No.204077

真・恋姫無双 魏end 凪の伝 50

北山秋三さん

「裏切りの貂蝉」

2011-02-27 16:44:49 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:5184   閲覧ユーザー数:4223

「答えなさい!秋蘭!」

 

そう叫んだ華琳の瞳が動揺に揺れる。

 

振り向いた秋蘭は────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日月のように両端を吊り上げた唇と、まともだとは思えない虚ろな瞳のその笑顔。

 

狂気の影が見える秋蘭の笑顔に、華琳が戸惑う。

 

「しゅう────」

 

「華琳さま」

 

再び問いかけようとした華琳の声が秋蘭の言葉で遮られる。

 

「ズルイと思いませんか?」

 

「────え・・・?」

 

突然の秋蘭の言葉に華琳の表情が訝しげなものに変わるが、続く言葉に絶句した。

 

「北郷は、凪と結婚するところだったんですよ」

 

けっ・・・こん・・・?

 

結婚?

 

凪と?

 

誰が?

 

一刀が?

 

何故?

 

そんな筈は────

 

「何を・・・言っているの・・・?」

 

呆然とした声が漏れる。

 

だが秋蘭は華琳の動揺に構わず、表情を崩す事無く言葉を続けた。

 

「北郷は・・・"ミンナノモノ"でなくてはならないんです」

 

「そうだよぉ・・・秋蘭ちゃん」

 

声が聞こえた。

 

その声のあまりの禍々しさに、華琳さえ思わず後ずさる程の厭らしさを含んだ声。

 

"それ"は、黒い神事服を纏った姿で秋蘭のすぐ後ろに突然現れ、秋蘭を後ろから抱きしめる。

 

「とう・・・か・・・?」

 

アハハッ♪という笑い声。

 

「おっひさしぶりぃ・・・華琳さーん♪」

 

あっけらかんと軽い挨拶をする桃香の姿に、華琳は頭が働かない。

 

「・・・どうして・・・」

 

「ふっふ~ん♪それは、『どうしてわたしがここにいるのか』かな?それとも、『どうして秋蘭ちゃんがこれを持っているか』かな?」

 

ニコニコ顔の桃香が秋蘭から『靖王伝家』を受け取り、それを見せびらかすようにしてひらひらと剣を振る。

 

「あはははっ♪秋蘭ちゃん・・・心が弱ってたから、操るのは簡単だったよー♪」

 

「何、ですって・・・?」

 

あまりにも簡単に言ってのけた言葉に、一瞬言葉の意味がまったく理解できなかった。

 

理解した瞬間。

 

華琳の怒りが爆発する。

 

「桃香!!!秋蘭に何をしたの!!」

 

即座に『絶』を構え、睨みつける華琳の覇気にまったく怯まず桃香はゆっくりと秋蘭の頬を撫でる。

 

「べっつに~♪ただ、弱っていた心にうまーく、滑り込んだだ・け。キャハハ♪」

 

ザワリとする笑顔で平然と言う桃香に、華琳は寒気を感じた。

 

それと共に。

 

 

 

 

 

 

「貴方・・・"本当に桃香なの?"」

 

 

 

 

 

 

湧き上がる疑問。

 

刹那の時────桃香の笑みが消えた。

 

華琳はその桃香の表情に、恐怖を覚える。

 

"何も無い表情"

 

そのあまりの空虚さに、本能的に危険を感じた。

 

「も~う。何をいっているのよー。桃香ちゃん以外の誰に見えるのっかな~?♪」

 

だが、即座に笑顔に戻る。

 

「ただ、ね。ようやく取り戻しただけ。本当のわたしを」

 

クスクスと笑う桃香は、スッと目を細めて過去を懐かしむような表情を浮かべた。

 

「ずーっと、封印されてたんだぁ・・・わたし」

 

「・・・封印・・・?」

 

「野心、怒り、嫉妬、憎しみ・・・そういう『黒い感情』を封印されると・・・あら不思議。

 

何と、お手軽"能天気劉備"のできあがりぃ~・・・クスクスクスクス・・・」

 

指折り数える桃香の顔に浮かぶ狂気に、華琳はもう一度『絶』をしっかりと握り締める。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ・・・『黒い感情』を封印から解き放つと、『劉備』は『何に』なるでしょうー、か?」

 

 

 

 

 

 

ふざける様に、からかう様に問いかけながらトンッ、と桃香が空に舞う。

 

その腕の中にいた秋蘭も。

 

「ま、待ちなさい!!」

 

ハッ!として空に浮かぶ二人を慌てて追いかけようとした華琳の足が止まる。

 

見てしまったのだ。

 

秋蘭の頬を伝う涙を。

 

そして、小さく口が動くのを。

 

「じゃあね~♪華琳さん・・・『二人目』はもらっていくよー♪」

 

アハハハハハハハハと笑いながら消える二人を前に、華琳は呆然とするしかなかった。

 

「どういう・・・事・・・?」

 

残された華琳の呟きは闇に融ける様に消える。

 

華琳が呆然とする原因。

 

それは秋蘭が最後に残した言葉。

 

『このままでは、一刀がまた消えてしまいます』

 

その意味が、華琳に重く圧し掛かろうとしていた。

 

 

右側から繰り出された空気ごと押しつぶすような恋の拳による一撃を、腕に着けられた『黒い閻王』でかろうじて防ぐ。

 

信じられないような轟音が響き、一刀の腕の骨が軋む。

 

だが、顔を苦痛に歪める暇も無く、即座に反対側から『靖王伝家』を持った愛紗が飛び出してくる。

 

強烈な蹴りを手の平で受け止め、その勢いを利用して後ろに大きく下がった。

 

「・・・くっ・・・ハァ、ハァ、ハァ、!」

 

一刀は片膝をつき、大きく肩で息をする。

 

もう何度も繰り返された恋と愛紗の二人の猛攻は、一刀に極度の疲労を与える為のものだった。

 

事実、急所を狙ったものは無い。

 

ただ体力を奪うかのように、まるで猫が鼠をいたぶる様に追い詰めていく。

 

遊ばれている。

 

その事にギリッと歯を食いしばるが、すでに一刀の『空間』は解けてしまっている。

 

心臓の鼓動が耳に煩いほど聞こえていた。

 

あまりにも強すぎる恋。

 

そして今や『靖王伝家』の力でその恋と同じ力を持つ愛紗。

 

一刀に勝てる要素は・・・皆無。

 

しかし、諦めるわけにはいかなかった。

 

後ろには春蘭と季衣がいる。

 

今、一刀が諦めれば恐らく二人は殺されるだろう。

 

それだけは、絶対にさせない。

 

本陣の近くでこれだけ騒げば誰かが気がつく。

 

そうすればせめて、二人だけでも助けれる筈────

 

「う、おおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

一刀の中に入った『この外史の一刀』の叫びが今の一刀を動かす。

 

片膝をついた状態からダッシュをかけ、恋に向かう。

 

右手をしっかりと握り締めて恋へと振りかぶる。と、見せかけて本命の蹴りを繰り出した。

 

低い位置からの、滑り込むような蹴りは轟音と共に恋に突き刺さる。

 

しかし、一刀の一撃は恋の体の前に出現した『方天画戟』によって防がれていた。

 

瞬間。

 

恋の拳が垂直に振り下ろされる。

 

体をよじることでかわされた一撃は地面に突き刺さり、爆発を起こしたようにあっさりとクレーターを作った。

 

爆発に巻き込まれた一刀は地面を転がるようにして退避する────が、そこには愛紗がいた。

 

「ぐぅっ!」

 

ミシッ・・・という音があばら骨の辺りから聞こえて、一瞬一刀の意識が飛びかける。

 

愛紗の放った蹴りが無防備だった脇腹に命中して一刀は地面を転がり、そのまま動けなくなった。

 

「一刀!」「兄ちゃん!」

 

春蘭と季衣の叫びがぼんやりとした頭に響く。

 

「カ・・・ハッ!」

 

一度頭を振って意識を覚醒しようするが、息が詰まる。

 

「もう、ご主人様。駄目ですよ、無理をなさっては」

 

労わる様に優しく声を掛ける愛紗に一刀は嫌悪感が湧き上がり、愛紗を睨みつけようとしても目が霞む。

 

必死に体を起こそうとした一刀の右腕が、恋によって猛烈な力で掴まれる。

 

「クスクスクス・・・もう、諦めてください。ご主人様」

 

愛紗が悠々と近づく。

 

『靖王伝家』を手に。

 

「ふふふふ・・・お優しいご主人様。時間を掛けて魏の兵に気付いてもらおうとしても・・・無駄ですよ」

 

ギクリ、とした。

 

「ここは結界が張られています。"事が終わるまで"誰も入れませんし・・・出れませんよ」

 

ニタニタと笑いながら告げた言葉に愕然とした一刀の姿に、愛紗の口元が醜く歪む。

 

醜悪なその笑顔のままで・・・一刀の手に『靖王伝家』が握らされた。

 

鍔にある玉が妖しく光始め、合成音のような声がする。

 

 

<<メインプレイヤーとの接続を確認>>

 

<<太平妖術の書・真書、起動>>

 

<<データをDownloadします>>

 

<<ルートを選択してください>>

 

<<北郷軍ルート>>

 

<<蜀軍ルート>>

 

<<魏軍ルート>>

 

<<呉軍ルート>>

 

 

<<萌将伝ルート>>

 

 

強烈な光が『靖王伝家』から発せられ、愛紗と恋が吹き飛ばされる。

 

「何だと!!?」「!!?」

 

吹き飛ばされた事よりも、最後に聞こえた新たなルートに愛紗ばかりか恋までもが驚愕する。

 

強烈な光は、暴風となって一刀の周囲を旋回し、近づけない。

 

「何だ・・・!?どういう事だ!?」

 

予定には無かった、第五の選択肢。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「萌将伝ルートよん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<<萌将伝ルート選択、メインプレイヤーにDownload後、overwrite installします>>

 

「「「!!!???」」」

 

誰も入ってこれない筈の結界の中で、いるはずの無い人物の声がした。

 

「ちょう・・・せん・・・?」

 

光の中にいる一刀だが、不思議と以前より苦痛はない。

 

呆然とした声で呟けたのもその所為だった。

 

それ所か、"自分のあるべき姿"に戻るような感覚と同時に沸き起こる、違和感。

 

ずっと前から時々感じていた違和感が、ここに来て強烈に一刀の感覚を刺激する。

 

捻じ曲げられる"自分のあるべき姿"に、一刀は吐き気を抑えることが出来なかった。

 

<<Download率30%>>

 

「貂蝉!!!これはどういうことだ!!何故貴様がここにいるッ!!萌将伝ルートとは何だ!!!??」

 

愛紗が声のした方を向く。

 

そこにいたのは、腕を組んだ貂蝉の姿だった。

 

いつものふざけた表情は無く、そこにあったのは厳しい表情だった。

 

「ご主人様には・・・謝らなければならないわん・・・」

 

 

「ご主人様には、このままこの外史に残ってもらわなければならないのねん」

 

 

お送りしました第50話。

 

マダヤッテマセンヨ?

 

インストールシテネット認証マデシタダケデスヨ?

 

ショートカットの中にある誘惑。

 

・・・第二部完結まではガマンガマン・・・。

 

というか、忙しさのあまり手が着けられない状態です。

 

では、第二部最終話「UNKNOWN」予告です。

 

 

 

現れた貂蝉。

 

その目的は一刀をこの外史に止め、外史の崩壊を防ぐ事。

 

つまりは元から帰る為の手段は閉ざされていたのだった。

 

その代わり一刀に与えられるのは、ハーレムエンド。

 

しかし、凪だけを想う一刀はそれを拒否しようとするが、ダウンロード率は100%になってしまう。

 

その時現れる桃香。

 

それは────

 

 

 

あ。ちょこっとヒント。今の一刀を巡る勢力は、

 

1.魏 2.呉 3.蜀 4.桃香達 5.貂蝉 6.UNKNOWN 7.正史の凪

 

となっております。

 

では。また。

 

 

 

うう・・・忙しい・・・。

 

ん・・・?何か机の上に・・・。

 

を?豆バラ?

 

なんぞこれ。

 

・・・は・・・?頼むのを忘れてた・・・?

 

ををををををををををををををををーーーーーーーーいいいいいいい!!!!!!

 

卒業式までもう時間ねーよ!!!

 

は、え?

 

書けってか。私に書けってか。

 

この伝票地獄の中、私に書けってか。

 

・・・というわけで、現在お家で内職のように『ご卒業おめでとう』と書き続けています。

 

あ。豆バラというのは、子供達が卒園式とかで胸に着けるバラに札が下がったあれです。

 


 
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