぽい目線でそう言う小蓮。

やっぱり、ませているな、などと思う。口に出したら怒られるだろう。

 

一刀「別に何時もどうりでいいよ。それより、仕事は終わったのか?」

 

くっ付いてくる体を離すことを諦め、頭を撫でため息をつく。

 

小蓮「ぶー、一刀ってば最近そればっか!今が忙しい時期だってのはシャオだってわかってるよ。今日だって遊びに来たわけじゃないんだから、はい、これ備蓄食料の報告書。民のみんなの寄付でどんどん増えて来てるよ」

 

一刀「そうだったか、御苦労さまシャオ」

 

シャオから報告の書簡を受け取ってもう一度頭を撫でてやる。

 

小蓮「やぁん、一刀ってば、大胆なんだから」

 

、、、、もう一度言っておくが、俺は頭を撫でているだけである。

 

小蓮「ねえねえ、一刀、最近シャオ偉いでしょ?だから御褒美が欲しいな~」

 

一刀「御褒美?」

 

小蓮「うん。最近、忙しくてあんまり会えないし、良いでしょ?」

 

そう言って、シャオは僅かに濡れた唇を近づけてくる。

 

一刀「、、はぁ、好きにしろ」

 

小蓮「うん♪好きにする!、、、んっんふぁ、くちゅ」

 

唇が触れ合い、入って来た舌にも抵抗することなく俺はしばらく目を閉じていた。

口の中がシャオの舌に踏みつけられ、蹂躙される。

 

小蓮「ふはっ、一刀、ありがと元気出た。じゃあ、シャオ頑張ってくるから!またね!」

 

人の唇を好き勝手に荒らしまわった後、余韻を楽しむ暇も無く行ってしまった。

 

一刀「まったく、相変わらず台風みたいな奴だな」

 

 

 

 

一度口を手で拭い、俺は仕事を再開しようと書簡に手を伸ばす瞬間、

 

  「一刀おにいちゃん!」

 

次こそはあの子だろう、と思い振り返るが、眼に映るのは薄く緑がかった髪。

 

俺は、その子を受けとめ、、ずに頭を鷲掴みにする。

 

  ガシッ

 

猪々子「はりゃ?アニキ機嫌悪い?」

 

頭を押さえつけられ、顔も上がらない変な格好にも猪々子は動じない。

 

斗詩「ちょ、文ちゃん速いよ~」

 

後ろから斗詩も駈けて来た。

 

一刀「で?何のつもりなんだ、猪々子」

 

猪々子「いや、さっきシャオがそう呼んでるの聞いて面白そうでつい」

 

一刀「紛らわしい真似をするな」

 

そう言った時、ふと頭に悪戯が過ぎる。ちなみに猪々子に反省の色は無い。

 

にやり、と俺は口元を上げる。

 

一刀「さっきの口づけが面白そうだった?誘ってるのか、猪々子」

 

猪々子「へ?いや、そう言う訳じゃ ん!んん~っっ 」

 

有無を言わさず、口づけをする。

眼を見開いてドンドンと背を叩くのを無視して続ける、舌を入れる頃には耳まで真っ赤になっていた。

 

一刀「ふは、どうした?だらしない顔だな」

 

恍惚の表情を浮かべる猪々子をからかいながら頭を撫でる。

そして、耳元で囁いてみた。

 

一刀「そのだらしない顔、愛しの斗詩に見られちゃったな」

 

猪々子「えっ、、、はっ!」

 

口元から垂れた涎を拭うこともせず、猪々子が振り向けばそこには顔を真っ赤に染めた斗詩の姿。

 

斗詩「ぶ、文ちゃん」

 

猪々子「ち、ちが、その、ちがくてその、と、し、」

 

一刀「何が違うんだ?」

 

だらしなく垂れた涎を親切心で拭ってやると、猪々子は

 

猪々子「と、斗詩、以外にこんなことされても嬉しくないんだからなーー!!」

 

そう叫んで走り去ってしまった。

 

 

一刀「少し、やり過ぎたかな」

 

斗詩「一刀さん、文ちゃんをあまり苛めないでください。ああ見えて結構乙女何ですから、、」

 

一刀「ああ、悪かった。で、なにか用があったのか?」

 

後で猪々子に謝って置こうと心に決め、顔を斗詩に向ける。

 

斗詩「はい。これ、再編成した騎馬隊の報告書です」

 

一刀「そうか、大変だったろ?任せていた翆が居なくなったんだ」

 

斗詩「いえ、兵の皆さんも協力してくれていますし、なんとかなりそうです」

 

一刀「偉いな、斗詩。これからも頼む」

 

斗詩「はい、任せてください。それじゃあ、失礼します」

 

 

 

頭を下げさった斗詩を見送り、俺は書簡に眼を通し始めた。

 

 

ところが、一つ目の書簡を見終わる前に声が響いた。

 

  「あ、かずとおにいちゃんだ!」

 

たっく、次は誰だ?もういい加減そのネタも飽きたんだが、

流行っているのか?人の名を変に呼ぶのが、

 

どうせ真桜か沙和辺りだろう、と思い振り返ると、

 

飛び込んできたのは紫の髪、間違えなくこの城で初めて俺をお兄ちゃんなどと呼んだ子だった。

 

璃々「どーん!」

 

  ドンッ

 

一刀「っと、危ないだろ。璃々」

 

璃々「だいじょうぶだよ~、おにいちゃんが受け止めてくれるもん」

 

一刀「、、じゃあ、次からは受け止めないことにしよう」

 

璃々「え~、どうしてよー」

 

璃々が頬を膨らませている間に説明する。

上の会話から分かるように何故か璃々は俺に懐いている。

初めて会ったのは前の酒総動の時で、それ以降交流はなかったんだが、最近になって忙しくなってきたせいでこの子との交流が生まれた。

簡単に言えば、城の殆どが戦の準備に忙しい為璃々の遊び相手が居なくなってしまったのである。

璃々の母、降将の紫苑はおろか侍女である筈の月達にも動いて貰っている今、遊び相手を出来る者も限られてくる。

 

その一人が俺である。

無論仕事をしていないという訳じゃない、ただ机仕事が多い為片手間で遊んでやれるというだけ。

その為、数日前から俺を見ると飛び込んで(突っ込んで)来るようになった、正直なぜ懐かれたがわからない。

遊び相手と言っても仕事をしながら相手をしている俺は半分以上璃々の言葉を無視していると思う。

まあ、璃々に懐かれたせいか黄忠に信用されて、俺も黄忠の真名を呼ぶし、黄忠も俺を主と認めたのかご主人様などと呼ぶようになったから、良かったんだが。

 

璃々「ねえ、聞いているの?かずとおにいちゃん」

 

一刀「いや、聞いてない」

 

璃々「ぶ~~、人の話はちゃんと聞かないといけないんだよ」

 

一刀「そうだな、で?なんのようだ」

 

璃々「うん、璃々とあそんで「駄目だ」えー、どうしてよー」

 

一刀「見て分かるだろ?仕事中だ」

 

視線は書簡に向けたまま、別の書簡を璃々の前で揺らす。

 

璃々「じゃあ、お仕事終わったら遊んでくれる?」

 

一刀「少しだけならな」

 

璃々「じゃあ待ってる!」

 

そう言うと璃々は膝の上に乗っかって来た。

 

一刀「部屋で待ってたらどうだ?疲れるだろ」

 

璃々「ううん、ここに居るの」

 

一刀「、、、ずっと待っていても約束を守るとも限らないぞ?」

 

璃々「守ってくれるよ。後で遊ぶって言った時、かずとおにいちゃん、前のその前もそのその前も遊んでくれたもん」

 

一刀「好きにしろ」

 

上を見上げる璃々の笑顔から逃れるように俺は再び書簡に眼をやる。

 

 

 

そうして、少し時間が立った頃、

 

紫苑「ご主人様、少しよろしいですか?」

 

一刀「ああ、良いぞ」

 

璃々「あ!お母さん」

 

紫苑「な、璃々。またご主人さまの所に来ていたの!」

 

璃々「うん!お仕事終わったら遊んでもらうんだ」

 

紫苑「そんな約束まで、、お忙しいのに申し訳ありません」

 

一刀「いや、大丈夫だ。で?なにか用があったんだろ?庭に居る俺をわざわざ探しに来きたんだ、世間話をしに来たわけじゃないだろう」

 

大体の察しはついたから、俺は紫苑に向けて手を差し出した。

 

紫苑「はい、、その、これにも目を通して欲しいのですが」

 

おずおずと差し出された書簡を受け取る。

 

璃々「あー、お母さんまたかずとおにいちゃんの仕事増やすの~。璃々の遊ぶ時間無くなっちゃうよ~」

 

紫苑を攻める様に璃々は頬を膨らませる。

 

一刀「紫苑が悪い訳じゃない。責めるな、璃々」

 

璃々「じゃあ、誰が悪いの?」

 

一刀「別に誰も悪くないんだが、強いて言うなら忙しいのが悪いな」

 

紫苑から受け取った書類を横に置いて、途中だった書簡に眼を向けながら答える。

 

璃々「どうして忙しいの?」

 

一刀「もうすぐ戦だからだ」

 

璃々「いくさだとかずとおにいちゃんは忙しくなっちゃうの?」

 

一刀「ああ、そうだ」

 

璃々「じゃあ璃々、大きくなったらいくさのお手伝いしてあげるね!」

 

やっと子供特有のどうして?攻撃が終わったと思ったら、璃々は笑顔でそう言ってきた。

俺は書簡から眼を離さず、冷たい声で

 

一刀「いや、いい」

 

そう言っていた。

 

璃々「えっ、、、、」

 

声質が変わったのがわかったのだろう、璃々の目に少しずつ涙がたまっていく。

 

璃々「ひっく、かずとおにいちゃん、、璃々、いらない子なの」

 

涙声でそういう璃々にため息をつきながら、書簡から眼を離し璃々の頭を撫でる。

 

一刀「そうじゃない、大きくなっても、お前は戦を手伝う必要なんてないんだよ」

 

璃々「どうして?」

 

一刀「璃々が大きくなる頃には、戦なんてなくなってる」

 

璃々「、、、ほんとう?」

 

一刀「ああ、俺がなくしてみせる。必ずな、、」

 

璃々の顔に笑顔が戻った。

 

璃々「じゃあ、璃々が大きくなったらかずとおにいちゃん忙しくないんだよね?そしたら、璃々といっぱい遊んでくれる?」

 

一刀「暇だったらな」

 

璃々「うん!約束だよ!」

 

そう言って強く抱きついて来た璃々にため息を深くしながら頭を撫でてやる。

そうしていると、小さな笑い声が聞こえた。その声がした方を向けば、微笑みを携えた紫苑が居た。

 

一刀「、、、なんだ?」

 

紫苑「そのように優しく子を撫でる魔王も居るのですね」

 

一刀「それは、俺を馬鹿にしているのか?」

 

紫苑「いえ、嬉しく思っただけです。本当に、そうなればいいと。璃々が大人になる頃には、戦なんて、無くなれば良いと思いました」

 

一刀「無くして見せるさ、約束だからな」

 

笑顔を携えたままの紫苑から目線を外し、書簡に戻す。

 

紫苑「出来れば、この戦も無くなってしまえばいいのだけど。桃香様はどうしているでしょうか」

 

一刀「戦をなくすため、頑張っているんじゃないのか?まあ、無駄だと思うがな」

 

そう言って、俺は空を見上げた。綺麗な、青空だった。

 

 

 

場所は変わり、涼州。

 

翆 「久しぶり、母上」

 

蒲公英「叔母様、お久ぶりです」

 

馬騰のお墓の前に、翆と蒲公英は居た。

 

翆 「一年ぶりぐらいかな、あんまり帰ってこれなくて、御免。けど、私達も大変だったんだぞ?」

 

墓石に水をかけながら語りだす。

 

翆「一刀と戦って、劉備と戦って、そんなことしてたら曹操と孫策が組んで反天連合なんて出来ちゃってさ。それに対抗するため徴錬ばっかやってたらあっという間に一年だ」

 

翆は服が汚れることもかまわず地面に座り膝を抱える。

蒲公英もまた同じように隣に座った。

 

翆 「前にした約束、覚えてるかな?母上の仇の一刀と獅堂の首を取ってくるってヤツ。その約束、もう守れそうにないや」

 

蒲公英「お姉様、、」

 

翆 「だってさ、二人とも、良い奴だったんだぞ。獅堂は口は悪いし暴力的だけど、仲間思いの奴で、

仲間を裏切ったのが許せないって、自分でも敵わないってわかっていて私に剣を向けて来たんだぜ。

ちょっと、びびっちゃったよ」

 

はは、と笑いながら翆は語る。

 

翆 「一刀は馬鹿みたいに他人と自分に厳しくてさ。なのに、馬鹿みたいに私達には優しいんだ」

 

翆の目に徐々に涙が貯まっていく。

 

翆 「商人達の噂で聞いたよ。一刀の奴、洛陽で何百人って虐殺したんだってさ。それ、全部私達の為なんだぜ?本当に馬鹿だよ、そんなことしているから大勢に恨まれて、怖がられてさ、魔王なんて呼ばれるんだ。本当は優しいのに、誰も知らないんだ」

 

蒲公英もまた、手を握りしめ涙を堪えていた。

 

翆 「自分のことを誰も知らない。そんな酷い事ってないよな。だから、ごめん、母上。私は一刀と一緒に居ようと思う。あいつを一人にはしたくないんだ、、一緒に、居たいんだ」

 

お墓の前で、翆は深く頭を下げる。

 

翆 「母上、私、仇の男に惚れたみたいだ」

 

頭を下げたせいだろうか、翆は堪えていた涙を零す。

 

蒲公英「たんぽぽも同じ、ご主人様と一緒に居ようと思います。だって、裏切ったのに、、それでも愛しているなんて言われたら、惚れるしかないじゃん」

 

蒲公英もまた頭を下げる。

 

二人はしばらく間、お墓の前で頭を下げ続けた後、どちらともなく顔を上げた。

 

翆 「、、、行くぞ。蒲公英、涼州の民を止めに。これ以上、姉妹揃って惚れた男に迷惑はかけられないだろ」

 

蒲公英「うん。わかってるって、お姉様。たんぽぽは尽くす女だから、頑張っちゃうよ」

 

 

その後、二人は涼州の地めぐり、嘗ての敵国の王と共に

先の大乱の首謀者であり、彼女達を巻き込んだ張本人と争うことになるのだが、、

それはもう少し、先の話であるし、決して彼女達の思い人が知ることはない、物語であった。

 

 

 


 
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